「まず、キラーマシンを叩く!」
「おっけー!」
ネプギアの撤退を確認し、キラーマシンを見据える。上限は茜曰く48。一つ30秒としても24分はかかる。だったらもう何も気にせず最速で最短で倒して行くしかあるまいて。
「黒切羽展開...穿ち抜くぜ...!」
使い慣れた武器でもってキラーマシンにビームの雨と刃の風を浴びせる。この出力この威力、この感覚...!完全にあの頃と同じ...!
「ははっ...さすが茜...感謝してもしきれないって!」
「うれしーこと言ってくれるね!」
茜が一機両断するのとこちらが一機解体するのはほぼ同時、残りは五体。
「増えたな...」
「増えたね...作戦変更だよえー君。」
「あぁ、まずはロムを黙らせよう。」
洗脳され、キラーマシンとともに弾幕を形成するロムは脅威ではある。だが、今の出力ではそこまで女神に有効打は与えられない。射撃の威力を見れば一目瞭然だ。だが、出力の差がなんだ。こちらには経験と技量がある。女神といえど幼子、悪いが...俺の相手にはならない。
「えー君、任せていい?私じゃ分が悪いからさ。」
「あぁ。」
女神の洗脳なんてものは結構なリソースを消費するはずだ。だとしたら、術者が近くにいる。あるいは直接何かで操っているの二択...だったら一方的にたたけば解決だ。
「悪いがロム...お兄ちゃんのお仕置きの時間だ...!」
「...!」
ロムはこちらに気づき氷塊を連発してくる。
軌道も威力もさすがは女神といったところ。だが、それ故に読みやすい。
「ふっ...存外、気楽なものだ!」
懐に入る。魔法の展開も何も間に合わない。ロムの腹に向けてフルパワーの射撃を放つ...
「っ...!」
...直前に真横から氷が走ってきた。
「ちっ...姉想いはいいが間が悪い!」
「ロムちゃんにひどいことしないで!」
「...!」
状況が変わった。おそらくネプギアから居場所を聞いたラムが後先構わず突っ込んできて、攻撃されようとしているロムを反射的に援護したのだろう。洗脳されていると説明をしたのかネプギアは。
「ちぃ...ラム!ロムは洗脳されている!今は眠ってもらうしか手がない!」
「洗脳...!?何よそれ、そんなこと聞いてないわよ!」
説明してねぇのかよ...!とも思ったが冷静になれ。再編の影響で候補生たちはかなり記憶が持っていかれている。ネプギアとの面識がなくなったと考えるのが妥当か。なら聞いたとしても聞き入れるはずはあるまい。
「厄介...!たまに聞き分けが悪かったあの頃が四六時中か!くそっ!」
洗脳されているロムはわかるが洗脳されてないラムまで俺に攻撃してくる。ええい、俺もさすがに怒るぞ...!
「だぁぁぁぁ!この際だ!積年の怒りから何から何までぶつけてやる!あるんだろ、茜!」
「そりゃえー君の愛用してた力の再現だよ?あるに決まってるじゃん!」
「さんきゅ...それじゃあやるか!」
《open the arms stand by... 》
「リリース...ゼロ!」
《strike form awakening 》
装甲が開き、黒一色の鎧に赤色の線が走る。ストライクフォーム...正式名称は鎧装装着臨時出力上限解放第一形態。ちなみに先の掛け声は気分だ。
「ふぅ...二人まとめて説教してやる、そこに直れ!」
俺の銃剣は火縄銃の腹を丸々刀身にしたようなデザインだ。だから普通に剣として使えるし、銃としても使える。普通の銃剣の剣とは違って飾りみたいではないのだ。
「何よ、それ...!」
「...悪魔の力さ。すぐに終わらせてやる...!」
黒切羽を展開して二人を同じ位置に誘導し、直上より必殺の一閃を構える。
「《
二本の銃剣の斬撃と射撃。それに黒切羽のビーム反射と斬撃。手数以上の攻撃の雨風を二人に同時に叩き込む俺の必殺技。エグゼドライヴ。これができるのは鎧装装着を使っている時だからもう二度と使えないと思っていたけど...奇怪なものだよ、ほんと。
「きゃぁぁぁぁ!?」
落ちていくロムラム。なんかデジャヴだがしょうがない。かたや洗脳、片や妨害...ラムにしたら結構とばっちりだが状況がそれは甘えだという。
《time out 》
「ストライクフォームが切れたか...いやいい。茜!あと何機だ!?」
「んー、34機!」
「飽きてくるよなこの量だと...!」
だがそうも言ってられない。いますぐに茜のいる戦域へ戻らねば。考えたくもないが、茜と一緒に戦ってるときはいつも脳裏にあの光景が浮かび上がってしょうがない。
「できました...!」
跳びあがった直後、戦域に一つの声が響いた。その声の主はネプギア。そして手には何かしらのディスク...そう、ゲイムキャラの復元が終わったのだ。
「おっけー、それじゃあギアちゃんはそれを台座にはめて!」
「それでこいつらが封印されるはずだ!」
全部倒しても構わなそうではあるがかなり疲れてきていてまだようやく1/4だから殲滅は現実的じゃない。
「はい...!これで...!」
ネプギアがディスクをはめる。それと同時にディスクが発光、瞬く間にキラーマシンが消滅する。後に残ったのは弾幕で削られた地面と雪と氷と夕焼けであった。
「つーかーれーたー...疲れたよえー君...」
「安堵が早い...怪我はないか?」
「かすり傷ひとつもないよ、安心して。」
「...ならいいんだ。」
「あーでも帰るときおぶってくれると嬉しいな。もう歩けそうにないんだもん。」
「あのなぁ...ロムラムはどうしろと言うんだよじゃあ...」
「ギアちゃんがなんとかしてくれるでしょ。それか...そうだ!えーっと、これをこうしてこうこう。」
戦闘が終わりひと段落して、ネプギアはゲイムキャラと、俺は茜と会話して無事を確認している。心配しすぎかもしれないが、だが茜はいつも通り俺を翻弄する。
「じゃーん、抱っこひもだよ!これでロムちゃんかラムちゃん背負って...えーっと私は...えー君の背中が埋まっちゃったから...お姫様抱っこしてくれる...?」
「あのなぁ、そもそもそれを作ったのかというツッコミも出てくるし自分で歩くという選択肢はないのかよ!あーもうわかった!だから...キャベツと油揚げのコンソメ煮、頼む。」
「...それが好きだね、えー君は。」
「あぁ。けど自分で作るより茜が作ってくれたほうがおいしい。レシピは俺が教えたはずなのにな...」
「...一言なければロマンチックだったのにね。さすがはえー君、ぶれないわけだ。その答えは割と簡単だよ。」
「そうなのか?」
「うん、とってもシンプル。愛、だよ。」
「なぜ、そこで愛!?」
言わされた感が強いが俺は本当に謎に思っていた。自分で作ることも悪魔時代ちょくちょくやっていたが、一度茜が作ったのを食べると自分が作ったのでは物足りなくなってしまったのだ。レシピは同じはずなのに...
「ほんと、いつでもイチャイチャしてますね...」
「およ?ギアちゃんも仲間になる?」
「嫌です!...それより、影さん。これがルウィーのゲイムキャラさんからです。」
ネプギアから渡されたのは3つのMEC。
「えー君にとって何より大切な力だね。戻ったらVメモリに規格変更するから...ご飯食べたら徹夜かな...」
「いいや寝ろよ...急ぐわけでもないんだし、それに...」
「それに?」
「......しばらくルウィーにいたいんだ。」
これは俺のわがままだった。声になるとは思わず、言った後で俺は何を言ってるんだとも思った。
「...そっか。ギアちゃん、ルウィーにいれて何日だと思う?」
「え?そんなにないんじゃないですか?」
「ゲイムキャラの協力を得るという点で、破壊を狙ってるあいつらには遅れを取るわけにはいかない...でも、休まないとえー君が壊れちゃう。だから...一日だけちょうだい。えー君は無感情に見えて...感情はあるんだよ。殺しすぎてるだけで。だからせめてゆっくりして、また戦う。えー君しかいないっていうのが皮肉だよね。私じゃ戦えても、えー君みたいなことは...それこそえー君が止めに来るから、さ。」
だが茜には俺の中身を見抜かれていた。領域把握かそれとも茜の勘かはわからないが...こういう時、茜は俺をちゃんと見てくれるのだ。そんな茜が、俺は大切で、無二の親友であるとそう思っている。だから俺みたいなことは茜にやらせるわけにはいかないのだ。だが最近、茜は「親友」というくくりにはもう入らないんじゃないか。そういう問題提起がしょっちゅう脳内で起きている。何かこう、親友よりもっと大事な存在...それこそ「恋人」のような...
「...っ...そうだな。あぁ...ありがとう二人とも、助かる...それじゃあ、ロムラム連れて教会に戻ろうか...」
「はい、そうですね。」
「えー君のお姫様抱っこだー、やったー!」
「...はぁ、わかったよ。」
呆れながら俺はロムを背負いつつ茜をお姫様抱っこした。
なんでこんなことやってるんだろうな。
「悪くない、って顔してるよ、えー君。」
「...はぁ、そういうとこだぞ、茜。」
二人してクスッと笑いながらロムラムギア含め五人で教会に戻ったのだった。今日はぐっすり眠れそうだ。
次回...はなんと!シモツキさんとこのイリゼさんを迎えてお送りするコラボストーリーのをお送りします!
告知も何もいきなりですが...気になる内容は11/1をお楽しみに!
次回、「断章1 原初との邂逅」
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