職員に連れられるままルウィーの教会についた。
俺たち三人は教組と思われる女性の前に通され、職員は下がっていった。
「...ロム様ラム様、黒様白様がいきなり戦闘をしかけたこと、お詫びします。プラネテューヌのネプギア様...そして凍月影様と仙道茜様。イストワールから話は聞いています。私はルウィーの教組、西沢ミナと申します。」
「ご丁寧にありがとうございます。改めまして、ネプギアといいます。それで...」
「その前に、大仰に連れてきた割にはお咎めなしというのが裏がありそうで仕方がない。どういうつもりだ?」
「...確かに、貴方がしたことは到底許されるものではありません。ここにブラン様がいたら...ここに来る前にまた大きな戦闘が始まっていたことでしょう。」
「そうだな、あの子はそうだろう。」
「...それを知っていて、どうして貴方はあんなことをしたのか...目的が知りたいんです。あれだけ無情に人を殺せる人間が、なぜ女神のためと語るのか...それを知りたいんです。教組として、女神の代わりに国を治める者として。」
殺戮の目的、理由、か。
「女神が治める国に...女神を否定するものはいらないだろ。」
「それがより良い国を作るとでも?」
「あぁ、だが誰しもが女神を肯定するわけじゃないというのはわかっている。だから俺みたいな悪が女神にはいるんだ。正義や秩序を示すためには、それに反する悪があればいい。女神が秩序を語り、俺が秩序のために殺す。そして女神は殺してはいけないと新たな秩序を掲げ、俺を討ってくれればそれでいい。」
「...っ...えー君、本気なの...?」
「あぁ、本気さ。」
「...では、ここに人口五千人の小さな国があったとします。あなたはあなたがさっき言ったような悪人であることを前提条件とします。」
「あぁ。」
「ある日、二千人の国民は女神なんかいらないと一斉に蜂起しました。あなたはどうしますか?」
「その二千人を殺す。」
「...その国の人口は三千人になりました。月日が経って今度は千人の住民が同様に蜂起しました。どうしますか?」
「さっきと同じだ、その千人を殺す。」
「...これで国民は二千人になりました。おかしいとは思いませんか?あなたは二回とも半分より少ない量の人間を殺したのに、気づけば人口は最初の半分以下なことが。」
「3/5x2/3=2/5だ、なにもおかしくなんかねぇよ。」
「ですが...同様に歴史が繰り返していくのなら、それはもはや国と言えるのでしょうか。...あなたの信念のもとにできた『女神が治める国』に、国民はあなた以外にいるのですか?」
「いないな...どう考えても、残るのは俺一人だ。」
「それがわかっていながら、なぜ!」
「だから討ってもらうんだ。俺が何もかもを壊す前に、あの子たちは俺を止めてくれると信じてるからな。」
「それじゃ...まるであなたは死ぬために旅をしているかのようじゃないですか...」
「そうだな、そうかもしれない。」
ミナの言葉に同意する。
問答をして俺の中のごちゃごちゃも整理された。そうか、俺は女神に討ってもらうためにこんなことを飽くことなくやっていたのか。虚夜光を殺し、犯罪神も犯罪組織も全部ぶっ倒して、俺が最後の悪として君臨して。そして女神によって討たれることで世界から悪は消え、平和になる。完璧だ。というか、虚夜光による世界再編の前の俺の目標がこれだったじゃないか。
「私には生きろって言うのに、自分は討たれるために戦ってる...?えー君、寝言は寝てから言ってよ。いくらなんでも、えー君といえども聞き捨てならないよ。私が一回死んだとき、あれだけ泣いてたえー君を私は覚えてる。虚夜時雨の手駒でしかなくなってた私を助けてくれた時のえー君の心も、奪われた私の記憶を付け焼刃でも返してくれたときのえー君だって私は覚えてる...!それなのにえー君はブランちゃんのために死ぬの...?そんなことされたら私は...絶対に後を追う。私に生きてほしいと言うのなら、えー君が生きてなきゃだめだよ...」
「っ...」
「それに約束、まだでしょ。もう10年前になっちゃったけど...買い物行こうって約束、私は忘れてないよ。」
「あったな、覚えてるよ。忘れてなんてないさ。」
「だから...えー君は約束は守ると信じてるから、私はまだ行こうなんて言わないよ。えー君が今日を生きると言うなら、私も今日を生きる。」
「ずるいよ茜、ずるすぎる。」
その言葉を最後に沈黙がやってきた。
「あの...ゲイムキャラさんの話をしてもいいですか...?」
ネプギアが沈黙を破ったのは長くも短くもない間の後であった。
次回、第22話「失くしても無くしても」
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