陰陽師の魔女   作:もんごめりあん☆紗波

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◇しかし、学年末の寮対抗の結果発表は酷過ぎやしないか……といつも思う。ダンブルドアってスリザリンが嫌いなの?ねえ、嫌いなの?◇


父との再会、そして…

「ミナヅキ……」

 

肩で息をしながら、クィレルが呟く。

彩芽はハリーが生きている事を確認して、氷炎に目配せを送った。

氷炎はハリーの服をくわえると、安全な部屋の端まで動かす。

 

「ずっと、ずっと、お会いしたかった。貴方という存在を知った日から」

 

真っ直ぐクィレルの方を見て、彩芽は言葉を紡ぐ。

 

「お父様……貴方をずっと、殺したくてたまらなかった」

 

クィレルはゾッとして一歩退いた。

彩芽の細められた瞳の色に気付き、その場にへたり込む。

 

「……名前を聞いた時から、俺様はその可能性に気付いていた」

 

後頭部からの声に、クィレルは何故ヴォルデモートが彩芽に接触しろと言ったのかを知った。

クィレルがうな垂れた事で、後頭部のヴォルデモートと向き合う彩芽。

 

「ミナヅキ……お前の母親は生意気な女だったが、俺様の興味を引くものがあった」

 

楽しそうに笑うヴォルデモート。

 

「血筋だ。東洋の血は俺様の好むものではなかったが、あいつの父親はスリザリンの血を引いていた」

 

「だから、より濃いスリザリンの血を残すべく、子を成したのね」

 

「そうだ。嫌がるお前の母親を、俺様が無理矢理に襲ってやったのだ。何度も、何度も、孕むまで」

 

楽しい思い出でも語るようなヴォルデモートを、彩芽は笑みを浮かべたまま見つめる。

 

「正直なところ、そんな事はどうでもいいの。私はお母様のために敵討ちをする訳じゃない」

 

両手を伸ばし、その手をパチン、と前で合わせる彩芽。

その妙な動きにヴォルデモートが警戒した瞬間、苦しみだしたのはクィレルだった。

 

「そんな命の残りカスで存在している、ちっぽけな貴方を完全に消滅させる。それが私の生きている理由だから、殺すの」

 

言って、手を顔の前に動かし、指は合わせたまま手のひらの間に隙間を作る。

そしてそこに、彩芽はふうと息を吹き込んだ。

 

瞬間、クィレルは身を引き裂かれる様な痛みに目を見開く。

体の一部を毟り取られる様な感覚。

クィレルは瞬時に、彩芽がヴォルデモートを自分から引き剥がそうとしている事に気付いた。

 

――あの方を、ご主人様を守らなければ。

そう思う反面、別の自分がこう返す。

――本当に守らないといけないのだろうか?

 

ここに来て、クィレルの忠誠は揺らいでいた。

本当は、もっと前から揺らぎ始めていたのかもしれない。

クィレルはヴォルデモートを、偉大で、素晴らしい方だと思った。

だからこそ復活に助力を惜しまなかったし、それが出来る事に喜びさえ感じていたのだ。

偉大な闇の魔法使い、ヴォルデモート卿が、ちっぽけで誰からも評価されない自分を頼ってくださった。

それは何物にも代えがたい誇りだと。

 

だが、果たしてそうなのだろうか。

彼は、ヴォルデモートは、本当に偉大で素晴らしい方なのだろうか。

ちっぽけな存在だと、娘に言われる様な人が、果たして偉大な人物だろうか。

 

ヴォルデモートの方は痛みは感じなかったし、ただ少し、引っ張られる様な感覚があっただけだった。

何が起こっているのか、全く理解できない。

気付けば、眼下にクィレルが倒れているのが見え、ヴォルデモートは自分が引き剥がされたのだと気付いた。

 

「さようなら、お父様」

 

ハッとした時には遅かった。

先程とは比べ物にならない力で引っ張られる。

 

顔の前に指を立て、聞いた事のない言葉を紡ぐ初めて会う娘。

その足元に置かれた、照りのある黒い箱に、徐々に吸い込まれていく。

 

「お前……ごとき、小娘がぁ……ッ!!」

 

ヴォルデモートは焦っていた。

自分の身に起こっていることが、何一つ理解出来なかった。

 

彩芽は呪文を唱えながら勝利を確信した。

思っていた以上に、ヴォルデモートは弱っていたらしい。

抵抗する力も弱く、逃げられる心配もなさそうだ。

 

――この術は完成する。

 

側の氷炎から流れてくる気の残りを考えて、やはり氷炎は助からない。

封じる最後に、氷炎もろとも封をする。

それで終わりだ。

 

ヴォルデモートは箱の中で分解されて消えるか、日本で消滅させるか。

どちらにせよ死ぬ。

氷炎もろとも。

死ぬのだ。

彩芽の、この手で。

 

この指で、印を切り、呪文の終わりを口にして。

それで、……もう、氷炎には会えなくなる。

 

「      」

 

急急如律令、と出るはずの声が、喉の奥でつかえた。

彩芽の異変に気付き、氷炎が箱に駆け寄る。

 

「俺様を……なめるなッ!」

 

ヴォルデモートが最後の足掻きを見せ、虚をつかれた彩芽は反撃を受けた。

一歩、間に合わなかった。

氷炎がヴォルデモートに牙を立てるが、それより早くヴォルデモートは浮かび上がる。

 

「彩芽っ!!」

 

そのまま逃げていくヴォルデモートを、氷炎は追わなかった。

倒れたままの彩芽に声をかけるが動かない。

状況は把握していた。

彩芽は大きな術の、最後の最後でしくじった。

その反動は、命に係わる。

 

「死ぬのは俺のはずだろ、馬鹿!」

 

氷炎は息を吸った。

そのまま、彩芽に口づけて吐く。

本当はもっと満たすべきだが、生憎もう気は残っていない。

全て霧散してしまった。

 

「……死ぬな、彩芽」

 

残ったわずかな気を彩芽に与え、氷炎も倒れる。

薄れる意識の中、ようやく気配が現れた。

 

食えない上に、使えないジジイだ。

 

氷炎の意識は、白い髭を見たのを最後に途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一番最初に意識を取り戻したのは、氷炎だった。

とはいえ、動くことも出来ず、鳴く事も出来ず、ただ意識のみが浮上したに過ぎなかったが。

 

側にいる彩芽の体から体温を感じて、氷炎は心の底から安堵する。

辺りを探って、どうやら医務室のベッドの上の様だと当たりを付けたところで、カーテンの向こう側の人気に気付いた。

 

氷炎から見えるのは、カーテン越しの影。

それでも、そこにいるのがダンブルドアであることは容易に分かった。

身動きもしないで、一体何をしているのだろうかと思う氷炎に、ダンブルドアの声が聞こえた。

 

「ハリー、こんにちは」

 

優しく労わる様な声音。

恐らくカーテンの向こうにもベッドがあり、そこにハリーがいるのだろう。

石が、としきりに訴えるハリーの声を聞きながら、氷炎は笑いたくなる。

 

少年、言わずともそいつは全部知ってるし、お前を危険な目に遭わせた張本人だぜ、と。

 

ハリーは今までの事を洗いざらい話す。

 

「先生、僕見たんです……その、アヤメを。それで……」

 

ハリーの声を聞きながら、氷炎は見られたのかと息を吐いた。

それで、を繰り返した後、ハリーはどう言っていいのか分からなかったようで、石の事に話を戻す。

 

「……クィレル先生は君から石を取り上げる事が出来なかった」

 

ダンブルドアは石が守られたことを伝えた。

 

「先生が助けてくれたんですか?ハーマイオニーのふくろう便を受け取ったんですね?」

 

「実はの、ハリー。わしを呼び戻したのはアヤメなんじゃよ。わしがロンドンに着くと同時に教えてくれたんじゃ」

 

「アヤメが……?」

 

「ハリー、アヤメは君の味方じゃよ」

 

その言葉に、氷炎はますますダンブルドアに対しての不信を募らせる。

 

「じゃが、彼女には複雑な事情があるのじゃ。今回の事はわしにも責任があると思うておる。その事を口止めしたのは他でもない、わしじゃ。アヤメは何も隠す必要はないと考えておった……しかし、あの子の持つ真実は重すぎる。それは本人だけでなく、ハリー、君にものう」

 

確かに、と氷炎は思う。

両親を殺した男の娘、というのがハリーから見た彩芽の肩書き。

しかし彩芽の持つ真実……とは言ってくれる。

まるで自分はその真実を全て知っているような口ぶりに腹が立つ。

 

「先生、僕聞いたんです……アヤメはヴォ……例のあの人に向かって……」

 

「ハリー、ヴォルデモートと呼びなさい。必ず適切な名前を使いなさい。名前を恐れると、そのものに対しての恐れも大きくなるものじゃ」

 

そう忠告してから、ダンブルドアは続ける。

 

「アヤメの事は、本人から聞くのが良かろう。ただ、ハリー、覚えておきなさい。例えどんな真実を知ったとしても……彼女は君の敵ではなく、味方だということを」

 

「……はい、先生」

 

ハリーの声からは、混乱が見て取れた。

それもそうだろう。

そんなハリーに、彩芽は直接説明しなければならないらしい。

ダンブルドアはその後、急に話を変えた。

 

「ところで、石の事じゃが、あれはもう壊してしまったんじゃよ」

 

ダンブルドアの友人、ニコラス・フラメルとその妻は、話し合いの上、納得してそうした。

ダンブルドアが言うには、『整理した心を持つものにとっては、死は次の大いなる冒険にすぎない』らしい。

氷炎は内心鼻で笑った。

どんな綺麗事や思想を並べても、氷炎にとって死は終わりを意味する。

魂は輪廻しても、記憶や感情は伴わない。

死んで誰かの心に残ったとして、それを自分が感じられないのでは意味はない。

 

「先生、石がなくなってしまっても、ヴォルデモートはまた他の方法で戻ってくるんじゃありませんか。その、いなくなったわけじゃないんですよね?」

 

「その通りじゃハリー。生きているわけではないから、殺すことも出来ん。ヴォルデモートはただ逃げただけじゃ。再び誰か乗り移れる体を探しておることじゃろう。今回の事はただ、復活を遅れさせただけに過ぎないかもしれん。しかし、それが何度もあれば……?そう、彼は2度と権力を取り戻すことが出来なくなるやもしれん」

 

だったらいいな、と氷炎は内心相槌を打ってやった。

そんな甘い考えでは、その内死人が必ず出る。

 

ハリーとダンブルドアの会話はしばらく続いた。

クィレルがどうしてハリーに触れられなかったのかという話になったとき、ハリーは少し泣いたようだ。

 

スネイプはハリーの父と嫌い合っていたけれど、一度ハリーの父親に命を救われたことがあり、その借りを返したかったのだ、とダンブルドアがスネイプが聞いたら憤死しそうな事を言って、そして最後に、ハリーがどうして鏡から石を取り出せたのかを話す。

その後、百味ビーンズを1つ食べ、耳くそ味を当ててしまったとむせ返った。

 

「先生、アヤメは、無事なんですよね?」

 

帰ろうとするダンブルドアに、ハリーが尋ねる。

ダンブルドアは振り返り頷いた。

 

「まだ眠っておるが、命に別状はない」

 

そのまま、医務室から出て行ったダンブルドア。

氷炎は目を閉じた。

 

ハリーは痛む頭を庇いながら、そっとベッドから立ち上がり、音を立てないよう注意してカーテンを開けた。

 

真っ白なベッドで眠る彩芽が、そこにいた。

 

胸の上で手を組み、上を向いて微動だにしない様子に少しドキリとするが、良く見れば胸が微かに上下していてホッとした。

枕元には綺麗な装飾のついた箱が置いてあった。

大きなひびが入っている。

肩のあたりの隙間には、白い塊。

彩芽のペット……いや、使い魔だと言っていた。

こちらも微動だにしない。

そういえば、あの時……地下で彩芽と一緒にいた。

でも、もっと大きかった気がしたけど……。

 

ズキッと頭が痛んで、ハリーはカーテンを閉めてベッドに戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩芽が意識を取り戻したのは、学年末のパーティーも終わり、生徒が家に帰る日の前日だった。

 

パチリ、と目を開けて、彩芽は自分が敗北したことを知った。

父……ヴォルデモートは生きている。

 

「日本に帰ろうぜ」

 

意識を取り戻した事に気付いた氷炎が、そう言って彩芽の頬に擦り寄った。

温かく柔らかいその毛並みが、彼の命を感じさせて、彩芽は深く息を吐いた。

 

しくじった。

ヴォルデモートを殺せなかった。

虚を突いた今回は、これ以上ない好機だった。

次は向こうも警戒するだろうし、下手をすれば接触できない可能性もある。

それはとてつもなくやっかいで、重い現実。

 

だが、それよりも、今は氷炎が側にいてくれる事が何より嬉しい。

 

「日本に帰ろうぜ、彩芽。お前の父親なんかどうでもいいじゃん。ここはお前には合わない。回復にこんなにかかったのも、ここの気が悪すぎるからだろ」

 

日本なら、と。

氷炎の言葉を聞いて彩芽は考える。

日本ならば氷炎を犠牲にすることなく父を瞬殺できたろう。

気を使い果たすなんてこともまずあり得ない。

だが駄目なのだ。

父は日本ではなくここにいる。

自分には果たすべき事があり、逃げるのは主義に反する。

 

『一度決めたことは、間違っていると思った時以外は、最後まで貫きなさい』

 

祖母の教え。

彩芽はヴォルデモートを殺そうと思ったが、それが間違っていると思った事はない。

 

「日本には帰るわ」

 

氷炎をひと撫でして、彩芽はゆっくりと体を起こす。

軽く眩暈に襲われるが、気だるさが残るだけで外傷はなさそうだ。

 

「けど、私はまたここに戻って来る」

 

「なんでだよっ」

 

氷炎の問いに、彩芽はうっすらと微笑んだ。

 

「――父を、ヴォルデモートを殺すのは、ハリーではなく、私……そう決めたの」

 

納得したわけではなかったが、氷炎は黙り込む。

主人がそう決めたならば、自分はついていくしかない。

俯いた氷炎の代わり……という訳ではないだろうが、ふいに現れた気配が、言葉を発する。

 

「君がヴォルデモートの殺害を目論んでいる事を、わしは知っておった」

 

カーテンを開けて入って来たのは、異様に長い髭の老人。

ダンブルドアの登場に、氷炎は身構える。

彩芽は静かに相手を見上げ、そして頷いた。

 

「貴方がそれに気付いている事に、私は気付いていた。……利用されていても構わなかった。むしろ、舞台を整えてくれた事に感謝すらしていたわ、アルバス」

 

「いいや、わしは君を止めるべきだったんじゃよ、アヤメ」

 

弱々しく微笑むと、ダンブルドアは自分を見つめる幼い少女に頭を下げた。

 

「わしは弱い。本当にヴォルデモートを封じる事が出来るかもしれないと、そう思ってしまった。失敗して良かったんじゃよ。でなければ、わしはもう少しで君に、大切な友人を犠牲にさせるところじゃった」

 

「アルバス、今回の件で、私は貴方の手の上で踊ったけれど、氷炎を殺しても父を殺すと決めたのは私であって貴方じゃない」

 

それは一見庇うような言い方だったが、その場の誰も意味を取り違う事はなかった。

彩芽はこう言いたいのだ。

全て自分の思い通りに動いていたみたいなセリフは不愉快だし、己惚れるな、と。

 

「それより、クィレルはどうなりましたか」

 

言葉の出ないダンブルドアに、彩芽は気になっていることを尋ねた。

ハッとしたように息を吸い、ダンブルドアは首を振る。

 

「一命は取り留めたが、まるで心が抜けてしまったように動かぬ。酷い事じゃよ……」

 

「そう、生きているの……」

 

彩芽はそう呟いて虚空を見上げた。

あの時、彼に返した本に挟んだ手紙。

 

『貴方の主人に感付かれぬよう、声を出さずただ読みなさい。貴方が敬うそれは本当に貴方よりも優れているのか、もう一度考え直してみなさい。私はいずれ、それを貴方から引き剥がす。その時、貴方がそれの存在を拒絶しなければ、貴方は心身共に引き裂かれ、死ぬでしょう。よく考える事。もしも無事でいられたら、教えていただいたお店に、一緒に行きましょう』

 

読まなかったはずはない。

無駄だったと思いたくはなかった。

 

「ハリーの事は、聞かぬのかね?」

 

ダンブルドアの問いに、彩芽は彼を見た。

 

「元気なのでしょう?ここに彼の気配がなく、アルバスが取り乱した様子がないのだもの」

 

「……君の冷静さと、観察力、洞察力は驚異的じゃの」

 

ダンブルドアは微笑み、カーテンをさらに開く。

気付いてはいたが、そこにいた人物と目が合って、彩芽は小さく息を吐いた。

 

「後は君たちで話すが良い」

 

去っていくダンブルドアの背に、氷炎が「い・や・が・ら・せ・か!」と叫んだが、もちろん通じない。

氷炎がいるとはいえ、2人きりにされてしまった彩芽は、その居心地の悪さに再び眩暈がしそうだった。

 

「何か、我輩に言いたいことはあるかね」

 

スネイプの声は妙に平坦で、それ故に複雑な胸の内が取って見れた。

怒っているのはもちろん、心配からの安堵や、自分には知らされていなかったという落胆、裏切られたような失望……でもやはり、無事でよかったと言う喜び。

氷炎にはそれが分かったが、彩芽にそんな複雑な胸の内が分かるはずもなく。

ただ黙っていたことを怒っているのだと感じていた。

 

「言い訳はしない」

 

1つ息をして、彩芽はスネイプを見上げた。

その真っ直ぐな双眸が自分の姿を映すのを見て、スネイプは片手で目元を覆う。

そのまま側にあった椅子に座ると、深いため息を吐いた。

 

「二度と我輩に隠し事をするな。保護者とは、守るためにいる。勝手な行動をされるのは迷惑だ」

 

言い切ったスネイプの言葉に、彩芽は頷くことが出来なかった。

今後、自分の行動全てを伝えるというのはまず不可能だし、父とのあれこれに巻き込むつもりは毛頭ない。

だが、自分に何かあった時、保護者である彼が責められる可能性については考えていなかった。

 

「保護者というのは、どうしてもやめることは出来ないの?」

 

「我輩が保護者では不満なのかね?」

 

顔を上げずに尋ねるスネイプ。

 

「不都合です」

 

対する彩芽の答えに、氷炎は頭を抱えたくなった。

 

「……そうか。だが、残念だったな。我輩、この役を誰かに譲る気はないのでね」

 

顔を上げたスネイプは、彩芽を睨みつけた。

 

「我輩が保護者である以上、行動は制限させてもらう」

 

……すれ違っている。

氷炎は2人を見て、不器用過ぎるやり取りにうな垂れた。

自分の今後の行動を考え、スネイプに不利にならないよう保護者という責任を解いてあげたいと思う彩芽と。

彩芽が再び無茶をやらかさないよう、本人に憎まれようとも守ろうと思っているスネイプと。

お互いに思い合いながら、拒絶し合っている。

 

この状況を彩芽に説明したところで伝わらないのは分かっている。

氷炎はモヤモヤした気持ちを抱えながら、小さくため息を吐く彩芽を見ていた。

 

 

 

 

 

 




◇次回は列車でGO!です。寝込んでて学年末のパーティーに出れなかった彩芽さんは、スリザリンの可哀想な姿を見られませんでした。◇
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