さくっと行きましょうさくっと!
「ここか。」
歩き続けて数分、俺とイリゼはふたつの扉を見つけた。それぞれがそれぞれの世界に戻るための扉。不思議と、どちらに行くべきかはわかる。
「もうお別れなんだね。なんか、すっごい色々あったからとても長い時間を過ごしたような、そんな気がするよ。」
「俺もだ。いやはや、まさか初対面の少女と茜の話をすることになるとは到底思いもしなかったけどな...」
扉の前でのんびりと会話しながら今までを振り返る。長いようで短く、短いようで長かった。
「でも、そのおかげでこのよくわからん空間を協力してどうにかすることはできたのだから...持つべきものはなんとやら、だな...」
「そうだね...途中色々あったけど...ねぇ影君。」
「無理だ、諦めろ。」
「まだ何も言ってないよ!?」
「大方は読める...悪いが前にも言った、俺にはこの生き方しかできない。今更変えられるか...だからせめて...背負うのは俺だけでいいんだよ...」
「っ...結局、変わらないんだね。」
イリゼは信用、俺は排除。
何も変わらない。それでいい。
「あくまでも、悪魔であって...人間であって...神ならざる故に裁かれる。それでいいんだよ。」
「...本当に?それじゃあ茜を...」
「っ...お前のような、勘のいい女神は...いや、わかるか。わかるはずだ。俺だけわからなかっただけで。」
思えば...そうだ。いつだって俺はそうだ。自分自身は勘定には入らない。入れるだけ無駄だ。だが...茜は...
「...嫌なものだな、簡単に死ねないというのは。本来なら、俺は生きてちゃいけないはずなんだ。死んでなきゃダメなんだ。4桁5桁殺して、生きてていいはずがない。」
「......」
「イリゼ、お前は俺の未来のためにとか言ってあんな無茶をしでかしたわけだが...ねぇよ、俺に未来なんてどこにも。あってたまるか。存在しちゃいけないんだ、そんなものは。」
「そんなこと...そんなこと無い...!」
「...眩しいな、イリゼは。」
俺は俺の在り方をまた否定したイリゼの頭に右手を乗せた。イリゼの目を見て、俺は思った。きっとこの子は俺みたいな人間は見たことがない。だからこんなにもまっすぐでいられるのだと。それゆえに、俺はイリゼの頭を撫でた。
「え、影君...?」
「その眩しさを、信じる心を、揺るがぬ芯を...失うことさえなければ、また少し違ったのかな...」
「え...?」
困惑するイリゼ。それを後目に、俺は俺の世界への扉の戸を開ける。
「じゃあな、イリゼ。出来ればもう二度と会いたくないかな。茜と一緒だったらまぁ、いいけど。」
「今サラッと傷つくようなことを言ったね!?フォロー入ったからいいけど...でも、またね影君。私は、貴方を変えることを諦めたりなんてしないから。茜によろしくね。」
「...そうかい。」
それが、俺とイリゼの最後の会話だった。
次に目が覚めたのはあの空間に行き着く前に泊まっていたルウィーのホテルの一室だった。
「おはよーえー君。ゆっくり眠れた?」
懐かしさすら感じる聞きなれた声。そうか、帰ってきたのか。俺の戦場に。
「...全く寝た感じがしない...そんな長い夢を見ていた気がするんだ。」
「夢?えー君が夢を見るなんて珍しいね。どんな夢だったの?」
「果たしてどう説明したものか...けど、茜。イリゼ...原初の女神の複製体って覚えているか?」
イリゼの名を出した途端、茜は目を見開いた。とても驚いた様子で次にはこういった。
「ぜーちゃん?覚えているも何も、忘れるわけないよ。...そっか、えー君ぜーちゃんに会ったんだね。似てたでしょ?そして...真逆だったでしょ?」
「そうだな...その通りだ。茜によろしく、だとさ。」
「そっか、元気そうだった?」
「それはもう。...なぁ、茜。」
「なぁに、えー君。」
いつの間にか隣にいた茜の肩に頭を乗せる。暖かい。
「少し、このままでいさせてくれ。疲れた...」
「...いーよえー君。好きにして。」
これで、訳の分からない空間の中の話は終わった。これからまた、理不尽な世界と向き合う戦いの日々が始まる。
「...暖かいな...」
せめてこの暖かさだけは護ると決めて。
コラボ完結!シモツキさんありがとうございました!
積もる話は後で活動報告にぶん投げます。
次回、第25話「緑の大地と過去からの刺客」
感想、評価等、お待ちしてます!