鉄血の三日月   作:止まるんじゃねぇぞ…

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これでとりあえず第一章は終了しました。
次から新しい章を書いていきます。


第六話

 第一章「序章」第六話

 

 「うそだろ……あれが三日月なのかよ」

 

 ユージンはつい先ほど行われていたオルガのやり取りを見て信じられずにいた。けれど、あのやり取りはかつて二人がしていたのを見たことがあった。だからこそ確信する。あれは、三日月・オーガスなのだと。

 

 「ミカがイ級の相手を引き受けている間に、俺たちは生き残った奴を回収して離脱すんぞ!」

 

 「三日月を放っておいていいのかよ!?」

 

 「あいつなら大丈夫だ! だから今は急ぐぞ!!」

 

 「お、おう!」

 

 オルガの言葉にユージンは船を出そうとした時、船の後方部からガシッと何かが掴まっているのに気づく。

 

 「ぶはぁ!? はぁ……はぁ……」

 

 「お前は――昭弘!? 生きてたのか!?」

 

 「あ、あぁ……悪い。手を貸してくれないか?」

 

 「お、おう!!」

 

 オルガは昭弘の手を取るとボートに上がらせ座らせる。

 

 「昭弘お前……てっきり死んだんじゃないかってよ」

 

 「あぁ、俺もそう思った」

 

 なんでも昭弘が言うには、船が宙に舞う前に同じ船に乗っていた奴が突き飛ばしてくれたおかげで、死を免れたらしい。爆発したところから離れていたのも運が良かったとしか言えなかった。

 

 「他のイ級に見つからず潜水して近くまで来たんだが、さすがに何度も潜水してお前らに近づくのは無理があったかもな」

 

 「いや、よく見つからずに来れたな」

 

 「運が良かっただけだ。……それより、さっきの奴は」

 

 「あぁ、ミカが助けに来てくれたんだ」

 

 「あれが、三日月?」

 

 昭弘は信じられないといった表情を浮かべていた。最後の記憶に残った三日月の姿は男だったはず。しかし、あれはどう見ても昭弘の知っていた三日月ではないかった。

 

 「今の俺にもうまく説明出来ねえ。状況が状況なせいで整理している暇はねぇ。けどな、あいつはやるって言ったんだ。俺はミカを信じるだけだ」

 

 「――あぁ、そうだな」

 

 オルガの言葉に昭弘も頷く。オルガは昭弘たちと共に今も救援を待っている彼等のもとへと急ぐのであった。

 

 

 ♢

 

 

 「りょーかい!!」

 

 オルガの命令通り三日月は前方に存在する二体のイ級に向かって突進する。イ級の内一体が三日月に気付くと、口の中に装備されている砲塔を三日月に向けて標準を合わせる。狙いを定め真正面から向かってくる三日月に発射しようとするが――不発。正確には真正面から来た三日月が持っていた鉄メイスを投擲ところ、イ級の砲塔に刺さり爆発した。

 

 もう一体のイ級が三日月に攻撃をしようとしたが、すでに姿がなく左右を確認しているところ、三日月は倒したイ級の砲塔から鉄メイスを抜き、もう一体のイ級の側部に回り込み鉄メイスを打ち込む。ガンッと鈍い音を立てると次第に硬い装甲を砕き、肉を貫く。

 三日月は続けさまに二発、三発と打ち込むと、イ級は悲鳴をあげると力なく沈んでいった。

 

 「……ふぅ」

 

 一息。三日月は息を吐いた。海での戦いに三日月は多少不安であったが、バルバトスの戦いの経験が活きたことに少しホッとする。しかし、バルバトスのように機械を動かしているのではなく、自身の身体を動かすとなると話が違ってくる。

 それは肉体による疲労。先ほどのイ級の戦闘で鉄メイスを振った時に気付いた。こんなにもメイスが重いんだと。一回、また一回と振った時に伝わる衝撃。その衝撃によって自身が振り回されないよう踏ん張らなければいけない。踏ん張るためにはかなり体力を消費する。

 

 三日月はこの世界に来てから一日も経っていない。そして、生まれてきたばかりの三日月にとっての初めての戦闘。それに、三日月・オーガスにとって平気と思っていても『睦月型10番艦三日月』にとって、すでに限界であった。

 

 (……どうしよう)

 

 腕の震えが止まらない。仮に振れてもあと数回が限度だ。三日月はチラリと横へと視線を向ける。視線の先にいた深海棲艦ル級はあからさまに怒った様子でこちらを見ている。

 

 「けど、俺はオルガに言われたんだ。あんたらをやっちまえってさ!」

 

 三日月はル級の周囲を反時計回りに回り始める。ル級も三日月の動きに合わせて砲撃を開始する。ル級の両手に展開されている砲塔合計10基が三日月に向けて発射される。

 イ級とは比べ物にならず10基による放射の雨は、今の三日月にとって分がない。体力ももう持ちそうにない。そう思い、三日月は鉄メイスで自身の周りを旋回しながらメイスの先端部分を水に漬けた。

 

 「――ナメルナァァァァァ!!」

 

 ル級のとも思われる声が辺りを響かせる。水しぶきごときに見失うわけがない。あまりにも古典な方法で馬鹿にされているとしか思えない作戦にル級は怒りをあらわにする。両手の全砲塔を前方へと連射する。しかし、その水しぶきの中にすでに三日月の姿はない。

 

 「――マサカ!?」

 

 「おおおぉぉぉぉ!!」

 

 三日月は水面に触れるかどうかのギリギリのラインからル級に滑り込む。下方から放たれる鉄メイスがル級の心臓に向けて放たれる。

 

 ガキィッン!!

 

 「グウゥゥゥゥゥゥ!?」

 

 間一髪、両手の艤装を重ね合わせ盾を作るようにして鉄メイスによる攻撃を防ぎきる。すると三日月はメイスの柄の部分についていたボタンを押すと、メイスの先端部から一本の杭がル級の艤装を貫き心臓部へと深々と突き刺さった。

 

 「……グ、フッ」

 

 「はぁ……はぁ……」

 

 三日月は最後の力を込めて、ル級に鉄メイスで突き刺さった心臓部をさらに押し込む。ル級の目から光が消えると後ろ向きに倒れ込みながら、海の底へと沈んでいく。三日月はル級に刺した鉄メイスを離さないよう手を握りしめた。ル級が沈んだのを確認すると、三日月はゆっくりと立ち上がり帰還しようと試みるが――

 

 「……あれ?」

 

 身体が上手く動かない。それだけじゃない。推進作用を持つ足底部の機能が完全に止まっている。歩いてでも戻ろうと試みるが一向に体が言う事を利かないでいた。

 

 (俺は――まだ!)

 

 「まだだ……まだ。――あっ?」

 

 水面に膝を着け波を立たせる。三日月はガクッと膝の力が抜け水面に倒れ込むと意識を失うのであった。

 

 

 ♢

 

 

 「――ああああああ!?」

 

 「うわっ!? びっくりさせないでよ、おやっさん!」

 

 「明石やべぇ! 三日月の艤装に燃料補給するの忘れた……」

 

 「うぇ!? どうするんですか!!」

 

 おやっさんこと、ナディ・雪之丞・カッサパは自身の失態を明石に告発すると驚愕の表情を浮かべた。

 

 この世界において艦娘の艤装の燃料切れとは、すなわち活動停止を意味する。当然だ。例え、車のライトやエンジンに異常が見られなくとも、車のエンジンを動かすための燃料。つまりはガソリンが切れていたら動くはずもない。

 

 艤装に接続していなければ起きることなどないが接続していた場合、燃料切れを起こせば艤装によるシステムの影響で活動停止になる。これは、燃料切れによって艦娘が沈まぬ代わりに活動停止になることで水上に浮上できるシステムになっている。

 

 だが、このシステムには少し問題があった。

 それは『建造』と『適合者』による活動停止の意味合いが違うからだ。

 『適合者』は仮に活動停止しても、それはあくまで艤装が動かなくなるだけで本人に影響はない。何故なら、三日月のような『適合者』船の核となる動力源が艤装に組み込まれており、艤装と直接つなぐためのケーブルも存在しないからである。

 故に『適合者』は『建造』と違い艤装による兵装を扱う際、『建造』のように感覚的に動かすことが出来ず、ズレを生じやすい。

 

 『建造』は『適合者』とは違い船の核となる動力源がすでに体内に存在しているおかげで、艤装に組み込まれたシステムをケーブルを用いることで、脳に直接送り込めるようになる。

 そのおかげで三日月は、まだ使用したこともない艤装の運用や海上での推進の仕方、武器の使用方法が理解できた。だが、『適合者』とは違って艤装と直接繋いでいるせいか、艤装の活動停止=自身の活動停止にもなりうるのであった。ただ、活動停止とは言っても意識を失うと言った方がよいのかもしれない。

 

 だからこそ雪之丞は自分のしたことに頭を抱え込むのでった。

 

 「どうしよう……」

 

 「どうしようじゃないですよ! これで『三日月』ちゃん死んじゃったらどうしてくれるんですか!?」

 

 「仕方ねえだろ!? 艤装のセッティングで一杯一杯でよぉ。武器の弾薬はちゃんと忘れずにしたんだが」

 

 「肝心の燃料を補給し忘れたら、敵に当てて下さいって言ってるようなものでしょうが!!」

 

 「あーやべぇ、マジでやべぇ。艤装の残りの燃料どんくらいだったかな……」

 

 雪之丞と明石のやり取りを傍で見ていた大淀は、二人を倉庫の奥へと連れて行くと怒涛のごとく説教を受けていたことは誰も知る由もなかった。

 

 




わざわざ足を運んでいただいて皆様には感謝しています。
評価も付けて頂いたり、感想を送っていただけて、これからの励みになりますので、これからも精進していけたらいいなーと思います。

焦らず、無理せず、毎日コツコツを心掛けていけたら幸いです。

ありがとうございました。
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