再編世界の特異点   作:Feldelt

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第17話 戦姫絶剣

えー君のシェアデュアライザーが壊された。

これは黒君白ちゃんを同時に相手することが圧倒的に難しくなったということ。

 

「影さんに一撃入れた...!?」

「半分不意打ちとはいえ...流石に天界の血は戦闘力が女神クラスというわけか...」

 

姿勢を正す黒君とその隣に変身して歩いてくる白ちゃん。はっきり言ってまずい。

 

「びっくりしたよ。僕達の必殺の動きを避けたんだもん。」

「けど、それだけ。本気ですらないこの攻撃を防いできたのなら、それ相応の対応をしないとね。」

 

より殺気が見える黒君と白ちゃん。...仕方がない。えー君が戦えない以上、私が守らなくちゃ。私の大好きなえー君を。

 

「...えー君。マジェコンをちょうだい。」

「...あぁ、それしか手は無さそうだ。」

「ギアちゃん。3秒だけ2人を止めて。それだけあれば私が前に出る。3秒だけでいいから、頑張って。」

「3秒...ほんとにそれだけでいいんですか?」

「秘策はあるからね。じゃ、お願い!」

「はい...!」

 

ギアちゃんを突出させ、私のデュアライザー...もといマジェディヴァッガーを腰に巻く。そもそもえー君のシェアデュアライザーはマジェディヴァッガーの基礎構造を教会が少しいじったもの。デュアライザーにおけるディスクの部分は私のマジェディヴァッガーにはない。なぜならその部分には、マジェコンを差すから。

 

「茜...?」

「見ててよえー君。私の、変身。」

 

マジェディヴァッガーを完全な形にした私はそう言って、深紅の鎧を身に纏う。かつて私が使っていた神姫鎧装に似ていて、でも全く違う装備。

 

「戦姫霊装、能力上限限定解放第一形態...絶剣。私が今出せる最大出力だよ。」

 

本気モード、これは私の思考の質も変えるいわば自己暗示。

 

「っく...強い...!」

「お兄ちゃん、あれ...!」

「うん...茜さんの...本気...!」

 

後退するギアちゃんと私を見て身構える二人。

 

「そう、これが私の本気。...さぁ、私のかわいい一番の教え子たち。お説教の、時間だよ!」

 

私の装甲の隙間から溢れんばかりに赤の粒子が一面にまき散らされる。

 

「なんだこの出力...やめろ茜、それ以上は!」

「なればこそ、だよ!」

 

突撃。構える黒君に一閃。

 

「ぐっ...速いし重いし何より...!」

「かわいい、でしょ!」

 

どうにか防御した黒君を大剣を振り抜くことでかっ飛ばす。そして、足元と左右、前後から同時に魔法の起動を確認する。

 

「ギアちゃん、えー君を...最悪気絶させてもいいから安全なところへ。ちょっと、派手に行くよ!」

「ちょ、茜さん!?」

 

おあつらえ向きにも直上が空いている。それは白ちゃんの誘導。本命があることはわかっている。でも、それに飛び込まないわけにはいかない。

 

「えー君と戦ってるみたいだなぁ...ほんと!」

 

跳躍。いつでも大技を受けてもいいように粒子の放出はやっておく。けれども白ちゃんの狙いは少し違った。

 

「かかった...!」

 

足元以外の4つの魔法陣から伸びてきたのは鎖。どこかの英雄王が愛用しているようなデザインの。

 

「半人半神だからか、憎いことするね...!」

 

伸びてくる4本の鎖。全部避けるには少し大変。さっきの足元の魔法がまだ待機状態であることを鑑みても、ここは回避に専念しないといけない。

 

「さすが、ブランちゃんの娘...賢いったらありゃしない!」

 

高機動の動きはできる。できるけれども。

 

「選択肢がありながら実質一択を迫るスタンス...って、やばっ...!」

 

正面からビームが飛んでくる。完全に失念していた黒君からの攻撃。

 

「捕まえ、た!」

 

大剣でビームを斬ったはいいものの、その時の重心の移動を見抜かれてついに鎖に捕まってしまう。

 

「やる...!」

 

大剣で鎖を斬ろうとするもそんなことをさせてくれるわけもなく。

 

「って、本格的にまずいね...」

 

右腕も右脚も左腕も左脚も鎖に繋がれて、目の前にはいつ発動してもおかしくない大技の魔法陣。

 

「お兄ちゃんがヤード単位で飛ばされた時は驚いたけど...逃げ道をいくつか作りながら避けていくのなら、逃げ道を封鎖しながら誘導すればいいだけ。あかねぇが先読みに長けてることは、よく知ってるから。」

「さすがだね白ちゃん...けどね、こんなことわざがあるよ。鎖の強度は、いちばん脆いところで決まるってね!」

 

赤の粒子が鎖を伸ばしている4つの魔法陣を壊す。私だからできる荒業。

 

「魔法の術式そのものを破壊した...!?なんでそんなことが...!?」

「簡単、ではないけどね。些細なことではあるかな。」

 

鎖から解放された私はついぞ発動することのなかった大技の魔法陣も破壊する。

 

「魔法の術式を把握してさえしまえば、相殺されるような魔力、ないしエネルギーをぶつけてしまえばその魔法陣は消すことができる。魔法基礎理論の教科書149ページにあるよ。だから反魔法というものが研究されていたりするの。魔力そのものは物理的な攻撃ではどうしようもできない。けれども、魔法を発動するための魔法陣は魔力に流れを、要はベクトルをつける。そこに全く逆のベクトルを持つエネルギーをぶつけてしまえば...0になる。つまり術式に穴が空くというわけ。だから壊せたんだよ。」

 

さすがに把握して逆算したのはだるかったけど、ね...

 

「さって...私も躊躇なしでやんないとだめっぽいなぁ...だから、黒君白ちゃん、ケガしても恨まないでね。じゃあ、行くよ!」

 

ふぅと一息ついてから、粒子をたなびかせて大剣を構える。接近を許さない赤の光の奔流。

 

「一閃さえ通せばもう私の勝ち。躊躇も何も無い、私の本気の大剣一閃。受けられるものなら、受けてみせてよ!」

 

瞬間、粒子を大剣に付着させて一気に2人に斬り掛かる。

 

「《緋一文字・紅椿...転式三輪》!!!!」

 

回転しながら1回、2回、3回と大剣を振るう。

それは確実に黒君と白ちゃんの二人を捉え、切り伏せ、そして地面に叩きつけた。

 

「...ほんと、嫌な世界だね、えー君。」

 

戦いは終わったけど、私の心は全くもって晴れやかでもなんでもなかった。

 




次回、第18話「魔導の双子」

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