再編世界の特異点   作:Feldelt

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第16話 氷雪の兄妹

戻ってきたのはネプギアだけだった。

なんでもユニはラステイションを離れるわけにはいかないらしい。

 

「そうか、想定内だな。」

「...どこまで想定してるんですか。」

「そりゃもう、えー君の思考の届く限り。」

 

茜の言う通り、思考の届く限りは想定できる。悪い方向にも当然な。

 

「さて、次の目的地はルウィーだ。」

「ルウィー...噂に聞いたことがあります。氷雪の兄妹...女神候補生でもないのにとんでもない力を持っているっていう二人がいるって。」

「...プラネテューヌに引きこもっていたネプギアですら知りえる情報、か。」

「出発は明日だよ。えー君そこそこケチだからギアちゃんの一人部屋は少し離れてるんだ。これ鍵だよ。それじゃおやすみ。」

「おやすみなさい...って、あなたはどうするんですか...」

「私はいわば敵から味方になったような人間だからね、いつ寝首をかくかわからないでしょ?だからえー君と一緒。」

「は、はぁ...」

「ねぷちゃんみたいに自堕落ではないけど、あんまりかっちりしすぎると潰れちゃうよ?」

「...っ.......おやすみなさい。」

 

ネプギアが部屋を出る。

茜はふーと長く息を吐き、ベッドに横たわる。

 

「キャッシュ処理...でいいのか?領域把握のキャパ回復は。」

「そーだね。ある種魔眼だよ。この能力は。私の意思に関係なく瞳に映すだけであふれんばかりの情報が押し寄せてくる。えー君みたいに演算して処理できない以上、言葉にしたり、書きなぐったり、はたまた全く別の事、視界を介さない刺激で脳にたまった情報を無理やり飛ばしたりするしかないね。」

「...そうか。」

「ともあれ今まではここまでたまる前にどうにかしてたからね...前の二つではかなりの時間がかかっちゃうよ。それに明日はルウィー行き。きっと、ううん。絶対あの子たちと戦うことになるね。氷雪の兄妹、黒君と白ちゃんに。」

「...だよな。」

 

それだけしか言葉が出ない。うすうすわかっていた。こうなることは。こうなってしまうことは。

 

「もしもの時は私が戦う。えー君があの二人と戦っちゃだめ。」

「だが、茜は...!」

「そーだね、だから手伝ってよえー君。視界を介さない刺激でもって、私を助けてよ。」

「選出を間違えている。ろくな方法が思いつかない。」

「私もだよ。けどね、私はえー君になら何されてもいーよ。」

「...やめろ...」

「そんなこと言われてもね。ねぇえー君。大好きだよ。」

「...急にどうした。」

「急でもないでしょーに。それに、えー君が私の事どう思ってようが関係ないよ。私をあなたにぜんぶあげる。それだけじゃだめ?」

「茜......俺は...」

「いーよ。何もしゃべらなくて。えー君はそれでいいの。いつも通りの私のわがまま。だから聞いてくれなんてお願いはしない。全部わがままだから。」

「......わかった、一つくらい聞いてやる。」

 

ついぞ、俺は折れた。

やっぱり、茜には勝てない。

 

 


 

 

「というわけでルウィー到着だ。」

「すっきりはっきりクリアーな視界と突き刺すような冷たい空気!」

「そして...なんで入国検査場が封鎖されてるんですか!これじゃ街に入れないじゃないですか!」

「落ち着け。わざわざ閉まってる時に来た理由がある。というか...そもそも閉まってなんていない。」

 

その時、閉ざされていた扉が開く。

 

「氷雪の兄妹、ルウィーにおける対犯罪組織の切り札。全く、血は争えないということか。」

「...なるほど、わざわざマジェコンを持って検査場を通ったのは、ここに来るためか。」

「ってことはつまり...」

「そういうことだ。」

 

瞬間、俺の横を光条が薙ぐ。

 

「話は終わり。マジェコンを持っていることはわかってる。今ここで全部捨てろ。捨てないなら...次はその脳天を撃つ。」

「...やっぱりね、やっぱりこうなっちゃうんだ。」

 

茜が見る先には2人の子供。

 

銃剣を両手に握る黒い装束の少年と、ローブともとれる白い装束を纏った少女。

 

「久しぶり、あかねぇ。けど、ロムねぇラムねぇのためにやってることだから。」

「...僕達はマジェコンをひとつ残らずぶっ壊す。母さんを取り戻すために。」

 

「黒君、白ちゃん......お父さんのことは知らないの?」

 

「いないよ、父さんなんて。もういない。僕達が生まれる前に死んだんだから。」

「余計な話ももう終わり。マジェコンが捨てられていないから、3人まとめてさようなら。じゃあね、あかねぇ。」

 

白く太い光条が俺たちの正面に迫る。

 

「避けられない、ネプギア!」

「はい...!」

 

変身に少し時間のかかる俺はその光条を障壁で受け、デュアライザーを装着する。が、受けた時と茜の警告は同時だった。

 

「だめ、えー君下がって!」

「...!?」

 

茜の声がなかったら、確実にやられていた。

義眼ぼ演算の外、光条の中から躍り出た黒の一閃。それはどうにかバックステップでかすった程度に抑えたが...

 

「ぐっ...」

「避けた...!?初めてだ...」

 

身体に走る赤い線。滴り始める赤い液体。そして、視線の先には両断されたシェアデュアライザーがあった。

 

 




次回、第17話「戦姫絶剣」

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