陰陽師の魔女   作:もんごめりあん☆紗波

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◇双子を贔屓し過ぎている気がするがまあいいか◇


決闘の夜

夕食の席で、まるで来てすぐの時に戻ったかのように食欲のない彩芽を見て、ハーマイオニーは心配そうに声をかける。

 

「元気出して、アヤメ。練習したら飛べるようになるわ」

 

授業が終わった後も、ずっと沈み込んだままの彩芽。

辛うじておにぎりだけはもさもさと口に運んでいるが、目は伏し目がち、心はここに在らずといった状態だ。

もっとも、普段も元気いっぱいというわけではないので、この変化に気付いている者はほとんどいないが。

 

「大丈夫、気にしてない」

 

「もう、本当にあなたの大丈夫って当てにならないのね!大丈夫な人間は、そんなに虚ろな目をしないわ!」

 

「……大丈夫、虚ろなのは元々」

 

そんな訳ないじゃないの、と睨みつけるハーマイオニーだったが、反論しようとした瞬間、あまり聞きたくない声が聞こえてきて眉をしかめた。

 

「ああ、ポッター、最後の晩餐かい?マグルのところに帰る汽車にはいつ乗るんだ?」

 

からかいながらも、教師の目が光る大広間では滅多な事は出来ない。

代わりに、魔法使いの決闘をしようじゃないかと口にするドラコに、何の事かと眉をしかめるハリーを置いてロンが頷く。

 

「僕が介添え人をする。お前のは誰だ?」

 

ドラコは体の大きさでクラッブを選ぶと、今夜、真夜中のトロフィー室でと言い残し去っていった。

その時、彩芽はドラコの口元に嫌な笑みが浮かんでいるのを見逃さない。

その後も決闘について話し合う2人に、聞いていられないとばかりにハーマイオニーが声を上げた。

 

「ちょっと、失礼」

 

わざわざ2人の後ろへ移動して、忠告するハーマイオニー。

あからさまに嫌な顔をするロンにもめげず、寮の減点になるかもしれない、自分勝手な行動は止める様にと説得しようとする。

 

「まったく大きなお世話だよ」

 

ハリーが言って、ロンが「しっしっ」と手を振って追い払う。

ハーマイオニーはギュッと口元を結んで帰ってきた。

 

「どうかしてるわ!」

 

乱暴に腰かけると、目の前にあったパイにフォークを突き立てるハーマイオニー。

触らぬ神に祟り無しとばかりに、彩芽は黙っておにぎりで口を塞いだ。

 

 

その夜の11時半。

暗い談話室で、ハーマイオニーと彩芽は息を潜めていた。

パーバティからハリーの話を聞きそこなったなと、彩芽はちらりと考えた。

 

微かに燃え残った暖炉の火が唯一の灯りで、ハーマイオニーは意思の強い光を瞳に浮かべ、彩芽はただ、闇と同化して椅子に座っている。

 

……ギシ、ギシと音がして、ハーマイオニーと彩芽は顔を見合わせた。

見れば、男子寮から人影が2つ下りてくる。

部屋は暗かったが、目の慣れている彩芽達にはそれが誰かはすぐに分かった。

 

「ハリー、まさかあなたがこんなことをするとは思わなかったわ」

 

ぽっとランプに火を灯し、ハーマイオニーが立ち上がる。

 

「また君か!僕達に構わず寝ろよ!」

 

ロンが怒って怒鳴るのに、ハーマイオニーは監督生であるロンの兄、パーシーに言いつける事も考えたとピシャリと言い放つ。

ハリーもロンも、ハーマイオニーを世界一のお節介だと言わんばかりにしかめっ面をした。

 

「……もしかして、君も?」

 

ハリーは上下黒いパジャマを着て、音もなくハーマイオニーの隣に立っている彩芽に気付き、ややうんざりと尋ねる。

彩芽はそれに、小さく頷いて告げた。

 

「罠」

 

「なんだって?」

 

イライラとロンが尋ね返すのに、彩芽は繰り返す。

 

「これは罠。行っても、相手は来ない。あなた達は行ってはいけない」

 

何かの託宣の様なその声音に、ハリー達は一瞬言葉に詰まった。

しかし、次の瞬間ハリーはロンに行こうと声をかける。

 

「寮の事が気にならないの?」

 

だが、ハーマイオニーは諦めない。

太った婦人の肖像画の向こうまでついて行って、忠告を繰り返す。

ロンがややきつく「あっち行けって!」と言って、ようやくハーマイオニーはフンと鼻から荒い息を吐いて「忠告しましたからね!」と怒鳴った。

 

「明日家に帰る汽車の中で私の忠告を思い出しても遅いわよ。あなた達って本当に……」

 

「ハーマイオニー」

 

それでもなおブチブチいい続けていたハーマイオニーは、控えめな彩芽の呼びかけに振り向いて、固まった。

彩芽の指す肖像画の中はからっぽで、太った婦人は夜のお出かけ中のようだ。

 

「どうしてくれるの?」

 

戻れなくなったハーマイオニーは、感情的にハリー達に詰め寄った。

肖像画に婦人が帰って来るまで、中には入れない。

 

「知るもんか!」

 

ロンが言って歩き出すが、ハーマイオニーは彩芽の手を引き2人の後を追いかけた。

 

「私達も一緒に行くわ」

 

「来るなよ」

 

「ここに突っ立って退学になるのを待てっていうの?」

 

ハーマイオニーは彩芽に顔を向けると、捕まったらこの2人に証言させましょう!と提案する。

 

「あなた達は、私達があなた達を止めようとして帰れなくなったって、そう証言するのよ!」

 

彩芽がロンに目を向けると、ロンは「君の神経どうかしてるぜ!」と怒鳴っていた。

 

「シッ。なんか聞こえる……」

 

先頭のハリーがそう言い、ロンがミセス・ノリスかと暗がりを窺う。

その横を、スッとハーマイオニーの手を逃れた彩芽が通り、それに近付いた。

 

「起きて、ネビル・ロングボトム」

 

ネビルはそれにビクッとして起き上がる。

 

「ごめんなさい」

 

「えっ、あの、こっちこそ驚いちゃってごめん」

 

いきなり彩芽に謝られたネビルは不思議そうにそう返す。

 

「君、なんでこんなとこで寝てたの?」

 

ハリーの問いかけに、ネビルはそれが……と医務室から帰ってきたものの、合言葉が分からずにずっと床に丸まって寝ていたことを話した。

彩芽が婦人は出かけていて入れないと告げると、ネビルは泣きそうな顔で「そんな!」と絶句した。

 

「君、よくネビルだって分かったな」

 

ロンの言葉に、彩芽は少し首を傾ける。

彩芽は気で人を見分けるすべを持つ。

暗闇の中でさえ、それが知っている人物なら見分けがつくのだが……それを説明するのは難しい。

 

「夜目が利くの」

 

結局当たり障りない返事を選んだ彩芽。

それにふーんと頷くロンの横で、ハリーがネビルに怪我の様子を尋ねた。

 

「怪我はどう?」

 

「大丈夫。ただの捻挫だったし、マダム・ポンフリーがあっという間に治してくれたよ」

 

にっこり笑うネビル。

ロンはハリーを促す仕草をしながらネビルに言った。

 

「よかったね――悪いけど、ネビル、僕たちこれから行くとこがあるんだ。また後でね」

 

「置いていかないで!ここに1人は嫌だよ!」

 

ロンはそれに自分の腕時計を確認した後、物凄く憤った顔でネビルと彩芽、それとハーマイオニーを睨んだ。

 

「もし、君たちのせいで僕が捕まるような事になったら……」

 

「その時は、私が相手を再起不能に追い込むわ」

 

呪いをかけてやる、と言いかけたロンは、自分の言葉を遮った人物を驚いて見つめた。

隣に居たハーマイオニーたちも、驚いている。

 

「だから、静かにしましょう」

 

彩芽の言葉に、ハリーはハッとしてしーっと口に人さし指を立て、皆に目配せをした。

行こう、ということらしい。

 

夜のホグワーツは静かだった。

窓の格子から注ぎ込む月の光が、廊下の上に縞模様を作り出し、なんとも言い難い雰囲気を醸し出している。

全員が無言で、早足だった。

そのせいか、ミセス・ノリスに出くわす事もなく、まもなく全員は約束のトロフィー室に辿り着いた。

 

トロフィー室は、その名の通りトロフィーを保管している部屋だ。

薄暗い中、僅かな月明かりを反射して、棚のガラスや中のトロフィーが時折キラリと輝きを放つ。

その一つに妙な引っ掛かりを覚え、彩芽は首を捻った。

知らない名前のはずだが、そこに書かれた名前を見た瞬間、目が止まった。

それが何故か、今の彩芽には分からない。

だが、それは意味がある事の様に思えた。

 

マルフォイたちを警戒して、両側のドアを見つめて杖を構えるハリーたち。

ハーマイオニーとネビルすら警戒する中で、彩芽だけは手ぶらでそのトロフィーを見続けていた。

 

「アヤメ、君も構えろよ」

 

ロンがそれに気付いて囁くが、彩芽はチラリとロンを見るだけで何もしない。

それにハリーたちが眉をしかめた瞬間、隣の部屋で物音がして、彩芽以外の4人は飛び上がった。

 

「良い子だ。しっかり嗅ぐんだぞ……」

 

聞こえてきたその声に、4人は凍りつく。

それは他でもない、フィルチの声だった。

ハリーは急いで皆に手を振り回し合図すると、フィルチとは反対側のドアへと音を立てないよう走る。

彩芽は最後尾のネビルを目で追いながら、懐から出した札を一枚、小さな呟きと共に口にくわえた。

 

「どこかこの辺にいるぞ。隠れているに違いない」

 

ネビルがドアの向こうへ消えたと同時に、フィルチがミセス・ノリスと部屋に入って来る。

不思議な事に、1人と1匹は目の前の彩芽には全く気付いていなかった。

彩芽はフィルチたちが部屋を念入りに調べているのを見ながら、そっとドアの向こうへと出る。

 

しんとした夜の廊下。

このままいけば、無事にグリフィンドールに帰れるだろうと彩芽が口から札を外しかけた瞬間……。

うわー!という叫び声と、何か重い金属物が盛大に倒れる音。

 

「逃げろ!」

 

というハリーの声が聞こえ、フィルチが物凄い形相でドアから顔を出して走り出す。

 

「…………」

 

彩芽はそれを見送って、少し考えた後、口から札を外して静かに歩き出した。

 

迷いのない足取りで、着いた場所は4階の禁じられた廊下だった。

鍵の掛かったドアの前まで来ると、彩芽はドアに背を向けて待つ。

ここに来るという確証はなかったが、勘がここだと告げていた。

そしてそれは、ヘタな推理よりもよく当たる。

 

だが、彩芽の姿を見つけて駆け寄ってきたのはハリーたちではなかった。

 

「……ここで何をしている?」

 

彩芽はしまった、と眉を寄せ、小さなため息を吐いて1歩前へ出た。

遠くにいるハリー達の気配を探っていたため、近くの気配に気付くのが遅れた。

 

「こんな夜遅く、校内をうろつく事がどういうことか……もちろん君には分かっているはずだがね?ミス・ミナヅキ」

 

一瞬、目の前の人物の記憶を消してしまうことも考える。

だが彩芽はすぐにその考えを打ち消した。

彼にそんな事はできない。

彩芽は目の前で自分の答えを待っているスネイプを見上げる。

 

「減点ですか?先生」

 

「いや、いや……」

 

チッチッチッ、と舌を鳴らし、スネイプはニヤリと笑った。

たとえ自分が後見人を務めている相手でも、グリフィンドール生相手に減点できるのは嬉しいらしい。

彩芽はそう判断するが、スネイプの本心は少し違った。

確かにそれもあったが、規則破りをした事実を内心嬉しいと感じていたのだ。

そう、馬鹿な話だが、人の心というのは簡単に変えられるものでもない。

自覚しただけ少しはマシになったものの、スネイプは未だに彩芽をヴォルデモートに重ねてしまう事があった。

なので、撫子のごとく入学早々に罰則ものの行動をとっている場面を見て、スネイプは嬉しかったのだ。

 

「罰則だ、ミナヅキ。我輩はこれを、君の寮監と校長に伝える義務がある。話は明日、我輩から直接お聞かせする事になると思うが……マクゴナガル先生は、一体君から何点減点されるか、非常に楽しみですな」

 

意地悪く笑みを浮かべるスネイプに、しかし彩芽は動じずに告げた。

 

「……ならば、問題ないです」

 

問題ない、と言う彩芽に怪訝な表情を浮かべるスネイプ。

そして意地の悪い笑みを消すと、真面目な顔で再度問う。

 

「ミナヅキ、もう一度問う。ここで何をしていた?」

 

「……寮まで送ってください。話は後日」

 

スネイプはそれに眉間の皺を3つほど増やすと、バサリとマントを翻して歩き出す。

付いて来いという事だと判断して、彩芽は小走りにその後を追う。

2人の姿が見えなくなってすぐ後、バタバタと4人のグリフィンドール生が駆け込み、鍵の掛かった部屋の中に入った。

間一髪、スネイプに見つからずにすんだ事には、もちろん気付く事もなく……。

 

談話室までスネイプに送ってもらい、帰ってきたハーマイオニーに置き去りにしてごめんなさいと泣きつかれた次の日。

彩芽はハーマイオニーがハリーたちとかなり険悪な雰囲気になっている事に気付いた。

 

と、いうよりかは、ハーマイオニーが一方的にハリーたちに腹を立てていると言った方が正しいかもしれない。

ハリーたちも、むしろハーマイオニーが無視をしていてくれる方がありがたいとばかりに振る舞うので、彩芽はこの事については何も言わない事に決めた。

仲直りする気のない人たちに、何を言っても無駄だろう。

 

 

 

 

 

「ミナヅキ、来なさい」

 

夕食の後、寮に帰ろうとした彩芽をスネイプが呼び止めた。

一緒にいたハーマイオニーは不安そうに彩芽を見るが、本人はそれを分かっていた様に頷く。

 

「ハーマイオニーは先に帰っていて」

 

「ええ……」

 

言われて、ハーマイオニーはスネイプと彩芽を交互に見やりながら頷いた。

だが、その横からにょきっと腕が4本現れ、彩芽を拘束する。

 

「ちょっと待ってアヤメ!」

 

「君、正気かい?」

 

双子の出現にスネイプは鼻に皺を寄せるが、双子達は構うもんかと彩芽を自分達の方へ引き寄せた。

 

「フレッド、ちょっと痛い」

 

「あ、ごめん」

 

ぎゅうと抱きしめているフレッドに抗議の声を上げ、彩芽はその手から抜け出す。

そして、自分とスネイプの間に立っているジョージの背を軽く叩くと、振り返った顔に頷いた。

 

「ありがとう、2人とも。でも、大丈夫だから」

 

「大丈夫だって?!」

 

フレッドが叫ぶ。

 

「君の大丈夫が当てにならない事は、もう充分に知ってるよ!」

 

ジョージの言葉に、彩芽は少しだけ困ったように首を傾ける。

 

「ウィーズリー、我輩はミナヅキに用がある、どきたまえ!」

 

でなければ、罰則だぞというスネイプの顔に、双子もやればいいさとばかりに対抗する。

ハラハラとそのやりとりを見守っていたハーマイオニーは、向こうからマクゴナガルがやってくるのを見て、ホッとため息を吐いた。

 

「何事です、ウィーズリー!……スネイプ先生、これは?」

 

睨み合う3人を見て、マクゴナガルはスネイプに尋ねる。

それにスネイプが答える前に、双子が勢い込んで喋った。

 

「マクゴナガル先生、アヤメを連れて行こうとするんです!」

 

「彼女は何もしていないのに!」

 

マクゴナガルはそれだけで全てを察したようだった。

彩芽の背を押してスネイプの方にやると、行きなさいと促す。

そして、文句を言う双子の攻撃に対抗した。

 

「いいから、貴方達は早く寮にお戻りなさい!」

 

彩芽はその様子を心配そうに振り返ったが、スネイプに促されて、仕方なくその場を後にした。

 

無言で前を歩くスネイプの背をひたすら追う。

やや早足でついていけば、着いた先はスネイプの部屋だった。

薬品の独特の匂いが鼻につく。

地下にあるためか、どこかひんやりしたその部屋に入るなり、スネイプはドアを閉めて彩芽を睨んだ。

 

「アレの守りに、お前も関わっていると聞いた」

 

「はい」

 

躊躇無く答える彩芽に、スネイプの眉間の皺が更に深まる。

 

「我輩は、君からその事を聞いておらん」

 

「……言った方がよろしかったですか?スネイプ先生」

 

「…………我輩は」

 

スネイプは口元を歪めた。

 

「確か、君の保護者だったと思ったが」

 

「はい、後見人だと聞いております」

 

小首を傾げる彩芽に、スネイプはドン!と近くの机を叩く。

 

「何故黙っておったのだ!」

 

彩芽は、その言葉に少しばかり口を尖らせた。

氷炎がこの場に居れば、驚きに目を丸くしただろう。

彩芽がこんな風に感情を表現するのは久しぶりの事だった。

 

「先生は、保護者である前に教師だと仰いました」

 

言って、彩芽は目を伏せる。

 

「先日も、倒れたところを助けてくださったのに、セブルスと呼んだら怒りました」

 

その子供じみた言葉に、スネイプは眉間の皺をもう1本増やす。

彩芽としては、かなり頑張って思った事を伝えていた。

だが、スネイプにはそれが分からず、ただ息を吐くのみだった。

 

「……とにかく、本当なのだな?」

 

呟いて、スネイプは何かを考え込むそぶりを見せる。

彩芽はそれを見ながら不安な気持ちになった。

アルバスは甘えろと言ったが、やはりそれは間違いだったのだ。

 

「お前が守りに加わっている事は、校長の他には、誰が?」

 

「アルバスと、あとマクゴナガル先生も」

 

それを聞いて、スネイプはフンと鼻を鳴らす。

 

「なるほど、そして……我輩は蚊帳の外だったというわけですな?」

 

「マクゴナガル先生は、寮監ですし……」

 

「さよう、そして我輩は保護者だ。どうやら、保護者というのはかなり立場の低いものらしいですな」

 

「…………」

 

しゅんとしてしまった彩芽を見て、スネイプは少し眉間の皺を緩めた。

 

「……それで、もちろん君は、我輩にそれを教えてくれるのでしょうな?一体どんな魔法を施したのかね」

 

彩芽はそれにしばし無言でスネイプを見つめていたが、ややあって、息を吐いて答えた。

 

「……感知する術を。誰かがアレを手にした途端、私とアルバスにはそれが分かる様に」

 

実際はまだその術を施してはいないが、ダンブルドアと話し合ってそうする事はすでに決めてある。

スネイプは目を細めて彩芽を見るが、嘘を吐いているのかどうか分からない。

内容的には怪しいところもなく、スネイプは結構、と頷いた。

 

「それならば貴様に害が及ぶ事もあるまい」

 

彩芽はその言葉に目を瞬かせた。

 

「……心配、ですか?」

 

「……っ誰が!!我輩はただ、校長から任されたのだ!保護者として、お前の身の安全を守る事を」

 

それだけだ、と吐き捨てるスネイプに、彩芽はやや残念そうに目を伏せた。

けれど、すぐに気を取り直したように表情を戻すと、スネイプに尋ねる。

 

「では先生、もう帰ってもよろしいですか?」

 

スネイプはしばらく彩芽を見つめた後、「構わん」と一言、手を振った。

 

「だが、いくらアレに関わっているとはいえ、次に寮を抜け出してうろついているのを見つけたら、誰が何と言おうと罰則を受けてもらうぞ」

 

「はい」

 

頷いて、彩芽は部屋を出る。

スネイプはしばらくその後ろ姿を見送った後、疲れた様にため息を吐いた。

 

 

 

しばらくして寮に戻った彩芽を、ハーマイオニーはホッとして、双子は凄い剣幕で出迎えた。

 

「大丈夫だったかアヤメ!」

 

「一体何の話だったんだ?」

 

「大丈夫、大したことじゃないから」

 

「大したことじゃない、だって?」

 

「そりゃ、俺らだってお前を連れてったのがスプラウトだとかフリットウィックだったら何にも言わないさ!でも相手はあのスネイプだぜ?!」

 

「そうだとも、えこ贔屓!グリフィンドールの敵!陰湿陰険根暗のスネイプ!」

 

「……本当に、大したことじゃないよ」

 

スネイプに連れて行かれた理由をしつこく聞いてくる双子を、のらりくらりとかわす彩芽。

ハーマイオニーにだけは、昨晩姿をチラリと見られたみたいだと、ほんの少しの真実で納得させた。

 

「それ、大変じゃない!減点されたりとか……」

 

「ううん、されなかった。でも、疑われてるみたいだから、しばらくは大人しくする事にした」

 

「当り前よ!貴女また抜け出す気だったの?」

 

ハーマイオニーは、金輪際ベッドから抜け出すのを許してくれそうにない表情で、彩芽を睨んだ。

納得のいかない双子は、隙を見ては彩芽の口を割らせようと企んでいたが、一週間ほどで他に興味を移した。

 

と、いうのも、ハリーが競技用の箒を手に入れ、さらにそれがニンバス2000だと分かったからだった。

その箒は大勢の生徒が食事をしている最中に、大きなフクロウ6羽で運び込みテーブルのど真ん中に落とすという、とても目立つ方法でハリーの手に渡った。

 

「信じられないわ!本当に!」

 

グリフィンドール寮の誰もがハリーの箒を羨ましがる中、ハーマイオニーだけは怒っていた。

相変わらずハリー達とは仲の悪いまま。

彩芽はそんなハーマイオニーをなだめつつ、クィディッチの熱気に高まっていくホグワーツの雰囲気を、不思議な思いで感じていた。

 




◇スネイプ「べ、別にアンタの事なんか全然心配してないんだからね!」
彩芽「アッハイ……(´・ω・`)」

ツンデレって相手に相当の理解力というか読解力がないと全力のATフィールドですよねぇ◇
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