東方有栖(アリス)伝   作:店頭価格

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注意・この作品は、パイマン様著の「東方先代録」及びかまぼこ様著の「アリス・マーガトロイドは友達が欲しい」、をリスペクトした作品となっております。

それでも「おっけーね!」と仰れる方は、どうぞゆるりとして行って下さい。




1・私、アリス――今、幻想郷に居るの

 初めまして。

 私は、アリス・マーガトロイド。

 正確には、「アリス・マーガトロイド」の肉体を使っている者、と言った方が適切だろうか。

 転生か、憑依か、はたまた神の悪戯か。私にはこの身体になる前の記憶がある。

 今居る世界が、「東方project」と呼ばれる幻想として語られる、別世の記憶が。

 前世、とでも言えば良いのか、私に付随していた記憶は完全なものではなかった。

 恐らく、幻想郷では「外の世界」と呼ばれているであろう外界で、記憶にある当時の私が幾つで、性別はどちらで、職柄はなんだったかなどは、綺麗さっぱり存在しない。

 どんな人生だったかも定かではない朧気な持ち主自身の情報の替わりに詰め込まれていたのは、それ以外のもの。

 喋り方や身体の動かし方、箸やナイフ、スプーンなどの食器の持ち方といった日常に必要なものから、幻想郷ではまず知りえないだろう電子機器のような近代的な道具や技術、ゲームやマンガなどの娯楽、あちらでは一般的とされていた礼儀作法や教養の知識。

 原作知識があるお陰でこの土地や周囲への順応が早まったのは事実なので、そこは素直に助かったと言っておこう。

 そんな私は、人形を操る魔法使いの少女として突然その場に存在していた。

 この家のリビングで椅子に座り、目の前の机に金髪をした青服と赤服の人形が置いてある状況がこの世界での最初の記憶。

 近くの鏡を見て、超絶金髪美人のコスプレ少女が出て来たのに驚き椅子から盛大に転げ落ちたのも、今では良い思い出だ。

 色々あって、自分が東方projectのキャラクターであるアリス・マーガトロイドになっている事を理解した私は、今も七色の人形遣いとしてこの忘れられ、失われた存在たちの行き着く楽園――幻想郷での日々を過ごしていた。

 多少未来の展開やこの幻想郷に跋扈する妖怪、妖精、亡霊などの魑魅魍魎、はたまたそれを退治する腋巫女たちの知識を得て人生が開始された所で、自分のやる事など「生きる」以外に他はない。

 そもそも、最初の頃はここが幻想郷である事自体、予想はしても確信は得ていなかったぐらいである。

 この身体になってしばらくは自分の能力を確かめようと家にこもっていたし、ある程度把握出来てからも人形作りの練習などで長い間外出はしなかった。

 家の中なら安全という保証はどこにもなかったが、それでも外に出た瞬間妖怪に食べられてお陀仏、という展開だけは避けたかったのだ。

 「魔法を使う程度の能力」という魔法使いとしての力や、アリスが持つ固有能力「人形を操る程度の能力」が最初から自然と違和感なく使用出来たのは僥倖だった。

 もし使えなければ、今頃も木っ端妖怪に簡単に取って食われてしまうようなか弱い存在だったに違いない。

 魔法に関しては、家の本棚にあった大量の魔道書を読み漁り(日本語ではなかったが、なぜか普通に読めた)初歩的な魔法などは反復練習を繰り返すだけで、大した苦労もせず簡単に習得出来た。

 

 七色の人形遣い、肉体スペックマジぱねぇ!

 

 勿論、なんちゃって努力で手に入れた魔法も頑張った分だけ更に上の見える人形操作も決して極めたとは言い難く、凝り性な私は今も精進に余念はない。

 実際、幻想郷は割と危険な場所や人物が多いのでせめて自衛の手段ぐらいはちゃんとしておかないと、冗談抜きで命が危ないのだ。

 

「……完成ね」

 

 つらつらと考え事をしつつ、砂糖とミルク入りの紅茶を口に含む。

 この紅茶は、青と赤の似通ったワンピース姿をした肩幅よりも若干低い金髪の人形――上海と蓬莱を操り、遠隔操作して入れたものだ。

 所持する中で最古の人形であり、私が幻想郷で初めて出会った最愛の相棒たち。他にも大量の人形を作って来た私だが、この二体だけは最初から存在していた分特別強い思い入れがある。

 作業に没頭していた為すっかり冷めてしまったカップを傾けつつ、見下ろした作業台の上には今朝起きてから片手間で作っていたぬいぐるみが見事に完成していた。

 知り合いである氷の妖精、チルノをデフォルメで再現したそれを一度両手で持ち上げて隅々まで観察し、不備がないかを確認する。

 背中から離れて存在する氷の羽をどうやって再現するかには苦心したが、結局魔法で作った無色透明の糸で背中と繋いで浮かせ動きに合わせてふわふわと付いて行く仕掛けにしてみた。

 彼女の普段身に着ている水色を基調としたワンピースの細部へのこだわりと、本人を彷彿とさせるお転婆で負けん気の強い表情が我ながら良い仕事をしていると自画自賛してしまう。

 こういった人形やぬいぐるみ作りは、私の趣味の一つだ。

 原作のアリスは、完全自律式――つまり自我を持つ「生きた人形」というどこかのサーカス漫画キャラ的な目標を目指していたらしいのだが、私もまた同じものを指針として研究を行っている。

 この世界では、魔法使いという名は妖怪を意味し時の流れによって死ぬ事のない不老の存在だ。

 永い時間を生きる為の目標は、なんでも良かった。

 或いは、私自身が「アリス」という枠にはまる為に自分を縛り付けたかったのかもしれない。

 この状況が事故なのか、それとも誰かの起こした必然なのかは知る由もないが、私が本来の「アリス・マーガトロイド」という存在を上書きし、消滅させたのは間違いないだろう。

 ならばせめて、私が知っている分だけでも無理をしない程度に「彼女」でありたいと願うのは、贖罪にすらならない自慰行為だとは理解している。

 まぁ、それもまた人生――もとい、魔法使い生である。

 

「……そろそろ時間かしら」

 

 一人暮らしが長いとついつい独り言が多くなってしまうのは頂けないが、出てしまうものは仕方がない。

 誰にともなく呟いた後にランタンの形をした置き時計をチラ見すると、出発に丁度良い時間帯となっていた。

 自分から申し出ておいて遅刻してしまっては、恰好が悪い。

 近くに置いていた自作の角型ケースに作ったチルノ人形を入れた私は、魔法の糸を操作して上海と蓬莱を左右に飛ばしつつ外出の準備を開始する。

 準備と言っても、作業で付いた糸くずなどのゴミや汚れを軽く払い服の上から肩掛け(ストール)を重ねる程度で終わってしまう、至極簡単なものだ。

 今日は、人里で不定期に行わせて貰っている人形劇を里の一角にある公園で披露する日だった。

 稀に興が乗った時は通りの片隅などで軽く行う時もあるが、今回は自作ポスターを張り出してまで通知した本気の舞台だ。

 人里での人形劇。

 これもまた、原作のアリスを意識した行動だろう。

 小脇に抱えた黒塗りのケースの中には、劇で使用する人形たちや小道具が入っている。

 作った人形を自分の周囲へと転送する魔法は習得しているものの、即座に戦力を集結出来るとも取れるこの魔法は人里でやると見る人によっては無用な危機感を煽ってしまう為、こうやって律儀に持ち運びを行っている次第だ。

 旧作版以降、アリスが原作で初めて登場する「春雪異変」まで人里との接触を控えていた私は一人暮らしを続けている事もあって人恋しさが限界に達しており、巨乳と頭突きとディフェンスに定評のある寺子屋の半獣教師、おっけーねこと上白沢慧音先生に迷いなく土下座外交を敢行した。

 切実な説得の甲斐もあって何とか人里で行えるようになった私の人形劇は、今回で丁度二十回目という記念すべき節目を迎えるほどの息の長い興行として継続させて貰っている。

 許可を出してくれた人里の人たちと慧音には、本当に感謝の気持ちが絶えない。

 わざわざ自分から知り合いを家に呼ぶのも恥ずかしいので、この家で記念のお祝いするのは私と人形だけなのだが、河童製の冷蔵庫にはすでにケーキやワインといった一人祝賀会の準備もしてある。

 

 本当よ? ぼっちでもコミュ障でもないんだから――か、勘違いしないでよねっ。

 

 脳内でそんな下らない言い訳をしながら、上海たちと共に家を出て鍵は掛けないまま玄関口の石畳を降りる。

 施錠せずに外出するのには記憶にある感覚から未だに強い抵抗感を抱いてしまうが、これには理由があった。

 家の外に広がる魔法の森と称される場所は、太陽の光が地面まで届かないほど鬱蒼と木々が茂っており、高い湿度により群生した化け物キノコたちが年がら年中幻覚作用を持つ胞子を舞い踊らせている。

 普通の人間にとっては勿論、耐性のない妖怪などにも効果は抜群であり、魔法で遮断するか耐性を付けない限り吸い過ぎれば死に至るほどの猛毒だ。

 どこかに王蟲(オーム)が居たとしても全く不思議ではないほどの強烈な腐海となっているこの土地で、比較的森の入り口に近い場所に建てられている私の家は何時の間にか妖怪から逃げて来た人間たちの駆け込み寺的な存在として認知されていた。

 話を広めた烏天狗の文屋はきつく締め上げたものの、噂自体は割と事実なのでなくなってはくれない。

 今でも年に数回程度の本当に少ない頻度ながら妖怪や妖精に追いかけられた人間が私の家へと転がり込んで来る事があるので、鍵を掛けて外出した場合その方々が家の中に入れないまま野垂れ死んでしまうのだ。

 家の窓ガラスや壁には劣化防止と強度上昇の魔法が施されているので、普通の人間が破壊するのはまず不可能だろう。

 帰って来たら玄関に死体とかなにそれこわい、と思った私は、外出時も家の鍵を開けたままにしているという訳だ。

 今の所、帰宅時に知らない人間が入っていたという事態には遭遇していないので、私の気遣いは単なる自己満足で終わっている。

 ご近所さんである白黒の魔法使いには「泥棒に入られるからやめておけ」などと小言を言われたが、「世界の誰よりお前が言うな」と反論しておいた。

 本当に触れられたくない場所には私なりの魔法式トラップを仕掛けてあるので、セキュリティー的にも特に問題はないだろう。

 

「行きましょうか、上海、蓬莱」

 

 こういった恥ずかしい独り言は、人形たちへの愛着もあり本当に無意識で出てしまう。

 「シャンハーイ」だとか、「バカジャネーノ」、だとかの棒読み単語を上海たちが喋れるようにしようかとも考えたが、一人芝居が更に深刻化しそうなので実行には移さなかった。

 そんな奇行を始めたとしたら、ただでさえ普段の仕草や態度が硬過ぎて他人との距離感に悩む私から、更に人が離れていくに決まっている。

 私は、過度な冒険はしない主義なのだ。

 ぶっちゃけ単にヘタレなだけだが、気にしてはいけない。

 自分で操作しているので別に何も言わなくても普通に付いて来る二体の人形を左右に据え、私は魔法の森を飛び立つ。

 胞子の霧と深い木々を抜ければ、眼下に広大な幻想郷の箱庭が広がっていた。山、川、森、泉――ほとんどが手付かずの大自然から、八百万の生命の息吹が聞こえて来る。

 晴れた春先という穏やかな季節感も手伝って、幻想の庭は今日も平和で良い日和だった。

 

 

 

 

 

 

 人里で子供たち向けの寺子屋を運営している里一番の知識人、上白沢慧音は、集まった観客たちの最後尾から彼女の人形劇を静かに眺めていた。

 子供たちの遊び場として作られた比較的広い公園の最奥で、両の手の平を高く上げ素早く正確な動作で下にある人形たちを操作している、可愛らしい一人の少女。

 本人も人形であるかの如く整った、人に在らざる美しさを持つ人形遣い、アリス・マーガトロイドの公演を見るのはこれが何度目だろうか。

 出会いの切っ掛けは、人里で人形劇がしたいと彼女が慧音の居る寺子屋へと足を運んで来た事からだ。

 日の光の恩恵を余り受け取らない白い地肌に、蒼の瞳。軽く波打った、首筋程度までで切り揃えられた金色の髪。どこかでそれなりの教育を受けていたのか、背筋が綺麗に伸ばされた細く華奢な身体。

 慧音の抱いた最初の印象は、やはり表情のない人形のようだというものだった。

 今もその時と同じ恰好だが、青い洋服の上下に軽く羽織ったフリル付きの肩掛けがとても良く似合っており、同じ女性としても可愛らしいと思ってしまったのは内緒だ。

 慧音は別段、里の顔役という訳ではない。

 魔法使いという強大な力を持つ妖怪から提案を受けた里の代表たちが、対処に困って人里の守護者と評される彼女にその処遇を一任したのだ。

 魔法使いは、その大半が人から変化した妖怪という事もあり人里への出入りも許されている比較的人間寄りの道徳観を持つ存在なのだが、やはり里の中で行動を起こすというのなら警戒せずにはいられない。

 東洋の出自には見えない外見をしていながら、礼儀正しく畳の上で正座し三つ指を突いて丁寧に頭を下げたアリスは、そのままの姿勢でこう言った。

 

「私自身から、里の人間を襲う事は絶対にしないと誓うわ。私はただ、私の劇を観客に見て欲しいだけ」

 

 真摯な態度に好感を持ち試しに一度と許可したものが、まさかここまで反響を呼ぶ事になるとは、当時の慧音は考えもしていなかった。

 その台詞に偽りはなく、時折ふらりと人里に現れては広場に設置された掲示板に劇を行う日付と時間を記した自作のポスターを貼り出し、当日に人々の前でその技術を披露して立ち去って行く。

 回数が進むにつれて里の人間たちからの警戒心も薄れていき、今では里で行われる娯楽の代名詞として高い人気を博していた。

 人形劇という規模の都合上、劇を見る事の出来る人数が限られてしまう為に今では大人向けに本人非公式の整理券まで配られている始末だ。

 彼女が、一体何を思って人里で人形劇を行っているのかは解らない。だが、劇を行うアリス本人の人柄も問題はなく里の人間たちから概ね好感を得ているのが現状だった。

 今日の分と定めた仕事が思ったより早くに終わり子供たちに誘われて久々に見ている慧音だったが、観客たちを楽しませる為に最大限の工夫が凝らされた舞台は何度観察しても見惚れてしまうほど鮮やかだった。

 生きているのかと錯覚するほどの動きを見せる人形たちの操作もさる事ながら、随所に盛り込まれた数々の演出にも舌を巻く。

 壮大さを嫌った、蛇腹型の楽器などで行われる素朴な音楽。場面の変更に合わせて景色を丸ごと変化させる、魔法で作られた情景。

 字の読めない子供たちにも理解が出来るよう、台詞を文章ではなく絵で見せる表現も秀逸だ。

 劇を見た子供たちが魔法使いという外法者に憧れを抱いてしまうのは里の人間として頭の痛い限りだが、彼女に悪意や思惑はないと解っているだけに苦笑いするしかない。

 今回の人形劇の演目は、人間の男と雪女という妖怪を題材にした話だった。

 慧音にとっては幾つかの書物で目にした事もある既知の内容だが、大抵が悲恋で終わるこの異類婚姻譚にアリスは何時ものように新たな展開を盛り込んでくる。

 「バッドエンドは嫌いなの」、とは、目の前で人形を操る魔法使いの弁だ。

 雪山で遭難した男が山中で見つけた雪女の小屋で一泊を許され、その事は決して誰にも話さないと約束して山を降りる。

 そして、幾ばくかの時を過ごした男の下に雪女が人間に化けた状態で嫁入りし、男との約束に嘘がないかと監視しようとする。

 ここまでの流れは、慧音の知る物語と大差はない。

 だが、ここからがアリス・マーガトロイドの人形劇だ。

 義理堅く、人情味のある狩人の男と、美しくもやや抜けた所のある雪女の恋愛劇。

 子供にも受け易いよう、妖怪である雪女が勝手の違う人間の暮らしに四苦八苦する様子を面白おかしく滑稽に演じさせたり、二人が段々と仲睦まじくなっていく過程を尺を取って丁寧に描写するなど、緩急を付けた物語の流れに観客の目は舞台に釘付けだ。

 長年連れ添い、とっくの昔に嫁の正体に気付いていた男は彼女に隠れて妖怪を人間にする方法を方々へと探し回る。

 苦労を重ね、遂に妖怪の賢者からその方法を探り当てた男は一大決心をして雪女へとその事を告白した。

 正体がばれていた事に驚き、それでも愛してくれていた男に驚き、人間になれると驚く鈍感な雪女は、驚き疲れてへたり込んだ後満面の笑顔で男の提案を受け入れる。

 最後に、同じ人間となった二つの人形がその場で抱きしめ合う中で周囲を彩っていた景色が薄れていく。

 アリスの近くに控えていた人形たちがそれぞれ別の楽器を演奏し、幕引きの音楽を流し始めた。

 人形劇が終わり、観客たちに向けて優雅にお辞儀をするアリスと人形たちへと向けて周囲から惜しみのない拍手が起こる。

 慧音もまた、掛け値なしの称賛として大きく手を叩く事で素晴らしい劇を見せてくれた彼女へささやかな礼を送った。

 人間を優位に据えた、悪くない結末だ。

 彼女の作る話は何時も、幻想郷では起こりそうもない夢見がちな最後を迎えるものが多い。

 だが、慧音はそんなアリスの童話が嫌いではなかった。

 長く続いた拍手が終わった後、アリスは続いてもう一つの催しを開始する。

 何時からか劇の終わりに追加された、大人や子供の分別なく人形劇を見ていた全員が参加出来る景品付きのお遊びだ。

 

「――舞台に上がりたい子は居るかしら?」

 

 表情を変えず、初めて聞くものには不機嫌とも取られかねない感情の乗らない声で、観客たちへと語り掛けるアリス。

 

「はーい!」

「はいっ! はいっ!」

「はいはいはーい!」

 

 初めて劇を見る子供も、周りから教えられてこれから何をするのか知っているのだろう。

 彼女の一言に、人形劇を見ていた子供たちが元気の良い声を出しながら手を上げていく。

 子供たちの瞳は人形劇を見た興奮から皆が期待に満ち溢れ、表情や声音から取っ付き辛く、他人と距離を置いた印象を与えるアリスへの恐怖や忌避感は微塵も感じられない。

 これが、この魔女の恐ろしい所だ。

 本人は人形のように無機質だというのに、魔性と言える掌握術で観客の心を掴み子供たちからの信頼を勝ち取ってしまう。

 中には、大人の中にも彼女を懸想する男たちが居るほどだ。

 聞いた話では、博麗の巫女を始めとした一癖も二癖もある幻想郷の実力者たちの多くともなんらかの交流を行っているらしい。

 悪い者ではないとは思う。

 優しい者だとも思う。

 警戒し過ぎているのは、慧音自身が重々承知しているのだ。

 だが、人里の守護者を己の役目と定めた彼女の目にはアリスのどこまでも変わらない表情も相まって、その光景が時折魅了の魔法によるある種の洗脳のようにも見えてしまうのだった。

 

「それじゃあ……今日は貴女にお願いするわ」

「は、はいっ!」

 

 慧音が疑念と自己嫌悪の板挟みに苛まれる中で、アリスによって指をさされたのは寺子屋に通っている一人の少女。

 肩口ほどまで伸びた髪の両側に花を模した髪留めを巻いた、優等生に部類される少女だ。

 確か、彼女はアリスの人形劇の熱心な愛好者だったはずだ。呼ばれた瞬間バネ仕掛けの玩具のように勢い良く立ち上がり、ぎくしゃくとした動作で舞台の中央であるアリスの前へと移動していく。

 

 今回は、私も参加してみるか。

 

 景品が欲しい訳ではないが、もし手に入ったならば寺子屋の教室にでも飾れば良い。

 慧音は大好きなアリスに近づいて緊張する少女の微笑ましさによって僅かに毒気を抜かれ、それを見守りながら魔法使いの行う遊戯に挑む気持ちを固めていた。

 

 

 

 

 

 

 フハハハハッ! 見さらせ、この超絶秘技の数々を!

 

 内心ハイテンションで叫びながら、集まってくれた人々の前で人形たちの挙動を緻密に制御していく。

 第二十回目という記念すべき公演なので、私の操作にも自然と気合が入るというものだ。

 人里の中央近く、子供たちの遊び場として作られた公園で何時ものように観客席と舞台の間に線引きをして、人形や音源の調子を最終確認。

 その間に、持って来た他の人形たちを展開して観客たちから視聴料を頂いていく。最も、劇の代金は形式だけの意味合いが強くほとんどただ同然の金額な上払いたくなければ払わなくても構わないと告げてある。

 それでも全員が律儀に支払ってくれる辺り、私の拙い芸にも金を出すだけの価値があるという事だろう。まぁ、単に私が恐いというだけの理由なのかもしれないが。

 集めたお金を角型ケースにまとめてぶち込んだ後、主役の人形たちを手前に並べて全員でお辞儀を一つ。それを見たお客さんたちから起こる拍手を合図に、私の人形劇は開始となる。

 幾度もやっている私の人形劇は記憶にある知識も含め考えに考え抜いた数々の仕掛けを導入しており、ただ人形を動かすだけの代物とは一線を画す自慢の娯楽だ。

 まず、操作する人形の隣に横長で絵入りの吹き出しを出現させ、会話などの内容を観客へと把握させる。吹き出しの内容を文章にしないのは、人里の識字率が高くも低くもないという微妙な環境である事への配慮だ。

 最初は文章にしていたのだが、過去にそれでは理解出来ないと一部の子供たちから言われこのやり方に変更した。

 幻想郷は、今の事例のように現代日本とは異なる部分が多々あるので、記憶にある通りだと勘違いして行動すると手痛いしっぺ返しを食らってしまう。

 

 だって私、都会派魔法使いですから(どやぁ)

 

 おバカな見栄はさて置き、続いて音源の紹介に移ろう。

 BGMの担当は上海、効果音の担当は蓬莱の仕事だ。

 上海を含めた五体の人形が彼女たちのサイズに作ったアコーディオンなどの楽器を奏で、各種打楽器を持ち替える事で蓬莱が効果音を演出する。

 視覚的な演出にも、抜かりはない。

 短い詠唱の後に指を鳴らすと、場面の転換に合わせて舞台の中にだけどこからか桜吹雪が発生しだす。

 もう一度鳴らせば、情景は夏の青葉と蝉時雨に変わり、続いて紅葉の椛と黄葉のイチョウ、粉雪が降り注いだ後、再び春へ。

 人形たちを囲う季節の景色は、幻覚の魔法によって浮かび上がらせた蜃気楼に近い幻だ。

 その魔法の効果は、観客と私の間に出来た舞台となる正面一角をまるで空間を箱型に切り取ったかのような範囲で止まっている。

 魔法、マジ万能である。

 外の世界の手品師のように、直前の動作が気障ったらしく大仰なほど魔法によって引き起こされた現象はより強く観客の心を射止める。

 現に、劇を見ている子供たちは私の仕草にキラキラと瞳を輝かせて正にかぶりつきの有り様だ。

 

 かわいいなぁ~、子供かわいい~。

 

 心の中ではデュフデュフしつつ、しかし笑顔の一つも返せない表情筋が超合金の我が身が恨めしい。

 こんな、小手先の宴会芸みたいな魔法ばかり優先して習得しているから何時まで経っても戦闘系の魔法や弾幕ごっこの腕が上達しないのだが、私自身が楽しんでいるのだから問題はないだろう。

 別段、幻想郷最強を目指している訳でもなく弾幕ごっこやガチバトルでオレTUEEEをしたい訳でもないので、私はこれで良いのだ。

 この芝居の中で、私が最も力を注いでいるのは当然人形たちの動きだ。

 下手に人間に近づけようとはせず、コミカルで解り易く、それでいて人形毎に癖や仕草の特徴を盛り込みさり気なく演じ分けをする。

 指から伸びた、一般人には見えない魔法の糸をわざと視覚化して人形の背後へと張り付け、観客に私の「操ってる感」を演出するのも忘れない。

 大道芸として行う人形劇なので、操り手の姿が隠せない事を逆に利用し劇を見ている観客たちに、「自分たちはこんなに高い技術を見ているのだ」という適度な贅沢感を盛り込むのだ。

 勘違いして貰っては困るが、別に私は自分の技術を見せびらかしに来ているのではない。これも、観客が私の劇を見終わった後楽しかったとほんの僅かでも感じて貰う為に考え付いた、舞台装置の一つに過ぎない。

 客を相手に人形劇を行う、エンターテイナーとしての一分。その為の演出、その為に鍛え上げた技術。

 全ての集大成は、観客が拍手として答えをくれる。

 日本の教育テレビで放映されていた、紙芝居風人形劇の番組から着想を得た私の一人人形劇場は、私見だが中々の人気だと自負している。

 最初は、警戒する子供数人程度から始まったものが、今では何と大人も含めて六・七十人は居そうな大賑わいだ。

 舞台である公園の広さと人形劇という形式の都合上、これ以上の観客は望めないだろう。だが、私が里にとっての脅威とされている事実を考慮すれば、ここまででも十分過ぎる成果だ。

 観客の笑顔は、私の励みだ。劇の終わりに拍手が起こる度、次はもっと喜ばせたい、次はもっと頑張ろうという気持ちが心の奥からふつふつと沸いて来る。

 さて、今回の演目は日本昔話で有名な「雪女」だ。

 日本では割とポピュラーな話だが、私はここに独自というか他作品をリスペクトしたアレンジを加えていく。

 著作権が存在せず、一部の例外を除いて外のマンガやアニメを知らない者ばかりが住む、この幻想郷だからこそ可能な荒業。

 ハッピーエンド主義者なので、私の劇は基本的にめでたしめでたしでしか終わらない。

 

 ご都合主義だと笑わば笑え!

 しかし見よ、この燃える展開!

 

 劇も終盤に差し掛かり、内心で叫ぶ私のテンションもマックスだ。

 当然、表情には一切出ていないし、実は語るほど気持ちは高ぶってもいなかったりする。

 捨虫の魔法により肉体の成長を止め、捨食の魔法により魔力を栄養へと変換可能にした魔法使いの身体故か、私は欲求というものが極端に少なく、感情の起伏が一定より上に上がらない体質になっているのだ。

 仮に変化があったとしても、小波程度で停滞したまま、激情までには至らない。

 表情も余り変わらず、常に能面のような真顔でいる事が多い私は、そのせいでしばしば他人から誤解される事も少なくない。

 今更、無表情饒舌キャラに転向しても変人扱い確定なので、外面は常にエレガントなクールビューティーを心掛けていたりする。そこ、笑わない。

 まぁ、逆に原作の登場人物に会った時などの嬉し恥ずかしイベントでも、変にきょどったりせずポーカーフェイスを貫けるので、この体質も嫌いではないのだが。

 劇の評価が下される幕引きを前に、不安と期待がない交ぜになった心境で人形を動かし続ける私。

 今回の人形劇は、観客たちの心へと、何かを残す事が出来るだろうか。

 無表情で無愛想な私の前で、瞳を輝かせる子供たちの無垢な顔が、ほんの少しだけ羨ましかった。

 

 

 

 

 

 

 終幕となった私の舞台に、見物人からの惜しみない拍手が送られて来る。どうやら、今回の演目も満足して頂けたらしい。

 その事実に、私はほっと胸を撫で下ろす。

 どれだけ長くやっていても、こういった催しに絶対の正解などありはしない。

 一回一回が、本当に観客と私の真剣勝負だ。

 長い拍手も終わり、私は引き続きもう一つのイベントを行うべく、上海と蓬莱を舞台の上へと飛翔させる。

 

「――舞台に上がりたい子は居るかしら?」

「はーい!」

「はいっ! はいっ!」

「はいはいはーい!」

 

 私が問えば、最前列に居る子供たちが大きな声を上げながら我先にと腕を高々と持ち上げてくれた。

 私は、声も顔もロボットみたいに殆ど変化が出来ない為、進行役として場を盛り上げる事が難しく、毎度子供たちの中から一人を選んでその役をお願いしているのだ。

 

「それじゃあ……今日は貴女にお願いするわ」

「は、はい!」

 

 私のお願いに、手と足が同時に出るほどの緊張ぶりで、舞台へと上がっていく少女。

 確か、観客として何度も来てくれていて、司会を任せた事も一度ではないと記憶しているのだが、私に近づくまでの挙動は酷く硬い。

 ひょっとして彼女は、人形劇が好きでも魔法使いである私を恐がっているのではないだろうか。

 

「それじゃあ、いくわよ」

「はい!」

 

 頼んだ事をちょっと申し訳なく思いつつ、彼女を司会に据えてゲーム開始だ。

 

「せーの、じゃん・けん・ぽん!」

「「「ぽん!」」」

 

 少女の最後の声に観客からの合唱が重なり、参加者たちが思い思いの形を作って手を上げる。

 上海と蓬莱の出した手は、握り拳のグー。

 

「やった!」

「くっそー、いきなりかよぉ」

「今日は絶対、ボクが貰うんだっ」

「違うよ、わたしが貰うんだよっ」

 

 最初の結果に、悲喜交々と騒ぐ子供たち。大人たちの間にも、同様に勝者と敗者が生まれている。

 景品を掛けたジャンケン大会。

 子供たちに、私の作る人形がどうしても欲しいとせがまれ、タダであげるのは教育上よろしくないと考えた私が始めた、血で血を洗う争奪戦だ。

 代金を貰う手もあったのだが、作った人形に値段を付けるのは気が進まなかったので、希少価値を出す為にもこうした娯楽の一環として渡す事にしてみた。

 司会に選んだ子にも、感謝としてちょっとしたお菓子は渡しているが、ゲームへのハンデは与えない。

 

「じゃん・けん・ぽん!」

「「「ぽん!」」」

 

 何度か繰り返し、人数の選定を行っていく。人形を動かすだけで私は殆ど何もしていないが、気分的には歌のお姉さんポジションだ。

 上海と蓬莱に勝ち続けた者で、残りが大体五人くらいまで数を減らした所で決勝戦。

 勝ち残った猛者たちが舞台に上がり、最後の一人になるまで勝者というたった一つの椅子を奪い合う。

 

「じゃん・けん・ぽん!」

「「「ぽん!」」」

「あ……やったぁー!」

 

 決勝戦は、いきなり一人勝ちだった。

 しかも、優勝者は司会役をお願いした少女なのだ。

 素晴らしい運気だ。きっと、今日の占いランキングは独占一位だったに違いない。

 

「おめでとう」

「あ、ありがとうございます!」

 

 景品であるチルノ人形を、満面の笑みを浮かべて大事そうに抱える少女。

 そのまま、さば折りにしてしまいそうなほどに強く抱き締めて、私に向けて深々と腰を折る。

 これにて余興はおしまいだ。残念賞として、芝居で使った人形たちで飴玉やクッキーなどの洋菓子を観客たちに配り、皆が三々五々と散っていった。

 

「――相変わらずの人気だな」

 

 人形を獲得した少女が司会のお礼として渡した小さなタルトも一緒に抱え、腕が千切れそうなほど振り回す手に応えていた所へと、珍しいお客さんが声を掛けて来た。

 

「貴女が観客なのは久しぶりね、慧音」

 

 人形たちを角型ケースに片付けるのを中断し、振り返って平坦な声で慧音に挨拶する。

 私としてはもうちょっと友好的に接したいのだが、無愛想なので笑顔の一つも見せてあげられない。

 まぁ、彼女は人里に訪れる私たちのような人外たちへの抑止力でもあるので余り仲良くし過ぎるのも体面が悪く、これぐらいが丁度良い関係なのかもしれないが。

 

「先程人形を渡した少女は、人形劇の熱心な愛好家だそうだ。辻で行う小さなものも、見掛ければ必ず見ていると言っていた」

 

 え、あの娘ファンだったの?

 じゃあ、私が呼んだ時の挙動不審ってビビッてたんじゃなくて、逆の意味で緊張してたって事なんだ。

 すげぇ。私のファンとか、都市伝説っていうか郷伝説の類だと思ってたよ。

 

 だが、私は感謝や喜びではなく鋼の意志で別の言葉を言わなければならない。

 

「あんな小さな子供に、魔法使いなんて外法者への憧れを抱かせてはいけないわ」

 

 自分でやっておいて、何たるマッチポンプ。

 しかし、重要な事だ。私があの娘にしてあげる事の出来ない、とてもとても大事な事。

 

「人里の人間としては同意するが、お前もまた魔法使いだろう。なぜ、そんな事を言うんだ?」

 

 決まっている。

 彼女は人間で、私が魔法使いだからだ。

 

「あの娘が私に、「弟子になりたい」だなんて言い出したら、貴女たちが困るでしょう?」

 

 人里と、魔法の森。

 住まう世界が同じでも、住んでいる場所が違うのだ。

 もしも、あの子が本当に私へ弟子入りしたいと言って来られたら、断われる自信は全くない。

 というか、むしろ全力で大歓迎してしまいそうだ。

 だから、ここで誰かに止めて貰わねば、あの娘は救えない。

 私は、人間は人間らしく生涯をまっとうするのが一番理に適っていると思っている。

 人の道から外れる行為は、多大な代償と犠牲を払いそれでも実現するとは限らない。

 理由もなく、他人の身体で魔法使いになった私が言っても説得力は薄いのかも知れないが、理由がないからこそ、突如として永遠の生を与えられた虚無感は妖怪の苦悩を語るのに十分な根拠となるだろう。

 

「そうか……そうだな。助言、感謝するよ」

「そうして頂戴」

 

 複雑そうに眉根を下げる慧音に、私は余計な仕事を増やしてしまった罪悪感を抱きつつ役割を託す。

 人里の守護者としての彼女から警戒されてしまったかもしれないが、それならそれで構わない。

 あの娘が人間のままでいられるなら、安い対価だ。

 

「また何時か、新しい演目が思い付いたらやらせて貰うわ」

「あぁ、楽しみにしているよ」

 

 その後、二つ三つ中身のない会話をして、私は慧音と分かれて人里を抜けていく。

 

 恰好付け過ぎちゃったかなぁ。

 慧音、滅茶苦茶こっち見てたし。

 

「アリス!」

 

 気まずい思いをしていた私に、人里の入り口から慧音が名前を呼んだ。

 

「お前は確かに外法者だが、人里はお前を歓迎しているぞ!」

 

 出入りしている人も何人か居るというのに、何とも恥ずかしい台詞を大声で伝えてくれる慧音。

 

「――ありがとう」

 

 大声で返すのは流石に勇気がなかったので、普通の音量で返事をしながらケースを持っていない方の手を上げて、感謝の意を示す。

 

「アリスさん! また来てくれよ!」

「人形劇のお礼におまけするから、今度ウチの店に寄っておくんな!」

「ウチにもだ! 約束だよ!」

「またねー!」

 

 すると、慧音の近くに居た人里の皆さんが、揃って手を振りながら声を掛けてくれた。

 

 何このエンディングっぽい流れ。

 あったかいんだけど、感情の薄い私でなければ恥ずか死ぬレベルの羞恥プレイだよね。

 

 慧音の言葉は正しくもあり、また間違ってもいる。

 反応は二分。私に声を掛けてくれるのは、人形劇を見てくれる観客やその子供の保護者たちだ。

 そうではない人。特に、妖怪の恐ろしさを十分に知っているだろう壮年以上の世代の人たちの視線は、厳しかったり複雑そうだったりとお世辞にも好意的とはいえない。

 悲しくはあるが、これは仕方がない部分も大きい。

 人間の形をしていても、私はもう人ではない。人間の輪に寄り添う事は出来ても、輪の中に入る事は決して許されないのだから。

 それでも私を受け入れてくれた人たちに、友愛を込めて手を振り返しながらゆっくりと空へ向けて飛翔していく。

 

「アリスお姉ちゃん、さよーならー!」

「何時でも来て下さいねー!」

 

 慧音を含めた人里の人たちは、私が見えなくなるまでずっと言葉を送り続けてくれた。

 

「……さぁ、帰りましょうか。上海、蓬莱」

 

 変にむず痒くなった気持ちを誤魔化す為に、傍を飛ぶ人形たちに声を掛け、飛行速度を速める私。

 夕暮れ時が近づいた朱色の空に吹く風が、私の頬を冷やして服をはためかせる。

 人と、妖怪と、神と、獣と――忘れられ、認められなかった幻想たちの住まう、素敵な楽園、幻想郷。

 私は、七色の人形遣いアリス・マーガトロイドとして、この素晴らしい世界を生きている。

 

 

 

 

 

 

 追記。

 家に帰り着くと、どうやら白黒魔法使いが来ていたようで発動したトラップにより冷蔵庫周辺が無残に吹き飛び、酷い惨状となっていた。

 リビングの机には中身のなくなった酒瓶が転がり、空になったケーキ皿の上に乗った僅かに血の汚れが見える手紙には、「ケーキとワイン、滅茶苦茶美味かったぜ!」という女の子らしい丸文字と、親指を立てた本人の自画像が添えられている。

 己の悪行を自慢げに晒し、更には犯行声明まで残していくとは――本当に度胸だけは十分だ。

 

 そろそろ私は、彼女の家を問答無用で爆撃しても許されるのではなかろうか。

 

 人形たちを使って片付けをしつつ、私は彼女への報復の是非を真面目に思案していた。

 


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