「うぐ...」
目が覚めたらそこは病院ではなく教会の一室であった。
ご丁寧に拘束されている。首は回せるから辺りを見回して見ると茜も似たような状況だった。ただ、酷使しすぎたのか左目は見えない。義眼はシャットダウン中のようだ。
「俺はともかく茜も、てのはどうも腹が立つな...上手くいったかどうかも確認できてないし...」
茜の記憶が戻ったことを確認できない以上成功していないものと考えたほうがいいな。だとするなら...拘束を切って動くとするか...
「...!」
拘束の位置を確認するため首を左に傾けたその時、茜のベッドの下に爆薬があることに気づく。しかもそれは俺の足元にも続いていて、配線を見る限り、拘束を切断すると起爆する仕組みのようだった。
「神宮寺ケイもここまで外道になるのか...?いや、俺がそれ以上に外道なだけか...」
対策として左腕の義手よりゆっくりと冷気を発する。
爆薬の周りで結露を起こし、爆薬をしけらせるのが狙いだ。
「全く、ユニから聞いた通りだ。注意深い観察眼と推察能力、どこぞの記録者もびっくりじゃないかな。」
「先に茜が起きた場合も茜の下の爆薬が起爆するようにしやがって...こうなった時点で俺は死ぬこと確定してるじゃないかこんちくしょー...まぁもっともこの状況...昔もあった気がする。」
「いろいろ諦めているようで生命への執着は一級品か。他人の生命は気の向くままに奪ってきた悪魔のくせに。」
「言うじゃないか。反女神の連中を消してやってるというのに。それに、俺がいなかったらユニはクエストに行く体力もなくなってたんじゃないのか?」
「んなっ...!」
懐から拳銃を取り出し俺に向けるユニ。
涼しい顔をして銃口を見つめる俺。
「っ...!」
「撃たないのか?」
「なるほど、ユニには撃てないね。」
「それじゃあ交渉といこうか...いや、それも必要なさそうだ。」
「なんだって?」
「そこの温度計を見てみなよ。これは俺のミスなのだけれど...氷点下、だろ?」
「まさか。」
「そのまさか。最初は結露が狙いだったけど、よくよく考えると金属で包まれている爆薬には結露の影響は出ない。てことで爆薬そのものを凍結させてもらった。ついでに言えば回路を少し水濡れ状態にしておいたから爆発ももうしない。」
拘束を切り、茜の分の拘束も切る。
「仙道茜の命を俺の前で弄んだんだ。教会じゃなかったら、殺してたよ。」
ケイの足元周りに氷柱を作る。今や部屋の、交渉の主導権は俺にある。
「ゲイムキャラの居場所、教えてもらおうか。」
「僕に脅しは効かないと知っている...それでも、か。」
事実、氷柱はじわじわとケイの首へ向かっており、またケイの脚を凍結させている。
「でも、僕は言わないよ。」
「はぁ!?何言ってるのよケイ!それじゃあんたが!」
「いいや、彼は僕を殺さないよ。」
「それはそうだ。情報引き出せてないのだからな。」
「僕が生き残るためにはこのまま黙っていることさ。」
「...さすがは神宮寺ケイといったところか。」
手がない。これ以上は無意味だ。茜を回収して手当たり次第に探したほうがよさそうだな...
「...冷たいね、えー君。」
「...!?茜...?仙道、茜なのか...?」
凍結が解除される。
頭に巻かれた包帯がまだ痛々しいけれど、その声音は間違いなく、俺の知る仙道茜のそれであった。
「そうだよ。えー君。」
次回、第12話「茜色の太陽とともに」
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