再編世界の特異点   作:Feldelt

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第37話 ギャザリング城の激戦

古来、城というものは豪勢にできている。某アインツベルンの城や石で浮いている城などがそうだ。当然、構造は頑丈で複雑である。

 

「それに、罠がないなんてそんなことはあり得ないからな...」

 

とはいえ、15分しかない演算時間を使ってまで突破するほどのものではないし...それにギャザリング城のどこで戦っているのかもわからない。

 

「順当に考えれば玉座の間だろうが...そもそもこの城に王はいたのか?」

 

窓を突き破り玉座の間に入るももぬけの殻。戦闘の痕跡すらない。

 

「はずれか...なら...」

 

次はどこかと考える前に足元が揺れる。地震とも思ったが振動の伝わり方が違う。下か...!

 

「なるほど...な!」

 

地下へ続く階段を降り、戦域と思われる階層に着いたとき、再び強い振動が起こった。その振動の発生源を見ると、土ぼこりとひび割れた石。そして倒れている一人の少女とそれによりそう二人の幼子。その向こうには異形の個体。

 

「ネプギアちゃん!」

「ネプギア!」

「ギアか...!」

 

俺も倒れているネプギアに駆け寄り起こす。

 

「あ、えっと...」

「えい...!遅いわよ!ネプギアが、ネプギアが...!」

「見ればわかる...ギア、しっかりしろ!」

 

声をかけるがまだ起きない。

 

「アクククク...吾輩の舌から幼女二人をかすめ取るなどという愚かなことをしなければそんなことにはならなかったのにな...さーて、ロムたんラムたん続きを一緒に楽しもう!」

「いやよ!」

「ぜったい、いや...!」

「だろうな...」

 

義手から放つ斥力フィールドでこちらへの接近は許していない。それにトリックもまだ仕掛けてこない。ギアが深手を入れたのだろう。

 

「うぐ...影...さん...?」

「起きたかギア...」

 

ちゃんと見ると全身傷だらけで出血もある。頭も打って切ったのか左目は血のせいで閉じられている。こんなに、ボロボロになりやがって...

 

「ロムちゃんとラムちゃんは...?」

「無事だ...よくやった。」

「ネプギアちゃん!」

「ネプギア...!」

 

自分を勘定に入れず他人のために行動し傷だらけになる。まるで俺じゃないか。

 

「私一人じゃ、これで限界でした...影さん、あとをお願いしていいですか...?」

「っ...あぁ。任せろ。」

 

現状、意識を維持させているのもやっとと見た。だからギアはこんなことを言っている。

 

「じゃあ、お願い...します。」

 

ふっと力が抜けたようにネプギアの身体が重くなる。意識が飛んで行ったのだろう。この傷では無理もない...だが、ロムラムを奴の舌から解放させてくれただけで戦いやすさは段違いだ。ロムラムは今必死にネプギアの名前を呼んでいる。

 

「...あぁ、ほんとによくやったよギア...もうとっくに俺より強いじゃないか...さすがは自慢の妹だ。」

『...?』

 

ギアの身体を支える腕に少し力を込め、半ば抱きしめているような体勢になる。双子に白い目で見られようとどうだっていい。俺はこんなになるまで無茶をした妹には、これしかできない。

 

「すぅ、はぁ...ロム、ラム。ギアを連れて教会へ帰れ。こいつは俺が引き受ける。」

 

一呼吸置き、ギアから離れ立ち上がる。不思議なことに脳内はクリアだ。

 

「いやよ!」

「わたしも、いや...!」

 

だが、帰ってきた返答は予想と違った。この双子は、妹たちは、戦う意思を持っている。

 

「...何故だ?」

「わたしは...ネプギアちゃんにたすけられてばっかりで...」

「こんなになるまで、たたかわせて...!」

「自責、か...だったら戦うな。申し訳だとか情けなさだとかそういう感情で戦場に立つな。死ぬぞ。」

「ちがうわよ!」

 

強めの言葉で彼女たちを説得しようとしたが意味はなかった。意思のこもった否定が走る。

 

「わたしだってまもりたい...!」

「ネプギアちゃんにまもられてばっかりなんて、いや...!」

 

あぁ、そうか。だからこの子たちもまた女神であるんだ。

 

「わかった。...じゃあしっかりついてこい。」

『うん!』

 

ロムラムが揃って女神化する。俺もまた、デュアライズモードと演算能力を起動する。

 

「白と黒の女神の力...ちょい借りるぞ。15分で仕留める!」

「アクククク、今吾輩はご機嫌斜めなのじゃ。容赦せんぞ!」

「んなもん、いらねぇよ!」

『えぇぇぇい!』

 

ロムラムの氷の弾幕を味方にトリックへ駆ける。舌による攻撃は剣で受け、避ける。

 

「取った!」

「ぬん!」

 

直上を取った俺は斧を顕現し重力も味方につけてトリックの脳天に叩き込む。が、奴の退化していると思われた腕が動き白刃取りのような形になる。

 

「ちっ...だが!」

 

斧を手放し距離を取りVメモリをホワイトハートからブラックシスターに換装、トリックをその場に押さえつけるように火力を叩き込む。が、そこで周辺温度が下がっていることに気づく。

 

「この冷気...大技か!」

「ラムちゃん、今!」

「ええ!《アブソリュート・ゼロ》!」

 

ラムの広域範囲凍結魔法、アブソリュート・ゼロがトリックを中心になるように発動する。とっさに避けてなかったら巻き添えだったな...銃身が凍っているのがその証左だ。

 

「だが、足りてない...!」

 

Vメモリを今度はパープルハートとパープルシスターに換装し雷撃の準備をするが、氷塊は崩れ去りトリックが現れる。

 

「うそっ!」

「アクククク...嘘ではないぞラムたん...だが今のは痛かった...痛かったぞぉぉぉぉ!だがしかし幼女に痛めつけられるのもまた快感...!」

「うわぁ...」

「きらい...」

「あぁ...どうしようもない奴だ...だからこそ屠らねばならない...!」

 

再びトリックの直上を取り攻撃の準備をする。悶えているだけだから攻撃自体はしやすいが...!

 

「《十六天刃》!」

「む?ぬんっ!」

 

紫電纏いし巨剣の重撃を奴はまた白刃で受ける。が...トリックは耐えられてもギャザリング城の床が耐えられなかった。

 

「ぬおぉ!?」

「床が...!だが、これでぇぇぇ!」

 

位置エネルギーが突如として生まれたため、下層の床に激突するまでにさらにトリックには力がかかる。それに奴は現在支えになるものがない...!

 

「ぐぅぅぅぅ!」

「まだ、浅い...!」

 

床に激突させたまではいいが深手にはならなかった。これ以上は不利だ。距離を取るしかない。

 

『お兄ちゃん!』

 

はっとする。ロムとラムがそう呼んで同じ階層に降りてきたのだ。

 

「ふふっ...お兄ちゃんか...悪くない。」

「おのれ...ロムたんラムたんにお兄ちゃんと呼ばせただとぉ...?許せん!許せんぞぉぉぉぉ!」

「そうかよ...その理論で言うなら俺の妹たちに手を出そうとするてめぇなんざ...生かしておく理由はない。仕留めるぞ、ロム、ラム。今から26秒後...床と壁を全てよく滑る氷にしてくれ。そして...タイミングを指示したら、凍らせた壁を全部一気に水蒸気にしてくれ。できるな?」

「うん!」

「もちろんよ!」

「それじゃあ...作戦開始!」

 

銃と剣でトリックの注意を引く。まぁ、もともともう奴はこっちに狙いを定めている。本気で俺を殺しに来ている。残り3分。間に合うな。

 

「今...!」

 

トリックにジャンプをさせたと同時に床と壁の全てが氷に覆われる。飛ぶことの出来ないトリックは氷に足をとられ、滑る。

 

「ぬおぉぉ!?」

「知ってるか?この氷はおそらく摩擦係数0...今やお前は永遠にポケットに入ることはないビリヤードの玉に等しい!」

 

斥力フィールドをぶつけ、トリックをフロアで移動させ続ける。止まることはない。氷が維持される限り永遠にこのままだ。だが、それだけでは足りない。

 

「上のフロアに行くぞ。そしたら水蒸気に変えてくれ。」

「わかったわ...ええい!」

「ふぐっ!?」

 

氷が全て水蒸気に変わったことで湿度100パーセントの空間を作り、トリックは等速直線運動の慣性で大きく転げる。久々の摩擦は痛かろう。

 

「蒸し焼きだ。水蒸気にそのまま熱を与えてくれ。」

「えーっと...こう?」

「む、ぬぉぉぉぉぉ!?熱い、暑いぃぃぃぃ!?」

「すごい声ね...」

「ちょっとだけ、かわいそう...」

「俺はそうは思わないがな...しばらくずっとそのまま加熱しつづけてくれ。どんな生命でも...体内の水分がなくなったら死ぬだけだ。」

 

加速式貫通弾を十六天刃で与えた傷に撃ち込み、悶えるトリックにさらにダメージを与える。義眼の演算能力をオフにし、デュアライズモードも解除する。

 

「いつまでやってたらいいの...?」

「あー、トリックのうめき声が聞こえなくなって2分経ったら、だな。」

「もうずっと聞こえてないわよ?」

「じゃああと1分で終わらせていいよ。」

 

心なしかこちらも汗をかいてきた。ギャザリング城の構造がレンガ造りでよかったよ。

 

「57,58,59,60...終わりね!」

「あつかった...」

 

ふー、と大きく息を吐くロムラムを横目に、今はまだ動いていないトリックを見やる。

 

「まだ女神化は解除するなよ。...それと下は見るなよ。」

「わかった。」

 

ひょい、と俺だけ下のトリックにコルトガバメントを数発撃ちながら近寄る。動かない。

 

「乾燥状態ではあるが...さて。」

 

いつでも戦えるように最大限の注意を払いながらトリックの目を確認する。瞳孔が開いている。マズルフラッシュで収縮するような様子は見られない。

 

「確認完了...ん?」

 

このフロアは決して広くはない。そのため、フロアの奥にあった「何か」が目についたのだ。それは生物ではない。が、生物のようなまがまがしさがある。

 

「剣...?」

 

その「何か」とは剣であった。刀身は毒々しい紫で、妖しく美しい。

 

「回収しておくか、ルウィーの書庫で調べればわかるだろう...」

 

これで犯罪組織の四天王は全て倒したと言っていい。残すは茜を奪った犯罪神だけ。

 

「待たせたな、二人とも。帰るぞ。...よくやった。」

「やったねロムちゃん!」

「うん!」

 

まぁ、それを考えるのは少し後にしよう...

 

「あのー...影さーん、ロムちゃーん、ラムちゃーん、私の事忘れていませんかー?」

「......正直に言おう、忘れてた。」

「酷い!」

「わ、わたしはわすれてないわよ?ねぇ、ロムちゃん?」

「ごめんなさい...」

「えぇ!?影さんならともかくロムちゃんも!?」

「おいこらともかくってなんだよ...まぁいい帰るぞ!」

「ちょっ...お姫様抱っこですか!?」

「運びやすいだけだ...全く...なぁ、ギア。」

「...なんですか、忘れんぼの影さん。」

「ほんとによくやったよ。ロムもラムも...もう、俺より強いよ。」

「その...ありがとうございます...」

「よし、帰るか。」

 

とまぁ帰り際にひと悶着はあったものの無事ルウィーに帰ることになり...いよいよもってどうやって茜を取り戻すか、考えなきゃだな。

 

「ところでロム、ラム。なんで俺のことを『お兄ちゃん』って呼んだんだ?」

「そんなこと...いった?」

「いってないわよ?ねてもいないのにねぼけたこといわないでよね!」

「さいですか...」

 

 

 

 

 

 




次回、第38話「人の身に余るもの」

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