交錯特異点/異邦人の観測者   作:白鷺 葵

2 / 2
・スマブラSP×FGOのクロスオーバー
・予告風味
・FGOの時間軸は2部攻略中
・『灯火の星』最大のネタバレあり
・続く予定は一切なし
・立香の1人称は『私』だが、性別に関しては「どちらでも」可能。


亜種異聞帯SPECIAL 光闇激突ULTIMATE/命の灯火

――『特別(スペシャル)/究極の(アルティメット)76』

 

*

 

 

 

「“彼ら”の噂を、聞いたことがあるかい?」

 

 

 攫われたお姫様を助けに行く、赤い帽子と青いつなぎを着た配管工。

 

 幾多の時を超えて繰り返される魔王との戦いで、剣を携えて駆け抜けた勇者。

 

 数多もの獣たちの中で、誰もが真っ先に思い浮かべる黄色い電気鼠。

 

 春風とともに現れ、流星の如き勢いで、星の危機を乗り越えてきた桃色の戦士。

 

 

「“彼ら”の噂を、聞いたことがあるかい?」

 

 

 雇われ遊撃隊として名を馳せ、鋼鉄の鳥で宇宙(そら)を飛び回る狐の遊撃手。

 

 宇宙海賊と深い因縁を持つ、鋼鉄に身を包んだ女賞金稼ぎ(バウンディハンター)

 

 幼き赤子を正しき場所へ送り届けるために、長い旅をした恐竜一族。

 

 ジャングルを荒らしまわるワニの王と戦いを繰り広げた、勇猛果敢なジャングルの守護者。

 

 有名な兄とは対照的に、あまりにも影が薄い緑の帽子の配管工。

 

 知っている。多くの人々が知っている。知らぬ者はいないと言わんばかりの知名度だ。

 不用意に口に出してしまえば、世界の修正力(おとなのじじょう)による特攻を喰らってしまいそうなくらいに。

 マスターである藤丸立香自身が、彼等を題材にした物語を紐解いている。

 

 時には()()()()()()、時には()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()

 “()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことが、立香の役目だったのだ。

 

 

 

 

*

 

――『私たちと(ウィー)あなたたち(ユー)55』

 

*

 

 

 

 

 ――けれど、それ以上に。

 

 

「私は“あなたの噂”を聞いたことがある」

 

 

 そう言い返すと、“何か”は酷く驚いたように気配を揺らがせた。

 人類最後のマスターとして世界を救った者は、真っ直ぐに“何か”を見返す。

 

 

「『数多のキャラクターたちに命を吹き込み、世界を作り上げ、その果てには『“彼ら”による闘技祭』を計画した』」

 

「――流石は世界を救った冠位保持者(グランドマスター)だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ()は笑った。

 ……いいや、少し語弊がある。

 

 ()には一切の表情が無い。()の機嫌を判別できるのは、上機嫌そうな声と()()()()()()()()()()()だけだ。

 初見で多くの者が畏怖を抱くこの右手が、数多の世界と人々を創り上げた()()()()()()』だと、誰が予想できるだろうか。

 ちなみに、立香が右手を()表記とするのは、この手を倒した際に聞ける断末魔が男の声をしているためである。閑話休題。

 

 

「しかし時間が無い。説明する間も惜しい程、事態は切迫している」

 

 

 ()がそう呟いたときだった。

 

 突如、虚空に浮かび上がったのは眩いばかりの光。神々しくも白い閃光を纏う“ソレ”は、空を覆いつくさんほどの右手を従えていた。美しく荘厳な光の化身から滲み出ているのは、巨悪すらも怯んでしまう程の禍々しさだ。平々凡々を地で行く藤丸立香でも、この光景が異常事態であることは一瞬で理解できた。

 逆境の極みと言えるような状況であっても、勇敢な戦士たちは怯まず対峙する。正義も悪も関係なく、彼や彼女たちは、光の化身が齎す支配に反旗を翻すために1つとなった。――嘗て世界に襲い掛かってきた、禁忌の名を持つ支配者と対峙したときと同じように。瞳に宿るは不退転の意志。

 

 だが、彼らの闘志は一瞬で打ち砕かれた。光の化身が放った数多の光線によって、戦士たちは貫かれていく。

 

 ある者は絶望の未来を仲間たちに告げようとして振り返ったときに、ある者は最前線に立っていたが故に、ある者は友の手を掴もうとしたが故に、ある者は光へ果敢に挑みかかった故に、ある者は仲間を庇おうとしたが故に、眩い光に飲み込まれて消えた。

 やがて光は宇宙(そら)をも覆い尽くす。数多の世界をも飲み込み、そこに生きる人形たちの魂を断ち切りながら。――肉体を奪われた存在は、行く当てもなく彷徨い続ける。魂を宿すべき器は光の化身に奪われた。肉体を持たぬ者は、支配者に立ち向かう術を持たない。

 

 

「奴は思っているだろう。『こうして世界は滅び、私の支配は絶対になりました』とね」

 

「――けど、そうじゃないんだね?」

 

 

 立香の答えを聞いた()は、満足げに頷いた。

 それと同時に、世界に色が灯る。

 曇天の空を切り裂くようにして、星屑が煌めいた。

 

 

「奴の敗因を挙げるとするなら、ただ2つ」

 

 

 右手はびしっとブイサインする。

 

 

「1つめは、銀河を股にかけ、数多の世界を救ってきた星の戦士を取り逃がしたこと」

 

 

 次は人差し指を立てて、立香を指さした。

 

 

「2つめは――光と闇を統べた“逆境のプロ”である『冠位保持者(グランドマスター)』を、我が戦士たちの『担い手(プレイヤー)』として見出したことだ」

 

 

 ()がそう言い切るや否や、この場が光に包まれる。()は小さく舌打ちすると、そのまま立香を弾き飛ばした。

 衝撃が強かったためか、立香の意識はどこかへと引っ張られていく。幾ら冠位保持者(グランドマスター)と言えど、それに逆らう術を有していない。

 

 

「頼む、冠位保持者(グランドマスター)。彼らを、灯火の星を導いてくれ――!!」

 

 

 ――世界が光に飲み込まれる刹那、そんな言葉を聞いた気がした。

 

 

 

*

 

――『交差する(エックス)37』

 

*

 

 

 

 

 その世界は、右手を象った創造神と、左手を象った破壊神が作り上げた世界だった。

 住民は『この世界が作りものである』ことを理解した上で、自分の意志を持って生活していた。

 光も闇、正義と悪――そんなものなど関係無く、みながみな、闘技祭に夢中だった。

 

 古今東西、数多の世界から呼び出された英雄たち。己の魂を燃やし、異世界の英雄たちと交わることで、お互いの力を高めていく。

 

 

「大乱闘スマッシュブラザーズ。日本はおろか、世界で有名なゲームだよ」

 

「何だって!? では、我々は『ゲームを模した異聞帯に迷い込んだ』ということか!?」

 

「でも、この世界には生体反応――もしくはそれに準ずるようなエネルギー反応が無い。……一体何が起きたというんだ?」

 

 

 嘗て、この世界は禁忌と呼ばれる異物によって侵略されかかったことがある。

 しかし、今回この世界を狙った支配者は、神々しい光を纏った白き化身だった。

 

 光は世界を焼き焦がし、神に逆らうために必要な器と魂を切り離した。戦える者は残っていない――支配者はそうやって、タカを括っていたのだろう。

 

 

「――ぽよ?」

 

 

 だが、支配者はミスを犯した。決定的なミスだった。神が愛した寵児の1人を取り逃したのだ。

 そうして取り逃した星の戦士は――『洗脳された仲間を躊躇なくぶん殴って正気に戻し、宇宙の危機を救った』という偉業の持ち主だった。

 

 

「灯火はまだ消えてない。ここから、すべてを取り戻すんだ――!!」

 

 

 そこに、数多の逆境を跳ねのけた、人類最後/汎人類史のマスターの力が合わさったとき。

 光と闇がぶつかり合う、SPECIALでULTIMATEな戦いが幕を開ける――!!

 

 

 

 

 

*

 

――『豪華な(デラックス)25』

 

*

 

 

 

 

 

 転がっていた器に、漂っていた無辜の魂(スピリット)が宿る。

 灰色の彫像が、ゆっくりと起き上がった。

 

 赤い帽子と青いオーバーオールは、宿った無辜の魂に合わせて色を変えていく。出来上がったのは、くすんだ青緑色の帽子とオーバーオールを纏った配管工だ。

 一目見れば、誰もが『彼』の名を言い当てることができる。莫大な知名度を誇り、とある会社の名を背負って立つ代表格だ。見間違えるはずがない。

 やがて、誰もが知る『彼』が、ゆっくりと瞼を開ける。晴れ渡った蒼穹を思わせる瞳はそこに無く、血のように真っ赤に染まった眼があった。

 

 

「マリオ……!」

 

「嘘だろう!? よりにもよって、ミスター・Nと称しても過言じゃないアイツが闇堕ちだなんて!」

 

 

 彼の配管工の名を呼んだのは誰だったか。彼の配管工の悪堕ちを目の当たりにしたことに悲鳴を上げたのは誰だったのか。

 

 嘗ての頼れる仲間が、最大の敵として立ちはだかる――これ程までに絶望的な状況は無いだろう。現に立香も、ミスター・Nとまで称された看板キャラクター――赤い帽子の配管工・マリオの闇堕ちだなんて想像できなかった。なぜなら彼は、いつだって、正義の味方として在り続けていたから。

 器に宿った魂も、汎人類史陣営とカービィのことを敵と認識したらしい。躊躇うことなく構えを取る。びりびりした殺気をぶつけられ、立香は思わず生唾を飲み干した。そんな立香を見上げるのは、この異聞帯で一緒に行動することになった星の戦士・カービィだ。

 

 ピンクの悪魔と呼ばれる彼は、何処までも澄み渡った青い瞳でこちらを見上げている。

 伊達に銀河規模の危機を救ってきた英雄だ。単純明快な考え方の持ち主ゆえに、この場における最適解に辿り着いている。

 “あのマリオが本物か偽物かは分からないが、戦って倒せば答えは出るだろう”――と。

 

 

「そうだ。ミスター・Nが何だって言うんだ。こちとら汎人類史の代表者とピンクの悪魔だぞ!」

 

「ぽよ!」

 

 

 立香が宣言すれば、カービィも呼応するようにぴょんぴょん跳ねた。

 顔は能天気だけど、彼は本能的に理解している。自分が今、何をすべきなのかを。

 

 黒幕が仕留め損なった灯火の星が煌めくとき、消えかけた灯火は次々と点火されていく。燃え広がった炎はいずれ、支配者を打ち倒す希望へと変わるのだ。

 

 

「さあ、行きましょう先輩! スマブラは初心者ですが、全力でサポートします!」

 

 

 カービィの『担い手(プレイヤー)』となった立香には、頼れる後輩のマシュがついている。シャドウボーダーの仲間たちだって一緒にいてくれる。

 皆の目的は一緒だ。“支配者によって書き換えられた世界を元に戻す”――あるべき場所への帰還。歪んだ支配の打倒。

 汎人類史の生き残りとして異聞帯を漂うカルデアと、唯一生き残ったスマブラのファイター――お互いの境遇は、非常によく似ていた。

 

 それ故に、互いが互いを重ねていたのかもしれない。

 それ故に、互いが互いの手を取った。

 

 

『ここからだ! 反撃するよ、サポートお願い!』

 

「ぽよぅ!」

 

「任せてください!」

 

 

 『担い手(プレイヤー)』である立香の意志を受けたカービィが駆け出す。マシュもそれに続いて駆け出した。

 

 

 

 

 

*

 

――『代表者(オールスター)12』

 

*

 

 

 

 

 

「さあて、キミに()()()()してもらったんだ。何もしないままだなんて、神様として廃るだろう?」

 

 

 光による支配から解放された()は、そう言うなり、人類最後のマスターへ人差し指を向けた。

 

 

冠位保持者(グランドマスター)立香。キミに、私のすべてを預けよう。――奴らへ続く道は、()を持ってして切り開きなさい」

 

 

 ――その言葉が何を意味するのか、藤丸立香は知っている。

 

 神の言葉を聞いた戦士たちがざわめく声が、呆けた顔をしたシャドウボーダーのクルーが、現状をゲームに当てはめた末に叩き出された答えが、その異質さを如実に表していた。

 “この世界を作り上げた神が、外部からやって来た意識を宿して道を切り開かんとしている”――空前絶後の出来事だろう。スマブラプレイヤーにしてみれば、文字通りのご褒美だ。

 「この右手を操作して遊べたら楽しいだろうな」と思った経験がある人間として、非合法手段で動かすと言う方法を快く思えなかった身として、ワクワクしないなんてあり得ない。

 

 

「――わかった。よろしく、マスターハンド!」

 

 

 ここにいたのは、冠位保持者(グランドマスター)の藤丸立香ではない。

 ゲームが大好きで仕方がない、どこにでもいるゲーマーの藤丸立香だった。

 

 

 

『はははははは! 疑似ファイターどもがゴミのようだ!!』

 

「せ、先輩が……先輩が調子に乗ってる……!」

 

「しかし、油断は一切していない。的確に道を切り開いている」

 

「この短期間でマスターハンドの力を使いこなすなんて、流石は冠位保持者(グランドマスター)だね!」

 

 

 

「マスターハンドって、あんなに強かったんだ」

 

「そりゃあ、担い手(プレイヤー)のスピリットが宿ればな」

 

「普段はどれだけ手抜きしてるのか、一目瞭然だね」

 

 

 

 

 

*

 

――『始まりの(オリジン)8』

 

*

 

 

 

 

 創造を体現する光の化身キーラは、光による支配を目論む。

 

 破壊を体現する闇の化身ダーズは、闇による支配を目論む。

 

 

 行き過ぎた光は命を飲み込み、行き過ぎた闇は命を蝕む。数多の命が辿る先は、どちらも一緒――終焉だ。禄でもない結末であることは、容易に想像がつく。

 強大な支配者に対し、この世界で生きる命たちは反旗を翻した。自分たちの世界を取り戻すため、自由に生きる権利を取り戻すため、歴戦の勇者たちは再び集う。

 

 

 

 

*

 

――『スマブラ四天王(ビック・フォー)

 

*

 

 

 

 

 

 ――誘われたのは究極の戦場。目の前に広がるのは、新たな戦いの舞台。

 

 

「ピカァァァッ!!?」

 

「うわああああああ!? ピ、ピカチュウがやられた!」

 

「先輩、大丈夫ですか!?」

 

『こっちは大丈夫! お疲れピカチュウ、仇は必ず取る!』

 

 

 

 ――宵闇の寒さに耐え抜いた小さな星は、世界に光を灯していく。

 

 

 

「うわああああああぁぁぁぁ……」

 

「カービィィィィ!!」

 

「あいつは軽量級キャラだ。復帰が優遇されてても、被ダメ率が100%越えると厳しいか……!」

 

『まだだ。あの子が繋いだ灯火は、絶対に絶やさせはしない……!』

 

 

 

 ――戦士たちの魂は、遠き過去を呼び覚ます。嘗て起こった戦いを、彼らが乗り越えてきた戦いを。

 

 

 

「うあああッ!?」

 

「リンクまで……!」

 

「キーラとダーズは未だ健在、こちらの有する戦士(ファイター)は残り1体だ。逆境以外の何物でもない……!」

 

『だけど』

 

 

『ここには、自分たちがいる。――ここにはまだ、“彼”がいる!』

 

 

 

 

 

*

 

――『ミスター・N』

 

*

 

 

 

 

 

 

 ――此処に集った魂が秘めたとりどりの光。それは炎の螺旋となりながら、支配者たちを打ち砕く!

 

 

 

『奴らとの決着をつけよう、ミスター・N――マリオ』

 

「――イヤッフゥゥゥ!」

 

 

 

 ――さあ、大乱闘を始めよう。

 

 数多の勇者が集い、魂を煌めかせる祭典へ。

 

 

 

 

 

 

 

亜種異聞帯SPECIAL

 

光闇激突ULTIMATE

 

-命の灯火(Lifelight)-

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、私もその祭典に参加してみたいのですが、構いませんか?」

 

 

 Fateの看板を務める青い騎士王――アルトリア・ペンドラゴンの問いかけに、右手を象った創造神は怯んだように指を引っ込めた。

 何かを考えあぐねるようにして、()は指を動かす。そうして、幾何かの沈黙の後。創造神は深々とため息をついた。

 

 

「それは……私だけの力では厳しいな。キミの所にいる『神様』に言ってくれ」

 

「ねえマスター。招待状の数が1枚足りないんだけど、何処にやったのー?」

 

「ねえマスター。変なシンボルと『Take your Invitation』って書かれたカードが落ちてたよー?」

 

 

 




暫く執筆から離れていた結果がコレ。リハビリがてら書いてみたのですが、手が止まってしまって、そのまま放置していたのを書き進めてみました。
所々に歴代シリーズネタを織り交ぜつつ、色々とギリギリラインを突っ切った結果がコレ。
最初は『亜空の使者』から始めようかと考えました。ただ、執筆意欲と体力が持たなかったのでボツになったという裏話があります。
ラストのオチについては、12/7のスマブラ関連映像を見れば見当がつくかと思われます。

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