再編世界の特異点   作:Feldelt

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第32話 再会と再開

「お兄ちゃんはさ、つくづく赤色に縁があるよね。」

 

どこからか声が聞こえる。今はもう聞くことのできない声だ。

 

「血の赤、茜さんの赤、私はオレンジだけど...あと紅奈もだよね。それにストライクフォームも赤色だし...黒色よりかは赤色のほうが似合ってる節もあるけど...」

「...明...三途の川の向こう岸に俺はもう行ったのか?」

「中州、だよ。お兄ちゃん。」

「そうか...」

「まだ、やることあるでしょ。」

「...あぁ、そうだな。茜を助けないと、取り戻さないと...」

「そのためには、だよ。」

 

 


 

 

「ぐっ...天井は...プラネテューヌ...?」

 

目が覚めた。天井は少し前に見たプラネテューヌの病院だ。

 

「影さん...?目が覚めたのですね。四日間意識不明でしたから...」

「そうか...四女神と候補生は...?」

「それぞれの国で療養しています。シェアエナジーとひとまとめに言っても、国ごとに少しずつ違うので。」

「そうかわかった...墓場の様子は?」

「動きはありません。時折力が跳ねるような観測がされますが...」

「その程度なら問題ないだろう...じゃあ四天王の殲滅がまずは足がかり...か。」

「...それなんですが、影さん。影さんは...しばらく絶対安静です。」

「なぜだ、再生医療でなんとでも...!」

「テロメアがもう長くないんです、影さん。」

 

イストワールから告げられた事実。それは身体の物理的限界が来たということだ。

 

「...そういうことか...無視しろ。茜を取り戻すまでは...死ねない...」

「死ねないというか...そんな精神論で...!」

「ほかでもない俺がいいんだ...やってくれイストワール。」

 

だが...その程度の事で...茜を諦めるわけにはいかない。

 

「......わかりました。ですが、戦闘でのこれ以上の負傷があったら...」

「んなこたわかっている。無理だろうけどな。できる限りは努力するけど...それでも俺は...茜を取り戻すためならなんだってする。もう二度と、あの子を失うわけにはいかないんだ...」

 

脳裏に浮かぶのはあの日の光景。俺の中ですべてが始まったあの惨状。

 

「赤に縁があるというのはあながち間違いなさそうだ...」

 

 


 

 

一週間後、俺は無理やりの再生医療ののち退院。

医者によれば、これから定期的に吐血症状が出るやもしれないということ、老化が急速に進む可能性があること、そして...次大怪我をした場合命の保証はできかねるということだ。

 

「それくらいなら問題ない。それに、この身体はもはや半分くらい機械なんだからな...」

 

とはいえ...やはり少しだけ身体が重い。しばらく動いていなかったからか。

 

「影さん...!?なんでここにいるんですか...!?」

「酷い言いようだな...ネプテューヌの容態は?」

「元気そのものだよー!ってあれ?呼ばれて跳び出てきたけど...」

「無事、だな...」

 

元気そうなネプテューヌだが...まだ本調子ではなさそうだ。

 

「ネプギアー、お客さん来てたのー?」

「お客さんというか...お姉ちゃんたちを助けるために一緒に旅をしていて...えーっと...」

「そうか...やっぱりはじめましてになるんだな...」

『......?』

 

女神の記憶からも消えていた...想定通りと言えば想定通りだが...実際現実を目の当たりにすれば...やっぱりつらい。

 

「いや、なんでもない。初めましてになるのかな、ネプギアの姉、プラネテューヌの守護女神パープルハートことネプテューヌ。凍月影だ。」

「おおう、わたしもやる準備してた自己紹介をさくっと...こほん、よろしくね、影!えーっと、それとありがとう!わたしたちを助けてくれて!」

「直接助けたのはネプギアたちだ...俺は露を払ったくらいだ。それに...」

「ネプギアから聞いたよ。茜が...乗っ取られちゃったって。」

「そうか...茜の事は覚えているんだな...あぁ、茜をまた奪われた...」

「影は...茜の友達なの?」

「あぁ...大事な親友だ。」

 

親友、とは言ったが...親友どころかブランと同等の無二の存在である。

 

「そっか。じゃあ、助けないとだね。」

「あぁ。...とはいえしばらくは動かないでいいだろう。戦力を整えたいしそれに...」

 

まだ俺は万全ではない。言いかけてやめた。そんな情報はこの子達にはいらないから。

 

「それに...なんですか、影さん。」

「動いてから隙を突かれるのが嫌なだけだ。まだ万全じゃない女神を戦場に引っ張り出さざるを得ない状況なんて、作った時点で負けだ。そうだろう。」

「なにをー!いくら万全じゃなくてもちょーっと戦うくらいはできるよ!」

「お姉ちゃん...でも変身は...」

「あぁそうだ。変身...女神化はどこまで維持できるか不明瞭。戦闘中に無理が祟って解除なんてされたら困るのは俺らだけでなく国民もだ。...手を打ちあぐねる現状ならそれでいい。」

 

ソファに座り、いつの間にかネプギアが置いていたお茶を飲んで横になる。

 

「...さて、俺は今日眠れるのか...」

 

ふとぼやき、空白を感じる。

仙道茜がいないこの空白。

 

「絶対屠ってやる、虚夜光...」

 

そんな決意を胸にとりあえず全国行脚するかなんて今後の予定を考えていた。

 

「大変です皆さん!」

「ど、どうしたんですかいーすんさん!」

 

だが、そこそこ血相を抱えたイストワールの声によってそれは瓦解した。曰く、ラステイションに牙が剥かれたとのことだ。

 

「目下ラステイションへ急行というわけか...ネプギア、行くぞ。」

「え、あ...はい!」

「ネプギアだけー?わたしはー?」

「お姉ちゃんはまだ休んでないと...」

「それにネプテューヌがプラネテューヌを離れて一体誰がここを守るんだ。落ちるぞ。」

「影さん!」

「事実だろう。そうならないように俺とネプギアで露を払う。はぁ...嫌な世の中だよ全く。」

 

シャドウ-Cの弾丸は心許ないが対人戦なら問題ない。問題はブレイブ...あの剛剣は防ぎ切るには骨が折れる。トリックは来るならルウィーだろう。決まりだ。

 

「イストワール、ルウィーとリーンボックスには待機と言ってくれ。二波警戒だ。」

「わかりました。今のところラステイションは市街には被害は出てないようです。」

「ユニの狙撃能力なら市街防衛は決め込める。問題は飽和攻撃を受けた場合だ。だがそれならとっくに落ちているだろう。ブレイブがいるとみていい。...ネプギア、どうやら要はお前らしい。頼むぞ。」

「...はい。行きましょう、ユニちゃんを手伝いに。」

 

 

かくして俺たちの世界との戦いがまた始まったのであった。一息すらつく間もなく。

 

 




次回、第33話「純黒の弾丸」

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