再編世界の特異点   作:Feldelt

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第42話 銀世界に舞う光と影

犯罪神が活動を始め、世界を滅ぼし始めるまであと7時間。プラネテューヌで再び休息をとり、次はルウィーへ向かう。

 

「...来てしまったか、ついにこの日が。」

「大丈夫ですか...?」

「問題ない、問題があってはいけない...」

「...そうですか...時間がありません、行きましょう。」

「あぁ。」

 

 


 

 

「...来たわね、影。」

「ブラン...もらい受けるぞその命。」

「そう、なら持っていきなさい。」

「っ...抵抗しないんだな。」

「するだけ無駄と知っているからこそよ...」

 

ルウィーに着いた俺とネプギアを待っていたのは雪原の涼風を浴びながらたたずむブランであった。

 

「...そうか。ギア、魔剣をくれ。」

「はい。」

 

ネプギアから魔剣を受け取り、ブランへ向ける。

 

「させるかよ...!」

「貴方だけは...!」

 

瞬間、剣の突撃と光の矢が飛んでくる。

 

「黒と白か...!ちぃ、ギア!」

「っ...あなたたち...」

 

魔剣をネプギアに返し、変身して銃剣を持ち戦闘に入る。この二人と戦うのは地味にしんどい...

 

「また敵となるか、黒、白!」

「当たり前だ...!」

「お母さんを狙うだなんて...!」

「それが運命さ、もはや...止めるすべはない...!止まることもまた許されない!」

 

黒の二刀流を防ぐも、白のコンビネーション抜群の援護がなかなか面倒。どうするか...

 

「そんなてめぇの理屈...」

「聞きたくないし聞こうとも思わない!」

「...黒、白......それじゃあネプギア、あなたに頼んでいいかしら。」

『...!?』

 

ブランの言葉で止まる二人を横目に、ネプギアが魔剣を構えるのを俺は見る。

 

「まって、ネプギアちゃん...!」

「なんで、そんなことするのよ!」

「ロムちゃん、ラムちゃん...」

 

だがあちらも双子に止められて進まない。

 

「君たちは...夢だったよ。望みでもあった。だが、今やただの業でしかない...!」

「業だと...ふざけるな...何人も何人も殺してきたくせに...!いいかよく聞け...命はおもちゃじゃないんだよ!」

「あぁそうともさ。だが黒、よく己を見てみろ、その憎しみと怒り、目と心、剣をふるう腕や引き金を引く指しか持っていないのが現状だろう...?同じさ、俺とお前は...逃れられぬ血の呪縛だよ!」

 

銃剣と二刀が雪原の上でひしめき合う。

 

「何が同じだ!同じであるものか、命を弄ぶお前と俺がぁ!」

「撤回しろ...お兄ちゃんに言ったこと...!《アルテミスバレッジ》!」

 

数多の矢が俺を襲う。

 

「一つ覚えの範囲攻撃など...!」

 

黒切羽を展開することで矢の軌道をずらす。同時にビームを放つことで攻撃もする。これをするために演算を起動しなければならない...が。

 

「ちぃ、いつもこの攻撃は...!」

「厄介な...」

「厄介なのは君たちだよ...だが、悪あがきもそこまでだ。」

「悪あがきだと...!」

「もう、慈悲も容赦も何もない...これだけの業を重ねてきた俺だ、今更また一つ罪が増えようと...もう関係ない。」

 

シャドウ-Cに加速式貫通弾を込め、黒の脳天を狙う。

 

「散れ。」

「させない...!」

「...そうかい。」

 

白がバリアを張り銃弾を止める。無論それは想定内。雷銀式炸薬弾をリロードしてこのうちに目的を果たす。黒切羽が崩れた体勢の黒と白に襲い掛かっている以上ここにくることはできない。

 

「ギア、魔剣をくれ。」

「影さん...」

「妨害は無力化している。やるなら今だ。」

「だめ...」

「そうよ、だめよ!」

 

ブランの前にはロムラムがその小さな手を、腕をめいいっぱい広げて立ちふさがっている。変身はしていない。戦うつもりはこの子たちにはないのだ。

 

「どいてくれ...と言っても嫌の一点張りだろう...なら押し通るまでだ。君たちだって...女神であるのだから...!」

「待ちなさい影、その二人は...!」

「あぁ...可愛い双子の女神だよ。」

「ひっ...」

 

魔剣を構えなおし、ロムラムを二人同時に串刺しにする。

 

「...ロムねぇラムねぇ...!...てめぇはぁぁあぁぁ!!!!」

「来るか...!」

「...わりぃ、ロム、ラム......本当に...ごめんなさい...」

「お、ねえちゃん...」

「これ、いたくないわ...よ...」

「おい...!先にいくのかよ...!...わたしのせいじゃないか...くっそぉぉぉぉ!」

 

ブランの慟哭。黒と白の激情。赤く染まっていく白雪とその上に落とされた魔剣。ただ佇むネプギアと戦場を駆ける悪魔がまだそこにいる。

 

「お前は、お前は、お前はぁぁぁぁああッ!!!」

「甘い...!」

 

黒の左手を蹴り上げ武器を落とし、直後の白の矢は撃ち落とす。

 

「なんでなんだ、どうしてなんだ!いつもいつも!お前はそうやって殺して殺して!何がしたいんだよ!」

「茜を救い出す..そして世界を救う...!」

「ロムねぇとラムねぇを殺して...あかねぇだけは助けるの...!?」

「あぁそうだよ...それが俺の生きる理由だ...!」

「...だったら今ここで終わらせてやるよ...そんな理由でこんなことをするなんて...たとえ母さんやほかの女神様たちが許したとしても...認めてその魔剣に刺されたとしてもぉぉぉ!!!」

 

黒の装備の出力がさらに上がる。こちらは黒切羽を格納、迎撃態勢をとる。白は前俺にやったようにホワイトアウトさせる準備をしている。

 

「そんな理由、そうかい、そう切って捨てるか。」

「あぁそうさ。くらえぇぇぇぇ!!!《レインボウヴァニッシュ》!!」

 

白の光がこちらへ向かい、黒の七色の刃もまたこちらへ向かってくる。

 

「なれば、もう手は選ばん。」

「...っ!?」

 

熱源センサーによって黒の場所、構えを読み取って初撃を防ぎ、次の一閃が来る前にすれ違いその時に右手首から先を切り落とす。同時に黒切羽を4基展開、背後から四肢を切り落としてかつ蹴り落とす。最後にコルトガバメントに持ち替え背中に3発叩き込む。

 

「んなっ...お兄ちゃん...!?」

「...もういない、諦めろ。」

「...!?」

 

直後に白へ向かい、黒切羽のビームで動きを止めながら雷銀式炸薬弾を撃ちこむ。

 

「鉛弾なんて...!?」

「そう、ただの鉛弾だよ...」

 

直撃させた爆発によって白の変身は解除され、それを確認すると同時に黒と同様に銃弾を3発撃ち込む。

 

「ひどい...」

「......あぁ、そうだな...」

「ロム、ラム...黒、白......ねぇ、影。ネプギア......これであなたたちは茜を助けられる...けど少し思ったことがあるわ。」

「...思ったこと?」

「...そうかい。言ってみてくれ...」

「...女神というものは為政者よ。国の意思を決める存在。そして国の意思...国策は国民の意見をもとに生み出される。...意見というものは賛否両論、玉石混交よ。それらがあるから議論は議論として存在できる。...でも貴方のやったことは意見を通り一辺倒にすること。反対意見のない議論に意味はないわ。意味を持たない議論の末に生まれた意思に...意味はあるのかしら。それは為政者の意味にも等しいわ。...貴方が戦ったこの世界に...女神のいる意味はあるのかしら。」

 

ブランの言葉は正しい。あぁ、そうか...今までやってきたことは無意味だったのか...

 

「それはっ......」

「そうだな...答えは...ノーだ。俺のしたことは一種の画一化。生み出された諸々の意見を『女神にとって必要ない』と切り捨て、よりよい意見を生み出すことを阻害した。全て俺の招いたことだ、受け入れるさ。」

「...そう。なら...その魔剣を使いなさい。」

「そうさせてもらう...ギア、魔剣を。」

「はい。...でも、ひとついいですか。」

「...なんだ。」

「...それでも、進むんですか。」

「何度も言わせるな。...俺が選んだ道は...こうなる運命だったということだけ...ただそれだけだ。そしてそれはまだ行き止まりにも、分岐点にも立っていない。一本道だ。だから、進むしかないんだよ。」

「...そうですか...それじゃあ、茜さんを助けたら...影さんが、影さんの意思に反して作った...作り上げてしまったこの世界に...私は意味なき為政者として立つということですね。」

「その通りだ。...さて...それじゃあ最後の一人だ...」

 

魔剣を持ち、ブランの前に立つ。不思議だ。ずっと守っていたかった。なのに、今俺はこの子の命を奪おうとしている。肩を並べて笑いあってた頃は、手をつないで歩きまわってたあの頃は...もう俺の中にしかないいわば虚構で...そしてそれはもう二度とありえないものだ。

 

「...さよならだ、ブラン。愛してる...今までも、これからも。」

「...っ...そう。だから私を最後にしたのね。」

「あぁ。そして君だけは...俺の手で。」

 

魔剣をブランの胸に突き刺して抜き、血濡れたブランの身体を抱きしめる。

 

「ラム...また嘘ついたわね...最後まで私を困らせて...」

「なぁ、ブラン...この帽子、もらっていいか...?」

「好きにしなさい...私は消えるのだから...」

「なら好きにするよ...」

 

消えゆくブランの帽子を取り、唇を重ねる。直後に彼女は光となって消えた。抱き留めてた身体の感覚もない。支えていた腕は降ろされることなくそこにとどまっている。服についていた血も、帽子をとるときに着いた血も消えたいた。そう、女神を構成するのはシェアエナジー。魔剣の糧にしてしまえば...それは光となって還元されるだけなのだ。

 

「......よく言ったよ、愛してるだなんて...本心だとしても...俺には言う資格なんてもうないってのに!俺はっ...!」

 

帽子を強く握りしめる。これは己の罪の象徴、己の成れの果てを示すものだ。愛する者の形見...そう、形見なのだ。

 

「影さん......茜さんを助けに行きましょう。犯罪神が動き出すまでもうそんなに時間がありません。...でも、休みますか...?」

「いいや...すぐ向かう...俺が俺であるうちに...」

「影さんが、影さんであるうちに...?」

「あぁ...正直こたえたよ、俺の今までは全て意味のなかったことだったと、正面から寸分の狂いもなく言われたんだ。背理法でね。その結果...今にも俺は潰れそうだ。死屍累々や後悔や何から何までが全部一気に襲い掛かってきている。ここぞとばかりにね。だからせめて茜だけは助けなきゃ...ほら、行くぞギア...」

「......っ!わかりました...行きましょう。魔剣を、返してください。」

「あぁ。」

 

かくして、7人の女神を魔剣の糧にし力を蓄えた俺とギアは、茜を助け出すためにギョウカイ墓場での最後の戦いに赴くのであった。もうこれで終わらせなければいけない。そうでなければ...俺は...

 

犯罪神が動き始めるまで、残り6時間。

 

 




次回、第43話「万に一つの希望さえ」

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