「着いたか...」
ラステイション上空、市街地に被害はなさそうだ。
「いったい、どこに敵が...」
「ゲリラ戦はまずないな...がふっ...」
口から血が出る。なるほど確かにだるさもあるし吐血症状もある。薬は渡されてるにしろ確かに...無茶はできない。
「影さん!?」
「気にするな...教会に行くのが丸いかそれとも...いや待てよ。」
市街地に被害はない。工場地帯も同様に。街はずれだってそうだ。だが...襲撃されたのなら痕跡が残るはず。それがない...ということは...ダンジョン内で戦闘している可能性が高い。
「広域探査...対象、シェアエナジー...すぐそこにギア、教会にノワール...となると最後の二個...正のシェア、あれがユニか。もう一つの負の反応...ギア、11時方向の工場だ。行くぞ。」
「え、今のでわかるんですか!?」
「シェアエナジーを探索しただけだ、すぐわかる。」
「分かりました。行きましょう!」
とはいえ...いや、これはまだネプギアに言うには早いか。あの負の反応...間違いなくブレイブなのだがどうも禍々しい...何かしらの強化があるとみて間違いはなさそうだ。
「なんでしょう...なにか、嫌な感覚がします。」
「俺もだ...まるで...いや、止まれ!」
工場群の中心あたりにユニとブレイブがいる。だが...その周辺の工場にはめっきり反応がない。それはシェアエナジーの反応を探った結果なのだから当然と言えば当然だが...生体反応に切り替えるとそれはおびただしい量の反応。そして熱源に切り替えれば...それもまた狂ってるのかと言わんばかりの量。そしてここは工場群。屋根で隠れて目視はできない。それはこちらも向こうも同じこと。だがこちらと同様にセンサーがあるなら...
「...!?」
下側からの急襲。好き放題の火力。ロケランからグレネードからミニガンから何から何まで好き放題撃ち込まれ始めた。
「影さん!」
「止まるなギア!蜂の巣にされたいのか!」
この放火量...尋常ではない。こいつら全員犯罪組織の構成員で間違いない...つまるところは...そういうことか!
「近寄れない...ユニちゃん!」
「外の騒ぎに気付かない両者じゃねぇ...俺の上に来い!巻き込まれたくなかったらな!」
「一体何するつもりですか!」
「蒸発させるんだよ!」
《black sister》
《white sisters》
《duallized!》
「蒸発...?まさか!」
「そのまさかだよ...!」
顕現するは魔力大砲。敵の範囲はわかる範囲でおそらくユニとブレイブがいるところまでの線上範囲。なれば。
「《マギア・カタストロフィ》!!」
顕現した大砲からは光が溢れる。だがビームは出ない。溢れた光が薄らいだ時、地にそびえる工場群は跡形もなく消え去った。中にあった兵器からそれを操る人間から何から何までを全て一瞬にて気化させたのだ。
「なっ...何も、なくなった...?」
「そうだな、もう邪魔もないだろう。」
デュアライズモードを解除し、ぽっかりと浮かんだ平地に降りて血を吐く。対象に取った領域の演算とシェアエナジーの使役のバックファイアが尋常ではない。今ブレイブと戦えと言うのは厳しい話だ。少なくとも俺一人では。
「こんなのおかしいですよ...地図を書き換えないといけないとかそういう次元じゃない、貴方は!どうしてそこまで無情でいられるんですか...!」
「そんなもの、もう捨てた。...さて、ユニが来たぞ。」
立ち上がり、正面を見る。それとなくボロボロのユニと、同様に少し傷があるブレイブ。両者の戦いは外、つまりはこのぽっかりと浮かんだ平野にフィールドを移し、そしていくばくかの間隙をついてユニはこちらに合流した。
「ネプギアに、影さん...外が静かになったから出てみればこんなことになってるなんて...間違いなく影さんの仕業ね。」
「うん...」
「言いたいことは山ほどあるけど今はあいつを倒すわよ。そのためにこんなことを平気でするような人ですよね、あなたは。」
「...少し見ないうちに賢く強くなったな...」
「...お姉ちゃんに影さんの話をしたんです。そしたらお姉ちゃんは『ずいぶんと困った人に振り回されたものね』って。」
「それだけか?」
「まさか。『でも、どこも間違ってないのよね。何もかもが私たち女神とは違うのだけれど...言い方は悪くなるけど自浄作用っていうのかしら。マジェコンを、犯罪組織を生み出したのが人間なら、それをどうこうするのもまた人間...私たちが捕らえられていた間に、少し世界は変わったのかもしれないわ。』って続きます。アタシにはお姉ちゃんが怒ってないのが不思議でしたが...怒る気も起きないですね。こんなことをされては。」
「ノワールらしい...呆れられたか。まぁいい。いけるか?」
「いけるも何も...もうずっとアイツと戦ってますよ。」
「でも...これからは私も一緒に戦うよ、ユニちゃん。」
「心強いわね。でも、アタシの足を引っ張るんじゃないわよ!」
「うん!」
構える女神候補生二人。相対したブレイブも構えなおす。
「仲間とともに戦うか。ならば私は同胞を消された怒りと悲しみを糧に戦おう。行くぞ!」
ラステイションの戦闘は第二幕が開かれた。
さて...俺は戦えるレベルまで回復できるのか...それだけがわからない。
「...思ったよりも反動が大きいうえに身体が持たない...」
鉄の味がするのはもう慣れた。だが、妙に身体が重いのは慣れない。
義眼では回復までの想定時間が32分との算出結果が出ている。
「しばらくは置物か...くそっ...」
戦えないのなら策を練るしかあるまい。
二対一ではあるが戦況は拮抗状態...これが後30分も続けられるとは思えない。だからこそ...何か策を考えねば...だが何も浮かばない。
「くそっ...!何かはあるだろ...!」
焦り苛立ち、徒に時間は過ぎていく。そして気づく。
「思考基準となるデータがない...そしてそのデータは基本的に茜が把握したものだ...」
無論観測したデータも含まれるが茜の把握さえあれば...茜の言葉による情報さえあれば...そしてその言葉すら最小限で、仕草や表情だけでどういう把握をしたのかがわかっていたのだからできていたことだ。
だが、今ここに茜はいない。茜を取り戻す前までは戦ったのはギアとユニくらいだ。そしてそれは過去の記憶でどうにかなったというものだ。だが...今その二人が戦っているブレイブは二人の成長分含めてようやく拮抗、概算こそできても幅が大きい。最大値で策を練れば無茶が入る。茜を取り戻すまで下手な無茶はできない以上...頼るしかない。
「イリゼの場合は...戦闘勘と会話による推察でどうにかなったが...今にして思えばそこそこの綱渡り......ちっ...今は戦いを見守ることしかできないか...」
ふがいない。だが...それが今の凍月影なのだ。受け入れるしかあるまいよ。
次回、第34話「成長の証」
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