再編世界の特異点   作:Feldelt

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第40話 ラグナロク・アポカリプス

魔剣を携え、ゆらりゆらりリーンボックスへ足を進める。女神一人やったから女神一人分の攻撃はだいたい魔剣で変換、無効化できるとみたからこその行軍だ。次はラステイション、そしてルウィー。

 

「...それで、ベールさんにはどう言うんですか?」

「どうもこうも、言葉なんていらないよ。見ただけでわかるだろうさ。」

 

ダンジョンを通るだけあって適当にモンスターがわいてくるが無問題。さくっと到着はできた。残り56時間。

 

「しかし...ギア。別についてこなくてもよかったのだが...」

「...誰が手伝うって言いました?...貴方が言ったんですよ?いつでも討てと。」

「そうだったな...」

「忘れてたんですか、ついさっきのことなのに...それにいつでも応戦できるように全く隙がないじゃないですか。」

「それに気づけるあたり...ちゃんと成長しているらしい。」

 

そんな会話の横でそよかぜが緑を揺らす。相変わらずこの国は自然が多いなと思う。

 

「平和とはかくも仮初でしかないというのは、知りすぎた弊害かあるいは...」

「...?」

「悪いとは思うが...私怨と信条もある、今までの積層を根本からひっくり返していることもそうだ。だが、転げ落ちてしまったならもうあとは奈落の底まで行きつくだけだ...」

「影さん...?」

「あとは...ただ、遂行するのみ。心まで一緒に殺してしまえば...きっと痛くはないさ。」

 

ひとり呟き、教会に入る。

 

「...ずいぶん情報が早い。御大層なお出迎えだこと。」

「えぇ...なにか胸騒ぎがしましたもの。用心に越したことはありませんわ。」

 

中には既に武装した職員と女神化済みのベール。対してこちらはまだ変身すらしていない。やれやれ。骨が折れそうだな。

 

「そうかい...まったく...命あるものはいつもこうだ...」

「...気に障る言い草ですわね。」

「掬い上げて零れ落ちて、終いにはせいぜいたった一つも守れるか怪しい...命とはかくも儚く脆く...価値が高すぎて逆に狂うものなのさ。」

「──ッ!?」

 

ベールが距離を取った数フレーム後に俺を中心とした一定範囲の中にいるネプギア以外の生体...つまりは教会職員を凍らせた。命までは取ろうとは思わないが...ベールとの距離があるこの時を逃すわけにはいかない。

 

「13分で片づける。」

「影さん...!?また、貴方は...!」

「ほえるなよ...どうせ時は戻らない。」

 

green heart

purple sister

 

「所詮、その程度だったということさ。」

「なんで、いつもそうやって...!」

「...これが俺だ。」

 

槍を顕現し、ベールに向かう。

 

「わたくしに槍で挑んでくるとは...!」

「ただの気分だよ...それに、槍だけなんて一言も言うつもりは、ない!」

 

右からの突きを防がれ、同時に左手にコルトガバメントを顕現、数発撃つ。

 

「鉛弾で女神に傷をつけられるとでも...!」

「思っちゃいないさ...だが距離と時間があればそれでいい。」

 

M.P.B.L.を顕現、ベールに追撃する。...教会内では取り回しが厳しい。凍らせた職員を割ってもいいが...そんなことをする余裕はなさそうだ。

 

「でぇぇぇい!」

「っ...さすが、動きを読んできますわね...」

 

攻撃を当てるものの崩しきれはしない。...やはり槍使いは...厄介!

 

「外へ出るぞギア...サシで戦うなら広いところのほうがいい...」

「なら、飛ばして差し上げますわ!」

「好都合...!」

 

ベールの風を纏った槍撃をあえて受けることで外に出る。

 

「これで...!」

 

デュアライズモードを解除し、鎧装装着の黒切羽を8基展開、スラッシュバレットを二丁装備する。

 

「乱れ撃つ、全天からの弾の雨を受けてみな!」

 

連射。ベールは避けたり防御するものの避けた弾は黒切羽が反射して再びベールに向かう。さらに黒切羽自体もビームを撃つため、ビームの絶対量は多くなる。

 

「くっ...足止めを...!」

「そう、足止めさ...けど、止まってしまえばそれでいい...!ギア、魔剣をくれ...!」

「っ...やるんですか。」

「今更退くなんてできるわけがない...だから...よこせ!」

「それで...!あなたはそれで、本当にいいんですか!?」

「いいも悪いもない...引き返せないだけだ。」

「...いつもそうやって...貴方は自分で決めたことを間違っていてもやめないじゃないですか...止めさせてくださいよ...」

「止めようとしても止まるものじゃないことがわかってるあたり...君は賢い女の子だ...」

 

魔剣を持ち、ベールがいるはずの空間を見るもベールがいない。

 

「いないっ...!?」

「その隙が命取りですわ...《レイニーナトラピュラ》!」

「間に合わねぇ...!」

 

装甲を穿つ槍の雨。急所を避けるので精いっぱい。だが、この程度の出血量など、些事!

 

「はぁぁぁぁ!」

「ぐうっ...!捕まえ、た...!」

 

威力の乗った槍の一突きを左腕の義手で受け止め、手でベールの手首をしっかりと掴む。これで...!

 

「貰った...!」

 

真っ直ぐ魔剣をベールに向けて突き、深々と貫くように刺す。

 

「がふっ...お見事、ですわ...」

「...そうかい。まぁこっちもこっちで腕を持っていかれた...お世辞でも見事とはかけ離れているよ......さらばだベール...贄となって力となってくれ。」

 

魔剣を抜き、ベールは魔剣に吸われるように消えていった。これで...あと5人か...

 

「替えの腕がまだあってよかった...傷もかすり傷だし...ともあれ次はラステイション...少し休んでからいくぞ、ギア。」

「...影さんは...痛まないんですか?」

「身体も心も痛みはしない...痛むものなんてもうなくなってしまった...疲れるんだ、心を動かすのは...もう...」

「どうしようもない、そんな状態なんですね...」

「...一度帰るか...この状態でノワールの相手は厳しい...」

 

魔剣をネプギアに預け、俺はプラネテューヌへの道を歩く。

 

「...どうして、そんなになるまで...」

 

緑を揺らす風が寂しい。意に反して教会からの反撃はなかった。悲しみと喪失感に打ちひしがれているのだろう。だが、そんなものにふけられるほど俺に余裕はない。

 

「どうして、か。考えたこともないかな...摂理だよ、ただの。」

 

背中からのネプギアの返答はなかった。残り54時間30分。茜を助けるために...まだ犠牲がいる。

 




次回、第41話「破滅願望と生存欲求と」

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