再編世界の特異点   作:Feldelt

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第35話 邂逅、白の女神

ブレイブ撃破から12時間、明朝午前5時。ラステイションの教会の一室を借りて眠っていた俺はこの時間に目が覚めた。気分は悪い。

 

「ふぁぁ...さて...このおちおち寝てられない状況に割とぐっすり眠れたのは僥倖ではあるが...」

 

すぐにルウィーに発つ準備をしなければならないが...ひとつ違和感がある。あの砲撃...狙って右にずらしたものだと考えられる。迷いなく今際に放ったあの光弾は...その気になれば教会に直撃させることなど造作もなかったはずだ。だのに何故...

 

「考えても何とかなるものではないか...現状は未だ最悪...がふっ...」

 

血を吐くのももう慣れた。だが...このどうしようもない頭痛は...演算しすぎたか。だからとてやめるわけにもいかないし...我慢比べといったところか。

 

「影さん、起きてますか?」

 

コンコンと、ノックした音とネプギアの声。

 

「あぁ...出るぞ。」

「そのことなんですが...ユニちゃんはラステイションから離れられないそうです。」

「...そうかわかった。それだけか?」

「それだけか?って...それだけですけど...」

「今は一刻も早くルウィーに向かい援護をしなければならない...読みが正しければ...俺がこのように読むと読まれているならば今のうちに行かないと手遅れになる。」

「...わかりました。ケイさんに言ってきますね。」

「頼む。」

 

部屋から去るネプギアと銃器を持ちコートを羽織る俺。雷銀式炸薬弾は残り3発、加速式貫通弾は残り2発。コルトガバメントのマガジンが残り4つと5発。心もとないと言えばそこまでだ。それ以上に俺自身の状態が心もとない。

 

「急いては事を仕損じるとは言うが...」

 

急がなければ状況が変わる。頭が痛くなる話だ。

 

「出発準備整いましたー、ルウィーのミナさんにはケイさんから話してくれるそうです。」

「わざわざそんなことを対価なしにするのか...?あの神宮寺ケイが。」

「ノワールさんを助け出してくれたから1回だけ...っていう話でした。」

「なるほどね。じゃあ行くか。」

「はい。」

 

 


 

 

ルウィーに着いたのは30分後、無事教会に降り立つことはできた。奇妙なことに、先の砲撃以外の騒動が全くない。なんだ、この奇妙に静かな...静かすぎるのは...

 

「っ...!」

 

ひとつ、嫌な予感がした。

 

「影さん?」

 

もしも、この予感が当たっているのなら、まんまとおびきだされたということになる。飛んで火にいるなんとやら。奴は...奴の能力は任意の結界を生成する能力...!

 

「下がれ、ギア!」

「えぇ!?」

 

教会から離れる。が、時すでに遅し。

 

「やぁ、待っていたよ凍月影。そう、君の思考の通りだ。」

 

どこからともなく声がする。そして指を鳴らす音。目の前の世界は崩れ去り、あるのは爪痕のみ。

 

「なっ...」

「そんな...!」

「君の思考を読むのは大変でね。私自身が出向かなければならなかったわけなのだけど...どうだい?なかなかに刺激的じゃないのかな。燃える雪国というのは。」

「虚夜光...てめぇは...!」

「そうとも外道さ。君と同じ外道だよ。」

「っ...」

「さて、選択肢をあげよう。茜ちゃんを助け出すために、君はどっちから助ける?愛した女神からか、助け出すための戦力からか...前者は私が、後者はトリックが見ている。まぁ二人ほどここらへんを嗅ぎまわっているのもいるんだけど...」

 

再び虚夜光は指を鳴らす。

 

「ぐっ...」

「お兄ちゃん!」

「黒と白か...」

 

先の指パッチンでダメージを受けたであろう黒と駆け寄る白。嗅ぎまわっていた二人とはこの二人か。

 

「ご明察。取り逃がしてしまったというかうまく逃げられたというか...まぁ君ほどの脅威じゃない...その脅威も今ここで止めているし...犯罪神が完全に茜ちゃんを器とすることはできそうだ。ふふふ。悪いね悪魔くん。私の勝ちだ。それは揺るがないんだけど...いや、だからこそ君は先の問いの答えが出せていないのかな?」

 

手詰まりだ。どちらをとっても奴は対応を持っている。だがどちらでもない選択肢は取れない。どうする、どうする...今現状ルウィーがこんな状態ではロムラムもシェアエナジーの減衰によってスペックが落ちている...捕らわれていて回復が必要なブランはなおさら...だがネプギアと二人で分散すれば各個撃破が関の山...どうする、何かないのか...!

 

「あなたは、ひとつだけ思い違いをしています。」

「うん?思い違い...第3の選択肢があるとでも?」

 

思考が詰まった時、声を発したのはネプギアであった。

 

「はい。第3の選択肢、それは...」

「私が、てめぇをぶっ飛ばすことだ!」

「っ...!?動けたか...!」

 

なんとブランが、ホワイトハートが虚夜光の虚を突いて一撃を入れたのだ。誰も予想しなかった一撃。かろうじて虚夜光は防御した。だが、俺とネプギアはもう動いていた。

 

「その油断を、間隙を、逃す俺じゃない...!」

「今ここで、貴方を倒します!」

「ちぃ...!」

 

やはりかろうじての防御を奴は間に合わせる。まだだ。まだ、弾は残っている!

 

「でやぁぁぁぁ!」

「4人目...少年か!」

「5の矢もある!《アルテミスバレッジ》!」

 

集中、飽和攻撃。完全に虚を突かれて防戦一方の虚夜。

 

「終わらせる...!今、ここで...!」

「影さん!」

「頼むぞギア...!《極・星天乱斬(スターナイトストリーム・ゼロ)》!」

「ぐぅ...!」

 

連撃で奴の結界を壊す、壊す。全力で、すべてを乗せて...!

 

「あと、1枚ぃぃぃぃぃ!!!!!」

 

割り切った。同時に俺の真後ろからネプギアがフルチャージされたS.M.P.B.L.を虚夜に向ける。

 

「終わって!」

 

ほぼゼロ距離の熱量の奔流。俺の左腕ごと巻き込んで放ったフルチャージの火力。それは虚夜光の全てを飲み込んだ。後には何も残らなかった。熱源、生体反応共になし。試しにコルトガバメントを数発撃っても何も無い。ただ床にまっすぐ当たっただけ。

 

「ここまであっけないものなのか...」

 

肩で息をしながら、最大の障害を排除したという実感を感じ取る。だがこれで終わりではない。今からすぐにロムラムを───────

 

 

瞬間、義眼の映像がブラックアウトし、立てなくなって倒れる。倒れた先にはブラン。女神化を解除して黒と白と話していて、俺を受け止めた。

 

「っと...大丈夫?」

 

ブランの声が少し遠い。意識に靄がある。

 

「やっと...逢えたな...ブラン...」

 

かろうじて出た声がこれだった。答えになっていない。

 

「大丈夫ですか影さん!影さん!」

「おい!しっかりしろ!おい!」

 

振動と声と。だが、意識を繋ぎ止めるには、非力だ...

 

 




次回、第36話「Over limit」

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