えー君の高速突入で墓守のジャッジを正規ルートから外すのが今回の作戦。だけど敵はえー君を陽動と切った。
「墓守が動いていない...プランBに変更だね。私がまず仕掛けるから...見せてよ、皆の力!」
こんな作戦を取ってくるのはどう考えてもジャッジの意思じゃない。裏にいる...奥にいる、虚夜光が...!
「あぁ?見覚えのある赤い光と思ったら仙道じゃねぇか...ちょうどいい、暇だったんだ...俺を楽しませろぉ!」
「暇って...だったらえー君が相手してくれたと思うんだけど?ま、こうなっちゃったからにはしょうがないか。それじゃあみんな、暴れるよ!」
「暴れるって...でも、はい!」
「ロムちゃん!」
「うん!いっしょに...!」
私が離れ、次にギアちゃんの一太刀。タイミングをずらしてロムちゃんラムちゃんの魔法。そして...
「そこよ!」
正確無比のユニちゃんの狙撃。本命の攻撃は寸分違わずジャッジを撃ちぬくけれど、クリティカルヒット一発、その程度ではジャッジは倒せない。曲がりなりにも四天王なのだから。
「存外ってほどでもないね。」
「鍛えられてある、いい動きだ。」
「あぁ、本当にその通りだ。どれだけかかってもジャッジが持ちこたえられるのは20分が関の山だろう。さて、それじゃあ計画も前倒しも視野か...やれやれ、凍月影は私の予想通りではあれど、茜ちゃんは私の上をいくか...いいね...いいよ。」
「...その計画とは?」
「教えるわけないだろう?そもそも...いや、悪くないか。時は意外にも今が好機かもしれない。だとしたら...ふむ。茜ちゃんたちが来てからにしよう。その方が話が早い。」
「そうかよ。」
茜と女神候補生は終始優位にジャッジを相手取っている。だがあくまで優位程度。確実とは、盤石とは言えない。曲がりなりにも四天王の所以というところか。
「深紅の閃光とはよくいったものだよ。閃光のごとく戦場を駆け巡り相手を翻弄する。ただ...今回の場合は味方も、かな。本気の茜ちゃんについていけてないね、女神候補生たちは。」
「...そうだろうか。」
確かに茜の動きは戦場全体を縦横無尽に駆け回る閃光そのものだ。だが、その閃光の動きは女神候補生四人の援護ないし追撃があってのものだ。茜いわく、ジャッジは戦闘においてはエキスパート。長期戦でも短期決戦でも自分自身が求める「戦い」に享楽を求めるやつという。やられっぱなしなんてことは絶対にない。だから、茜はわざと候補生たちが茜についていけないように見せているのだ。ジャッジの狙いが自身の一点に集中するように。
「いや、そうだろう。茜ちゃんの考えを理解できてないんだから。」
「...そこまで読んでいるか。」
「戦術は悪くない。けど戦略はまだまだ、か。」
「...だとすると...」
「ひっくり返るかもしれない...なんてことはなさそうだ。どうやら気づいたようだ。いや、教えたのかな?」
「...入ったな、茜の術中へ。」
「だね。ここまで計画通りかな?お互いに。」
「...未だ腹の探り合いか。」
「おやおや、内側なんて見せていいものじゃないだろう?」
「どこまでも、か。」
目の前のモニターに映る戦闘。それはもはや一方的ともとれる動きであった。どう考えてもあの子たちは優秀だ。...それすら手のひらの上であろう現状。どうする。
「さすが茜ちゃん。激闘というべきか。いやでも、激闘にしては一方的だろうか。ジャッジと女神候補生と茜ちゃん。四天王最強の茜ちゃんに女神候補生四人の援護がついたのなら、戦闘好きのジャッジでもどうしようもあるまい。ほら、もはやみんな思い思いに必殺技を撃ち込んでるじゃないか。耐えられるものでもあるまいよ。特に、茜ちゃんの紅桜は。」
「...そうだな。」
モニターに映るは赤の一閃が身体に走るジャッジと地面を穿った深紅の大剣。
『強かったよジャッジ...一対一だったら負けてたかもね。』
モニター越しでもわかるほどの傷が茜には顕著にある。候補生たちの被弾を抑えたのか?それとも...ジャッジを捨て駒にして茜に蓄積ダメージを与えるのが目的か。
「ふふ、気づいたかい?真の目的に。なんなら四女神は全てこの瞬間のために置いていた導にすぎない。夜の船は灯台の明かりを求めるというけれど...まさしく、だね。」
「...ということは...まさか...いや待て、なんだ、何を目標としている、虚夜光!」
「教えるわけないだろう。それがわかるのは私の目的が達成されるときだよ。」
そう言って虚夜は指を弾く。俺はそれに合わせてバックステップをして...直後に俺の左横をビームが薙ぐ。
「追いついたよ、えー君!」
「茜...」
「見たところ、虚夜光は何か悪いことを考えているようだね。」
「ぴんぽんぴんぽーん。相変わらず優秀な目だ。それに女神候補生諸君...君たちのお姉さんたちは私がこの二人をここに呼ぶための導。やるべきことをやったら返すさ。」
「なっ...」
「アンタの目的のためにお姉ちゃんたちを利用したっていうの!?」
「許せない...!」
「コテンパンにしてやるわ...!」
女神候補生と虚夜の間には殺気が充満している。放置していればそのうちドンパチが始まりそうだ。
「そんな殺気立たなくていいじゃないか。ちゃんと返すわけだし。それに...狙いは最初から女神なわけないじゃないか。」
悪寒、というべきか。虚夜光はまた指を弾いた。奴は何かしたのだ。
「わかるか、茜...俺達の周り、いったい何がある...」
「えー君どころか、私の見える範囲の人の周りは何も異常はないよ。」
「じゃあ、一体あの人は何をしたんですか!?」
「何もしてない...?そんなことある...?」
「おいおい、そんなわけないだろう?それじゃあ答え合わせだよ、茜ちゃん?」
刹那、茜を黒い何かが覆う。
「んなっ...光、お前...!」
即座にシャドウ-Cを発砲するも当然防がれる。次弾装填...!
「何も殺しはしないさ。茜ちゃんは器だよ。犯罪神のね。」
「...!?」
「犯罪神...!?」
瞬間、思考が繋がった。これが虚夜光の計画。
「ギア!なんでもいい、どんな手段を使ってもいい!茜を頼む!」
「影さん!?」
「何が何でも虚夜を仕留める...!せめて...深手くらいは...!」
「落ち着いてください!今影さんが突っ込むことは向こうの思うつぼです!」
「っ...だが...!」
「それに...もう手遅れです...!」
「んなっ......!?」
激痛。左脇腹を深紅の大剣が刺し穿つ。
「茜...!?いや、違う!」
「ぐっ...まだ、ぎりぎり私...えー君...せめて...ブランちゃんたち、助けてあげてね...!」
「茜...お前も、助ける...何度でも...何度でも...!」
口の中は鉄の味しかしない。でも...!
「索敵!虚夜はどこだ!」
「いません!いったいどこに...!」
「ぐっ...ロム、ラム!四女神回収準備...!退くぞ...!」
「...それで、いいよ、えー君...!」
大剣を抜き、激痛と出血で意識は朦朧としている。それでも深手という程ではない。犯罪神にまだ抗えているという証拠だ。
「影さん!ベールさんをお願いします!」
「断りたいが...贅沢は言えんか...」
候補生たちはそれぞれの姉を抱え、俺はベールを黒切羽の上に転がし戦域を離脱する。女神を封じていたバリアが消えていたのはおそらく犯罪神の器が生まれたからか。
「時間にすれば約1時間にも満たずに女神を救出した訳だが...しばらくは動けそうも、ない...」
まだ飛んでいる。プラネテューヌに着く前に落ちる訳にはいかない。
「...頑張ってください影さん。お姉ちゃん達を助けられたのは...悔しいけど、影さん茜さんがいないと出来なかった...ジャッジも、茜さんがいなかったらどうなってたか...」
「そうか...ならユニ、その悔しさを糧にしろ。女神なら...できる、はず...」
あぁ...もう意識が途切、れる...
「ダメです影さん!まだ、まだ着いてません!影さん!」
そんなユニの声は遠く、重力に俺の身体は従っていく。せめて黒切羽はできるだけ維持してやるか...
「影さぁぁぁぁん!」
今度の声は...ネプギアかな?...予想より深いし出血が多い...ここまで、か...
次回、第32話「再会と再開」
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