女神候補生強化訓練は終わった。戦力的には、俺が3人いるより強いという感覚だ。短期決戦向きの戦力だろう。
「影さん、茜さん。ギョウカイ墓場は負のシェアエナジーが集まる場所です。お二人は人間ですから、女神候補生の皆さんほど負のエナジーへの耐性がありません。心を蝕まれる可能性があります。」
「だからデュアライズモードを維持できる15分の短期決戦作戦にしている。墓守は俺が引き付けて茜とネプギア達が女神を救出する。それでいい。」
「ですが予想外ということもあります。念の為、このお守りを持って行ってください。シェアの加護があります。」
「ありがと、いーすんちゃん。それじゃ、みんな...準備はいい?」
「最速で最奥部まで行く。雑魚は全て無視だ。」
ふぅ、と一呼吸する。
「いよいよ、なんですね。」
「きんちょうしてきた...」
「だいじょーぶよロムちゃん!いっしょにおねーちゃんをとりもどすのよ!」
「ラムの言う通りよ。アタシ達で、必ず!」
候補生達の腹も決まった。
《black heart》
《green heart》
「行くぞ...作戦開始!」
《duallized!》
6つの光がギョウカイ墓場へ駆けていった。真昼の流星と言わんばかりのものだった。
作戦内容はまず俺が最奥部まで墓守を無視して突っ切る。それはひとえにそれだけで救出出来れば早いものだから。無論墓守は気づくだろう。故に、この最速のフォームで撹乱、誘導する。
「ギョウカイ墓場内に侵入、一気に奥まで突っ切る!」
《了解、私達は正規のルートから派手に行くよ!》
通信機器は義眼である。さすれば外からインカムをつける手間も省ける。
「最奥部...到着...!」
女神を捕らえるピラミッドは眼前にある。あぁ...やっとここまできたのか。
「ふふ。待ってたよ。悪魔さん。」
「待たせた覚えはないぞ...虚夜光。」
「全くつれないじゃないか。まぁいいけど。それで...女神救出、かい?君1人で何ができる?」
「お前を殺して女神を捕らえる結界を解除する。」
「ふふっ...君にしては珍しい。酷い勘違いをしている。いや...君はいつも一番大事なところで大ヘマをやらかすのかな?」
「...なに?」
「ここ、ギョウカイ墓場はゲイムギョウ界で生きた者が死んだ後に集まるところだよ。その怨嗟がここに集うているのさ。ところで、君は女神のためと嘯きながら何人も何人も殺してきたじゃないか。その怨嗟もここにあるんだけど...女神をここに縛り付けているのはそれさ。何も私の結界じゃない。...君は、この女神達をここに縛り付けている諸悪の根源なんだよ。」
「...なるほどな...」
「存外、驚いてないようだね。」
「いいや、驚いているさ。どこまでもお前は、俺の存在を認めたくないらしい。」
「もちろん。君の全てを壊しておきたいからね。...どうやら墓守が戦いを始めたようだ。私の予想では墓守は善戦すれど負けるはず。さて...しばらく君はそこで座っているといい。戦う気も起きないし...何より、君に勝とうが負けようが...私の計画は変わらない。たとえ今君が私を殺そうと...それは無意味だ。」
「......女神の救出に直接の繋がりがないから、か。」
「それは君の視点での話だ。まぁ私の視点でもそうであるし...武装解除したまえ。私は戦う意思はない。君はここで...茜ちゃんたちの応援をするといい。」
...意図が見えない。こいつは一体何を考えている?警戒するに越したことはないが...だが...下手に動けば詰む。そういうやつだ、こいつは。
「さぁ、始まったよ。眺めようじゃないか。勝敗がわかっていても、ね。」
...結局、手を打ちあぐねて何もすることなく最深部で女神候補生たちの戦いを眺めることになった。
次回、第31話「激闘、女神候補生」
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