陰陽師の魔女   作:もんごめりあん☆紗波

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◇ハリポタ読んで、わあ、美味しそう~!って思ってからイギリスの家庭料理の本を図書館で借りた時のあの衝撃。なんか思ってたのと違う……◇


友人たちの心配

談話室のソファーの1つで、ハーマイオニーは涙ぐみながら彩芽が帰るのを待っていた。

授業から帰って来てすぐはラベンダーとパーバティが一緒にいたが、ラベンダーの「でもアヤメはスネイプの事かっこいいって言ってたし、むしろラッキーだったんじゃない?」という不用意な一言のせいでハーマイオニーの怒りを買って退場となった。

その後、同じく彩芽が気になっていたハリーとロンもハーマイオニーの側にいたが、ロンの「どうせなら本当に鍋をひっくり返してスネイプにぶっかけてやればよかったのに!」という彩芽への危険性を考えない発言のせいで、こちらもやはり退場となった。

 

事情を知らない上級生の何人かは何事かと声をかけるが、ハーマイオニーはただ首を振るだけで泣いてしまう。

これはそっとしておいた方がいいと周りが判断した頃、他の1年生から事情を聞いたらしいフレッドとジョージが、血相を変えて談話室に流れ込んできた。

 

『アヤメがスネイプに連れさらわれたって本当か?!』

 

見事なハモリで尋ねる双子に、ハーマイオニーは授業での事を話す。

 

「私、すぐに医務室に行ったの。けど、マダム・ポンフリーは医務室には来てないって……」

 

「何だって?」

 

「じゃあアヤメは……どこに行ったんだ?!」

 

双子の言葉に、ハーマイオニーは首を振る。

 

「これは一大事だぞ、兄弟」

 

「あぁ、問題はどこにいるかだ」

 

何としても救出しなくては、と双子が額を寄せた瞬間、談話室の扉が開き黒い塊が這い登ってきた。

 

「ごめんなさいハーマイオニー、……驚かせてしまって……」

 

言いながら、小走りにハーマイオニーの元へ駆け寄る彩芽。

ハーマイオニーはそれに、無言で抱きしめた。

 

「無事だったのかアヤメ!」

 

「何か嫌な事はされなかったか?!」

 

余りにきつく抱きしめてくるハーマイオニーに目を見開いて固まる彩芽。

更に同時に、両サイドから双子に詰め寄られ、彩芽は何事かと思いながら首を振る。

 

「大丈夫、何も……」

 

「あなたの大丈夫は信用できないわ!」

 

答えようとした彩芽の言葉を遮り、ハーマイオニーは体を離す。

 

「私、本当に心配したんだから!あなたが大鍋に向かって倒れた時、心臓が止まるかと思ったわ!」

 

目にいっぱい涙を溜めて訴えるハーマイオニーに、彩芽は驚きを隠せない。

珍しく……本当に珍しい事だが、明らかに狼狽して彩芽は眉を下げた。

 

「大丈夫よハーマイオニー、大鍋の中身被ったっておできが出来るだけで死にはしないし……」

 

「そういう問題じゃないわ!」

 

言い訳は、火に油だったようだ。

ハーマイオニーの剣幕に黙って聞いていた双子も、彩芽にそうだぞと怒り出す。

 

「アヤメは女の子なんだから、体中おできまみれなんてとんでもない!」

 

「そうさ、おできもだけど、火傷したらどうするんだ!」

 

「しかもスネイプに連れさらわれて……」

 

「俺らがどんなに心配したのか分かってるのか?」

 

彩芽は怒っている3人を見回して、目を伏せて「ごめんなさい」と謝った。

その声は、少し震えている。

しおらしいその姿に、3人はようやく許す気になったようだった。

 

「とにかく、無事でよかったわ。今度具合が悪い時は、お願いだから医務室に行って頂戴ね」

 

ハーマイオニーの言葉に、双子がへぇ?とはやし立てる。

 

「やったな!」

 

「具合が悪いって言えば、サボり放題だぜアヤメ!」

 

ハーマイオニーは双子をジロリと睨んで、「あなたたちと違って、彩芽はそんな事はしません!」と言ったが、彩芽がそっとハーマイオニーから視線を外すのを双子は見落とさなかった。

 

「さて、ここで1つ、我々から女王様にお願いがあるのですが」

 

コホン、という咳払いの後、フレッドが唐突に話を切り出す。

女王様、というのが自分を指しているのだと気付き、彩芽は少しばかり眉をひそめた。

 

「この後予定はおありですか?もしなければ、我々は女王様をある場所へ案内差し上げたいのです」

 

ジョージの言葉に、彩芽はハーマイオニーを振り返る。

予定など特にはないが、なんとなくハーマイオニーと過ごすのだと思っていたのだ。

 

「いってらっしゃい、アヤメ。私はここで待ってるから」

 

いつもなら、双子が絡むと嫌な顔をするはずのハーマイオニーがそう言って微笑んだので、彩芽は不思議そうに小首を傾げる。

彩芽を心配していた双子を見て、今、ハーマイオニーは2人に対して少し寛大な気持ちになっていた。

もちろん双子の悪戯騒ぎに辟易して、数日後には元に戻るのだが。

しかし、双子は当然!とばかりに「お許しが出たぞ!」「さぁ、いざ行かん、我らが女王の為に!」等と叫びながら、半ば強引に彩芽を引きずって行った。

 

 

 

玄関ホールに続く大理石の階段を下りた後、左に曲がりドアを通って石段を下りる。

 

「女王様、女王様、お足元にお気をつけ下さい」

 

「ご安心を!もし足を踏み外された時は、我らが下敷きになりましょう!」

 

双子はこの『女王様と下僕』ごっこが気に入ったらしく、案内する間始終この調子だった。

最初こそ「女王じゃない」と訂正していた彩芽だったが、途中から面倒になって放っておく事にした。

飽きればやめるだろう、と。

 

「さぁさぁ、この緑の梨をくすぐり下さい!」

 

「このあたりです、女王様」

 

松明に照らされた広い石の廊下。

そこにずらりと飾られた絵の中の1つで立ち止まると、双子はそう言って彩芽に促した。

言われるまま梨を指でくすぐれば、梨は身を捩って笑い、緑の取っ手に変化した。

 

「隠し扉……?」

 

呟く彩芽の頭上で、ジョージとフレッドがニヤリと顔を見合わせる。

 

『さぁ、開けてみて!』

 

声を合図に、彩芽は取っ手を掴み、開く。

 

中は、入り口からは想像できないほどの広さだった。

 

彩芽はしばし考えた後、ここが直接大広間の真下に位置している事に気付く。

並べられた4つの長テーブルは、それぞれの寮のテーブルと同じ位置にあるはずだ。

 

毎食、突然現れては消えるあの食事は、ここで用意されているのだろう。

 

「アヤメ、こっちこっち!」

 

フレッドに呼ばれて奥へと進むと、ジョージが日本の小鬼によく似たシルエットの、目がやたらと大きな生き物に話をしていた。

彩芽はそれが本で読んだ『屋敷しもべ妖精』だと気付き、ジョージとフレッドは一体何がしたいのだろうとぼんやり眺めていた。

 

「お嬢様、お嬢様、こちらにお座り下さい!」

 

彩芽がキィキィと甲高い声に振り向くと、何人かの屋敷しもべ妖精が机と椅子を運んできていた。

彩芽が意図を測りかねて突っ立っていると、隣にいたフレッドが背中を押して座るよう促す。

よく分からないまま座った彩芽の目の前を、テーブルクロスやら水差しやらと、しもべ妖精達が綺麗に整えていく。

 

「ジョージ、フレッド?」

 

ディナーでも始まろうかという勢いに、彩芽は不思議そうに双子を見上げた。

 

「見た通りさ、アヤメ」

 

フレッドはそれにニコニコと答える。

 

「今から食事をしてもらおうと思って」

 

その言葉に合わせるように、彩芽の目の前にコトリとスープ皿が置かれる。

彩芽は給仕してくれたしもべ妖精に軽くお礼を言いながら、何故?と尋ねた。

 

「何故、じゃないよ。アヤメ、君、気付かれてないと思ってたのか?」

 

軽く驚いた様子でフレッドが肩をすくめ、ジョージがとにかくスープを飲むよう勧める。

奇妙な黄土色のスープを眺め、彩芽は気が進まないながら、せっかく用意してくれたのだからと、「いただきます」と小さく呟き口をつけた。

 

「……味噌汁?」

 

口をつける瞬間の香りと、その味。

具もないし、だしをとっていないのだろう、その微妙な味噌の味のスープは、それでも味噌汁と呼ぶ以外にはないだろう。

思わず漏れた呟きに、双子は揃って破顔した。

2口、3口とスプーンを口に運ぶ彩芽を見ながら、ジョージは説明する。

 

「アヤメがちゃんと飯食ってないのには気付いてたんだ、俺たち。小食にも程があるってね」

 

「そうそう、ベジタリアンでもないって言うし」

 

ジョージの言葉に頷きながら、フレッドもリーから聞いた事を話す。

 

「そこで俺たちは考えた」

 

「何か、アヤメの食が進まない原因があるんじゃないかって」

 

彩芽は聞きながら、双子を交互に見やった。

何故そこまで自分に気を使ってくれるのか分からなかったのだ。

 

「それで、他の寮にいるアジア系出身の奴に聞いてみたんだ。まあ、そいつは日本人じゃないけど。でもまさか、味付けが不満だって言われるとは思わなかったけどな」

 

「……不満というか」

 

困ったように口を開く彩芽に、ジョージが手の平を向けて微笑む。

 

「ま、いわゆるホームシックってやつさ。誰にでもある」

 

「そうさ、ママの味が恋しくて倒れて、スネイプに助けられたなんて聞くよりかはよっぽどいい!」

 

その言葉に、彩芽は複雑な気持ちになる。

 

「早く元気になって、一緒に悪戯しようぜ!」

 

フレッドが満面の笑みを浮かべるのに、彩芽は目を伏せながら頷く。

 

味噌汁の次は煮物だった。

くったくたに煮込まれた、だしもない、ちょっと醤油っぽ過ぎる味付けだったが……。

それでも久々の醤油の香りに食欲が出る。

そしてさらには、おにぎりまで出た。

何故か驚く双子に、しもべ妖精たちはダンブルドアが取り寄せたのだと説明してくれた。

 

「さすがダンブルドアだぜ!」

 

フレッドがそう讃え、彩芽も微笑する。

久々のご飯にかぶりつくと、やはり自分は日本人なのだと実感した。

 

『ご満足いただけましたか?女王様』

 

胃が小さくなっていてあまり入らなかったとはいえ、デザートの団子まで平らげた彩芽に双子がニヤリとしながら尋ねる。

修行の一環で絶食をした事もあるとはいえ、今回それなりに参っていた彩芽は、久々に満ち足りたお腹を撫でて答えた。

 

「そなたたち2人のこの偉大な奉仕は、いつか国を救う事であろう」

 

彩芽の冗談に、2人はにっこり笑ってやったな!とばかりにハイタッチする。

彩芽はそれを眺めながら、手を合わせて呟いた。

 

「ご馳走様でした」

 

その食事を食べるまでに関わった全ての人へ。

食材を育ててくれた人、加工してくれた人、揃えてくれた人、料理してくれた人……。

それらに礼を込めるこの言葉が、彩芽は「いただきます」と共に好きだった。

 

特に今回は、目の前の双子に感謝を込めて。

 

 

その日以降、彩芽の座る席には必ずおにぎりが出るようになった。

相変わらず小食気味とはいえ、ちゃんと食事をする姿に、ハーマイオニーはあからさまにホッとしていたし、双子もご飯に合いそうな料理を勧めてくれていた。

本当は、体調不良の直接の原因は食欲の問題ではなかったのだが、彩芽はそういうことにしておいた。

洋食が苦手で、常に空腹感を感じていたのは嘘ではなかったのだし。

 

 

食事の心配がなくなった彩芽はある意味無敵状態だった。

ホグワーツの構造に惑わされる事もなく、授業もそれなりにこなしていたからだ。

変身術の授業でマッチを針ではなく一本の麺に変えた以外は、ハーマイオニーに負けず劣らずの優等生っぷりを発揮していた。

(最も、これは失敗ではなくちょっとした彩芽のお茶目だったのだが誰にも伝わらなかった)

まさに、順風満帆。

 

……だがそれも、飛行訓練が始まるまでの事だった。

 

「いい?箒はこうやって握るのよ」

 

ハーマイオニーが図書館で借りた『クィデイッチ今昔』の内容を、分かりやすく説明しているのを聞くともなしに聞いていたその午後。

生徒達の待ちに待った飛行訓練が行われた。

 

「何をボヤボヤしてるんですか」

 

芝生の上に突っ立ち、まだ尚続いているハーマイオニーの話を右から左に流していた彩芽は、鋭く響いた声に顔を向けた。

 

「みんな箒の側に立って!」

 

白髪を短く切った、ボーイッシュな女性。

この授業の担当教師、マダム・フーチだ。

 

言われるまま手近な箒の側に立ち、彩芽は箒を眺める。

地面を掃くのにはあまり向かない様な箒だ。

神社の境内を掃く熊手の代わりにならなるかもしれないが。

 

「右手を箒の上に突き出して」

 

フーチの声に、皆が手を突き出す。

 

「そして、『上がれ!』と言う!」

 

次の瞬間、上がれ、上がれと声が上がった。

彩芽も「上がれ」と声をかけてみるが、箒は微動だにしない。

周りを見渡せば、ハリーを含め何人かは箒を手にしており、彩芽は再度「上がれ」と声をかける。

 

結局、箒は止めの合図があるまでに、コロリと転がっただけだった。

 

間に説明が入り、ついに飛び上がる事になった。

フーチは笛を吹く体勢に入り、カウントを始める。

 

「1、2の……」

 

3、で笛が鳴る前に、ピュウッと誰かが勢い良く浮かび上がった。

 

「こら、戻ってきなさい!」

 

フーチが怒鳴るが、制御が出来ていない事は明らかだ。

でたらめにきりもみしながら上へと上がり続けている人物に、彩芽は見覚えがある。

同じグリフィンドールのネビル・ロングボトムだ。

授業でも失敗の多い彼だが、今回もやらかしてしまったらしい。

 

「……あ」

 

滅茶苦茶に飛び回る箒の動きに耐え切れず、ついに真っ逆さまに降ってくるネビル。

彩芽は懐から和紙を取り出すと、素早く印を結び投げる。

本来紙であるはずのそれは、まるで意思があるかのようにネビルの落下地点まで滑り、ネビルを受け止めた。

ふわっと一瞬で減速させた後、彩芽はそっとネビルを支える紙に下ろすよう念じる。

 

「あわわわわわ!」

 

しかしパニックになったネビルは、あろうことか身を捩って空中で転がった。

支えていた彩芽の和紙から転がり落ちて、ネビルはべしゃりと地面に落っこちる。

 

「手首を捻った様ね……」

 

ネビルの側へ走り、屈みこんでいたマダム・フーチがそう呟いた。

ある程度下りてから落ちたため、酷い怪我はしなかったようだが、落ちた時にとっさについた手をねん挫したようだ。

涙でぐちゃぐちゃの顔をしたネビルに立つよう促すと、マダム・フーチは生徒達を見渡す。

 

「念のためこの子を医務室に連れて行きますが、その間誰も動いてはいけません」

 

グリフィンドールの生徒は神妙に。

スリザリン生はどこか人事の様な表情でそれを聞いている。

 

「箒もそのままに。さもないと、クィディッチの『ク』の字を言う前にホグワーツから出て行ってもらいます!」

 

その言葉に、何人かがゴクリと唾を飲み込むのを確認して、マダム・フーチはネビルを抱えるようにして去っていった。

彩芽はそっとネビルが倒れていた場所まで行くと、地面に落ちた和紙を拾い上げる。

ネビルが体を捩った際、すぐさま和紙も操作したのだが……予想よりも和紙の動きは鈍く、間に合わなかった。

日本とは違う。

その差を甘く見ていたと、彩芽は和紙をくしゃりと握ってポケットに突っ込んだ。

 

「あいつの顔を見たか?あの大間抜けの」

 

静かなざわめきを破って、笑い声が上がる。

聞き覚えのある声に目を向ければ、ドラコがネビルをネタにして、心配するグリフィンドール生に突っかかっていた。

 

ネビルが落としたらしいガラスの玉をサッと拾い、なおもネビルを貶める発言をするドラコ。

今日の朝食時に、祖母から送られてきたと言っていたその『思いだし玉』を高々と上げて大笑いする。

 

「マルフォイ、こっちへ渡せ」

 

それに、静かに声をかけた人物がいた。

……ハリーだ。

 

ドラコはニヤリと笑うと、木の上に置いておくなんていうのはどうだ?とからかいながら、ヒラリと箒に跨って飛び上がった。

 

「ここまで取りに来いよ、ポッター」

 

あからさまな挑発に乗ろうとするハリーを、ハーマイオニーが止めさせようとする。

だが、ハリーは無視して箒に乗って飛び上がった。

 

ふわりと危なげなくドラコと対峙するハリー。

ワーワーキャアキャアと騒がしい周りの声を聞きながら、彩芽はそれを下から見上げていた。

「かっこいい!」という声がすぐ側で上がり、それがパーバティだと気付いた彩芽は、恐らく今日の夜の話題はこれだと確信する。

1度、ハリーはドラコに向かって突進するが、ドラコはそれをかわす。

だが、箒の動きを見る限り、ハリーの方が上手なのは分かった。

ドラコもそう思ったのだろう。

それに自分から誘っておいてなんだが、空の上では誰も加勢には来ない。

最後の悪あがきに、ドラコは何かを叫びながら思いだし玉を力の限り投げた。

 

キラキラ、日を反射しながら落ちていくガラスの玉めがけて、ハリーは身を屈めて弾丸のように急降下する。

彩芽は一瞬、ハリーが地面と激突するのではないかと息を呑むが、ハリーはすんでのところでキャッチすると、箒をぐいと引き上げて立て直し、草の上を転がって軟着陸した。

 

投げるだけ投げて地面に戻ってきていたドラコも、その様子にポカンと口を開けている。

 

「ハリー・ポッター……!」

 

見事なダイビングキャッチに場が沸きかけた瞬間、大声でハリーの名を呼びながらマクゴナガルが走ってきた。

 

「まさか……こんな事は1度も……」

 

震えながら、マクゴナガルはハリーの前で立ち止まる。

 

「……よくもまあ、そんな大それたことを……首の骨を折ったかもしれないのに……」

 

マクゴナガルは眼鏡を光らせながら、ハリーを連れて城へと帰って行く。

すっかり萎れてしまったハリーの後姿を見送りながら、彩芽は隣にいるハーマイオニーの呟きに顔を向けた。

 

「だから言ったのに……自業自得だわ……」

 

「でも、あのスリザリンのドラコ・マルフォイも同罪だと思う」

 

「そうね、私、後で先生に抗議してみるわ」

 

ハーマイオニーが鼻息荒く言った。

彩芽は入れ違いに帰ってきたフーチに目を向ける。

そして、自分の箒にも。

 

結局、ハーマイオニーの抗議は全く無駄に終わった。

ドラコはずっと地面にいたという証言がスリザリンの生徒の中から上がったからだ。

フーチ先生は怪我人がいるわけでもない状況で、延々と真偽を確かめる必要はないと判断したらしい。

もちろん、ハーマイオニーはご立腹だったが。

 

その後再開された授業で、彩芽は結局1センチすら浮かぶ事が出来なかった。

 

「魔法族の中で箒に乗れないなんて奴いるのかい?だとしたらそいつは落ちこぼれってことだろうさ」

 

授業の終わり、ドラコが他のスリザリン生に得意げにそう言っている声が聞こえて、彩芽はドラコを見た。

純血の旧家が多いスリザリンに比べて、グリフィンドール生には初めて箒に乗るという生徒も多い。

当然、上手く飛べない生徒もそれなりにいる。

それをあんな風にいう神経が分からない。

 

「気にしちゃダメよ、アヤメ」

 

ハーマイオニーがそっと彩芽の肩に手を置く。

彩芽は頷いて、大丈夫だと言った。




◇ほぼチートの彩芽ですが、イギリスでは両手両足に枷をつけて重力制御装置内にいるベジータさん()状態です。魔法の方も才能はあれど、まだ生徒の範囲を出ない上に箒に乗れないという弱点が判明◇
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