再編世界の特異点   作:Feldelt

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第41話 破滅願望と生存欲求と

犯罪神が世界を滅ぼし始めるまで残り約32時間。結局一日プラネテューヌで休んだ俺とギアはラステイションに向かっている。

 

「次は...ノワールさんとユニちゃんですか。」

「あぁ。無傷は無理だろう。本来の予定ならベールを屠った後に連戦する予定だったが思ったより傷を受けてな...どこかで連戦しないといけない予定だが...ルウィーの姉妹を含めた連戦は無理だ...」

「それでも、歩みは止めないんですね。」

「言ったろ、止まることはない、と。」

 

ラステイションの街をそんな話をしながら歩く。いつぞやに蒸発させた区画を歩いているため街というにはいささか空虚だが。

 

「...来たわね。」

「張っていたのか、ノワール。まぁ好き好んでこんな場所を通るのは俺だけだろう。そもそも立ち入り禁止区画だからな。」

「あなたがここまでの力をもって犯罪組織を滅ぼしたいのは茜のためなの?それとも自分のため?」

「さぁな...俺自身、何を求めて戦っているのか...もうあやふやだ。今あるのは、茜を取り戻すことだけ...そうだな、自分のためかもな。」

「そう...だから犠牲も生み出し続けると。」

「あぁ。」

「そう。」

 

瞬間、俺は指を鳴らし斥力フィールドを展開、どこからともなくやってきた曲射狙撃弾を防御する。

 

「影さん...!?」

「...危ないなぁ...斥力フィールドがあったとはいえもう30F反応が遅かったら...さすがに死んでいたか...」

「それを危ないで済ませているあたり...死生観はもう壊れているのね。」

「今更すぎるぜ、本当に...」

 

同じ角度から放たれてきた射撃はコルトガバメントで撃ち落とす。

 

「さぁて...それじゃあそろそろ始めようか...にわか雨が降るドンパチをさ...」

「傘が必要なのはあなただけよ、差す余裕なんて与えないけどね!」

 

同時に変身して切り結ぶ。ノワールの速度についていけるかが課題だ...!

 

「遅いっ!」

「そう思うよな...!」

 

防戦一方。攻めに転じるタイミングを見失ってばかりだ。だが...っ!

 

「鍔迫り合いさえしてしまえば!」

「動きは止まるわよ、それがどうしたって言うの!?」

「こういうことだ!」

 

力を抜き、ノワールの体勢を少し崩して反転、蹴りを入れる。

 

「甘いっ!」

「くっ...やはり崩せない...」

 

演算をオフにしていては負ける。だがフルで使って勝てる見込みが思い浮かばない。だがそれは使わない場合でも同じ...!

 

「せぇい!」

「っ...やるじゃない。」

 

第二の鍔迫り合いは強引に切り払って距離をとる。こちらの出方を伺っている...?

 

「けど残念ね、私は最初から出し惜しみなんてしてないんだから!」

「その突撃は仇となった...!」

 

ノワールの直線的突撃を再び受ける...と思わせて回避、追撃の加速をかけて落とす...!

 

その次の瞬間に左側から強い衝撃と爆発を受け、俺は地面に叩きつけられてぐるぐると地べたを転がったのだった。

 

 


 

 

「影さん...!?」

 

一体何が、そう思う前に私の首筋にノワールさんの剣が突きつけられていました。

 

「戦いの場で力を出していない、これはあなたの落ち度よネプギア。少し鈍ったんじゃない?」

「ノワール、さん...」

「ユニの長距離狙撃が見事に、今度こそ直撃よ。」

「そんな...」

 

地面に転がっている影さんは微動だにしません。

 

「...魔剣を渡しなさい、ネプギア。あなたたちの負けよ。」

「...渡せません。手放したくないです。だって、お姉ちゃんがこの魔剣の中にいる気がするから...!」

「そう、なら力ずくで奪うまでよ!」

「っ...!」

 

女神化できていない状態でノワールさんの剣は防げません。だからせめて距離を取りたいけれど...!

 

「無駄よ!」

「くっ...きゃぁ!」

 

そんなことさせてくれるはずもなく一方的に飛ばされて衝撃が全身を襲うだけ。

 

「無理だよ...例え今から変身しても...ノワールさんにはかなわない...」

「...悪いわねネプギア。けど、これが現実よ。」

 

ノワールさんは私が飛ばされたときに落とした魔剣を拾って、私に向けて...あぁ、私も死ぬんだ、あれに刺されて...でもお姉ちゃんに会えるなら、それでもいいかな...

 

「存外、諦めが早いじゃないか。」

「...!?うそ、動けたの...!?」

「そういうこと。」

 

諦めかけた私の目の前に、血をそこそこ流しながらノワールさんの虚をつき魔剣を奪い返した影さんが現れました、いったい、どうやって...さっきまで動けていなかったのに...

 

「また左腕がダメになった...直撃だからしょうがないしなんなら多分右腕も折れてるけど...幸い右腕は元から動かない、無理やり動かしてもめちゃくちゃ痛いだけで済む...それに義手の替えも今回はちゃんとすぐ準備できたからな..」

「またって...どうしようもない無茶じゃないですか...!」

「そうだな。なぁギア...なんで俺が常に魔剣を持たないと思う?」

「え...?」

「答え合わせはあいつら倒してからだ、本気で行く、覚悟しておけ。」

 

それだけ言って影さんはノワールさんへ向かっていきました。

 

「どうして、そんなになっても戦うんですか...」

 

 


 

 

「血を流している時って言うのは...生きてる感覚がする時だ...同時に!生きてることが割とどうでもよくなる時でもある!」

「なに、こいつ...気でも狂ったの...!?」

「狂っているさとうの昔に...だから女神と戦ってその命を欲しがっているんだよ!ちょいさぁ!」

 

ノワールと再び高速の接近戦を演じるさなか、またやってきたユニの射撃を今度は避ける。本当ならノワールに当てたかったが...!

 

「そう...でもその回避は命取りよ!」

「そうさ命取りさ...けどねぇ!」

 

右肩をノワールの剣が切り裂く。また血が出る。これが狙い。出た血はノワールの目に向かって飛び数瞬彼女の視界を遮る。その一瞬さえあれば、左手に魔剣を持つことができる。

 

「くっ...このくらい...!」

「拭う動作もまた視界とバランスを崩す...!」

「がっ...!?」

 

全速の膝蹴りをみぞおちに当て、右手に魔剣を持ち換え氷で覆い固定、そして左腕をパージする準備を整える。3,2,1...!

 

「ここっ!」

 

ユニの偏差狙撃が飛んでくるタイミングの少し前に左腕をパージし、左腕が爆発する爆風で加速、固定された右手の魔剣を真っ直ぐメテオ状態のノワールに突き刺す。

 

「ぐはっ...まさか、そんな手を使ってくるなんてね...肉を切らされて骨を断たれちゃうなんて、どうしようもない油断ね...手負いと狂気に完全にしてやられたわ。」

「あぁ...そうかい。こっちはもう死にかけで考える余裕もそんなにない...」

 

俺の真横が爆発する。ユニは震えているのだろうか。

 

「どうせユニも、でしょ...?」

「心配なのか?」

「...そうね...優しくしてあげてほしいとは、思うわ...」

「...善処する。」

 

それを境にノワールは光となった。演算可能時間は残り117秒。ユニの位置を逆算...特定。

 

「黒切羽展開...リフレクスメーザー...ファイア!」

 

一発のビーム。これを黒切羽で反射させ、そして黒切羽自身もビームを放つことで増幅させる技。ビームのくせにハチャメチャな軌道を取るため迎撃は不可能な一撃。だがどちらにせよユニをこちらに引きずり込む必要がある。

 

「演算はもう使えない...ギア、移動するぞ。ユニを追う。」

「...まだやるんですね。」

「友を手にかけるところを見たくないとでもいうか?...いや、だったらとっくに俺を見捨てているはずだ。悩むか、あるいは恐怖か、それともただ単純に逃げているだけか?...まぁいい。惰性でついてくるならそれはそれで結構。だがさっき問うたはずだ、なぜ俺がお前に魔剣を持たせているのか...答えは...お前が俺の妹であり同時に女神だからだ。」

「妹...?何を言ってるんですか、私にはお姉ちゃんしかいません!」

「...そうだったな。そうだった...血迷ったかな...だがそんなことはどうでもよかったりするのが現状。行くぞギア、前に進むためには痛みを乗り越えるしかない。」

「それであなたは...いいんですか?」

「俺の意思を問うな、自分で決めろ。俺にはもう選択肢なんてない。」

「私は...」

「この期に及んで情けない顔ね、ネプギア。」

「ユニか...」

 

銃口を俺に向けながら、ユニはネプギアに話しかける。

 

「アンタはお姉ちゃんたちを助けるときはとても頼りにしてたわ。こんな状況でも、アンタはアンタなりの考えを見つけて影さんと行動を共にしている、そう思ってた。なのに、何よその体たらく。まるで何かを考えることをやめてただとぼとぼと...それじゃあアンタのいる意味なんてないじゃない。答えなさいネプギア。アンタは、何がしたいの。」

「私は...止めたい、影さんが影さんでなくなることを止めたい。」

「影さんのやっていることではなく?」

「うん。」

「どうしてなのか...聞かせてもらえる?」

「...影さんは、我が強すぎて諦めることを忘れてしまった人。強すぎて、引き際を忘れた人...そのせいで心を壊しかねない危ない人...この人はきっと変えられない、だからせめて壊れないでいて欲しい...そうじゃなきゃ...私は最後に、影さんを恨めない...!」

「...ずいぶん無茶苦茶ね...でも嫌いじゃないわ。...それじゃあ影さん、ネプギアに魔剣を渡して。」

「...あぁ。」

 

銃口を下ろしたユニの言う通りにネプギアに魔剣を渡す。

 

「ネプギア...アンタが私を刺しなさい。」

「え...?」

「アタシが今から本気で戦ったとしても、勝ち目はないわ。4人でやっと勝てるのが影さんの強さ...それはアンタもわかってるでしょう?だからよ。」

「でも、そんなこと...!」

「さっきアンタが言っていたことは嘘なの、ネプギア。」

「嘘、じゃないけど...これ以外の方法はないの!?」

「...思いつかないわね。あるとしても、時間が許してくれないわ。」

「同意見だ。...それが、ユニの意思なら尊重するべきだ。」

 

優しくしてあげてとノワールは言ったが...確かにこれは...優しいのかもな。

 

「けど...けどっ!」

「悩むな!アンタだって...世界を救いたいんでしょ!?」

「でも...!」

「でももだってもない!いい、よく聞きなさいネプギア。残りの31時間でアンタたちはルウィーでブランさんとロムラムに対しても同じことをするの。その覚悟をあの人はもう固めている。アンタはこのままうじうじしてるだけ!最後に影さんだけを恨みたいのなら...いい加減逃げ込むのはやめなさい。決めたことをやり通しなさい!それをやり続けている人を、一番長く見ているのはアンタでしょ!」

「っ......本当に、いいんだね?」

「私の決めたことよ。その代わり、ちゃんと犯罪神を滅ぼしなさい。」

「うん、ごめんね、ユニちゃん...」

「...そこはありがとうって言ってほしかったわ。でも、ネプギアらしい。」

「あう...ごめん...ううん、ありがとう、ユニちゃん。」

「どういたしまして。さぁ、一思いにやってちょうだい。」

「うん...せぇい!」

 

ネプギアがユニを刺し貫く。

 

「ずいぶん下手に刺したじゃない...震えてた...?まぁいいわ。あと、頼むわよ。」

「ユニちゃん...うん...!」

 

光となって消えたユニとぼうぜんと立つネプギア。その頬には一筋の涙が流れている。本来、これは全て俺がやるべきだった。だが...横槍は入れられなかった。

 

「これもまた世界を救うための障害、か。」

「影さん...私、決めました。」

「迷わないと、進むと決めたか。」

「はい...ユニちゃんに言われるまで気づきませんでした、私は、ずっと悩んでいたって...」

「そうか...良い友を持ったな、うらやましいよ...帰って休むぞ。時間はないが...それでもこのままルウィーに行くよりかはいい。」

「...わかりました。」

「...いい顔になったな、ギア。」

「吹っ切れさせてくれましたから、ユニちゃんが...文字通り身体を張って。」

「...そうか、後悔もしてなさそうだ。...強いな。」

 

残りの女神はあと3人。世界を救うタイムリミットは残り30時間45分。

 

「必ず取り戻しましょう、茜さんを。それが...ユニちゃんのためになりますから。」

「あぁ。」

 

 




次回、第42話「銀世界に舞う光と影」

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