再編世界の特異点   作:Feldelt

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第9話 別れはもう一度やってくるか

黒煙立ち上る病院の、おそらく3階と思われるフロアにその少女はいた。

 

青年はそれを視界に捉える。

 

その名の通り、茜色の髪が風になびいている。

その手には緋色の大剣が握られていて、頭には包帯が巻かれていて、左目は隠されている。

 

「ちっ...」

 

舌打ちだけが出る。

茜を傷つけたことへの後悔、戦わなければいけない憤り、そして...茜の記憶を奪った虚夜への怒り。それら全てが内包されている。

 

「ここまで騒動になるときっとユニも飛んでくるよな...とはいえお前ら二人を足して茜相手にどうこうなるかとは考え難い。手負いであるということを加味してもだ。」

「...悔しいですが、影さんの言うとおりです。でも、それを言ったら...」

「そうだな、今度は勝てるかも怪しい。生き残れるか、もな。だけれども...イストワールに頼んだんだ。イストワールの中にある、改ざん前の茜の記憶の抽出を。それで茜を取り返す。」

「そんなことが...できるんですか?」

「そうだな、10年くらい前に一度やったくらいだ。今度もできるかどうかはわからない。けれど、茜は...俺の親友だ。それ以上にもなりえたが、それ以下には絶対にならない。例え、俺が茜に殺されようと。」

 

破綻している。そう思いながら青年はシェアデュアライザーを腰に巻き、戦闘態勢を整える。

 

PURPLE HEART

PURPLE SISTER

 

 

「影君...ふふ、決着といこうよ。」

「そうだな...行くぞ、茜!」

 

DUALLIZED!

 

ラステイションの決戦の火蓋が切って落とされた。過去との決別か、それとも...

 

 


 

 

先手を取ったのは影であった。S.M.P.B.L.の牽制射撃で茜の動きを封じて一気に斬りかかる。が、その程度の作戦に引っかかる茜ではない。大剣で影の攻撃を正面から防ぎ、その勢いそのままに膝蹴りを放つ。

 

「それっ!」

「だよな...!」

 

当然のように繰り出された膝蹴りを左腕で受ける。だがこれは身体に染み付いた、そんなレベルのジャブにすぎない。

 

 

「左目が見えなくても、君の動きは読めるよ!」

「そりゃ俺の戦闘スタイルは茜から継いだものがベースだもんな...!」

「そうらしいね、だから動きが...」

「読めるッ!」

 

互いの攻撃の手の一歩先を行くように、壮絶な読みあいが殺し合いの中で行われている。それは参戦しようと思ったネプギアを躊躇させるほどのものであった。

 

「これが...影さんの本当の戦闘...」

 

戦況は先読みの応酬から読みの先読みというもはやよくわからない次元の戦闘になっている。

 

それはネプギアだけでなく、駆けつけてきたユニもそれを見ていた。見ているだけだった。

 

「何よ、あれ...あれが、あの人の本気...?」

 

女神候補生であるネプギアとユニですら、影と茜の戦闘には手が出せていない。

それは単に気迫が凄いからではない。

二人の戦闘技術が彼女たちを凌駕しているからだ。その事実を、彼女たちは痛感している。

ネプギアは傍観しかできず、ユニはやり場のない怒りだけが積もる。

 

その中、戦況が動いた。

 

「ぐっ...」

「10分しか戦えないこと、私は知ってるんだよ?それに...読みに君の身体が追いついてないよ!」

「だとしてもッ...!」

「そこだよ。」

「......!?」

 

拮抗から茜が影を押していき、遂に影に決定的な隙が生まれる。

 

「そのガラ空きの腹、一撃で十分だね...《緋一文字・紅椿》!」

 

避けえない直撃。

茜の必殺技が影の腹を両断しようとしたとき、一筋の光が大剣を弾いた。

 

「させません...お姉ちゃんを取り返すためにも、この人を殺させるわけにはいきません!」

「邪魔しないでよ。私に勝てないってこと、わかってるんでしょ?」

「それでも...それに私は一人じゃありません!」

「...なるほど、そこのユニちゃんと合わせて二人がかり、影君合わせて三人がかり、か。」

「助かったぜネプギア...まだあと5分、お前を取り戻すには、十分だ。」

 

黒紫の二刀使いと紫と黒の女神候補生が深紅の閃光を見やる。

ラステイションの街の空、まだ、過去は失われたままだ。

 

 




次回、第10話「唯一無二の親友を」
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