再編世界の特異点   作:Feldelt

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断章3 対極にして同一

互いの信条は真逆。考え方は違うことはある。でも、影君の考え方には「そんなの間違ってる」と声を大にして言いたい。ほかの誰でもない、影君自身のために。

 

「はぁぁぁ!」

「来るか...!」

 

私はバスタードソードを片手持ち両手持ちを切り替えながら影君に何回か斬りかかる。が、影君は私の剣をどこ吹く風とひらりひらりとかわしていく。まるで剣の軌道が読み切られているかのように。

 

「軽く、重い...そして...薄く、厚いといったところか...その切り替えには意図が...ないとそんな動きなんてしないか。力が変なところに逃げているのだからな...」

「やっぱり、茜と同じ...!?」

 

茜とやった時もそうだ。私の動きは読まれていた。影君が茜と違うのは、武器が拳銃であるということと、回避に専念していることくらいだ。一応私のこの戦法は回避してくる相手にも有効ではある...意図的に剣をふるう速度を変えることによって相手の間合いを狂わせることができるからだ。でも、影君はそんな様子は一切見せていない。

 

「あんな力が二つとあってたまるか。あれは茜だけのもの...もはや呪いの領域だ。」

「呪い...」

「さて...かなり奇怪な動きをするが...その意図、見定めさせてもらおうか!」

「っ...!」

 

影君はコートの裏からナイフを二本取り出し両手に持って接近してくる。

今までのやり取りでわかったのは影君は後出しじゃんけん型...相手の動きを見てからそれに合わせた動きで対応する...私も相手の動きを見て戦うけど、相手に対応させる側だから...ここでも真逆というわけだね。

 

「やる...!」

「そこっ...!」

 

影君の接近に合わせてバスタードソードを両手持ちにして隙を見せてからその隙を突いてきたところに片手持ちの斬撃を入れる...も、きれいにナイフで防がれて投げナイフが飛んでくる。私の右側をあと少しで当たるというところを通っていったナイフには目もくれず、拳銃を取り出す影君に突っ込む。

 

「そんな余裕は、与えない...!」

「だろうな!」

 

逆袈裟斬りは左手で持ってたナイフで防がれ、影君からの蹴りは左腕を割り込ませて防ぐ。その場で一瞬私と影君は目が合って...そして離れた。

 

「...まるで茜とやってるかのような、そんな感覚だな...何か読みがずれている...なるほど茜が俺と似ているというだけはあるな...」

「その言葉、そっくりそのままお返しするよ。」

 

茜の把握とは違うんだろうけど...影君には私の行動は読み切られていた。変身出来たら...とは思っているけど茜でぎりぎりだったと思うと一対一でどうなるかはわからない。それに影君の動きは茜というよりかは私に似ていて...茜が言ってたことを身をもって体感してるよ。

 

「ここまでとなると...出し惜しみはできないか。そうだろイリゼ。」

「やっぱりわかる...?じゃあ、行くよ!」

「あぁ、来い。」

 

とはいえ熱が入ってきた。まるで茜と再戦しているかのような読みあい。影君の動きの二手先三手先を考えながら剣を振っていく。影君も影君でそれに合わせて手を出してくる。攻撃させられているような感覚はあるけど、何もしなかったらやられてしまう隙のなさ。それが私のとれる選択肢を減らしてくる。

 

(たくさんの選択肢で相手を混乱させるのが私の手法...だけど影君は相手の行動を見てからそれに合わせた対策をねじ込んでくる...それだけじゃない、何をしてくるか基本的には読まれている...恐ろしいまでの思考速度だよ...)

 

この影君の動きは茜と同じかと思っていた。けど、似て非なるもの。茜がその場その場をさばききるのが得意だとするなら、影君は大局を見て最終的な着地点に誘導していくタイプ。それに気づいたときにはもう、私は影君の術中にはまっていた。

 

「甘い」

「っ...!」

「そこ」

「くっ...」

 

だんだん影君に押されてきている。最初の方は互角だった。だけど、今となっては防戦一方。というか、防戦させられている。これが大局への詰めの段階...!

 

(常に行動の選択肢は複数ある...けど、最善を選ぶと罠があって、次善手を打っても徐々に悪くなる...最後に行きつくところは同じ...軽く未来を見てるんじゃないかというくらい読みが正確で、やりたいことをやらせてくれない...!)

 

「はぁ...よく耐える...」

「影君だって...結構息上がってるんじゃないの?」

「そうだな...そう見えてるだけじゃないのか?」

「言うねぇ!」

「そりゃな!」

 

影君は右手にナイフを持って、私は左手にバスタードソードを持って何回目かの正対からの激突をする。けど、この時私に秘策ありだった。普通にやっては影君には勝てない。だから...普通じゃないことをする。

 

(ここだ!)

 

「なっ...」

 

ナイフとバスタードソードが触れる直前にバスタードソードを手放し、影君の重心を少し前に崩した。右に避けた私はこのまま背後に回って影君に一撃を...!

 

「ひゃうっ!?」

 

その時私に変な感覚が襲い掛かった。何が起きたのか理解したのは前に倒れこむ影君の慣性を利用されて倒された時だ。同時にその時は私の胸元にナイフが突き立てられてもいた。

 

「...悪いねレディ、こちとら外道でね。」

「...さすがに胸を揉むのは反則じゃないかな!?なんてことしてくれるの!?セクハラだよセクハラ!」

「お嫁にいけないとでもほざくか?だがしかし人間の悪性という点ではこれ以上わかりやすい幕引きもあるまいよ。」

「っ...」

 

影君の目は死んでいた。多分あの行動も、手段としてとっただけのもの。他意がないというのは理解出来る。けど、私は影君の目が死んでいるのが気に入らないし、それに今ここでナイフが突き立てられているからって...まだ私は負けていない。負けを認めたら...影君の言ってる人間の悪性こそが真実だと私が認めてしまうということ。そんなことは絶対にできない。だから私は起き上がって影君を跳ね除けた。

 

「ぐっ...」

「んなっ...!?」

 

当然、突き立てられていたナイフは私に深々と刺さり、血が溢れてくる。構うものか。まだ、やれるのだから。

 

 


 

 

勝利を確信した訳ではない...が、こうなるのは完全に予想の外だ。跳ね除けられた俺は体勢を立て直す...が、そんな余裕はない。

 

「手負いというかほぼ致命傷ってのに...動きがさっきと同等からそれ以上...冗談だろ!」

「冗談では...ない!」

 

バスタードソードを拾ったイリゼは出血なんて意にも介さずこちらに鋭い斬撃を叩き込んでくる。回避が精一杯だが...考えるべきはなんだ、なぜ動いているのかか、それともなぜこんな無茶をしでかしているのかか?

 

「余計な思考はできないか...!ちぃ...!」

 

使いたくはなかったがこうなってはしょうがない。左脚の義足にあるブーストカートリッジを一本消費して大きめのバックステップを取り、空中でシャドウ-Cを構える。入っているのは通常弾。同時に左手には通常拳銃...こちらも一発しか入っていないが、これはイリゼは弾切れだと思っている。だからここからまず一発...イリゼは無意識のうちに左へ避ける癖がある...それを狙えば...!

 

「...!これは誘導...!」

「そこっ...!」

 

シャドウ-Cから放たれた弾丸はイリゼに刺さるナイフの柄へ進む。回避中一瞬できる無防備な隙。だが、それは演算において先読みができる。あとはそこに当たるように撃つだけだ。

 

「がうっ...!?ぐ......使い切ったね...弾丸を...!」

「嘘だろまだ...というかもう死んでてもおかしくないってのに...!」

 

ありえない。いくら女神の超常の身体とはいえ、ここまでの出血量と今の弾丸の衝撃は耐えられるものじゃない。だのに、まだイリゼは二本の脚で立っている。不条理だ。

 

「折れるものか...倒れるものか...人の意思は、影君が言うほどに腐り果てたものではない!」

「それだけで...それだけの意思で立っていると...」

「そう...私を信じるみんなを信じる私の意思で...みんなを信じる私を信じるみんなの意思で立っている!それに...影君の未来のためにも...!」

「そんなもの...!っ...!」

 

もう意識があるのかすらわからないイリゼが立っている。武器もまだ構えている。弾丸再装填の時間はない。だが、それ以上に俺は...イリゼが明に見える。それだけで俺の戦意はもうほとんど削がれた。

 

(再装填は出来なくともナイフをもう一度突き立てれば殺せる...だが...こいつは茜の友人で、女神で...俺の未来のためとも言いながらそこに立っている...そして何より明が重なってしょうがない...)

 

イリゼには気づかれていないが、弾切れのシャドウ-Cを向ける俺の右手は震えていた。それが何よりの、敗北の証。

 

「だから、私は...!」

「だったら休めよ、大馬鹿女神がぁぁぁぁぁ!!!!」

 

シャドウ-Cも拳銃も投げうち、俺は両の義足のカートリッジをフル運用してイリゼに接近。物理的に人間離れした速度はもう出血多量で朦朧としてるイリゼには追いきれず、俺は渾身の腹パンでもってイリゼを気絶させる。危うく威力のたがを外すところだったが無事気絶におさめた俺は眼帯を外し、今あるもの全てを用いてイリゼの救命作業に入るのだった。

 

「柄じゃないがやるしかねぇ...死なれたら困るわけじゃないが...死なれたら嫌だからな...明...頼む、お兄ちゃんに少し力をくれ...」

 

 


 

 

「知らない天井だ...って、ここは...っ...」

 

胸のところが痛い。そうか、私は影君と戦って、それで...どうなったんだっけ...

 

「よぉ...イリゼ...起きたみたいだな...」

「影君...?って、どうしたのそんなぐったりして!痛っ...」

「塞ぎきってないんだ無理をするな...というか女神の身体というものは自己修復機能がおかしい...DG細胞か何かですかねぇ...」

「いや違うよ!?確かに女神の身体は回復力もすごいけどさ!ねぇ影君。」

「お前の勝ちだよ、イリゼ。」

「え...?」

 

結局戦いはどうなったのかわからないから結果を聞こうと...でも多分こんな感じだから今度こそやられちゃったのかなとも思ったんだけど...影君から出たのは逆の言葉。

 

「だからお前は生きている。もっともしばらくは絶対安静...俺もしばらく動けそうにないしな...」

 

よく見ると影君はコートを着ていなかった。私の上にかけられていたのは数秒後に気づいたけど、そこで私は疑問が生まれた。

 

「影君って...医療技術も持ってたの...?」

「どう説明したものか...まずナイフを抜き取り止血のため氷結、それだけじゃ死ぬからとりあえず傷口だけ氷の糸で縫合のち固定...あとは胴についた血を抜き取って、服は氷結で水分を落とすだけじゃどうにもならないからとりあえず現在ヘモグロビンを遠心分離中...ってとこだな。あんだけ流血しておいて下側の服が血で汚れてないのは助かったよ...いやほんとに。茜に殺されかねん...」

「そう...って今なんて!?私の服は今遠心分離中!?」

「あぁ。血が着いた服を着たくはあるまい。着替えもどこにあるか捜索してたらお前が死ぬ以上、しばらくそのコート一枚で我慢しろ。」

「いや我慢って問題じゃなくて......見たの...!?」

「そんなことを気にしてたら死ぬぞ。安心しろ、俺は巨乳は死ぬほど嫌いだ。」

「な、な、なぁぁぁぁ!?」

 

命を救うためしょうがないとはいっても、考えうる限り最悪なんだけど!助けてもらってあれだけど死にたい!むしろ殺して!恥ずかしさでもうなんも考えられないんだけど!

 

「...まぁそうなるわな。」

「──っ!」

 

影君はこうなることまで読んでいた...!?

だからどこまで読んでるの...!?

 

「もうお嫁にいけない...せ、責任取ってよね!?!?」

「救命した責任ってなんだよ...というかほんとに言うんだ...」

「ぐはぁ!?」

 

結果、ただただ私が自爆するだけの時間が流れていくのだった。

うぅ、ただただ恥ずかしい...

 




茜「さすがえー君!ぜーちゃんとの戦いは見ごたえあったなー。とはいえ...いやはやぜーちゃんもぜーちゃんですっちゃかめっちゃかだよね。女神じゃなかったら死んじゃってたよ?というか影君も殺す気だったよねあれ...っていうか!えー君なんてことしてるの!いくらえー君がその方向でぜーちゃんには全く興味を示さないとわかっていてもそれは看過できないかな!?帰ってきたらお説教だよ!」

次回、えー君と私の昔話!私がぜーちゃんに話してないことまで話すのがえー君だよ。「断章4 昔話、落陽からまた昇るまで」

茜「感想、評価、待ってるよー!」

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