再編世界の特異点   作:Feldelt

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フェルさんの新ネプテューヌSSです。
完結編ですよ完結編!パロディもシリアスも好き放題やります。好き放題やります。

それでは、どうぞ!


第1話 存在無き存在

その男は2年半に及ぶ眠りから目覚めた。

隔離病棟と思われる。窓がない上に、厳重な拘束がかけられている。

 

その身体に、左腕、左脚、右足はない。

ついでと言わんばかりに右腕の神経系も不全だ。だから、実質的にだるまというものに近しい。

 

「...ここは...」

 

その男の名は、『凍月 影』。

今この世界では司書イストワールしかあずかり知らぬ、ゲイムギョウ界最大の危険人物にして現在4ヶ国が置かれている状況を打開できる可能性が高い諸刃の剣。

 

 

───────

 

 

状況を説明しよう。

九形...いや、虚夜 光がシェアエナジーに干渉、イストワールの力を蒐集した鍵の欠片を用いて暴発させ、世界の理を少し書き換えた。

 

それが3年前。

書き換えられた内容は凍月 影とイストワール以外から『凍月 影』にまつわる全ての消去、女神の再定義、特殊能力の定義消去、そしてマジェコン。

 

これにより、メタ的に言うとほぼ原作ゲームの状況に近しいものになっている。

つまり、守護女神4人はマジェコンの拡散を止める為に首魁、虚夜光に戦いを挑み、敗れた。虚夜光が一度も手を下すこともなく。

 

それから2年半後、凍月 影が目覚めた。

義手義足の新調、神経接続手術などのリハビリに半年を費やし、ようやく現代に至る。

 

だが、一つ大事な存在を忘れていないだろうか。そう、何を隠そう、女神候補生達だ。

一番世界再編の影響を受けた彼女たちには、性格の変化が、ことしっかり者のネプギアには如実に現れていた。それはきっと、女神の再定義と、守護女神4人をうち破った一人の少女の仕業だろう。

 

端的に言えば、ネプギアはグレたのだった。

 

 

───────

 

 

さて、ようやく話が進む。

 

女神の敗北から3年と34日経ったある日、プラネテューヌ教会教祖となっているイストワールは凍月 影とネプギアを再編後初めて対面させるのだった。

 

「よぉ、イストワール...」

「おはようございます、影さん。まもなくネプギアさんも着くと思います。」

「そうか...しかし...頑なにも会わせまいとしていたのに、どういう風の吹き回しだ?」

「それは、ネプギアさんが来たらお話します。」

 

待つこと数分。

 

「いーすんさん...それと...人間の、男の人...なんの用ですか。謁見はお断りしています。」

 

笑顔一つなく、冷ややかな目をただ影に向ける。普通の人間なら一瞬で物怖じするほどの冷たさが込められているが、影にとってまだ生ぬるく感じるのは彼がより恐ろしいものを知っているからであろう。

 

「いえ、ネプギアさん。あなたにはこれから守護女神救出のため各国を巡り、ゲイムキャラの捜索と協力をここの凍月影さんと一緒に行ってほしいのです。」

 

『え?』

 

両者の思考が真っ白になった。が、先に立ち直ったのはネプギアだった。

 

「お断りします!人間とはもう、絶対に関わりたくありません!失礼します!」

「んなっ...」

 

影は本能で察した。追いかけると死ぬ可能性が高いと。いくら半身が機械とはいえ、特殊能力が存在しないならば女神には候補生といえど勝ち目は薄い。

 

「やはり、こうなってしまうのですね...」

「わかってたような口ぶりだな...でも今の俺には女神と並び立てて戦える力はない。それを知らぬイストワールでは無かろう...何かあるんだな。」

 

青年の勘は司書の思惑を引き出す。

心を閉ざした女神候補生と存在しない諸刃の剣。もはやイレギュラーの塊のこの2人にすがるしかない現状。それを打開するための叡智の力。

 

「はい。プロジェクトデュアライズ...女神の力を擬似的に二重化させて表層に装着させることで戦闘能力を引き出すシステム。ただし、二重化させたことにより人の身に余るシェアエナジーを分散させる必要がある上、それでも装着可能時間は最長でも10分が限界。それ以上は命の保証ができない危険なものです。ですが...」

 

青年は考える。記憶を手繰り寄せば戦いの記憶。世界を救うための諸刃の力。

 

「面白いな、イストワール。いいぜ乗った。」

「ありがとうございます。ですがネプギアさんはどうしましょう...」

「簡単な話だ。ボコせばいい。」

「影さん...?あなたはそこまで脳筋でしたか...?」

「さてね。けど、さ。かつて人間殺しまくった俺が言うのもアレなんだろうけど...人間はそこまで捨てたもんじゃないって、教えてあげないと。あの子には...ギアには、笑顔でいてもらわなきゃ。」

 

青年はそう言って笑むが、目に光はない。

 

「影、さん...」

「いいんだ。わかってる。俺はこの世界には存在しない。忘れられてる消されてる。けど、俺は忘れられていたとしても、あの子の兄だ。それにな。ブランを助けて10年越しになっちまった約束を果たす。」

 

決意をもって、彼は自分を忘れた自分の妹を倒すことを決めた。

 

「けどまぁ...こんなに忘れ去られてるとは...某原初の女神もびっくりだろうよ...あちらさんの場合は忘れてたというよりかはなかっただし、現状は全くの真逆なんだけど、さ...」

 

それでも乾ききった掠れた笑みはこぼれている。

それは楽観などではない、半ばヤケになった悲観の笑みであることを、歴史の記録者イストワールは理解していた。

 

「ごめんなさい、影さん...」

 

その謝意は小さく、深く彼女に響いた。

 

 

───────

 

 

深夜、プロジェクトデュアライズの核であるシェアデュアライザーの調整が行われている最中、影はプラネテューヌにある銃器店でパーツを集め、自分専用の銃を製作していた。もちろんこの手のものはラステイションのほうが品揃えはいい。だがしかし存在を証明する書類がない以上国外には出られないため、仕方なく急造で揃えたといったところであろう。

 

「...さすがに人間には嫌気がさすよな...俺もその気持ちがわかる。今のゲイムギョウ界の人間はクソだ。こと犯罪組織はな...だから俺はまた悪魔になるとするよ。この弾丸は物理防御に対して弾丸そのものが爆発することで実質的に防御貫通できる...『雷銀式炸薬弾』と名付けよう。今日のところは5発しか作れてないし、撃つ銃に至ってはどう頑張っても単発装填が限界。ネプギアボコすって言ったけど、さすがにこれだけじゃ無理だよなぁ...」

 

女神の力の二重化、か。

 

「そっちを試したほうが良さそうだな。」

 

 

───────

 

 

そして翌日の14:00。

汎用単発装填型拳銃、『シャドウ-C』とイストワールに渡された具現式信仰二重化兵装、『シェアデュアライザー』を携えて、凍月影はバーチャフォレストに立っている。

 

「世界を救うための共闘をするために小手調べって感じかねぇ。やれやれ。」

 

眼前にはプラネテューヌの女神候補生。

既に変身もしている。

 

恐怖心は微塵も持ってない。きっとそれは腸が煮えくり返るほどの怒りが圧倒しているせいであろう。人間に絶望した気持ちは俺もわかる。正直、人間は捨てたものだ。それでもあの子達は護りたいというだろう。それが女神なのだから。

 

「両者、揃いましたね。」

 

イストワールが間に入る。

 

「いーすんさん...どうしても私はこの人とお姉ちゃんを助けに行かないとダメなんですか...?私一人じゃダメなんですか...?」

「はい。ですが我々としてもネプテューヌさん達を助けるための戦力が、今のネプギアさんよりも弱い場合は使い物にはなりません。その時は、ネプギアさん一人での救出作戦を実行します。」

 

何かおかしい。何か足りない。

 

「イストワール...まさかネプギアの記憶は、姉以外ほぼないのか...?」

「はい。残念ながら...」

「そうか。だったら容赦なしでいけるな...じゃあ早速やろうかネプギア...『シェアデュアライザー』のテストも兼ねてな。」

 

へその少し下にデュアライザーをつける。

するとベルトが巻かれて安定したではないか。

 

「...まるで仮〇ライダーだな。」

 

懐からゲームカセットのようなメモリーカードをデュアライザーのスロットに2つ差し込む。

 

PURPLE HEART

PURPLE SISTAR

 

「...!?私と、お姉ちゃん...!?」

 

Now Loading...

 

デュアライザーの右側にあるディスクらしきものが回転している。

 

Duallized!

 

「変身...!」

 

ディスクを右からデュアライザー内部へ押し込む。それと同時にデュアライザーが発光、二重化された女神の力が解放され、鎧という形で顕現する。

 

黒紫の鎧を身に纏う銀髪の青年。

白紫のプロセッサユニットを纏う、桃色の髪の女神候補生。

 

両雄向かい合い、戦いの火蓋が切って落とされた。

 




次回、第2話『紫一閃、十六天刃』

技名です。感想、評価等、お待ちしてます。
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