鉄血の三日月   作:止まるんじゃねぇぞ…

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一番書きたかった部分がようやく書けたのでよかったです。
これからも頑張ります。


第五話

 第一章「序章」第五話

 

 ――ドンッ!! ドドォーン!!

 

 「うわぁぁぁぁ!? 死ぬ―!!」

 

 「い、いてぇぇぇええ!!」

 

 「た、たすけ、お、溺れ、ガバボォッ!?」

 

 「7班と8班深追いし過ぎるな! 10班はまだ生きている奴がいたら海から引き揚げてくれ! 9班と11班は10班の援護に回れ!! 倒せなくていい!! なんとしてでも注意だけを引き付けてくれ!!」

 

 ル級の艦隊との交戦から2時間。遠征メンバーの帰還とビスケットに頼んだ他所の鎮守府からの応援が来ることを信じ、奮闘していた。しかし、相手は深海棲艦。船の形をしたバケモノである。たかだかRPGやライフルなど対人間兵器で敵う相手ではないのだ。

 駆逐艦イ級を一体沈めるだけでも、艦娘無しで挑めば最低こちらも三隻必要になる。それだけ兵力の差があるのだ。

 

 何故、こうも艦娘という存在に頼らなくてはいけないのか。それは相手の装甲に問題があった。彼女等は装甲から特殊なシールドが展開されている。それを破るには同じ船である艦娘からの攻撃でしか突き破ることが出来ない。そのシールドが何故艦娘にしか効かないのか、あるいは艦娘以外の通常兵器でも対抗出来るのか、などといった原因究明は今全国的に研究を進めている。

 

 そして、オルガを含めイ級との交戦をしている彼等はそのことを知らないわけではない。むしろ、知っているからこそ戦っていた。深海棲艦の一部は海だけではなく、陸にまで攻めてくることがある。イ級もその一つ。海いる時は見えていないものの、二本の短い脚を持ち、その脚で燃料や弾薬、鉄などの資材を食料として襲う。あまつさえ、奴等は人間さえ好物としている。

 

 そんな奴等を陸にあげてしまえばどうなる? 簡単なことだ。地上に住んでいる家族や友人たちが皆殺しになってしまうからだ。だからオルガ達は無駄な行為だとしても、命を張ってでもやらなければならなかったのだ。

 

 「おいオルガ! このままじゃジリ貧だぞ!? いくらル級が攻撃してこないからって、イ級三体も相手するには無理にもほどがあんだろうが!!」

 

 「わかってる、んなことはよ!! あと少しなんだ! 今、ビスケットから連絡が来たんだ。もうすぐ遠征組が戻ってくるってな! それに要請した鎮守府からも応援が到着するまでそうはかからねぇはずだ。踏ん張ってくれ、お前ら!!」

 

 オルガは通信越しに皆に語り掛けると「おう」、「了解!」と気合の入った返事が聞こえてくる。だが、ユージンの言う通り、状況はかなり不味い。

 囮となった奴等の船が大半壊され、残っているのはオルガを含め6隻しか残っていなかった。最初にいた奴等は10班に回収され助かったか、イ級共に殺されたか。そのどちらかであった。

 

 オルガはル級の方をチラリと視線を向ける。するとル級はオルガと目が合うと、この状況を楽しんでいるかのように嘲笑っていた。

 

 (――あの野郎!!)

 

 楽しんでやがる!! 

 オルガはル級の表情を見て理解した。奴等は分かってんだ。俺たちじゃ太刀打ち出来ないことに。無駄な足掻きをしていることに。

 ル級の攻撃は最初以外攻撃をしてくる気配がないことが、報告の内容を含めて理解していた。だが、理解はしていたが意図が読めないでいた。

 何故だ。何故攻めてこない?

 艦娘がいない今なら一気に攻め落とすことも出来たはず。

 その理由は至極簡単であった。――俺たちが抗う姿を見て楽しむためだ。

 

 その理由にイ級は壊れたボートの木片に縋り付いている奴がいればゆっくりと近づいては鼻の先であろう部分で小突き、大きな口を開きながら一気に飲み込んでいく。顎を上下に動かすと、骨が砕けてるのと、肉を噛む音が一緒に混ざり合うのが、嫌でも聞こえてくる。

 それだけじゃない。三体の内、一体は溺れないよう必死に泳いでいる奴の足を、噛みちぎらないよう挟み込み、溺れるか溺れないかの瀬戸際を繰り返していた。そのやり取りの先に待ち構えていたのは、必死に生きようと足掻いたが体力の限界を超え、海に沈み、イ級の口の中へと誘われていくのであった。その末路が、どぷっと泡をたてると赤黒い色の液体が海に染みわたっていく。

 

 「オルガ! まだ、まだ応援は来ねえのかよ!?」

 

 「もうすぐなんだ! だから――」

 

 「うおぉぉぉぉぉぉ、やめろぉぉぉぉぉ!!」

 

 ユージンの悲痛な声にオルガは諭そうとしたその時、護衛に回っていた昭弘を乗せた班が、今にも食べられそうな奴を助けるために、全速力でイ級に向かって行く。

 

 「昭弘ォ!! ダメだ! 逃げ――」

 

 ――ガシャン!!

 

 イ級は一旦沈むと昭弘を乗せた船を頭の先で体当たりすると宙へと浮かばせる。一回転ほど宙に舞うと、ボートは海に叩きつけられ、木っ端微塵に崩壊した。その直後、ボートから乗せていた弾薬が引火したと思わるれであろう爆発が辺り一帯に吹き渡る。

 

 「あ、昭弘ォォォォォォォォ!!」

 

 「――ッ!! 船の速度を止めるなぁ!! あと少し、あと少しで!!」

 

 ユージンは目に溢れる涙を流しなら大声で叫び声をあげる。オルガは振り落とされないよう握りしめていた手に力を込めてユージンに命令する。昭弘を沈めたイ級を射殺す勢いで睨みつける。しかし、その眼には多くの涙を流していた。

 その光景を見ていたル級は静かにこちらを見つめ微笑んでいた。

 

 (昭弘――俺に言ったじゃねえか。死ぬんじゃねぇってよ)

 

 この世界で再開した仲間を今度こそは守り抜くと、そう誓ったはずなのに――。

 ――お前が先に死んでどうすんだ。昭弘! まだてめえと話してえことはいくらでもあるんだぞ! お前には地上で待ってる奴らがいるだろうが!! 俺はあの人に――ラフタの姐さんに何て言えばいいんだよ!!

 

 「――おい、オルガ? なんかこっち見てんぞ!?」

 

 「――――」

 

 オルガはユージンの言葉の方を伺うと、昭弘の船を沈めたイ級がこちらを見つめていた。すると、イ級の緑色の瞳が一瞬、光出すと全速力で大きな口を開けながら向かってくる。

 

 「しぬ、しぬ、しぬ、死ぬぅぅぅぅぅぅ!?」

 

 「死なねぇ! 死んでたまるか!!」

 

 イ級はオルガの船を丸呑みしようと、イルカのように飛びかかってくる。ユージンは必死になりながら紙一重でイ級の猛攻から逃げず続けていた。絶望的な状況の中、ユージンが死を覚悟した言葉に、オルガは全力で否定した。右、左、右と避け続けるユージンの操縦にイ級はしつこくも攻め続けるのを止めなかった。時にはUターン、旋回、あらゆる方法で逃げ続けた。

 

 「このままじゃ――」

 

 バシャン! バシャン!!

 

 「こんなところじゃ――」

 

 ――バッシャーン!!

 

 「――終われねえぇぇぇぇぇ!!」

 

 オルガの咆哮がイ級に向けて放たれる。イ級の猛攻に避け続けた末、オルガ達はイ級と真正面から対面する。オルガも人の中ではかなり身長があるほうだ。だが、目の前に存在しているバケモノはオルガの一回りも二回りも大きい。そんなバケモノが緑の瞳から閃光をほとぼらしらせる。大きな口の中からは大きな砲塔が一基見える。それだけではなく、大きな歯が数本付いていた。しかし、その歯からは今まで戦ってくれていた仲間たちの血がびっしりとこびりついていた。

 

 そのイ級がもう目前と近づいてくる。ユージンは頭を抱え、これから待ち受ける自分の未来を想像し、必死に耐えるように震えあがっていた。ル級は目の前の敵がイ級に捕食される様を、心待ちにしていた。

 ――だが、この絶望的な状況下でたった一人、諦めていなかった人物がいた。

 ――オルガだ。

 

 (俺はアイツに言ってねぇ――)

 

 今日までの間、たった一人会いたいと願い続けた艦娘。

 

 『睦月型10番艦 三日月』

 

 彼女の名前にある『三日月』という名は相棒であり、弟分であり、誰よりも信頼できるやつ。そんなミカの名前を持った船があるって聞いたときは、正直心が躍った。

 そのために出来ることは尽くしてきた。そして今日、ようやく会えた。

 

 (俺は決めたんだ――)

 

 そいつが俺の知っているミカでないことは百も承知だ。けど俺はあいつと約束したんだ。あの日に――

 

 『――ねぇ、次はどうすればいい、オルガ?』

 

 『――決まってんだろ』

 

 『――?』

 

 『いくんだよ』

 

 『どこに?』

 

 『ここじゃない、どっか。俺たちの――』

 

 ――本当の居場所に。

 

 (睦月型10番艦『三日月』、お前を連れてってやるからよ。だからよ……死ぬわけにはいかねぇんだ!)

 

 「だろ? ――ミカァァァァ!!」

 

 オルガはかつての相棒に向けて言い放つ。それはこの場に存在するはずのない、彼にとって相棒であった三日月・オーガスに向けて送る。それこそが、オルガがこの世界に来て決意したことであり、約束を守れなかった自分がせめて出来る唯一の方法だと信じて。

 

 ――だからこそ信じられなかった。目の前に起こった光景が――

 

 ――ドコオォォォォォン!!

 轟音の中、オルガは目の前の光景から目が離せないでいた。

 それはかつて、鉄華団を立ち上げる直前に起こったギャラルホルンの襲撃の際、目の当たりにした光景にそっくりだったからだ。

 

 「――!? ――!?」

 

 「――ふぅ」

 

 オルガの船に飛びかかろうとしたイ級の目の前に、突如黒い鉄の塊がイ級の顔面を襲う。イ級はその黒い塊の存在に気付けなかったからか、砲塔の照準を合わせることも出来ず、黒い物体に叩き潰されてしまう。イ級の先端部分はメイスと呼ばれる武器が装甲ごと抉り潰されていた。メイスによる攻撃で絶命すると、イ級は先程まで光らせていた眼光を静かに沈黙させる。

 

 沈黙したイ級の顔面からメイスを取り出すと、メイスを振りかぶった人物であろう背中を見て思った。

 ――バルバトス?

 いや、バルバトスなわけがない。だけどこの背中を知っている。

 バルバトスの時に見た大きな背中の姿とは真逆に近い。もっと小さな背中だ。だが、そんな小さな背中からは力強く感じさせる。

 

 「お前、まさか――」

 

 「ねぇ。次はどうすればいい、オルガ?」

 

 ――ミカなのか。そう言葉を続けて言おうとすると、目の前の少女はこちらに振り向くことなく訊いてくる。オルガは思わず息をのんだ。信じられるはずもなかった。

 目の前の少女が相棒のミカだなんて。

 

 「教えてくれオルガ。俺はこれから何をしたらいい?」

 

 振り返る少女。その少女から似つかわしくない言葉が聞こえる。だが、姿形はどうであれ、目の前の少女からはミカの雰囲気を纏っていた。

 

 「オルガの言う事なら俺やるよ。それがオルガの決めたことなら」

 

 「――たく、お前っていう奴は」

 

 (……変わらねぇな、お前は)

 

 黒いセーラー服を纏った少女は不敵な笑みを浮かべると、オルガもそれに釣られて笑みをこぼす。

 

 「――なぁ、ミカ」

 

 「ん?」

 

 「お前しか頼めねえとっておきの仕事がある。頼めるか?」

 

 「あぁ、もちろん」

 

 「なら――まずはあいつらをやっちまえミカ!」

 

 「りょーかい!!」

 

 オルガの言葉に三日月は鉄メイスを握り締めると、残りのイ級に向かって発進するのであった。

 




戦闘描写がものすごく難しかったですけど楽しかったです。
あと、ミカの口調と雰囲気が難しすぎて似てなかったらすみません(汗)
三日月ちゃんの恰好したミカのセリフを想像するのが最近楽しかったりします、
では、また。
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