再編世界の特異点   作:Feldelt

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第10話 唯一無二の親友を

「行きます!」

 

突撃するネプギア。

これは囮だと理解するその場の全員。

シャドウ-Cをネプギアの背に向ける影。

中空からX.M.B.を構えるユニ。

そして、ネプギアを迎撃すべく大剣を構える茜。

 

「そこっ...!」

「貰ったわ!」

 

ネプギアの突撃を大剣で受けようとしたところを、ユニが正確に大剣を撃ち茜のバランスを崩す。

 

「そこまでは読めるよ...!」

「んなっ...!?」

 

崩れたバランスに身を任せ、S.M.P.B.L.の横からネプギアに蹴りを一発浴びせ、その流れでネプギアを軸に回転し、さらにネプギアの背を踏み台して、ユニへの対応に向かう。

 

「やる...!」

「やる...!じゃないですよ!」

 

援護するにもユニが放つ弾幕がこちらにも流れるように茜が位置取りをしている。なりふり構ってられないユニの余裕のなさがわかる。それほどまでに、茜は強いのだ。

 

「さすがに3人でもきついとは恐れ入った...あと4分、はてさてどうしたものか。賭けに出るもいいけど、いや...賭けに出るしかないというのが現状か...イストワール、いいか?」

 

義眼の通信機能でもってイストワールを呼び出す。

 

「影さん...?何かあったのですか?」

「あぁ...ちょっと前頼んだ茜の記憶の抽出...茜の記憶データをできる限りこの義眼に送り付けてくれ。この場で無理やり、消されたか上書きされた茜の記憶を...茜の脳にぶち込む。」

「んなっ...!?そんなことをすれば影さんの脳は!」

「あぁ...最悪容量オーバーで脳にダメージが入るし、記憶という形で茜が俺の中に入るということは、二重人格になる可能性もある。それでもやるんだよ。やんなきゃだめだ。」

「しかし...!成功の可能性は著しく低下しますよ!?」

「なんのためのシェアエナジーだよ。奇跡くらい、起こしてみせろっての。」

 

変身時間はもう少ない。だとしたら、手負いのままの茜と戦える今この時しかチャンスはない。この機を逃せば...生きて帰れる自信すら持てなくなる。

 

「だからやってくれイストワール...唯一無二の親友を取り戻すために!」

「...わかりました。データを移送します。」

 

瞬間、激痛が頭を襲う。だからなんだ。

少年を見て、屈託ない笑顔を向ける少女の記憶。

目の前にある、義理の妹だったものを見て慟哭した記憶。

青年が残した、二人の幼子の記憶。

それらが自分のことのように脳裏に焼き付いてくる。

 

「茜...!今から、お前を!取り戻す!」

「やってみなよ。あと数分しか戦えないことはよくわかってるんだから、さ!」

 

大剣と刀の剣戟。

隙をつくのは難しい。そのうえ時間はない。つまりは多少の無理は不可避だということ。

 

「ギア!ユニ!適当でいい!弾幕をはれ!」

「はいっ!」

「やればいいのね!」

「それがどうしたって言うのさ!」

「こういうことだよ!」

 

放たれた弾幕に雷銀式炸薬弾を撃ち、爆破させる。

その爆風と閃光で稼いだ1秒。1秒あれば茜の頭を左腕でつかむことは容易であった。

あとは、うまくいくことを祈って...!

 

「帰ってこい、茜!」

 

デュアライザーにあるシェアエナジーをあるだけ全部左腕にまとわせ、『茜を取り戻したい』という万感の思いをシェアエナジーに乗せながら、左腕を介して茜の脳に記憶情報を送り込む。

普通に考えたらどう考えても成功しない。

だけれども。普通ではない力が今ここにあるのなら。

 

「命を代償にしたっていい...奇跡くらい、起こしてくれよ!シェアエナジーさんよぉ!」

「ぐぅ...!」

 

脳から脳への直接的干渉。それは等しく両者にダメージを与える。

 

「がっ...それ、でも...!」

「うぐぅ...ぐあぁぁぁあっ!?」

「帰ってこい...!あかねぇぇぇぇ!」

 

変身が解け、茜を抱えたまま地面へ落ちていく。

 

 

「影さん!」

 

ネプギアが影の真下へ向かうが間に合わない。

青年と少女は真っ逆さまに地上へ落下していった。

 




次回、第11話「私は」

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