SAO≪ソードアート・オンライン≫ 神速の剣士 作:ソウルメイジ
翌朝10時、俺たち二人はあらかじめ指定されていた場所へと向かった。
朝、あくびをしながら起きていくと、ナギサがいつもの調子でおっはよー!と俺に元気よく挨拶してくれた時はなんだかほっとした。
ついてみると、そこにはすでに30人近いプレイヤーが集まっていた。
皆一様にさまざまな格好をしている。
すでに第一層からここまで違いが出るということがこのゲームの難しさを物語っていた。
「はーい。みんなちゅうもーく」
一番先頭のステージのようなところに立っていた
青色の髪をしたいかにもノリのよさそうな人が話し出した。
おそらくはあの人が今回の攻略会議のリーダーなのだろう。
俺たちはテキトーなところで腰を下ろし、そいつの話に耳を傾けた。
冗談交じりの自己紹介でディアベルと名乗ったその男は、自分たちのパーティーがボスの部屋を発見したのだ、そして俺たちはボスを倒して始まりの街にいるみんなにこのゲームは永遠ではないのだということを証明する義務があるのだと熱弁した。
それに周りも賛同し、拍手や口笛が起こった。
俺も素直にそう思えるディアベルのことをすごいなと思った。
力を持ちながらもダラダラとしている俺とは大違いだ。
そのあと、彼はパーティーを組むように指示した。
「よく考えたら、俺たちパーティーは組んでないよな」
「そうだねー、なんだかずっと一緒にいるから組んでるような気分になってた。」
「とりあえずは、パーティー組んどくか」
そう言って俺はパーティー申請をナギサに送る。
ふと、周りを見回してみると、すでに俺たちと同じようにパーティーを組んでいる奴らがほとんどだ。
多分、俺たちのように仲のいい複数メンバーで来ているのだろう。
だが、しかし、そうでないやつもいるわけで……
しかもたまたまそれがすこし顔を見知ったやつであったなら、さすがに声をかけてあげなきゃ可哀想なわけで……
俺はナギサに許可を取ったあと、キョロキョロと左右を見渡し焦っているバカのもとへ歩いて行った。
「そんなキョロキョロして何をしているんだい?キリト。」
「え?あ、ああ!シオンじゃないか!?」
「相変わらずソロでやってるみたいだな。おかげでパーティー組む相手が見つからないのか?ええ?」
にやにや笑いながら俺はキリトの痛いところを突く。
「お前だってソロだろう?」
「残念だったな、俺はもう組む相手が決まってるんだ。」
俺は後ろにいるナギサの方を指差す。
「俺のパートナーのナギサだ。」
「初めまして。ナギサって言います♪よろしく」
「俺はキリト。よろしく。ふぅーん、シオンもやるなぁ。こんなときだっていうのに、女の子をしっかりゲットして」
「なっ!そんなんじゃねーよ!」
俺は、昨日の出来事を思い出してしまった。だが、すぐに打ち消して冷静に言葉を続ける。
「俺はお前をパーティーに招待しに来たんだ。俺たちと組もうぜ、キリト。」
するとキリトはすこし顔を曇らせた。なにか思う点でもあるのだろう。
「いいのか?」
「もちろん」
「いや、お前には聞いてない。ナギサの方だ」
さらっと、酷い奴だ。
「え?私は全然オッケーだよ。」
すると、キリトは少し考えたようだったが、すぐにこちらを向いて
「それじゃあ、よろしく頼む」
と言った。
「あと……」
キリトはなにか言いにくそうに俺たちを見た。
「あと、なんだよ。早く言えよ」
「あそこにいる人も誘えないかな。多分一人だから話しかけようと思ってたところだったんだ。」
キリトが指差したのは顔をフードで隠した性別不明のプレイヤー。
というか全体的に謎なプレイヤー。
変な奴ではあるが、別に嫌ってわけでもないし、変な奴だけど。
「まぁ、特に嫌がる理由もないしな。ナギサは?」
「私は何人いてもオッケーだよ」
「じゃあ、俺が行ってくるよ。二人は待っててくれ」
そう言って俺はその謎なプレイヤーの下へ向かう。
どんなプレイヤーなのか知りたいという好奇心からこの役を買って出たのだ、どうにかして顔だけでも拝まなくては
俺は後ろからさりげなくそいつの肩をたたいた。
振り向きざまに顔を拝めるかと思ったがそれは失敗した。
「あのさ、もしよかったら俺たちと組まないか?」
するとそいつは口をパクパクさせて最後にはっきりとこういった。
「か、可愛い……」
「は?」
「あっ!ごめんなさい。それでパーティーだったかしら?」
「ああ。あそこにいるメンバーと一緒になんだけど構わないか?」
そう言ってキリト達の方に指を向ける。
すると、それに反応したようにナギサがこちら側に笑顔で手を振った。
「いいわ、組んであげる。私はアスナ」
そう言って彼女はフードを取った。
明るい茶色のロングに後ろに変わったまとめ方をした髪型。
整った顔立ちで10人がいたら10人が美しいや可愛いと判断するであろう美貌の持ち主が謎のフードプレイヤーの正体だった。
たっぷり5秒ほど見とれた後あわてて俺も自己紹介を返した。
「俺はシオン。よろしくアスナ。」
そして、キリトと、ナギサを呼び寄せて4人が並んで座った。
そして、それを見計らったように再びディアベルが話し始めた。
と、そのとき
「ちょぃ、まってんかー!」
横の方から声がした。
声の主はおそらく、すこし身長が低めの猿のような男。
髪型はツンツンと逆立っており、子悪党的な感じがする。
子悪党はせっせと階段を下りていきディアベルの前に立つ。
「ワイは、キバオウってもんや。ボスと戦う前に言わせてもらいたいことがある。
この中に今まで死んできた2000人に謝らなアカンやつらがおるんとちゃうか?」
おそらく彼がさしている奴とはベータテスタたちのことだろう。
ベータテスタたちは別に悪くないと思うのだが、やはり他のゲーマーたちはそうは思わないようだ。
見にくい嫉妬だ。
ごちゃごちゃと話していると一人の禿げの大男が立ち上がった。
「エギルだ。キバオウさんアンタが言いたいのはつまり、今まで2000人が死んだのはベータテスタたちのせいだ。だからそれを詫びてそして賠償しろ、そういうことだな?」
さすが、子悪党。らしい感じで大男にビビっている。
だが、強がって「そうや!」と大声を上げる。
ますます、子悪党っぽい。
「このガイドブック、もらったか?」
「もらったで。それがなんや!」
「これを配布したのは、もとベータテスタたちだ!」
するとエギルという男はこちらへ振り返りガイドブックを持っている方とは別の手でたたいた。
「誰にでも情報は手に入れられたんだ。なのにたくさんのプレイヤーが死んだ。それを踏まえてこれからどうするかを論議される。
おれはそう思っていたんだがな」
分が悪いと思ったのか、キバオウは前の方にふん!と鼻を鳴らして座った。
「よし、じゃあ再開するよ。今朝、また新たなガイドブックが配布された。
第一層のボスはイルファングザコボルトロード。そしてそれの取り巻きにルインコボルトセンチネルというのがいる。
ボスの武器はオノとバックラー。そして4本あるHPバーがラストの一本になると、武器がタルワールに変わり攻撃パターンも変わるということ。
最後に、金は自動均等割り、経験値、アイテムは倒したパーティーのものとする。
出発は明日の朝十時にする。それじゃあ、解散!」
この後、俺たちは親睦を深めるために4人で一緒に食事をした。
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