新学期の始まり。
キングズ・クロス駅に着いた彩芽は、去年同様早々に空いたコンパートメントを占領した。
まだ生徒もまばらなこの状況で、知った気配を探るのは容易だ。
ざっと『見渡した』限りでは、ハリー達の気配はない。
夏休み前、この列車でのやり取りを思い出した彩芽は目を瞑り、深く息を吐いた。
「どうした?」
「なんでもない」
揺らぎかけた気持ちを一瞬で消し去り、淡々と答える彩芽。
昨年同様氷炎を首に巻き、彩芽は本を手にした。
葛葉の手記ではなく、今年使う魔法薬学の教科書だ。
唯一、去年と違うものがあるとすれば、それは彩芽の後頭部。
車窓から入る光を返す銀の鷲の髪飾りがある事。
左右の髪を後ろに回し、頭の後ろで留めてある。
「わぁ、アヤメ!久しぶりね!」
明るい声に顔を上げると、ラベンダーがピンクのリボンを髪に無数につけた姿で立っていた。
服も可愛らしいフリルの付いたスカートで、そのふわふわした雰囲気に彩芽は懐かしさを感じる。
ついこの間の事なのに、だ。
「試験疲れで高熱出して倒れたんでしょう?大変だったわね。でも、アヤメにそんな可愛らしい一面があるだなんて思わなかったわ。ほら、あなたっていつも何にも動じないって雰囲気じゃない?」
学年末の例の事件のお蔭で、彩芽は試験が終わった翌日からずっと寮に帰っていなかった。
保健室で寝ていた言い訳も兼ね、彩芽は試験が終わった後気が抜けて、高熱を出して寝込んでいた事になっている。
ラベンダーがそれをからかって笑っていると、列車の連結部から見覚えのある顔が覗いた。
「ラベンダー、ここに居たのね?あら、アヤメも一緒なの?」
パーバティとその妹のパドマが、姉妹揃ってやって来る。
「残念だったわね、年度末のパーティーに参加できなかったなんて」
パーバティが彩芽に向かって笑顔を向ける。
「凄かったのよ、スリザリンからグリフィンドールが優勝を奪ったんだから!」
「それも劇的にね!」
ラベンダーがパーバティの言葉に頷く。
パドマはそのやり取りにくすくすと笑った。
「確かに、あの演出は良かったわね。あの時のスリザリン生の顔ったらなかったわ」
「本当、スネイプの顔ときたらスカッとした!」
「どういう事?」
その辺りの事情を知らない彩芽が首を傾げると、ハーマイオニーから聞かなかったの?とラベンダーたちが詳しく説明してくれた。
大広間に飾られた銀と深緑の飾り付けが、駆け込みの追加点をもらった金と赤のグリフィンドール色に塗り替えられた話を。
「ネビルの最後のダメだし10点に負けたスリザリンの顔ったら……おかしいったらなかったわ」
「ドラコ・マルフォイなんか、雷に打たれたみたいな顔してたもの」
きゃっきゃとはしゃいで一通り笑い終わると、パドマはレイブンクローの友人を探しに、パーバティとラベンダーはどこかカッコいい男の子がいるコンパートメントを探しに去って行く。
「あ、その髪飾り似合ってるわよアヤメ!……ちょっと古臭いけど」
去り際にラベンダーがそう言って、パーバティが全く!とその頭を軽く叩いた。
彩芽はそれにありがとうと微笑を返す。
目は笑っていなかったが、2人はそれに気付かなかった。
列車が動き出した直後、誰かがコンパートメントをノックした。
彩芽は本から顔を上げ、一言「どうぞ」と告げる。
乗っているのが同じ学校の学生だけという気軽さからか、空いているコンパートメントを見つければとりあえずドアを開く生徒が大半だ。
しかも彩芽は小柄でどう見ても下級生で気を使われる事はない。
それをわざわざノックするのは珍しく、彩芽もそういうものだと知っているので興味を持ってドアを眺めた。
「ごめん、ここのコンパートメントを使ってもいいかな?」
入り口でそう尋ねたのは黒髪の少年だった。
同学年ではない、上級生だ。
そして彩芽は彼が誰かという事を知っていた。
昨年、クィディッチの試合で見た事がある。
彩芽はもう一度「どうぞ」と答えて本に目を戻した。
少年はありがとうとお礼を言って、荷物と一緒に中に入る。
「君、1人?今日はハリー・ポッターと一緒じゃないのかい?」
椅子に座った少年が尋ねて、彩芽は『ふくれ薬』の材料の刻み方から目の前の人物に目を向けた。
下衆の勘繰りというより、単に不思議そうなその顔を見て、彩芽は頷いて尋ね返した。
「どうしてそんな事を聞くの?」
「ああ、えっと……気を悪くしたらごめん。ただ、彼は有名だから。君が彼と友人で、去年はよく一緒だったのを見ていたからつい……」
謝る少年の様子に嫌味はなく、それが本当にただの疑問だったことを知る。
なるほど、と彩芽はハリーたちとの昨年の行動を思い浮かべた。
「なら……今年は皆がそう疑問に思うのでしょうね」
「え?」
思わず出た彩芽の言葉に聞き返す少年。
彩芽はそれに答えず、名前を名乗る。
「知っているかもしれないけれど、私は水無月彩芽。グリフィンドール寮の2年生」
「僕はセドリック・ディゴリー。ハッフルパフの4年生だ。自己紹介が遅れてごめん、緊張してたのかも……アヤメって、2つ下とは思えないほど大人びてて、しかもほら、とても綺麗だしさ」
人の良さそうな笑みでそう頭を掻くセドリックに、彩芽の耳元で氷炎がこそっと呟く。
「演技ならすっげえ
彩芽はその言葉を聞きながら、何と返事を返そうかと迷う。
「あ、もしかして読書の邪魔だったかな」
セドリックは彩芽の手にある本に気付き、自分の鞄を開けた。
「僕も本を読んで過ごすことにするよ。何かあれば声をかけて」
言って、取り出した本を読み始めるセドリック。
彩芽は返事をしなくても良くなったことにホッとし、自分も読書に戻った。
氷炎はそれが相手の気遣いだと気付き、ますますセドリックに対する警戒を強める。
しかし、その後しばらくはお互い静かな読書が続いた。
お昼になると、カートを引いた魔女が車内販売にやって来る。
セドリックはかぼちゃジュースを購入すると、手作りのサンドイッチを鞄から取り出した。
彩芽は魔女に何もいらないと告げ、魔女が残念そうに去って行くのを見るとそのまま読書に戻る。
「お昼、何も食べないの?」
驚いた様子でセドリックが尋ねた。
彩芽は頷き、本からセドリックの膝に乗ったサンドイッチに目を向ける。
「母さんが作ってくれたんだ。ただの玉子サンドだけど、僕これが好きで……」
視線に気づいたセドリックがそう言って、サンドイッチを一切れ彩芽に差し出した。
「良かったら1つどう?母さんいつも多めに作るんだ。あー、無理にとは言わないけれど……」
じっと玉子サンドを見つめるだけの彩芽に、強引だったかと手をひっこめようとするセドリック。
しかし、彩芽は手を伸ばした。
「え、食うの?」
氷炎が驚いてそれを見る。
「ありがとう、いただくわ」
「って、俺が先に毒見するんだけどさ」
礼を言う彩芽の手から一口サンドイッチを齧る氷炎。
スライスしたライ麦のパンに、玉子焼きが挟んであるだけのシンプルなそれ。
味は塩胡椒のみで、玉子とパンの味しかしない。
「いける」
毒云々ではなく味に対するその評価を聞き、彩芽はサンドイッチを口にした。
素朴な味がホッとする。
「おいしい」
「本当?良かった」
セドリックが微笑んだ。
「君、こっちの食事が苦手だって聞いていたから……勧めたものの不安だったんだ」
「苦手って、どうして知っているの?」
いくらハリーの側で注目されていたからって、さすがに食事の内容まで噂されていたとは考えにくい。
「双子だよ。昨年度の初め、ウィーズリーの双子が東洋出身の生徒に食事の事を聞き回ってたからね。僕の寮にもいるんだ。日本人じゃないけど」
「そう……」
厨房に忍び込み、自分のために日本食を用意してくれた双子の事を思い出し、彩芽の心が少しだけ揺れた。
だが、それだけだ。
大丈夫だと、彩芽はサンドイッチを口に運ぶ。
ロンのあの様子を見るに、今年、ウィーズリー家は彩芽を避けるだろう。
双子も、その兄も、今年入学だと言っていた妹も……。
寂しくなどないし、悲しくもない。
黙り込んだ彩芽を見て、セドリックも自分のサンドイッチを食べ始めた。
食べ終わった後は、再び読書をする。
時折こちらの様子を窺っている気配はするが、過度に干渉してこない距離感が、彩芽には心地よかった。
しばらく落ち着いた空気が流れていた。
お腹も膨れ、気温も上がり、セドリックは本を開きながら舟を漕ぎかける。
少し寝ようかと思った矢先に、ガラリとコンパートメントが開いた。
「ここにいたのか」
ちら、とセドリックを一瞥した後、無遠慮に入って来たドラコが彩芽に近づく。
本から顔を上げない姿にイライラしながら、ドラコが気付いているんだろと声をかける。
「いい加減こっちを向け!全く、父上の言いつけでなきゃ、誰がお前なんか探すもんか」
ブツブツと文句を言いながら、彩芽の本を取り上げるドラコ。
ようやく顔を向けた彩芽に、ドラコがずいと箱を渡す。
「父上からだ」
「いらないわ。それより、本を返して欲しいのだけど」
断られると思っていなかったのか、ドラコがポカンとする。
セドリックはいきなり目の前で始まったやり取りに、どう反応すべきか困っていた。
ハリーとスリザリン生のドラコ・マルフォイは仲が悪かったはずだ。
それはホグワーツ生なら知っている事。
ハリーと仲の良い彩芽なら、当然ドラコとも仲は良くないと思うが、今の会話を聞く限りドラコの父親と何かしらの関係があるらしい。
突然入って来たドラコから彩芽を守るべきなのか、2人の会話を邪魔するべきではないのか、セドリックには分からなかった。
ただ、差し出されている箱の包み紙を見て、それが高級菓子店のチョコレートだという事は分かった。
「また魔法薬学か……」
取り上げた本の表紙を見て呟くドラコ。
去年の事を思い出し、フンと鼻を鳴らす。
「なるほど、赤毛の双子を侍らすのに飽きて、今度はこいつに乗り換えたって訳だ?で、こいつはあのウィーズリーよりはまともな家柄なんだろうな?」
去年、コンパートメントにはリー・ジョーダンもいたのだが、ドラコの記憶には残っていないらしい。
彩芽はそんなドラコを見つめた後、軽く首を振った。
「可哀想ね、貴方」
「なんだって?」
眉を寄せるドラコだが、次の瞬間本が引っ張られ、まるで吸い寄せたかのように彩芽の手に納まるのを見て驚きの表情に変わる。
氷炎は彩芽が術を使ったのに気付いたが、事情を知らないドラコとセドリックは無言呪文を使ったのだと思ったのだ。
もっとも、どちらにせよ難易度の高いものであることに変わりはないが。
「家柄だとか、血筋だとか、そういうものでしか人を判断できない貴方が可哀想だと言ったの」
再び本を開き、そこに目を落としながら淡々とそう話す彩芽。
「そんなものは、複雑な1人の『人間』というものを作り上げる、その沢山の材料の1つでしかないのに」
いくつもの材料、それをどう刻むのか、あるいはすり潰すのか。
鍋に入れる順番は?
どのような工程を経て、どれだけの時間をかけるのか。
そして出来上がったそれを、どんな形の瓶に入れるのか……。
人を魔法薬になぞらえて語る彩芽に、ドラコは鼻で笑った。
「いくら手間をかけたところで、材料が出来損ないじゃまともなものが出来上がるわけないだろう?」
その他がどれだけ優れようが、不純物が混ざっている時点で出来上がりは失敗作だ。
そう言ったドラコに、彩芽はなるほどと笑う。
「だから、『純血』というわけね。それが貴方たちの考え……」
「ああ、そうだ」
自信を持って、ドラコはそう頷いた。
まだ子供ではあるが、純血の一族としての誇りをドラコは持っている。
親から教えられ、そして身の回りを取り巻く環境が教えてきた、この『純血』の貴族の価値観……それが正当であるとドラコは信じ、疑っていない。
「今現在、完成しているものに不純物を混ぜるなんておかしいと、決められた材料と手順を昔からこうして作っているというその一点で遵守し続ける。なるほど……それなら間違いはない。必ず同じものが出来上がる」
彩芽は本からドラコへ視線を移す。
「だから衰退していくのよ、貴方たちは」
衰退、という言葉にドラコは何故かギクリとした。
「新しい材料を、手順を試すことで、失敗することもあるかもしれない。けれどその先に、今以上の価値のあるものが生まれる可能性を貴方たちは拒否し続ける。時代に合わない『薬』を延々と大事に作りあげるだけの……未来のない貴方たちを、私はやはり、可哀想だと思うわ」
静かにそう言って向けられる瞳に感情は見えない。
だが、自分が憐れまれているという事だけは分かった。
それは耐え難い屈辱で、ドラコは顔を赤くする。
「お前に何が分かるっ……!」
呻くように吐き出したドラコ。
彩芽はやはり静かに返す。
「分からないわ、
話は終わりだった。
ドラコは耳まで赤くしたままコンパートメントを出て、外で待っていたグラッブとゴイルを連れて去って行った。
彩芽はじっとこちらを見ているセドリックに少し首を傾げ、騒がしくしてごめんなさいと謝る。
セドリックはそれに気にしていないと首を振った。
「ひとつ、聞いていいかな?」
「答えられる事なら」
「アヤメはマルフォイみたいな『純血』が嫌いなの?」
「……純血が嫌い、という訳ではないわ。別に好きでもないけれど。私が嫌いなのは、『純血主義』の元、他の価値観を貶める行為」
「ああ、そうか。なるほど、ウィーズリー家が悪く言われたのが嫌だったんだね?」
言われて、彩芽はセドリックを見る。
今そんな話をしただろうか?
そのきょとんとした様子に、セドリックはくすくすと笑った。
「多分、分かっていないだろうから教えてあげるよ。アヤメが純血主義を良く思っていないとか、そういう事を可哀想だと思っているのは本当だと思うけど……さっき君は、友人の家を悪く言われて腹が立ったから彼にあんなことを言ったんだよ」
彩芽はセドリックが何を言っているのか分からず氷炎に目を向ける。
首元の氷炎は、それに気付いて小さく頷いた。
「ま、一理ある。確かに彩芽はさっき腹を立ててた。術使ってまで本を取り返してたのが良い証拠だろ」
言われてみれば確かに、何故あそこで術を使ったのだろうか。
無意識の行動だったが、気持ちが昂っていたのだとしたら……。
良くない事だと彩芽は眉をひそめる。
だが、そう……言われてみれば確かに、ウィーズリー家を下に見るドラコの言葉には少し苛立った。
それに……。
「腹が立ったのは、貴方の事にもよ。セドリック」
目の前の人の良さそうな少年が、家柄や血筋で判断されそうになっている事が嫌だと思った。
予想していなかった彩芽の言葉に、セドリックは驚く。
「ありがとう、アヤメ」
そして嬉しそうににっこりと笑った。
その真っ直ぐな笑顔を見て、彩芽は少し居心地悪そうに体を揺らす。
氷炎はじっとその様子を見ながら、彩芽が去年一年で変わった事を実感していた。
どんなに蓋をしても、どんなに平らにならしても。
彩芽の心は随分と感情豊かになっているようだ。
列車が到着する少し前にセドリックの友人がやって来たり、パーバティとラベンダーが顔を覗かせて騒いだりしたが、それ以外の問題は起きなかった。
列車はゆっくりと速度を落とし、駅に着く。
「大丈夫かい、手伝おうか?」
列車を降りる際もセドリックは紳士だった。
大きなトランクを持ち上げる彩芽に素早く声をかけて手伝う。
彩芽は大丈夫だと断りかけたが、セドリックがあまりに優しげに笑いかけるので断る機会を逃してしまった。
重くないようにヒトガタをこっそり飛ばして荷物を浮かせておくのが精一杯だ。
「思ったより軽いんだね」
「そういう魔法がかかっているから」
そういう事にしておく。
「これはアヤメが飾り付けたの?グリフィンドール色に染めてるね……随分と古い気もするけど」
「母のものなの」
言いながら、彩芽はこの派手な赤と黄のツートンカラーがグリフィンドール寮を意識したものだと初めて気付いた。
寮のカラーは赤と金だが、代用として黄色を使ったのだろう。
母は本当にホグワーツが好きで、楽しんでいたようだ。
ダイアゴン横丁で使った鞄もホグワーツ仕様だったのを思い出す彩芽。
「アヤメのお母さんもホグワーツだったの?」
「ええ、グリフィンドールだったそうよ」
そうだったんだ、と頷くセドリックの隣を歩き、彩芽は近付いて来る大量の馬車に目を向けた。
「なんだあれ」
氷炎の間の抜けた声。
彩芽もその光景に目を瞬かせた。
百はあろうかという馬車がずらりと並ぶ様は圧巻だが、その馬車を引く馬がまた奇妙な姿をしている。
馬の形をしているが羽があり、黒いなめし革の様な皮膚をしていてふさふさした可愛らしさは欠片もない。
体に肉はなく骨が浮き出て、こちらを見る目は白濁としていた。
「どうしたのアヤメ?」
じっとその馬の様な動物を見つめる姿に、セドリックが不思議そうに尋ねる。
彩芽は動物の名前を聞こうと口を開きかけて、止めた。
周りの視線がおかしい事に気付いたからだ。
いくらなんでも視線が素通りし過ぎている。
「こいつら見えてないのか」
そのようだと、彩芽は氷炎に頷く。
セドリックは少し首を傾げたが、彩芽が何でもないと言うとそれ以上突っ込んでこなかった。
奇妙な馬が引く馬車に荷物ごと乗り込み、彩芽とセドリックは周りを見渡す。
丁度、どの馬車に乗ろうかと迷っている子を見つけ、ドリックが声をかけた。
「君!この馬車に乗るかい?」
その生徒は声に振り向き、あっと声を上げる。
「アヤメ……」
何とも言えない表情のハーマイオニー。
一瞬、側にハリーとロンの姿がない事を疑問に思うが、彩芽はセドリックに首を振った。
「セドリック、ハーマイオニーは多分、1人じゃない」
「え、でも……」
どう見ても1人だ。
それに、振り向いた顔を見てセドリックはハーマイオニーが彩芽と一緒にハリーと仲の良かった1人だと気付いていた。
「乗っても、いいかしら?」
彩芽が説明するより早く、ハーマイオニーがそう尋ねた。
セドリックはもちろんと頷き、彩芽を見る。
「……私は、構わない」
頷いた彩芽を見て、ハーマイオニーは馬車に乗り込んで来た。