「今度は俺がここで見る番か。」
ネプギアたち女神候補生との戦いで事実上の敗北をした俺はあのあとからずっと作戦を考え直していた。あそこまで動けるとは...だとしたらもっと理想を叩き込めるか?だがしかし敵がどのような布陣を敷いてくるかわからない。だから下手な作戦は組めない...
「まったく、えー君は考えすぎ。というか...ストライクフォームもデュアライズモードも使ってないじゃん。十分えー君は出し惜しみしたと思うな。」
「...とはいえ、使わなかったのはよくなかったんじゃないか、とも思うようになってきた...次戦うのは四天王かもしれないのだから...俺自身を強くするためにおしむべきではなかったと。」
「いまさら言われても、だよ。ま、あの子たちが本当に四天王と戦えるのかを見極めるのが私の役割だからね。それじゃ、行ってくるよ。」
「あぁ。」
そんな茜の背中を見ながら、俺は思考をまた作戦にもどすのであった。
「よーっし、みーんな変身して戦闘準備ばっちりだね!」
私がシミュレーターに入ってすぐにギアちゃんたちは変身した。うんうん。話が早くて助かるよ。
「じゃあ私も変身するけど...変身直後から仕掛けてきていいからね。そのかわり...」
私は変身して大剣を構える。
「えー君みたいに、出し惜しみはしないよ!」
深紅の粒子をたなびかせて、まずユニちゃんに突撃する。
「うそ、速い...!」
「ユニちゃん...!」
「させないわ!」
ロムちゃんラムちゃんの魔法援護。けどそんなものは当然想定内。粒子を障壁にして魔法を防ぎ、後退しつつあるユニちゃんを狙う...と見せかける。
「間に合った...その背中、もらいます!」
「当然、そうくるよね!」
「っ...!?」
ギアちゃんは援護射撃をしなかった。それは注意をそらして背後をとるため。ユニちゃんが迎撃ではなく後退を選んだのはギアちゃんに流れ弾が当たるのを防ぐためと、自分に注意を向けさせるため。
「私には、見えるんだよ!《緋一文字・紅椿》!」
「しまっ...」
「ラムちゃん...!」
「わかってるわ!ええい!」
ギアちゃんを狙った斬撃は直撃コース。だけどロムちゃんラムちゃんが張った氷の壁でヒットストップをかけられてギアちゃんへの攻撃が浅くなった。やるね。
「防いだ...!」
まさかとは思ったけどそんな防ぎ方をしてくるなんて...一転ピンチ大ピンチじゃん。それにこのシミュレーター、えー君の時とは違ってダメージレベル最大にしてるから普通に大けがする可能性あるんだよね...!
「そこっ...!」
「くっ...!」
ユニちゃんの射撃は回避出来るほどヤワじゃない。必殺技を撃った直後ならなおさら。数発くらいは食らうしかない...!
「ってこれ榴弾...!まずい!」
なんとか振り返って弾丸を把握した私は大ピンチ。粒子障壁を展開しても爆風なんか軽減できないしバランスは崩すし魔法弾幕は飛んでくるし...!で、完全無防備になってしまった私に迫るギアちゃんの刃。うまくいくとは思うけど...そうじゃなかったらどうしようかな...!
「これで...終わりです!」
「っ...!」
「《ブリザディア・パルチザン》ッ!」
間一髪、氷吹雪の槍がギアちゃんを弾く。よかった、計画通り。
私の前に、二本の槍と冷気をもって背中の機構翼を広げる一人の青年。それは間違いなくえー君だった。
「...ダメージレベル最大のシミュレーションなんて実戦に他ならないだろ、どうしてそんな設定にした。」
ギアちゃんたちは「え...?」みたいな顔をする。いままでずっとダメージレベルを最低にしてきたのだ。いきなり最大になんてなったら勢いで私を殺しかねない。それがわからない私じゃないことをえー君は知っている。
「ギアちゃんたち、とっても強くなったね。」
「質問に答えろ、茜。」
「せかさないでよ、まったく。...なんで強くなったんだと思う?それはね、一人じゃえー君の足元にも及ばないから、だよ。」
「......」
「私はね、この子たちの訓練メニューはただ一点を極めてもらってたんだ。お互いの弱点を知ること。それをお互いで補うこと。事実、弱点を的確に突いて優位を取っていくえー君には効果的だったし、弱点がわかる私相手でも効果的だった。一人ではなく四人でえー君や私と戦うことでこの子たちはえー君や私に初めて勝てるの。それがこの子たちの長所であって...同時に短所でもあるのかな。」
「...まだ答えになっていないぞ。」
「あせらないあせらない。女神は護ることを前提としているってゆーのはえー君もわかってるとは思うけど...今えー君はデュアライズモードを使っていた。私を守りたかったから。...だから強いんだよ。あの子たちは。」
「......まさか、すべては俺をここに呼び出すための茜のシナリオ...?」
「ぴんぽんぴんぽーん!そーゆーことだよ!」
「なんでわざわざそんな危険なことまでして...!」
「言ったよね、守るから強いって。あの子たちは自分以外を守るから強いの。自分以外に自分を守る存在がいなかった私たちとは違う...でも、私はえー君を守るためならどこまでだって強くなれるし、えー君だってそうでしょ?...えー君は一人じゃないこと、いい加減にわかってほしいな。」
えー君は何も言わなかった。沈黙だけがそこに流れた。
ギアちゃんたちを置いてけぼりにはしてるけど、この子たちなら大丈夫。ブランちゃんたちを助けることはできる。墓守のジャッジをどう倒すかなんてもう、えー君が100や200のプランを考えているはずだし。
「馬鹿野郎...それだけのことを言うためだけに命を張るのか!?やめてくれ!俺は...怖いんだよ、茜がもう一回俺の目の前で...!」
「私は死なないよ。だって今生きているから。えー君が生きているから...大丈夫。ブランちゃんを助けに行こう?それで、えー君の戦いは一旦終わるんだから。」
「...あぁ...ギア、ユニ、ロム、ラム...助けるぞ、お前たちの姉を、女神を。作戦は既に立てた。後は実行するだけ...頼りにしているぞ。そして...終わらせるぞ、女神のいない歪んだ世界を。」
『...はい!』『...うん!』
次回、第30話「突貫、そして」
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