「来る...!」
「させないわ!」
大剣とともに飛翔、それをロムラムは散開して弾幕を張る。
この戦い方は...
「茜が黒と白に教えた戦い方か...!」
「感心してる場合ですか!?」
「感心くらいするさ...この弾幕は陽動で誘導なんだからな!」
紅の粒子を周囲に展開し、弾幕に当たりにいく。
「うそ、突っ込むの!?」
「避けても当たるって、わかってる...!」
「まずは、アタッカーを!」
ラムを視界にしっかりと捉え、大剣を腰だめに構える。
「せぇい!」
茜の緋一文字ほど鋭い攻撃は出せない。大剣を使い慣れてないというのが仇になっているが贅沢は言ってられない。それに俺も手負いだ。無茶はそんなにできない。
「させない!」
ロムがラムの前に防壁を張る。
「だろうな...!?」
だが、張ったのは防壁ではなく攻撃用の魔法陣。茜だったら把握できたが、こちらは演算のほうが得手。把握できなかったものへの対応は厳しいものがある。
「くっ...」
無理やり大剣の腹で氷塊を受け、衝撃に身を任せて距離を取る。
強い...いや、俺が弱くなったのかそれともただ心のどこかで躊躇しているだけか...!
「防いだだけじゃないなんて...」
「私たちの事、知ってるみたい...」
そうだな、知ってる。この中で誰よりも。
たったひとり愛した少女の妹なのだから。
「影さん!援護します!」
仲の良かった妹たち同士でさえ、再編のほぼ中心にいたせいで姉以外のほぼ全部の記憶を持っていかれた。それが今この状況だ。
「頼む..と言いたいが茜を安全なところへ連れていけ...」
「茜さんならあの二人を連れて隠れてますよ。」
「そう、か。」
黒と白は茜の教え子なのだ。雪の中で倒れさせたくはあるまい。
...そう思うべきなのは、父親である俺なのだけれども。
「分かった、ギア、お前はロム...水色のほうを頼む。どう考えても連携はあっちのほうが上だ。そこを頭に入れたうえで...いけるか?」
「...自信はありません。でも...お姉ちゃんを助けるためなら...!」
「そうか...なら、ついてこい。」
深紅の粒子をたなびかせ、再び空に駆け上がる。
粒子の斬撃を飛ばしながらラムに接近し、傍目を見るとネプギアとロムは互いに牽制の弾幕の応酬をしていた。
「しつこいわね!」
「そうかい!」
ラムの魔法は炎も雷も風もある。無属性だってある。
全てを読み切ることなんて昔はともかく今はできない。なんなら斬られた腹が痛む。
だがそんなことを気にするよりもなおそれどころじゃない。
大剣の先からビームを放ち、そのビームを回避ではなく防御したことであることを思い浮かぶ。
「その瞬間を待っていた...!」
雷銀式炸薬弾。弾数ももう残り少ないこの弾丸を、ビームを隠れ蓑にすることで防御を解除した瞬間にねじ込む。
「なに、きゃぁぁぁぁぁ!?」
「ラムちゃん...!?」
妹を慮るのは姉の鑑なのだが、そんなことをしていては戦場で共倒れになってしまう。
事実、無情にも俺は加速式貫通弾をシャドウ-Cに込め、ロムに向けて撃ち放つ。
動揺、意識の外。前者だけでも致命的だが、後者も加われば絶対的な間隙となる。
「うっ...きゃぁっ...!」
双子の女神候補生は揃いもそろって落ちていく。
雪国だからか落ちた先の雪がクッションになり変身が解けた二人を包む。
「勝った...んですか?」
「あぁ、作者がお前の出番を上手に作れてないという問題さえ解消できれば勝利といえるな...」
「どう反応すればいいんですか...」
「さぁな。ノリと勢いと...」
落ちた二人を眺めつつ、最後に一言言う。
「降り積もる虚しさでいいんじゃないかと、俺は思うよ。」
ごめんな、ロム、ラム。
次回、第20話「虚しさの雪解け」
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