ネプギアが切り出したゲイムキャラの話は円滑に進み、ゲイムキャラのいる場所も聞き出せた。しかしまぁ腹の傷のこともあって一日教会で休むことになった。
「寝ないのか?茜。」
「えー君こそ、寝なきゃだめだよ。いくらミナせn...じゃなくて教組が回復魔法をかけてくれたからって...えー君は今日は十分無茶したんだから。」
「...だが...それが茜が起きてる理由にはならないだろ。」
「そだね。私はいま、シェアデュアライザーを作ってるんだ。よりえー君に合わせた、改良型のね。...ほんとはもうえー君を戦わせたくはないんだけど...私じゃあんなことはできないし、やろうとしてもえー君がやってしまう。それにここから先、幹部と戦うなら...えー君の力はたぶん絶対必要になる。」
ブレイブと戦ってわかった。一人じゃ勝てない。それは茜も思っている。残念ながら、ネプギアは戦力としては数えられない。
「厳しいよね、ギアちゃんにとって、この旅は。えー君の黒い所がどこからでも出てくる、この旅は。」
「そうだな...そうだろうさ。」
「妹だけど妹じゃないのがつらい?」
「とても。とてもつらいさ。だが...同時に忘れてくれていてよかったとも思うよ。あくまで女神として俺に異を唱えるのだから。もしも記憶が消されていなかったら...あの子はきっと同じ道をたどる。それだけはだめだ。こんなことをするのは俺だけでいい。」
「...そーゆーこと、いっつも聞かされる私の身にもなってほしいよ。ほんと、えー君は賢いのに大バカさんだなぁ。」
「...かもな。」
「およ、その反応はよそーがい。けど...こんな風に毎日会話するのって、何年ぶりだろうね。13年ぶり?干支が一周しておつりが来ちゃうんだ。」
「言うなよ...もうしばらくすればいわゆるアラサーだなんて。」
「怖いこと言うなー。でも私は変わってないでしょ?」
「それこそ怖いくらいにな。髪型こそ変わったけど、あの頃の茜のままだ。」
「ふふっ。えー君は...変わっちゃったね。いろんなところが傷だらけ。それにまた少しやつれた?やっぱりもう肉は食べられないんだ。...私はえー君が大好きだけど...そういうところ、嫌いだよ。私が把握するまで黙ってるなんてことしないでよ。」
「逆だよ、茜なら把握してくれるから...それで十分なんだ。」
「...そーいうこと言うんだ。なんだかなー。そーいうとこだぞえー君。」
「だからいいんだよ。茜がいるから、俺は黙っててもいいんだ。それに、」
「すとっぷ。それ以上は聞きたくないかな。わかってるから。」
「...そうか。安心した。」
「...おやすみえー君。私は...えー君にまだ悪魔でいることを求めるよ。それが世界を救うためだから。けど、救った後...えー君は、私は生きているのかな。」
茜の言葉はそれっきりだった。
俺は何か言おうとしたが、言葉にならなかった。
身体の一部を失くしても、心を無くしても、結局のところ俺は何も変えてはいないのかもしれない。ただ、バカみたいに盛大な空回りをして、自滅しているのかもしれない。だとしても、もうこの道を違えることなんてできやしない。凍月影はもう、そういうところまで来てしまったのだ。
翌日目が覚めると、いつの間にか布団に入ってきていた茜に抱き枕にされていた。
いや、茜より俺が先に起きる時点で異常事態なのだが...きっと一晩で作ってしまったのだろう。茜はそういうやつだ。そんな茜の寝顔は...残念ながら見えない。俺の胸の中に思いっきり顔をうずめている。いや、まだ腹の傷治って...いる。やれやれ、しばらく動けそうにない。
「影さん、茜さん、朝ですよー...って、何やってるんですか!?」
「朝から叫ぶなネプギア...茜が起きるだろ。...しばらく眠らせてやってくれ。少し頑張りすぎたみたいだからな。」
机の上を見ると、そこには今までのシェアデュアライザーやマジェディヴァッガーとも違う、まったく新しい形状の何かがあった。
「これは...」
「新しいシェアデュアライザー。茜が一晩で、俺に合わせた設計で作ったものだ。なぁ、ネプギア。」
「はい...?」
「俺はいつまで、この子の目に頼りきりなんだろうな。」
「茜さんの目...領域把握ですか?」
「あぁ。茜のこの力は茜本人の意思とは関係ない。だのに、俺が絡むと遺憾なくこの力を使うんだ。自分の限界なんて無視して。俺は...それがたまらなく怖い。わかってて頼ってしまう自分も含めて。」
茜がわかってくれるからいい、とは言ったが、この言葉に嘘はない。同時に、今ネプギアに言ったこともまた嘘ではない。わかってる、自分勝手なことくらい。でも、それで茜が
「その優しさがあって...なんで影さんは悪魔になれるんですか...?」
「そうだな...人ではないから悪魔、なのかもな。」
「え...?」
「いや、忘れてくれ。少なくともまだ、俺は人間だ。生物学的にはな。だからいいんだ、今は。...今はこれでいい。いいんだよ。」
喋りすぎた。いや、喋ってもいいのだろう。
だが、妹にこんな話をすることは俺が嫌なのだ。ネプギアがいくら俺に関する記憶と記録を消されていたとしても、それは変わらない。変わらないのだ。
「...そうですか。それで、今日はゲイムキャラさんのところへ行くんですか?」
「あぁ。茜が起きて準備できたら飯食べて出発だ。あわよくばあの四人も手伝ってほしいが...まぁ、いいか。新型を試すイベントはあるだろ。ギアは茜が起きるまでのんびりしててくれ。多分、また戦闘だろうから。」
「...はい。ゲイムキャラさんを犯罪組織の手から守る。そして力を貸してもらう...」
「女神を助けるために。...あぁ、そうさ。あの子にちゃんともう一度会わなきゃダメだから。それまでは生きてないとな。はは。」
「あの子...?」
「いや、こっちの話だ。また後で、ネプギア。」
「はい。」
さてはて、ここに凍月影の長すぎる一日が始まるのだが...それはまた次の話へ。
次回、第23話「仮の亡霊」
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