ジャックと赤姉のカップリング、最終話。どんでん返しも波乱もない、何の変哲も無いお話です。まあどこかのツンデレ姉様とは違ってほぼ最初からお互いに好意を素直に表わしていましたからね。
あとは初夜のお話だぁ……。
「それじゃあおやすみ、赤ずきんさん」
「うん……おやすみ、ジャック……」
どこか覇気が無い答えを返しながら、ベッドに入る赤ずきん。ジャックはその様子を確認してから、部屋の灯りを全て消して自分もベッドに入った。もちろん赤ずきんと同じベッドではなく、自分のベッドに。
(赤ずきんさん、あの話をした後からずっと様子が変だな。やっぱり、一緒に寝られないのがそんなにショックだったのかな?)
ついに赤ずきんに対する悩みを打ち明け、もう一緒には寝られないと言ってしまったジャック。思いのほか軽蔑やその類の感情は見せてこなかったので安心したのだが、代わりに酷く悲しそうな顔をさせてしまった。やはり赤ずきんはジャックを誘惑しているとかそういうことではなく、純粋に一緒のベッドで寝るのが心地良かったからいつも潜り込んできていたらしい。
しかしジャックの方は心地良くは無かったため、心苦しいが前言を翻すつもりはなかった。まあさすがにちょっと可哀想なので、一応お互いのベッドは手を伸ばせば触れ合える程度の距離を保ってはいる。
(赤ずきんさんには悪いけど、これで久しぶりに安心して眠れるよ……)
背後から包み込むような温もりも、背中に広がる柔らかな感触も、今は全く感じない。ベッドのシーツなども洗濯して新しくしてあるため、赤ずきんの残り香に興奮を催すこともない。久しぶりに心地良く眠りにつけそうなジャックであった。
これこそ望んでいた状況。望んでいた眠りだ。
(でも何だろう、この気持ち……これでもう赤ずきんさんの身体の柔らかさに悩まされなくて済むはずなのに、全然嬉しくないよ。というか変に気になって落ちつかない……)
そのはずだったが、どうにも落ち着けない。何だか背中が寂しく、どこか肌寒いように思えてならなかった。しっかりとシーツで身体を覆っているにも拘わらず。
(やっぱり、何だかんだ言って僕も満更でもなかったんだろうなぁ。確かにちょっと柔らかさが気になっちゃうけど、抱きついてくる赤ずきんさんの身体が暖かくてとっても気持ち良かったし)
その理由も何となく分かってはいた。ジャックも決して赤ずきんと一緒に眠るのが嫌ではなかった。むしろ大好きな女の子と触れ合った状態で眠れるのだから、安心と幸せに包まれた素晴らしい心地であった。
ただその前に男として抑えがたい感情を催していたため、止めざるを得なかったのである。もしもそういった感情を抑えられるのなら、ジャックだって毎晩一緒に赤ずきんと寝たかった。
(だけどあんなことを言っちゃった手前、今更ベッドに入って来ても良いなんて言えないよね。もう僕が赤ずきんさんに襲い掛かりたいくらい興奮するんだってこと、これ以上無いほどはっきり言っちゃったし……)
とはいえすでにジャックの本心は伝えてしまったし、実際もう我慢できそうにない。次に赤ずきんがベッドに入ってきたら、その時はジャックも自分を抑えられないだろう。
(……今更後悔しても手遅れだよね。うん。変なこと考えてないで、もう寝よう)
なので後悔するのは止めて、さっさと眠ることにした。どこか寂しくとも胸の高鳴りや下半身の疼きを感じずに済む以上、少なくとも安らかな眠りだけは保証されているのだから。
「……ジャック、聞いても良いかな?」
「えっ? ど、どうしたの、赤ずきんさん?」
そうしてジャックが眠りに付こうと深く目蓋を閉じた時、背後から赤ずきんに声をかけられた。
振り返ってみれば、こちらに背を向けて横になったままの赤ずきんの姿。寝る前に少しお話でもしたいのだろうか。
「あたしはこれまであんたのベッドに裸で潜り込んでたけどさ、ジャックはもしかしてあたしのこと……エッチな女の子だ、って思ったことあった?」
「えっと……それは、初めの頃はちょっとだけ」
「うっ……やっぱり、思ってたんだね……」
顔が見えずとも恥ずかしそうな、それでいてどこかショックを受けた声なのは分かる。たぶんそんな話題だから赤ずきんもこちらに顔を向けないのだろう。そう思ったジャックは例え後姿でも見るのは失礼かと考え、こちらも同様に背を向けた。
「別に今はそんなこと思ってないから安心してよ。それは全部血式リビドーのせいだって分かってるから、赤ずきんさんのことエッチだなんて思ってないよ?」
「そ、そっか……じゃあさ、もしもあたしが、本当にエッチな子だったらどう思う?」
「えっ、どう思うって……?」
安心したような吐息が聞こえたのも束の間、今度はそんな質問が投げかけられる。
赤ずきんが本当はエッチな子だったら。一応反射的に考えてはみるものの、甘えん坊のイメージと強くて格好良いイメージが強すぎていまいちそんな姿は浮かんでこなかった。確かに身体つきはだいぶエッチだが、赤ずきんが言っているのはそういうことではないはずだ。
「もしもあたしが、ジャックと、その……エッチなことをしたくて、裸でベッドに潜り込んでたとしたら……ジャックはどう思う? 幻滅して、あたしのこと嫌いになったりする……?」
「ううん。別に幻滅なんてしないし、嫌いにもならないよ。大体それを言ったら、僕の方こそついさっき幻滅されそうな本音を言っちゃったし……むしろ嬉しい、って思ってるところもあるからね……」
具体的な例を聞かされてようやく想像出来たものの、幻滅などするわけもない。それを言うなら心ではむしろ大いに歓迎したいと思っているジャックの方が、自分に幻滅したいくらいだった。
「あ、あたしも幻滅なんてしないよ。ジャックだって男の子なんだから、そういうことを考えちゃうのは仕方ないしね?」
しかし赤ずきんは皆のお姉さんで、理解ある女の子。だからこそジャックの嫌らしい思考も受け止め、認めてくれた。今度はジャックが安堵の吐息を零す番であった。
「……でも、そっか。それなら、大丈夫だよね」
「えっ、大丈夫って何が――!?」
首を傾げ、思わず寝返りを打って赤ずきんの方を向こうとしたジャック。しかし結局それは叶わなかった。何故ならその直前、背中にとても親しみと思い入れのある温もりが引っ付いてきたから。もちろん、夢のような柔らかさと共に。
「えっ、と……赤ずきんさん? 僕が言ってたこと、忘れちゃったの? 今度ベッドに入ってきたら、その時は問答無用で襲っちゃうって言ったよね?」
今更この感触が何なのかなど考えるまでもない。その正体が分かっていたジャックは、抱きついてきている赤ずきんに警告を発した。問答無用で襲い掛かると言ったものの、ジャックだって赤ずきんが傷つくようなことはしたくない。だからこそ発した警告であった。
「……いいよ」
「……えっ?」
しかし、赤ずきんは離れなかった。それどころか肯定の呟きを零すと、ジャックの身体の正面に腕を回して更に強く抱きついてくる。
「襲っても、いいよ。あたしはもう、心の準備もできてるからさ……」
挙句の果てに、襲い掛かっても構わないという意味の言葉まで。背後から抱きつかれているために表情は見えないものの、声音には嘘や冗談が含まれているとは思えない。そこにあったのは僅かばかりの恥じらいと、覚悟だけだった。
「ほ、本気、なの?」
「……うん。あたしは誘ってるんだよ、ジャック。今まではそういうこと考えてなかったけど、今回は別だよ」
そう言って、赤ずきんは更に身体を押し付けてくる。それも自らの豊かな胸の膨らみを以って、ジャックの背中を撫で回すように。背中に広がる想像を絶する柔らかさに、ジャックは痺れにも似た感覚を覚えていた。触れられている背中と、身体のもっと下の方に。
「ほ、本当に、いいの……?」
「むしろ、ジャックじゃなきゃ嫌だよ……それに、あたしもジャックに抱きしめてもらいたいんだ。いつもはこうやってあたしがジャックに後ろから抱き付いてるからさ、たまにはあんたに正面から抱きしめて欲しいな……」
「赤ずきんさん……」
考えてみれば、ジャックは寝る時に赤ずきんを正面から抱きしめてあげたことがなかった。もちろんそれはベッドに入ってくる赤ずきんが裸になることが原因なのだが、相手は実はとても甘えん坊な赤ずきん。きっと内心では納得行かなかったに違いない。
そして無論ジャック自身も後ろから抱きつかれるだけではなく、正面から抱きしめたいと思っていた。この甘えん坊なお姉さんを堪能したいという欲望は元より、愛する女性を正面から抱きしめられなければ男ではない。
「大好きだよ、ジャック……」
赤ずきんは後ろから耳元で愛を囁くと、軽く首筋にキスを一つ落としてきた。
元々ジャックはこの一ヶ月、欲望が溜まりに溜まっていた。そこにこんな愛の囁きと、覚悟が出来ているという事実。その二つを示されてしまえば、最早耐えることなど不可能だった。
「――わっ!?」
ジャックは即座に赤ずきんの腕を振り解くと振り向いてそのまま身体を押し倒す。赤ずきんの身体に跨り、両腕を掴んで逃がさないように。
「じゃ、ジャック……?」
「……もう、後悔しても遅いからね? 僕はもう、赤ずきんさんを食べちゃいたくて仕方ないんだから」
微かな戸惑いに揺れる赤ずきんの瞳を見下ろし、そして更に下へと視線を向けていく。誘惑のための勇気を出すためだったのだろうか。今の赤ずきんは寝る時のラフな格好ではなく、血式少女隊の制服の上にいつものお気に入りのコートを羽織った姿であった。
しかし豊かな胸の膨らみは制服を下から押し上げ主張しているし、捲れた制服の裾からは美しい曲線を描くウエストが覗いている。ショートパンツからむき出しの太股は思わず舌なめずりしそうなほどに肉付きが良い。
童話のオオカミは赤ずきんに服を脱がせて食べようとしていたらしいが、確かにこの赤ずきんなら服を脱がせて食べたくなるのも十分に理解できた。というかジャックも実際にそうしたかった。
「あははっ。あたし、ジャックに食べられちゃうんだ……ちょっと怖いけど、でも……あんたに食べられるなら、本望だよ……」
しかし童話とは異なり、赤ずきんはオオカミであるジャックに対して抵抗は見せなかった。むしろどこか幸せそうな笑みを浮かべ、ジャックを愛しそうに見つめてくる。案外グレーテルが言っていた通り、本当は最初からジャックに食べてもらいたかったのかもしれない。
ベッドに横たわりどこか潤んだ瞳で見上げてくる赤ずきんは、お気に入りのフードを羽織っているにも拘わらず今やこんなにも弱々しく可愛らしい姿を晒している。それも頬を赤く染め、緊張に身を縮こまらせながら。
今まで色々と我慢を重ねてきたジャックにとって、その様子だけでも理性を失いそうになってしまうほど魅力的であった。
「本当に、良いの? きっと、いくら僕でも途中でやめたりなんかできないよ?」
それでも残った理性を振り絞り、赤ずきんの決意を確かめる。今まで必死に欲望を押さえ込んでいたからこそ、一度正直になってしまえば歯止めは利かない。そうなれば優しく扱うことはきっと難しいだろう。だからジャックは改めて尋ねた。
「……さっきも言ったけど、構わないよ。今まで色々我慢させてきたみたいだし、あたしは身体が丈夫で体力もあるから、それでジャックを喜ばせられるなら願ったり叶ったりだよ」
「赤ずきんさん……」
返ってきたのは変わらぬ決意が滲む答え。その瞳にも表情にも嘘は見えず、ジャックへの想いだけがそこにあった。
「あ……でも、一つだけ聞いて欲しいことがあるんだけど、良いかな?」
「……うん。何かな?」
「やっぱり、服を着たままジャックとベッドに入ったせいか落ち着かないんだよね……だから、その……ジャックは好きなことして良いけど……なるべく早く、脱がしてくれると嬉しいな……?」
頬を染め、正に年頃の女の子のように恥らいながらそんな台詞を口にする赤ずきん。それでいてジャックの好きにして良いという自分の言葉は否定せず、ただ服を早く脱がせて欲しいと懇願してくる。
元々ジャックは欲望を押さえ込んでいてすでにいっぱいいっぱいの状態。そんな状態で眩暈がしそうなほどに可愛らしい赤ずきんの姿を見てしまえば、もう堪えることなどできなかった。
「うん、分かったよ。それじゃあ……いただきます」
「――んっ」
可愛らしい赤ずきんを食べるために、きっちりと食前の言葉を呟いてから一口目を口にした。今のジャックは飢えたオオカミなのだから、欲望に身を任せることに躊躇いは無いしそれが自然。
ただし幾ら今はしおらしく見えても、相手は血式少女の中でも抜群の膂力や身体能力を誇る赤ずきん。ましてジャックは男の中でも非力な部類。抵抗は赤子の手を捻るくらいに簡単なことだろう。
しかし赤ずきんは一切抵抗を見せず、されるがままにジャックに貪られるのであった。だからこそジャックは欲望のまま、本能のままに赤ずきんを貪った。それこそまるで、発情したオオカミのように。
「おはよう、みんな! 今日も良い朝だね!」
赤ずきんをたっぷりと味わい、翌朝。
お互いの関係が更に深くなったことを皆に悟られないか心配になっていたジャックだが、その心配は見事に的中した。何故なら共に朝食の席に顔を出した赤ずきんの様子が、傍から見てもおかしいと分かるほどにご機嫌だったから。それはもう恋人としての贔屓目を抜きにしても魅力的な、眩く輝く最高の笑みである。
「おはよ、赤姉。何か今日は妙にテンション高いけど、何かあったの?」
「あははっ、やっぱり分かっちゃうか。まあちょっとあったんだ。ね、ジャック?」
「そ、そうだね……」
話を振られて昨夜の一幕を思い出し、顔が熱くなってくるジャック。
昨夜ジャックは正にオオカミの如く赤ずきんに襲いかかり、欲望のままに満足するまで喰らってしまった。最中には無我夢中だったので自分の行動を疑問に思ったりはしなかったものの、すっかり頭が冷えた今となっては羞恥や後悔でいっぱいだ。あれほど夢中になってしまうとは、やはりジャックも所詮は羊の皮を被ったオオカミなのだろう。
「ジャック、何だか顔が赤いのだけれど……もしかして熱でもあるの? ひょっとして風邪かしら?」
「そ、そうじゃないよ、アリス。ただちょっと、ね……」
「そうだよ。ちょっと、ね?」
心配してくれたアリスには悪いが本当のことは言えない。なので先ほど振られたように思わせぶりな答えを返して赤ずきんに視線を向けるも、返ってきたのは恥ずかしそうな表情ではなく意味あり気な微笑みだけであった。それもかなり意地悪な感じの。
「……何だかお二人の様子がおかしいですわ。私達に何かを隠しているように見えますもの」
「そ、そうですね。何だかいつもとお二人の雰囲気が違う気がします……」
「ふふっ……」
朝食の席に集っていたシンデレラや白雪姫といった残りの少女達も首を傾げているものの、グレーテルだけは全てを知っていると言わんばかりの不気味な笑みを浮かべていた。
赤ずきんは度々グレーテルに恋愛相談をしているらしいのでジャック達の関係はかなりの所まで知っているはずだが、さすがに昨夜の出来事まで知っていることはないはずだ。怪しい笑みを見る限りでは知っていそうな気がしなくも無いが。
「ま、その辺は気になる子にだけ後で教えてあげるよ。そんなことより朝ごはんだ! さ、ジャック。一緒に席に着こ?」
「う、うん――って、え、ちょ、赤ずきんさん?」
「うん? どうかした?」
一緒に席に着こうとした赤ずきんが不思議そうに首を傾げてくる。
別に一緒に席に着くことはおかしくない。ジャックと赤ずきんが恋人同士なのは周知の事実だし、今までだって隣同士の席に座ることは何度もあった。ジャックが問題視したのはもっと別のこと。
「ど、どうかしたって……これはちょっと、くっつきすぎじゃないかな? その、お姉さん的にこれはまずいんじゃ……」
それは自分たちの距離と触れ合い。今まで赤ずきんは皆からのお姉さんとしてのイメージを壊したくないがために、皆の前では積極的な触れ合いを行ってこなかった。だからジャックもその意を汲んで協力していた。
しかし今、あろうことか赤ずきんはジャックにべったりくっついていた。お互いの肩を触れ合わせ、腕を絡ませてべったりと。しかもその絡めたジャックの片腕に抱きつくような形で。これは誰がどう見ても赤ずきんがジャックに甘えているようにしか見えない格好であった。だからこそジャックは問題視したのだ。
「ああ、そういうことか。もういいんだよジャック、そういうのは気にしないで」
「え、ど、どういうこと?」
だが赤ずきんはあっさりとそんなことを口にする。皆からのイメージに一番拘っていたのは他ならぬ赤ずきんだというのに、これではもうどうでも良くなったかのような言い草だ。さすがにこれにはジャックも困惑を隠せなかった。
「皆から頼りになるお姉さんって思われていたいから、皆の前ではいつもみたいな触れ合いはしてこなかったけどさ、もうそういうのは全部止めるよ。これからは皆の前でも存分にイチャイチャするんだ!」
「え、えぇっ!? あ、赤ずきんさんは、それでいいの……?」
「うん。だってあたしは気付いたんだ。要は皆の前でどれだけジャックに甘えたって問題ないくらい、あたしが更にお姉さんとしての力を増せば良いんだからね!」
(な、なるほど……相変わらず脳筋な発想だなぁ。さすが赤ずきんさん……)
理に適っているように見えてその実とんでもない発想に、納得しつつも微かに呆れてしまう。とはいえ真っ直ぐな赤ずきんらしく、至極簡単な考えなのも確かだった。
「もちろん今までだって頑張ってきたんだし、言うほど簡単じゃないと思うよ? だけどあたしにはできるっていう確信があるんだ。だってあたしを支えてくれる、頼りになる男がここにいるんだからさ……」
「赤ずきんさん……」
ぽっと頬を染め、深い信頼と愛情に満ちた瞳を向けてくる赤ずきん。そんな目を向けられてしまえば、ジャックにできるのは頷くことだけだった。元々赤ずきんの力になることが、ジャックの望みであったのだから。
「今は甘えてるんだから、その呼び方は無しだよ?」
「……うん。そうだね、赤ずきん。君が今よりもお姉さんらしく振舞えるように、僕は精一杯支えていくよ」
「うんうん! 頼りにしてるよ、ジャック!」
ジャックが答えると、赤ずきんは嬉しそうに笑って更に深く腕を抱きしめてきた。最早ジャックの二の腕は赤ずきんの胸の膨らみの間に挟まっている感じであり、魅惑の柔らかさと弾力がひしひしと伝わってきている。
しかしジャックは昨夜今まで溜まっていたケダモノな欲望を全て発散したところなので、さすがにこの程度のことで我を忘れることはなかった。まあ昨夜のことが無ければこの場で押し倒していたかもしれないくらいには、破壊力のある感触だったが。
「……何、あれ? ていうか誰?」
「ジャックさんはともかくとして……あれは、本当に赤ずきんさんですの?」
そんな風にジャックが鼻の下を伸ばしていると、親指姫とシンデレラが困惑に満ちた呟きを零すのが聞こえてきた。まあ二人からすれば突然赤ずきんが子供のようにジャックに甘え始めたのだから、頼りになるお姉さんに長く接してきた二人には無理の無い反応だ。
「わあぁ……ジャックさんに赤姉様、とっても仲良しです……!」
「ふふっ。二人とも、おめでとう」
しかしすぐに受け入れている少女達もいた。白雪姫は困惑など見せずむしろ瞳を輝かせているし、アリスもどこか満足気な笑みを浮かべている。
少なくとも赤ずきんが長年努力して築いてきた頼りになるお姉さんとしてのイメージは、困惑を覚えこそすれ壊れてしまうほど柔なものではないのだろう。それならジャックも一安心だった。
「……そう。やったのね」
(や、やった、って……ど、どういう意味で言っているんだろう……?)
ただ一つ、意味深な笑みを浮かべて思わせぶりな呟きを零すグレーテルにだけは、どうしても安心感を覚えらなかった。その呟きは赤ずきんが皆の前でもジャックに甘えられるようになったことに対してか、それとももっと別の出来事に関してかが分からなかったからだ。まあいずれにしても、グレーテルなら下手に言い触らしたりすることはないだろう。
とにもかくにも、ジャックは子供のようにべったりくっついてくる赤ずきんと共に席に着くのであった。これからはきっと皆の前でも気兼ねなく赤ずきんと触れ合えるであろうことに対して、確かな喜びを感じながら。
これにてジャック×赤ずきんのお話は終了。親指姫の時のような番外編を書くのもいいですが、それはハーレムの方でも書けなくもないので悩んでいます。とりあえず初夜だけは事後、朝チュン含めて書く予定です。もう半分くらいまで書いてますし。問題は投稿の形ですね。親指姫のエッチな話と纏めちゃおうかなぁ……。