「さて、と。証明の時間だ...」
索敵を入念にしながら周囲を見渡す。ここが本来のバーチャフォレストならモンスターは取るに足らない。だが、ここは全くもって訳が分からない世界。何があってもおかしくない。そんなさなか、ひとつの反応があった。
「10時の方向、ひとつ!」
シャドウ-Cを構える。が、その方向にはいない。てことは上か...!
「影君!」
「ちぃ...!」
上に向けるより斥力フィールドを展開しながら下がった方が早い。イリゼも気づいたようだ。だが...こいつは強敵...!
「......!?」
着地した敵影を見る。間違いない。あれは俺だ。俺の姿を投影した、質量のある虚像。虚写し...!?
「そんなはずはない、だが...」
「あれは、影君...?」
「あぁ...俺自身そのものだ。」
自分自身と戦うことはない。故に自分の考え方を客観視する必要がある。だが、『凍月影』を模したのなら...自分自身を客観視しないといけないというその思考の間を突いてくる。故に...動けない。
「っ...」
俺と俺みたいな何かは微動だにしない。イリゼも動かない。なんならイリゼはまだ完治とは言えない...だから俺が戦わなきゃなのだが笑えないくらいには動けない。動いた方が、負ける。
「イリゼ、この戦いはお前がマスターピースだ。とはいえあれが俺の思考パターンとかを確実にコピーしている場合...何とも言えないがな。だが頼む。このまま微動だにしないのは時間の無駄だからな。」
「......うん。」
ふぅ、と一呼吸置く。コルトガバメントのリロードは済ませた。なれば、もう止まっていても仕方がない。
「行くぞ!」
発砲と同時に突撃、同時に斥力フィールドを張りながら俺のような何かの出方をうかがう。俺なら先手を打たれた場合斥力フィールドの展開あるいは回避から反撃に移る。
「影君と戦うのは...二度目になるのかな!」
「イリゼは...いや、この戦い、任せる!」
「えぇ!?さすがに二回目とはいえど厳しいよ!?」
それはその通りだ。それにイリゼはまだ胸の傷が完治していない。だが...この場合俺は俺の思考をもとにイリゼを動かすことに集中できる。勝つために。
「わかってるさ...イリゼ、お前の戦いをしろ。47秒後に飛んでそのまま、その32秒後に同様に。」
「う、うん!」
俺のような何かはイリゼを無視して俺の方にくる。それはそうだ。俺だって、そうするんだからな...
「させない!」
だが、そうはイリゼがおろさない。そして、イリゼの対応は片手間でできるものではない。
「とはいえ...っと、47秒...今!」
「いい子だ!」
シャドウ-Cには加速式貫通弾。一撃では仕留められんことくらいわかっている...!
「...!」
「防ぐか...!」
「でも!」
イリゼが攻勢をかける。加速式貫通弾で穿った防御や崩したバランスはイリゼにとっては付け入る隙となる。
「次、32秒...!」
飛んだイリゼ。同様の動きに俺を警戒する俺のような何か。だが、これはブラフ。本命は...
「やっぱり影君、一番伝えたいことは黙ってるんだね!」
「二度目なら見破ると思ってな...」
俺に対して警戒した俺のような何かはイリゼに対しては警戒の度合いを下げた。それが敗着。俺だってそうする...敗着だ。
「せぇい!」
イリゼの上からの斬撃がクリーンヒット。この一閃だけあれば、勝てる。
「貰った...!」
コルトガバメントとナイフで急所を狙い、イリゼはこちらの攻撃を目標が避けたところを詰めて無事に撃破する。
「ふぅ...疲れたな...あぁ、疲れた。」
「そう、だね...って実際は5分くらいだよ!?なんなら私戦ってたの2分じゃん!」
「そりゃぁな...だがな、自分自身を鏡に映したようなやつと戦うのは本当に疲れる...証明は次回だ。今はオーバーヒートしつつある思考回路を休めないといけない...」
「えぇ...また伸びるの...?」
「大丈夫だ、年内には証明も終わらせておさらばするさ。」
「メタい!メタいって影君!」
「なんならこの話2000字行ってないからな...つまり、そういうことだ。」
「そういうことだって...茜もびっくりだろうねほんと...」
「本来なら茜の役回りなのだがな...まぁいい。寝る。」
「あぁうんおやすみ...って寝るの!?また寝るの!?」
「情報整理は睡眠が効率いいんだよ。まぁ軽く30分くらいだ、ちょっと待ってろくらいの感覚だよ...さてはてどうしたものか。」
「どうしたものかも私が言いたい...」
「まぁ、あれだ。おやすみ。」
意識を再びどこかへと飛ばし、草むらの上でそよ風を布団にして眠ることにした。
茜「えー君の睡眠は食事より重要だったりするぞ!ぜーちゃんはそれに気づくかな!?」
次回、断章8「現空間が二つの次元の直積集合の部分集合であることの証明」
茜「感想、評価等、待ってるよー!」