クローゼットを開けると女の子が男に襲われてた。突然のことに頭がついていかないままだったけど、一瞬目があったその女の子が助けを求める目をしていたから、私は手から下げていた袋から酒瓶を取り、大きく振りかぶった。
「で、りゃああっ!!!」
「っ…がっ…!」
「はぁ…はぁ……だ、大丈夫…!?」
「ええ…!ありがとう、助かったわ…」
「よかった……とりあえず、こっち来て、隠れよう」
女の子の手を引っ張って、私の部屋に連れ込んだ。あ、土足…まあいっか。
「…あなた、タカミネ=リン?」
「うん。あなたはサウザンドサニー号の人だよね。ってことはこの人も!?」
「違う違う。たぶん外でのドンパチに紛れて来た侵入者よ」
「そっか、よかった…いや、良くない!え、どうしよう、外に放り出す?それともあなたがこっち来る?」
「放り出すことにするわ。ちょっと手伝ってもらってもいい?」
「うん。よいしょ…くっそ重いなこの人…」
「よっ、と。…あ、サンジくーん!コイツ侵入者なんだけどどっか捨てといてくれない?」
「はァいナミさん!喜んでー!!!…えっ、なんて素敵なお姉さま!!!」
金髪の男性がくるくる踊りながら近寄ってきた。おお、すごい身軽。てか素敵なお姉さまってもしかして私?やだー、照れるー。
「サンジくん、彼女がタカミネ=リンって人らしいわ。片付けが終わったらルフィたちも呼んでおいてくれない?」
「もっちろんですー!!!素敵なお姉さま、また後ほどお話しましょう~!!!」
気絶した人の足を掴んで軽々と引きずりつつ、サンジくんとやらは走っていった。見かけによらずワイルドだなぁ。
「なんか…インパクトの強い人だなぁ…」
「あははっ!確かにそうよねぇ!ね、改めてお礼を言わせて。あたしはナミ、この船の航海士なの」
「ああ、ご丁寧にどうも。高嶺りんです。職業はOLです」
「OL?」
「小さな会社で経理とか事務作業をしてます。…ってそこ怪我してる!」
ナミちゃんとやらの手の甲に小さな傷ができていた。血が滲んで痛そうだ。
「え?ああ、平気平気!これぐらいしょっちゅうだし」
「いやいや、ダメだって!ちょっと待ってて、救急箱取ってくるから!」
「…へぇ、ここがリンの家?」
「うん、そう。あ、こっちで手の傷口を洗って。んで濡れたままでいいからこっちに来て」
「うん」
土足だと気付いたのか、靴を脱いで向こう側に投げた後、ナミちゃんは洗面台で手を洗っていた。その間に消毒液と絆創膏を用意した。あんまり怪我することなんてなかったから、中身はたっぷり残ってるし、期限も……あっ、そろそろ切れそうだわ。気付いてよかった。また今度新調しとこう。
「ごめんね、ちょっと染みるよ」
「平気。わざわざありがとう」
「ううん。……あっ、そういえばそっちって船医がいるんだっけ?勝手なことしちゃったかな…。なんならちゃんとプロの人にやり直してもらってね」
「ありがと。あなたいい人ね」
「いやいや、普通だよ」
「って…あーっ!ルフィの帽子!こんな所に!!!」
「え、帽子?ああ、これってそっちのだった?」
「そうよ!うちの船長の帽子なの!見つからないと思ったらこんな所にあったなんて!」
嬉しそうにタンスの上に置き去りにしてた麦わら帽子を手に取っていた。うんうん、持ち主の所に戻りそうでよかったよかった。
「あー、なんかごめんね。いつの間にか部屋にあったから、ついつい置きっ放しにしてて」
「ううん、うちのヤツも何も言わなかったんだろうし、仕方ないわよ」
「そう言ってもらえるとありがたいや」
「んナミすゎあああんっ!!!お姉さまぁ~ぁっ!!!」
「あ、サンジくんだ。じゃあ一緒に行きましょ」
「うん。あ、そうだお酒!」
「酒がどうしたの?」
「緑の髪の人にお酒渡すって言ってたんだけど、さっき割っちゃったから。ちょっと台所にあるやつを持ってくるね」
「分かったわ。じゃあ先に行ってるわね」
「うん。って、ああっ!」
外に出て扉を閉める。それは私もそうだけど、彼女にとっても普通のことで、何気ないことだったんだろう。でも、私たちの場合、閉めてしまうともう繋がらない。駆け寄ってクローゼットを大きく開け放ったけれど、もう手遅れだった。
「またお酒渡せなかったや…」
ナミちゃんを助けるために仕方がなかったし、全然そのことは後悔していない。
でも、私はいつまで部屋の中で酒瓶を担いでいればいいんだろうか。
あとコーラも。
ナミちゃんにも悪気がなかっただろうし仕方がないとはいえ、大きなため息が溢れてしまった。