「うおっ!?」
「…っ!!!びっ…びっくりした!!!」
まさか扉を開けた先で他人の驚く声を聞くなんて思いもしなくて、飛び上がるほど驚いてしまった。だってまさかトイレから出た瞬間とか。ないわー。後ろで水洗トイレがまだ流れてるんですけどー。やめてー。
「それはコッチのセリフだぜ、お嬢ちゃん!…あ、タカミネってあんたのことか?」
「ああ、はい、高嶺りんです。サなんとか号の方ですよね?」
「サウザンドサニー号だ。間違えんなよ」
「失礼しました。今日は…やっぱり同じ人はいないのか…」
いやまあどうせトイレ入るのにマリモさんに渡す用の酒とか持ってなかったから別に全然いいんだけど。ふむふむ、なるほど。
「ん?なんだ?」
「いえ、なんとなくこの現象の法則が分かってきまして。いつも違う扉からだとか、同じ人には会えないとか、扉を完全に閉めたら切り替わるとか、日時は不明だけど必ず私が一人の時に起きるとか」
「ほー。なるほどなァ。そういやルフィ、ウソップ、チョッパーの3人が居た以外はそっちと同じ法則だな」
「え、誰ですって?」
「うちの船長と狙撃手と船医だ。麦わら帽子のやつと鼻の長いやつ、それからトナカイだな」
「トナカイ?は?トナカイ?」
「おう。しかも船医だ!」
この人は一体何を言っているんだ???
「……?…??………え、はぁ?…あー…ドクロが音楽家だからトナカイが船医もありえる…?…ああ、あの犬みたいなのはトナカイだったのか…?」
「でもって俺は船大工だぜ!!!」
なにそれ???
「船大工?船に乗ってるのにまだ船作るんですか?」
「いや、船の修理や改造なんかだな」
「なるほど、餅は餅屋ってことですか。構成メンバーも考えられてますねぇ」
「だろ?」
そろそろこれが私の夢まぼろしじゃないとは分かりつつ、なんとなく現実を直視するには難しすぎる案件なのでスルーしてた。うーん、まともに考えても無駄っぽいし。
「ところでお嬢ちゃんの後ろにあるのはなんだ?」
「あー…トイレです」
「ほう?ちょいと見せてくれねぇか?」
「え…変態?」
「バッカ!褒めんなよ!」
「ガチの変態さんか!!!嫌ですよ!うちのトイレに何するつもりですか!?」
「心配すんな、壊しゃしねェよ。アンタの所のトイレがどんな造りなのか見るだけさ」
「ああ、そういう…。じゃあどうぞ」
「悪いな。…貯水してレバーを引くことで水を流すってのは変わらねェか。このボタンは何だ?」
「ああ、水量を変えたり便座を温めたりできるんです。あとお尻を洗ったりとか」
「尻を洗う!?」
「私も使ったことがないんですけど、ここからノズルが出てきて、水鉄砲みたいに水が飛び出てくるんです。大便の後とかに使う人もいますね」
「はー…そうか、なるほどな!ちょいと試しても構わねェか?」
「ああ、じゃあ何か水を受ける物とかあります?」
「これでいいだろ。もう処分する木端だ」
「じゃあどうぞー」
「おう!」
悪いな!と超笑顔で一人暮らし用の狭いトイレに巨体を捻って入る変態……やだ、なんか悪夢みたい…。
「……おお…おお!!!うおお!!!なるほど、距離や水圧も加減されてんのか!」
外人さんがウォシュレットで感動するって本当だったんだー。
「見て分かるんですねぇ…」
「当たり前だ。…いやあ、なかなかいいもん見せてもらったぜ!ありがとよ!」
「トイレでそんなこと言ってもらえると思いませんでした。どういたしまして。じゃあ私はそろそろ帰ります。あ、そうだ、緑の髪の人にお酒を渡すって言ってたんですけど、好みのお酒とか聞くの忘れてて。ご存知ですか?」
「ゾロの好みか…。辛口で旨味のある米から作った酒とか好きだと思うぜ」
「じゃあ日本酒でいけますね。了解です!あ、お兄さんはお酒とか好きです?」
「おう。だが俺はコーラの方が好みだな」
「コーラですか!へー。じゃあ持って来れそうなら一緒に持ってきます」
「ありがとよ!じゃあ気をつけて帰れよ」
「あはは、ありがとうございます。さようならー」