「シミュレータ起動...よーし、女神候補生諸君。これより四女神救出作戦に向けた訓練を開始する。今のままではダメとは4人ともわかっているだろう。というわけでお前たちにはこれからまず連携を深めてもらう。これから一週間昼夜問わず寝食も共にこのシミュレータ内で過ごしてもらう。俺と茜は一切接触しない。一週間後、俺と模擬戦だ。では健闘を祈る。」
...なーんてえー君が言い放ってから今日でぴったり一週間。プラネタワー地下シミュレータ内では今日も私が組んだプログラム通りに女神候補生達が訓練している。
「容赦しないね、えー君は。」
「そうだな、そう思うよ。」
「めずらしーね、えー君が素直に答えるなんて。それとも私の前だから?」
えー君は銃器を手入れしてたり作戦を考えたり救出した後のことも考えていた。一週間じゃ足りないほどの思考をえー君は義眼の演算システムで一週間に押し込めた。私は怖い。えー君は...その演算をもって最後に何を導き出したのか。それが分からないのが怖い。私の領域把握は機械の演算システムなんてものは把握できない。だから機械と魔法なんてものを専攻してたんだけどさ。
「そうだな。」
「...ちょーしくるーなー...っと、えー君。一週間ぴったり経過したよ。シミュレータも止まったね。」
「そうか。それじゃあ試してみるか。あの子たちがどこまで強くなれたか。」
「さって...一週間ぶりだな。元気か?」
シミュレータ内に入り、地形もバーチャフォレストのそれに変更する。女神候補生の顔つきは何か、少し変わったような気がする。
「元気か?じゃないですよ。何も説明しないでアタシたちを一週間放置して...その上モンスターはけしかけるし食べ物から何から何まで自分たちでやれって...」
「過ぎたことをうじうじ言うな。あまり時間もない。それじゃあやるか。」
《arms drive singllized!》
変身し、戦闘態勢に入ることを促す。
女神候補生は四人。昔、明含めて五人と戦った時は負けた。今回はどうだ、凍月影。一週間で...この子たちは俺を超えてくるのか。段階を踏んでどこまでやれるか試していこう。
「ふぅ...いい顔だ。」
目の前には女神化した女神候補生四人。己の武器を構え、こちらの動きをうかがっている。この時点でもう成長してる。むやみに突っ込まない。戦場の鉄則だ。
「いきます!」
先に動いたのはネプギアだった。同時にロムラムが左右に散開。ユニはネプギアで見えない。ということは...
「なるほど。」
「っ...!」
ネプギアの斬撃を受けずに後ろに下がって避ける。直後、俺がいた場所を左右から雷撃が走り、ネプギアは上へ飛ぶ。そしてユニの射撃。
「いい連携だ。だったら少し出力を上げさせてもらう。」
ユニの射撃がもう少し早ければ当たっていたが...そこは詰めるところだな。そう思いながら銃剣を顕現し、射撃を弾く。上のネプギアには牽制射撃。横から炎と風が襲ってくる。
「油断も隙もありやしない...と言わせてくれるなんてね。」
避けるとユニの射撃とネプギアの射撃。防げばロムラムの魔法が手を変え品を変え襲ってくる。冗談ではない。
「だとしたら...」
機動力を上げる。格納していた黒切羽のバインダーを開き、まずユニへ突撃する。
「やっぱり...!」
「そう来るわよね!」
「...っ!」
ここぞと言わんばかりに俺の眼前に二人が術式を展開する。読んでたか。しかもこれは...拘束魔法...!前に突っ込むわけにもいかず、かといって動かなければ両腕を拘束される。下がるにしてもネプギアが構えているしユニの射撃が避けられない。
「なればっ...!」
ついに黒切羽を展開する。下がってネプギアの相手をし、魔法からは逃げる。
「アタシに背中をっ...!?けど...狙うべきは...!」
ユニは俺を撃たずに黒切羽の方を狙った。賢明だ。俺でもそうする...というか、この一週間で成長著しい...!
「これでも、押し込めない...!」
「そうだな...!」
黒切羽はネプギア以外の三人を抑えている。だがもってあと2分。2分でネプギアを仕留められはしない...
「強いな、ギア...あぁ...強い!」
スイッチが入った。本気を出していいかもしれない。それでいて勝てるかもわからない。楽しくなってきた。
「っ...!」
ネプギアを蹴り飛ばし、黒切羽を格納しながら弾幕を避けて体勢を整えなおす。
「いくぞ女神候補生。ここから先は本気だ。」
黒切羽のリロード完了まで約50秒。その間にするべきことは翻弄、この一点に限る。
「もっと速い...!」
「でも...まだ追えます!」
ロムラムユニの弾幕は見事に俺の速度に対応し、もう何度目かになるネプギアとの鍔迫り合いに持ってこられてしまう。
「追うだけじゃ...足りない!」
力任せに振り払おうとするために力をかけるとそれに呼応するかのようにネプギアも己が得物に力をかける。その瞬間に力を抜くことで、ネプギアの身体のバランスを崩す。
「っ...けど!」
「やる...!」
崩れたはずのバランスを逆に利用することで俺の膝に手をつき一回転。ネプギアは窮地を脱した。この機転...一体何がこの子をここまで強くした...?
「考える余裕はないか...!」
弾幕は休んでくれない。拮抗しすぎてる、デュアライズするか、あるいはストライクフォームしかないか...
「そこまで!」
警告音と共に急遽停止したシミュレータ。まさか暴れすぎたから故障か?と思ったのは杞憂であった。
「全くもー、えー君ってば最初の目的を忘れてただ純粋に戦ってたでしょ。」
「茜か...そうだな、その通りだ。」
「なら決まり。丸二日の休憩の後、今度は私が相手してあげる。それが終わったら...女神救出だよ。」
女神候補生達は息を呑む。
「しょーじき一週間でえー君に追いすがるほどの実力と連携を取れるようになったのは予想外だったよ。私の予想をはるかに超えるポテンシャル...うんうん。私は満足だよ!」
「茜も十分楽しそうじゃないか...よし、じゃあ二日後に合わせてスタンバっておけ。」
シミュレータの壁を見やりながら、壁の向こうをギョウカイ墓場と仮定して想像して...四女神が今どのように捕らわれているかも想像する。
「あと少し...あと少しの辛抱だから待っててくれ...忘れてるだろうけど、さ...」
次回、第29話「練達の技」
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