再編世界の特異点   作:Feldelt

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第26話 歯車は欠けて狂って

結局右腕は凍らせて止血、茜を左腕で抱き抱えながら教会職員とネプギアに先導される形で教会に向かった。

 

「影さん...着きました。」

「そうか。...話はネプギアだけでしてこい...と言いたいが。おあいにくさま、ここの教祖は狂信者だからな...」

「容赦のない物言いだねえー君...いやまぁ確かにその表現は確かに的を射ているけど...」

「......入ります。」

「あぁ。」

 

教会職員の声に続くように教会に入る。箱崎チカ...ベールに対しての絶対狂信者は...さて、引き金を引かないという選択ができるか怪しいものだ。

 

「...イストワールから話は聞いておりますわ。お姉様を救出するためにゲイムキャラの力を貸して欲しいと...」

「はい。」

「それで...なぜ民を殺したのです?お姉様を助けるためとは到底思えませんが。」

「それは...そうだな。だが女神にとって不要なものだ。生かしておく価値もない。そうだろう?」

「...確かに仙道京一は二十年前に児童虐待、育児放棄の前科があり一度妻とともに刑務所に入所...出所後今度は妻に対して暴行を加え妻は逃げ...二年前逃げた先で急性心不全により死亡。この件に関しては暴行との関連が強いとは言い切れないため不問になりましたが...殺す必要はないと私は考えますわ。お姉様がいなくとも最低限の治安はある。むしろわたくしはお姉様含めた女神様のためにあのような行動をとるあなた方をどう信用しろとおっしゃるのです?」

「それは...」

「なるほど筋は通っている。だが...俺がいつ、ベール"も"助けると言った?」

「...!?」

 

少なからず殺気が出た。無論これは冗談で、不本意ではあるが助けることにはしている。見殺しにするのが嫌だからという方が本音に近い。善意でもってあの緑の女神を助けられない辺り、私怨の権化だとは思うけれども。

 

「それ、どういう意味ですの?」

「そうです、どういう意味ですか!」

 

チカとネプギアがこぞって問う。

 

「...言葉通りの意味だ。...まぁ冗談だが。安心しろ、女神は助けるさ。それ以外に興味が無い、それが俺だ。プラネテューヌの女神候補生ネプギアの保護者代わりとも言っていい。現に今交渉の主導権は誰にある。」

「......イストワールから聞いていた人物像とはかけ離れていないのが癪ですわ。」

「それはどうも。さぁ、教えてもらおうか。ゲイムキャラの居場所を。どうせ犯罪組織も群がってきてくる頃だ。破壊されるのとそうでないのと...どちらがいいか、女神不在の中最低限の治安を維持できている賢なる教祖の答えを聞かせてもらおう。」

「...はぁ。わかりましたわ。ただし場所を教えるのはネプギアさんだけにしますわ。」

「...感謝しよう。頼むぞネプギア。」

「...わかりました。」

 

ネプギアが聞き出している間に俺は茜を見る。まだ血の気が引いている。

 

「大丈夫か?」

「ずっとこのままでいて欲しいくらいには、大丈夫じゃないかな。」

「......そうか。」

 

ネプギアとチカは話をしている。唇の動き、舌の動き...見える部分だけでも見ておけば話は掴める...

 

「ねぇ、えー君。」

「なんだ、茜。」

「...もしも...ブランちゃんからもえー君の記憶がなくなってたら...どうする‪?」

「さてどうしたものか...いや、きっとそうだろう。そしたらもう一回最初からやり直しだ。あの子の心を開くまで。」

「...辛いでしょ、そんなの。」

「辛いさ。とても辛い。はじめましてなんて...言えたものじゃないさ。けどきっとそうなる。助けても、俺は苦しむだけだ。でもブランを失うのはもっと辛い。ブランがいるから...俺は生きてる。」

「...そっか。」

「だから茜...俺を独りにしないでくれ...」

 

この話はもしもの話。だが、本当にそれが現実と化したのなら...俺はきっと耐えられない。その事実が左腕に込める力を強くする。

 

「わーお、えー君直球勝負もできるんだ...びっくりしたよ。...私はえー君を独りになんてさせないよ。そばにいる。できることならずっと。けど...私はえー君がいればそれでいい。えー君が完全にブランちゃんに取られるのが怖い。怖いよ...こんな考えをする自分が怖い。ブランちゃんもえー君も大好きなのに、なのに...!」

「...それが普通さ。それでいいんだ。そのうち自分で折り合いをつけることが出来ればそれでいい。俺みたいに自分自身を一切価値観に入れないなんてことをしなければいいんだよ...」

「...自覚あったの...?」

「最近やっとな...だからといって今更思考回路を変えるなんてことは出来ないが。」

「...ほんと、えー君は大バカさんだ。」

「そう、なのかもな。」

 

話を終えたネプギアが戻ってくる。頃合いか。

 

「影さん、茜さん。ゲイムキャラさんの居場所がわかりました。ですので...」

「俺たち2人をここで拘束...あるいはプラネテューヌに更迭か?唇の動きでわかったぞ。」

「...!?見えてたんですか...!?」

「素直に応じるわけないだろ...あの箱崎チカが。場所さえ分かればこっちのもんだ。犯罪組織による破壊の前に立ち回る。」

「...こーゆーところで賢いのはほんと頼れるし毎回惚れ直すんだけど...どーしよっか。囲まれちゃったよ?」

「教会職員は殺したくないな...それをわかってて差し向けてる。しょうがない。殺さなければいい理論で何とかしよう。」

 

予想通りすぎて特筆した感想も何も出ないというのが率直なところだ。

 

「あの二人を拘束なさい!」

「えー君!」

「サクッと済ませよう。」

 

号令と指パッチン。俺と茜を中心に冷気が走り、瞬く間に人間を生きたまま凍らせる。

 

「なっ...」

「行くぞネプギア。もうここに用はない。それにお前が来ようと来まいと...場所はもうわかる。言ったろ?唇の動きを見たと。」

「...卑怯ですね。」

「あぁそうだな。だが合理的だ。」

 

そう言って俺と茜は教会の外に出て、ゲイムキャラの居場所へ向かうことにした。

 




次回、第27話「心の天秤」

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