スイーツフェスバル当日。いちかたちがお店で忙しい中、俺達はというと……
「人相悪いからっていうのはどうなんだ?」
「静かに歩けないのか?」
いちかたちに、手伝うことはないと言われて、俺とナハシュは食べ歩きをしていた。まぁ俺たちが手伝えることは少ないから、こういうのも悪くはないけどな
「雑魚はどうしている?」
「ナタラ?あいつらな店を手伝ってる」
「………お前は雑魚のことをどう思っている?」
「どうって?」
「奴は俺達よりも先にこの世界に来ている。奴はどうして雑魚の家に普通に住めているんだ?」
そういえば考えても見なかった。俺達みたいな奴らを普通だったら警戒するだろうし……
「そろそろあいつらも休憩みたいだし、聞いてみないか?」
「そうだな」
俺たちはキラパティの屋台へと戻ると、何故かナタラが道着を着たおっさんを慰めていた。
「何してるんだ?ナタラ?」
「あぁ、クロト、ナハシュ」
「そいつは?」
俺たちは慰められているおっさんの方を見た。ナタラは苦笑いを浮かべ、
「やぁ、君たちがクロトくんたちだったね。いちかの父の源一郎です」
「クロトだ」
「ナハシュだ」
「君たちのことは娘やナタラから聞いてるよ」
「で何でおっさんは泣いてたんだ?」
俺がそういった瞬間、おっさんはまた泣き出した。何だ?おっさん呼びで泣いてるのか?
「娘が……いちかが思春期に……」
思春期って……俺はナタラの方を見た。ナタラの話を聞くとどうにも娘であるいちかの様子がおかしいことを気になったおっさんが、今日、様子を見に来た。いちかも年頃だからか、父親の介入がちょっと恥ずかしがっているみたいだった。
「まぁ女っていうのはそういうもんだろ」
「ナハシュ、お前はよく分かるな」
「分かるさ。囲まれていた環境が環境だからな」
そういえばナハシュは女がいる所にいたんだっけな。まぁ俺もだけど……セリューの場合は思春期とか関係なかった気がするな
「まぁいちかちゃんとしっかり話せば分かってくれますよ」
「ナタラくん……やはり君にいちかの事を任せてよかったかもしれないね」
おっさんは急に元気になり、すぐにどっかに行くのであったけど………
「いちかの事を任せるって?」
「えっと……」
「聞きたいことがある。お前はどうやってあの雑魚に取り入った」
「取り入ったって……そういうわけじゃないんだ。ただ……」
「「ただ?」」
「いちかちゃんは恩人なんだ」
ナタラから語られたのは、俺がこっちに来る前のことの話だった。
気がついたとき、ナタラは傷だらけだった。その時、自分が死人としてクロメと呼ばれる少女操られていたことなども覚えていたらしい
だけど傷がひどくこのままじゃ死んでしまいそうになっていたとき、いちかと出会った。
ナタラはいちかの献身的な介護で何とか生きながらえ、そして自分のことを話したらしい。
「いちかちゃんは俺が異世界の住人だということは伏せて、身寄りがないということを話したら……」
「あのおっさんが住んでいいって言ったのか」
「本当に善意だけの人間が多いな」
「まぁそういう世界も悪くないってことだ」
「でも流石に言えなかったよ。俺は躯人形になっていたことなんて……」
「いちかなら分かってくれそうだけどな……」
とりあえずいちかたちの所に帰ろうとした瞬間、突然叫び声が聞こえてきた