※訳あって名前は伏させていただいています。
_______________……男。「聖帝」と呼ばれている。
_____________ア……女。男とは特別な関係である。
終わりの始まり
ある日 ある国 ある教会内
教会の中は静寂が広がっていた。
先程までの喧騒が嘘の様であった。
先程まで狂気を撒き散らしていた男女は口を閉ざしていた。
彼らは何かを包囲する様に立っていた。
そこにあったのは砕け散ったステンドグラスであった。
ステンドグラスの上に二人の男女がいた。
女は仰向けに倒れており胸には一本の槍が突き刺さっている。
それに対して男は女を起き上がらせるように片腕で持っていた。もう片方の腕で槍を引き抜こうとする。
「____________ア。今抜くから……」
だがその槍を抜こうとする度に手からスルリと抜けていく。
「くそ!!何でだよ!!何で抜けないんだよ!!」
「_________…もういいの」
そう言って女は________の槍を抜こうとしている手を両手で優しく包み込んだ。
手に抱いた彼女の身体が光の粒子になって消えていく。
青空と同じ色をした瞳、
白い雲を想像させる肌、
夕日を連想させる長い髪、
誰よりも温かく優しい手、
彼女に関する情報全てがまるでこの世界から消失していく……。
「俺を置いて行くな!!____________ア!!」
「___________……ごめん。『未来』を……守れなかった」
そう言って彼女の瞳から涙が零れ落ちる。
「悪いのは俺だ……君のせいじゃない!!」
「……貴方は誰よりも優しい人……だからお願い……『私たち』のことは忘れて」
「そんなこと出来るかよ!消えるな…消えるな!」
「ごめん。____________」
「行くな…俺を置いて行かないでくれ!!_____________ア!」
そう言って彼女の両手を掴む。
かつて自分に向かって差し伸べられた手…
『竜』と同じになることでしか生きれなかった俺を『人間』にしてくれた手。
だがその手は光の粒子になって消失していき握った手から感触が消失する。
「ありがとう。__________。私に未来をくれて…」
「礼を言うのは俺の方だ。君がいたから俺は…『人間』になれた…」
人を知り……人間となった。
『竜』の様に奪うことしか出来なかった俺を『人間』にしてくれた。
「ありがとう……__________」
そして彼女は微笑んだ。
その微笑みが眩しく光り…
「_____________アぁぁ!!!!!!!」
そして世界から彼女とその『未来』は消失した。
その場に古びた槍とステンドグラスの欠片だけを残して……。
___________________
------沈黙------
『世界』から誰もいなくなった一人の男が握っていた拳を開いた。
そこには一つの指輪。
「…………」
男の身体が震えていた。
男は怒りゆえに身を震わせている訳ではなかった。
かといって悲しみで震えていたわけではなかった。
そんな男の口から出たのは呪詛の類でなく全く異なるものであった。
「ハハハハハッ、そうか……そうだよな……」
「俺が馬鹿だったんだ。俺が全て悪かったんだ!!」
男の口から出たのは自虐であった。
「
「俺は何があっても『人間』の心を失わなかった……あいつがいたからだ」
「でもお前たちは『竜』になったんだ……これが俺たちが…いや『_____________ア』が守ろうとしたものの正体か?」
「
「そうか……ハハハハハ」
周囲が困惑する。
「___________アって誰だ?」
「
「とりあえず話を合わせておけば……」
「ハハハハハ……そうか。そうだよなお前たちは『____________ア』のことだけじゃなく、自分たちがした『罪』も忘れたんだな…。_________アを『魔女』と呼んだことすら忘れたんだな・・」
「一体何を?」
「私たちの『罪』とは……」
「何をお怒りなのだ?誰か分かるか?」
「これが俺たちが守ろうとしたものか……」
「この『世界』は俺たちから『未来』を奪った。だから……」
彼は空間から一つのアイテムを取り出した。
それは追放の果実と呼ばれたアイテム。それを飲み込んだ。
彼の歪んだ視界がヒビ割れ、そして『
そして彼はあらゆる者の敵となった。
「俺が『世界』から未来を奪ってもいいよな」
彼らはその存在を認識した瞬間、寒気に襲われた。
その存在は世界中を敵に回しても圧勝するだろう存在。
彼らはまだ何も『信仰』していなかった。
当時、神や悪魔といった概念は無かったからだ。
それゆえ彼らが『上位』の存在として知っているのは『竜』だけであった。
だが信頼から接するのではなく、恐怖から接していたのだ。
そうしなければ自分たちが殺される。暴力を振るわれる。
だから彼らはそれを何よりも恐れた。
だから彼らは自分たちを支配する者である『
そしてその中でも特に『
だからだろう……
その現場を目撃した者がそう言ったのも無理は無かった。
その現場は『世界の終わり』を体現していた。
砕かれたステンドグラス、
壊れた教会、
いたる所に飛び散った鮮血や
切り裂かれた地面、
生きたまま燃やされる者たち、
響き渡る断末魔、
両手を組み命乞いをする者たち、
その者たちを拷問、虐殺していく『竜王』の様に怖ろしい男
その男の存在はまるで……
『破滅』を体現している様であった。
そして………それが………
『
※『聖帝』は某世紀末漫画のキャラではありません。全くの無関係です。