麦わらの一味と不思議な一週間【完】   作:シーシャ

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7.ベランダのガラス戸 (完)

 

雨が続いていたから久しぶりに外に洗濯物を干せる。しかも休日に。ああ幸せ!

 

「今日も元気だいい天気~♪洗濯物がよく乾くぅおおおお!!!?」

 

ベランダへのガラス戸を開けた瞬間、目の前に長い鼻の男の子が現れた。なんで!?今どこにいたの!?

 

「うおっ!?誰だお前……あ、あんたタカミネ=リンか」

 

あっ、よかった、ベランダに潜んでた不審者とかじゃなかった…。きっとサニー号の人だろう。

 

「え、うん、そうだけど…あ、ちょうどいいところに!コレコレ、先に渡しとく!」

 

「ん?何だこりゃ」

 

「お酒とコーラ。なんかリクエストされたから」

 

「そりゃわざわざすまねェな!そういやゾロとフランキーがアンタに会いたがってたぜ。っていうか他のやつらもだけどよ」

 

「あらまー。ありがたいこっちゃ。でもこの部屋も…他に扉ないし無理だねぇ」

 

一回使った扉が使えないって法則っぽいし、一つの扉を開けている間に他の扉を開けても無理っぽいし。男の子のいる部屋にも他の部屋へと通じる扉はなさそうだから、きっと無理だろうなぁ。

 

「ああ、そういや扉と扉で繋がるんだったか。コントロールとかできねェのか?」

 

「無理無理。この間なんかトイレ出た途端にフランキーさんとご対面だったし。恥ずか死ぬわ」

 

「あー…それでフランキーのやつがトイレの改造とか始めてたのか…」

 

「船大工ってなんでもできるんだねぇ…」

 

何でも屋さんだ。船大工っていうより日曜大工のお父さん?

 

「そんで、その持ってるやつは何なんだ?」

 

「洗濯物。ベランダで干そうと思ってガラス戸開けたら開通しちゃったからさぁ」

 

「ん?そのガラス戸ってのはドアノブ捻っての開閉式か?」

 

「ううん、スライド式」

 

「で、ガラスってことは向こう側が透けてるわけだろ?今は俺の部屋が見えるわけだよな?」

 

「うん?……え、いや、ベランダあるんだけど。え、何で?え?はァ!?」

 

「おっ、落ち着けって!」

 

スライドして外に通じるはずの方は男の子の部屋に通じていて、ガラス戸が二枚重なっている方からは外がちゃんと見えている。なにそれ?なにが起きてるの???

 

「ちょっとそっち行っても構わねえか?」

 

「あ、どうぞ。あ、靴脱いでね」

 

「おう。……本当だな、確かにガラスの向こうは外の風景だ。俺の腕も透けて見えねェし…一体どうなってんだ…?」

 

「そういえば法則があってね。毎回違う扉からで同じ人に会わないとか、私が一人の時だとか、扉閉めると途切れちゃうとか」

 

「確かにサニー号のあちこちでお前が出たって聞くけど、同じ部屋ってのはなかったな…。でもよ、俺はアンタと会うのは2回目だぜ?」

 

「えっ、そうなの!?」

 

「部屋で俺とルフィとチョッパーとでトランプしてた時に…」

 

「ああ!」

 

そういやいたわ!そろっと本人に気付かれないように横に回ると、たしかに見覚えのある長い鼻が!

 

「…ああっ!そういえば鼻の長い子がいた!」

 

「おい!わざわざ横から確認してかよ!!!」

 

バレてた。

 

「ははーん…じゃあ毎回別の人って線は消えたか…」

 

「もう全員と会ってるからなぁ。2巡目が始まったとかじゃねえのか?」

 

「それもあるかも…。でもそれを言うなら私の家の扉とかもうないから、これっきりで終了になるかもよ?」

 

「えっ、マジかよ!ああー…あいつらもガッカリするだろうなぁ。……あ、でもよ、このガラス戸みてェに扉っぽくねェ扉からって可能性もあるんじゃねえか?ホラ、例えば食器棚とか!」

 

「まっさかー!それこそナイナイ!」

 

むしろそんなところが通じて、手だけとか目だけとか見えたら、私の心臓が死ぬ。ホラーは苦手なんだよ…。

 

「いやいやいや、万が一があるかもしれねェじゃねえか」

 

「うーん…じゃあ万が一があったら、ちょくちょくお世話になったって船長さんにご挨拶したいなぁ」

 

「そりゃいいな。ルフィもアンタに会いたがってたし、きっと喜ぶぜ」

 

「あはは。じゃあ、また次があったらよろしくねー」

 

「おう。こいつもありがとな!」

 

「いえいえ。マリ…緑の髪の人とフランキーさんとナミちゃんとサンジくんと…まあ、みなさんによろしくねー!」

 

かくして、私の奇妙な一週間は幕を下ろした。何しろ一人暮らしの小さなアパートには、もう扉がないからね。麦わら帽子の船長さんや、トナカイの船医さんたちともお話ししてみたかったなぁ、なんて思ってたらまさかの2巡目が始まったりするんだけど。それはまた別のお話。

 


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