陰陽師の魔女   作:もんごめりあん☆紗波

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◇ハリポタ世界に憧れ、ホグワーツ入学を夢見た事はあります。ただ、毎日同じ部屋に友達(もしかすると友達になれないかもしれない)がいるという状況に馴染めそうにない。以前2週間ほど仕事で寮生活したけどマジ無理ってなった◇


女の子たち

「あら、あなた今までどこにいたの?」

 

彩芽が自分のトランクが置かれたベッドに辿り着くと、隣のベッドで荷を解いていた少女がそう声をかけてきた。

彩芽はそれに、いつも通りの無表情で返す。

 

「後ろの方に」

 

栗色のふわふわした長い髪の少女は、彩芽のその言葉にほんの少し眉をひそめる。

 

「そう、ならいいけど。1年生はみんな前の方にいたから、少し気になってたの。あなた、合言葉ちゃんと聞いた?」

 

少女の言葉に、彩芽は首を振る。

 

「やっぱり」

 

合言葉は『カプート ドラコニス』よと言って、少女は少しばかり大きめの前歯をみせて笑った。

 

「私の名前は……」

 

「ハーマイオニー・グレンジャー」

 

少女が名乗る前に彩芽が遮って言う。

驚いた顔をしたハーマイオニーに、彩芽は組分けで聞いた……とタネを明かした。

 

「待って、あなた今年の新入生全員の名前を覚えてるの?」

 

彩芽はそれにまさか、と肩をすくめる。

もっとも、傍目にはほんの少し肩が揺れた程度にしか見えなかっただろうが。

 

「ハーマイオニーだけ。……私も読んだの、ホグワーツの歴史」

 

あの時は誰が言ったか分からなかった彩芽だが、組分け帽の時にハーマイオニーが返事をした声で気付いていた。

ハーマイオニーは頬を赤くして、自分と同じ様に『予習』をしてきた人物がいた事に嬉しくて笑みをこぼした。

 

「私もあなたの名前を知ってるわ、アヤメ。だって、あなたってばとっても目立ってたもの!」

 

クスクスと笑うハーマイオニーに釣られそうになり、彩芽は慌てて口元を引き締める。

 

「ただいま彩芽、上手くバケツに突っ込ませたぜ。ところで……今はもう笑ってもいいんじゃなかったのか?」

 

するり、と音もなく現れ、彩芽の首に巻きつく氷炎。

彩芽がそれに答える前に、ハーマイオニーがわぁと声を上げた。

 

「それ、あなたのペット?とっても可愛いわね!」

 

ふさふさと白く滑らかな毛並みの氷炎に、ハーマイオニーはそう言って手を伸ばす。

 

「撫でられんのあんま好きじゃないんだけど」

 

氷炎が大人しく撫でられながらも愚痴をこぼすのを聞きながら、彩芽はハーマイオニーに「厳密にはペットじゃないけど、私の」と答える。

 

「ペットじゃないの?……うーん、よく分からないけど、確かふくろうと猫とヒキガエル以外は、認められてなかったんじゃないかしら?」

 

入学許可証の2枚目を思い出しながら言うハーマイオニーに、彩芽はコクリと頷いた。

 

「大丈夫、校長の許可はあるから」

 

ハーマイオニーはダンブルドアの許可があるなら安心ねと言って、小さな欠伸を1つ漏らす。

 

「あらやだ、ごめんなさい」

 

恥ずかしそうにするハーマイオニーに、彩芽は首を振って辺りを見る。

部屋の中に深紅のカーテンがかかった天蓋付きベッドは4つ。

そのうち2つはすでにカーテンを閉めている。

 

「今日はみんな疲れてるから。……また明日、ゆっくり話しましょう?」

 

「ええ、そうね」

 

頷いたハーマイオニーに、彩芽はかなり神経を集中して笑顔をみせた。

 

「おやすみ、ハーマイオニー」

 

「……おやすみ、アヤメ」

 

頬を染めて、ハーマイオニーは「あなたもっと笑った方がいいわ」と一言告げてベッドに入る。

彩芽はそれを見届けて、自分もベッドに入りカーテンを閉めた。

 

「良かったじゃん、友達できて」

 

パジャマに着替える彩芽を見ながら、氷炎が呟く。

彩芽はそれに、しーっと人差し指を唇に当てた。

 

「言葉が私にしか通じなくても、泣き声は聞こえてるのよ。黙って寝なさい」

 

言いながら、彩芽はベットから降りる。

 

「……どこ行くんだよ」

 

「歯磨き」

 

囁くように聞いた氷炎に、彩芽は短く答えてカーテンの向こうへ消えた。

足音すら立てずに気配を消して移動する彩芽に、氷炎は他の人間には「きゅー」としか聞こえない呟きを漏らす。

 

「食事らしい食事もしてないのに、歯磨きねぇ」

 

自分の食事の心配もしながら、氷炎は目を瞑る。

主人の彩芽同様、異国の土地は、未だに慣れなかった。

 

 

 

 

翌朝、昨日早く寝たおかげか、同室の女の子たちは全員早起きだった。

いつも通り早朝に起床した彩芽は、身支度を整えた後、静かにベッドの上で待っていた。

 

ホグワーツは石造りの城。

壁も床も石なので冬は随分と冷えそうだが、グリフィンドールのカラーである赤と金が使われている絨毯やカーテンは、見た目には暖かそうだ。

恐らく4つの寮内は、それぞれのカラーで統一されているのだろう。

グリフィンドールは赤と金。

スリザリンは緑と銀。

ハッフルパフは山吹色と黒。

レイブンクローは青と銅。

 

スネイプはスリザリンの出身だからか、深い緑と銀の組み合わせを好んでいた。

暖色系のグリフィンドールに対し、レイブンクローの寒色系の寮は、夏場は涼しげでいいかもしれない。

考えながら、彩芽は目だけで部屋の中を見回す。

 

女子と男子の寮は完全に分かれており、その中でさらに、数人単位で部屋が振り分けられていた。

今、彩芽が座っているベッドを含め、この部屋には4つのベッドがある。

ベッドはカーテンで仕切れるようになっており、今彩芽のベッド以外は閉まっていた。

スネイプと過ごして少しは慣れたかと思ったが、共同生活はまだ少し気が張る。

今は氷炎がいるが、その内1人になる。

その時、他人が数人もいる部屋で、果たして無防備に眠れるだろうか?

 

彩芽が考えている間に、ドアから一番遠いベッドの気配が強くなった。

目が覚めたらしい。

しばらくごそごそと動いた後、シャッとカーテンが開かれる。

 

「あっ……」

 

目が合った瞬間、相手は驚いた顔をしたが、すぐに笑みを浮かべた。

 

「ごめんなさい、まさか起きてるとは思わなくて。昨日は挨拶出来なかったわね、私、パーバティ・パチル」

 

額にかかった黒髪を後ろに流してそう名乗った彼女は、かなり可愛い容姿をしていた。

黒髪、黒目というのは同じだが、パーバティはどちらかと言えば中東系の顔立ちをしている。

自分も名乗りながらそう考えていた彩芽の耳に、またカーテンの開かれる音が聞こえた。

 

「あら、もう起きてたのね」

 

ハーマイオニーが彩芽とパーバティに向かって笑いかける。

 

「ラベンダーは?まだ寝てるの?」

 

ハーマイオニーの問いに、パーバティが頷いた。

 

「多分ね。彼女、朝は少し弱いって昨日言ってたわ」

 

自分以外のルームメイトが打ち解けている事に少し驚く彩芽。

昨日双子に連れられている間に、随分と出遅れてしまったようだ。

最も、だからといって焦る彩芽でもないが。

 

パーバティが起こした方がいいかしら、と呟いたと同時に、残るベッドからもぞもぞと動く音がした。

 

「みんな、もう起きたのぉ?」

 

寝ぼけ眼でカーテンを開いた女の子は、彩芽を見て「わぉ!」と声を上げた。

 

「あなた、昨日の組み分けで見たわ!同室だったのね!」

 

いきなりパッチリした目でそう言われ、彩芽は瞬きをする。

背後の氷炎が背中をツンツンと押して、ようやく口を開けた。

 

「彩芽・水無月。よろしく」

 

ようやくそう言えば、ラベンダーと呼ばれた女の子は屈託ない笑顔を見せた。

 

「私はラベンダー・ブラウン。こちらこそよろしくね!」

 

 

 

 

その後、4人で話をしながら身支度を整える。

会話の内容は他愛もない事だったが、何が面白いのかみんなクスクス笑いっぱなしだった。

 

彩芽はすでに支度が終わっていたため、ベッドに座って眺めているだけだったが、彼女たちが随分と時間をかけることにまず驚いた。

4人の中で1番時間がかかるのが、1番朝の弱いラベンダーだった。

パーバティが、すでに綺麗な黒髪を丹念に丹念に梳くのも不思議だったが、ラベンダーが髪をアップにしては崩し、横に結んでは崩すのを繰り返す姿は、もはや理解不能だった。

しかも結う度に誰かに意見を求め、褒められてもしばらくすると唸りながらまた結い直すのだ。

 

ある意味、彩芽も支度に時間はかかるほうだが、初めて見る女子の身支度というものに、彩芽は完全に呆気にとられていた。

……もちろん、顔には出さずにだが。

 

その点、ハーマイオニーは少し時間がかかった程度で身支度は終えたが、彼女の場合は鞄に教科書を詰め込む作業の方が長かった。

明らかに今日必要ではないものまで入れようとしている。

 

「ハーマイオニー?今日は魔法薬学の教科書はいらないはずでしょ?」

 

パーバティが見つけてそう言うと、ハーマイオニーは頷いた。

 

「ええ、でも、持ち歩いてないと不安なの。もしかしたら、別の教科で必要になるかもしれないし……」

 

そう言いながら次に手にしたのは、薬草学の教科書。

やはり今日は使わないものだ。

パーバティは呆れた顔でそれを見て、肩をすくめた。

 

「あなた、入る寮を間違えたんじゃないの?」

 

「いいえ、間違っていないわ。まあ……確かに少し、レイブンクローになる可能性はあったみたいだけど」

 

「私の姉妹は、レイブンクローに入ったわ。一卵性の双子だから、てっきり一緒の寮になると思ってたんだけど」

 

「パドマだっけ?昨日聞いたわ。でも、レイブンクロー生って、ちょっと頭が良いのを鼻にかけたところがありそうよね」

 

パーバティの言葉に、今度はお下げにして鏡と睨めっこしていたラベンダーが顔を上げて言った。

ハーマイオニーが少しムッとして、パーバティが眉をひそめた。

それでようやく失言に気付いたのか、お下げを解きながら「あくまで一般論としてよ?」と付け加えるラベンダー。

彼女に悪気はなく、本当についうっかり口を滑らせたようだ。

 

「……朝食の時間、始まるから行くわ」

 

気まずくなりそうな雰囲気をものともせず、彩芽はそう言って立ち上がった。

 

「待ってアヤメ、私も一緒に行くから」

 

何冊かの入りきらなかった本を戻し、鞄を掴むハーマイオニー。

 

「私はまだちょっと時間がかかりそう。先に言ってて」

 

「じゃあ、私はラベンダーと後から行くわね」

 

2人の言葉に頷いて、ハーマイオニーが行きましょうと彩芽の背を押す。

これで今後誰と行動するかが決まったな、と呟く氷炎に、彩芽は無言のまま首を傾げた。

 

 

 

氷炎の言う通り、気付くと広間やクラスで座る際にはハーマイオニーと一緒に座ることが当たり前の様な流れになっていた。

パーバティとラベンダーも一緒に座ることが多く、彩芽はそれが不思議で仕方がない。

別に嫌ではないが、何故常に一緒に行動するのか分からない。

氷炎はそんな彩芽に、思春期のガキってのはそういうもんなんだよと言った。

 

 

不思議ではあったが、ハーマイオニーと授業を受けるのは楽しい事だった。

レイブンクローになる可能性もあったというだけあって、彼女はとても博識だ。

祖母に習ってすでに実践したものが多い中、ハーマイオニーとは授業内容より1つ上の話が出来る。

 

スプラウトが教える薬草学は、城の裏にある温室で行われ、そこで魔法界で使う植物やきのこの育て方や効能などを勉強する。

すでに教科書を熟知しているハーマイオニーと彩芽は、先生がさり気なく説明に混ぜた教科書に載っていないちょっとした小ネタを完全に拾うことが出来た。

例えば、発光きのこは土の質によって光の色を変えるが、上手くすれば7色に発光させることが出来るとか、蜜サボテンの針にある毒は育て方によっては猛毒になる恐れもある、など。

 

闇の魔術に対する防衛術の授業では、クィレルがひどくどもりながら説明するため、お互いに確認し合いながら授業を受けることが出来た。

この授業は本当に曲者で、教室はにんにくの臭いで満たされ、教師はどもりつっかえ説明する。

集中して理解しろという方が無茶なようだが、授業内容は意外にしっかりしていた。

どもったりつっかえたりさえしなければ、クィレルの説明は教科書を要領良く要約し、初心者に分かりやすく噛み砕いたものに思えた。

 

水曜の真夜中に行われる天文学の授業は、彩芽にとって興味深いものだった。

というのも、陰陽道を習得する上で、星を読むというのは基礎中の基礎。

当然、彩芽も得意とする分野だが、西洋と東洋の違いが随所に表れていて面白い。

もしも魔法薬学がなければ、彩芽の好きな授業1位は天文学だったかもしれない。

 

反対に、最下位の授業は魔法史だ。

教科自体は好きなのだが、ビンズがひたすら教科書を読み上げるだけの授業はなんの意味も見いだせなかった。

せめて、ほんの少しでも間に雑学を入れてくれればいいのにと、彩芽は思わずにはいられなかった。

 

授業は大体2寮の合同となるため、数日もすれば各寮の同級生も大体把握できた。

寮ごとの特色はまだ入学したばかりだというのにすでに現れ始めている。

授業態度だけで言えば、グリフィンドール生は全体的に騒がしく、レイブンクローは真面目、ハッフルパフは目立たないといった具合だ。

自寮の天敵、スリザリン生との合同授業は、メインイベントとでも言いたいのか、週の最後に残されている。

水曜の天文学の授業の後、彩芽は明日はついに魔法薬学の授業だと気付いた。

 

「私、先輩に聞いたんだけど、魔法薬学の先生ってスリザリンの寮監らしいのよね」

 

いつもより少し遅めの就寝にも係わらず、ラベンダーは寝る前のお肌のケアを忘れない。

彼女が液体やクリームを顔に塗りたくる間、明かりを消すわけにもいかないため、彩芽たちも起きて待っている。

いつもならどこの寮の誰がかっこいいかという話題を振ってくるパーバティだが、今日は少し違った。

 

「ああ、セブルス・スネイプね。食事の時に見かけたけれど、あの人ってば酷い顔よね」

 

ラベンダーが容赦ない感想を述べると、パーバティも頷く。

 

「まあ、あまり見られた容姿ではないわね。けど、問題は中身よ。あの先生、すっごく意地悪で有名みたい。出身もスリザリンらしくて、すごく贔屓するみたいよ」

 

「でも、先生でしょう?あんまりそういう事言うのは良くないと思うわ」

 

ハーマイオニーがそう言えば、ラベンダーは「おぉお!」と声を上げた。

 

「ハーマイオニーってば優等生ぶって!あなただって、スネイプがイケメンだとは思ってないでしょう?」

 

「私は顔の話をしているわけじゃないわ」

 

かなりムッとした様子で、ハーマイオニーが反論する。

どうもこの2人は合わないようだと、彩芽はぼんやりと考えた。

 

「アヤメは?どう思う?」

 

パーバティが話を振って来て、彩芽は少し考えて口を開いた。

 

「私は、かっこいいと、思う」

 

「はぁ?どこが!」

 

ラベンダーが素っ頓狂な声を上げる。

入学前に見た、生徒のレポートを採点していた姿や、慣れた手つきで調合をする仕草。

それらを彩芽はかっこいい姿だと思ったのだが、当然パーバティたちには通じなかった。

 

「あなたって、悪趣味だわアヤメ。……もしかして眠いの?」

 

尋ねられて、彩芽は頷く。

正確には睡魔とは別の怠さに襲われているのだが、寝るのが一番な事に変わりはない。

 

「ほら、さっさと塗り終わりなさいよ」

 

パーバティがラベンダーを急かして、明かりを消す準備を始める。

おやすみを言い合って、ベッドに潜り込んだ彩芽の耳に、ラベンダーの声が聞こえた。

 

「まあでも、彩芽とスネイプって案外お似合いかもね。彩芽が陰気って事じゃなくって、ええとほら、美女と野獣的なあれでよ?」

 

ハーマイオニーの憤慨したような鼻息と、パーバティのため息を最後に、彩芽の意識は落ちて行った。

 

 




◇ハーマイオニー「美女と野獣の主役は私よ!」
女子のワイワイ、書いてて楽しかった。ラベンダーがとんだKYですまんかった◇
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