東方有栖(アリス)伝   作:店頭価格

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めっちゃ短い。


EX2・100話達成記念 劇場版予告風の何か

 画面全体がホワイトアウトされている状態から開始。

 徐々に雲のように厚い霧が晴れ、続いて水面、草原、紅い館の門の順に視点移動。

 門前にて佇む、華人妖怪。紅美鈴。

 侵入者として現れたのは、ロングコートと同色の帽子で全身を隠す鋭い目付きの男。

 

「何者です?」

「ブリゲッラ・カヴィッキオ・ダ・ヴァル・ブレンバーナ」

 

 戦闘に備え構えを取る美鈴。

 ブリゲッラは直立したまま言葉を続ける。

 

「目的は三つ。一つ目は伝達だ。我らが創造主の作成された、全ての人形が暴走を開始した」

「なっ!?」

「二つ目は要請。これより、幻想郷の主要施設へ向けて襲撃が始まるだろう。余裕があれば、他の拠点の防衛と我々を暴走させた首謀者の討伐を頼みたい」

「……三つ目は? ――!?」

 

 言葉を待つ美鈴へ向け、一息で距離を詰めたブリゲッラが拳を放つ。

 

「何を――っ」

「言ったはずだ。()()()()()が暴走を開始した、と」

 

 ブリゲッラの身体から、キリキリ、キリキリと、明らかに人間ではない機械音が流れる。

 

「三つ目は、証明だ」

 

 互いの距離を離し、改めて構えを取る美鈴とブリゲッラ。

 二人の構えや動きは、寸分違わず完全に一致している。

 

「我らが創造主の命は、その心は、決してまやかしなどではないっ!」

「まさか、貴方は私の拳法を――っ」

 

 両者が激突する寸前で、画面がフェードアウト。次の場面へと移る。

 蠢くように動き続ける巨大なサーカスのテントが映り、入口を抜けて薄暗い天幕の中へ。

 中央のリングを囲むように、幾つかの人影が適当な位置に座り会談している。

 

「八雲紫、西行寺幽々子、八意永琳、蓬莱山輝夜――主要な特記戦力の無力化に成功。滑り出しは順調ね」

 

 手の平に銀の風を乗せる踊り子の人形、コロンビーヌがくすくすと笑う。

 

「しかし、油断はするな。どれだけ優勢であろうと、弱者はこちらなのだからな」

 

 老父の道化、パンタローネが苦味を帯びた表情でコロンビーヌの余裕を咎める。

 

「計画が総崩れになる可能性が減っただけでも、十分だろう。後は、各地の同胞が役目を果たせるか否か」

 

 手慰みとしてリュートを奏でながら、楽師の人形であるアルレッキーノが遠くを見る。

 リングの中央にスポットライトが当たり、黒の長つば帽を被った道化――ドットーレが、大仰な仕草で腰を折る。

 

紳士淑女の皆様(レディース・エン・ジェントルメン)! お待たせいたしました! 舞台はこちら、神秘と幻想の集う幻の土地、幻想郷!」

 

 片手で帽子を取って両手を広げたドットーレの宣言に併せ、リングの上空に幾つもの画面が浮遊する。

 炎上する妖怪の山。

 闇に閉ざされた竹林。

 氷獄に染まる冥界。

 近代兵器が撃ち込まれ続ける天界。

 銀の風におおわれた人里。

 魔法の森の上空で謳う、巨大なる逆さまの魔女。

 そして、サーカスの舞台には似合わない玉座にて鎮座する、ドレス姿の少女。

 肩にかかる程度の長さをした、蜂蜜を溶かしたような金髪がはらりと垂れ、表情の欠落したその顔は俯き写されない。

 

「皆様準備はよろしいかな? はっはっはっ。ならば結構。これより、我らが「真夜中のサーカス」! 開演でございます!」

「「「おぉおぉぉぉぉおおぉぉぉっ!」」」

 

 ドットーレの宣言に、暗がりの奥で控えていた多種多様な人形たちが一斉に吠える。

 画面の電源が切れるような演出。

 画面が起動する演出を挟み、場面転換。

 人里ではない、広い土地に一つだけ存在する家屋を上空から撮影。

 ピエロの格好をした巨漢と、その男の腕から生える野太い鎖で繋がれた子供たちへとズームイン。

 

「くくく、動くんじゃねぇぞ。うっかり動いて、こいつらを殺しちまうかもしれねぇからなぁ」

「せんせー!」

「せんせー! たすけてー!」

 

 下種な笑みを浮かべる巨漢の下で、子供たちが泣いている。

 

「……くそっ」

「落ち着いて、慧音。反撃の目は必ずある。自棄を起こすのはまだ早いよ」

 

 今にも襲い掛かりそうな姿勢のまま、身動きが取れず焦る慧音。

 その横でポケットに両手を突っ込み、比較的冷静な態度を取る妹紅。

 彼女たちの周囲を、人間の身体に食中植物のような頭部をした異色の人形たちが取り囲んでいる。

 場面転換。

 空中を高速で飛行するリグルとミスティアを、無数の黒い物体が追い掛け回す。

 黒い物体に焦点が当たり、両手で円を作る程度の大きさをした機銃を装備したてんとう虫を思わせる人形である事が判明する。

 

「はっはっはっはっはっ。客人だ! 持てなせえぇぇぇ!」

 

 でっぷりと太った鷲鼻の道化が、空を飛びながら虫型人形を操り二人の少女を追いつめていく。

 

「これ、やば――がっ!」

「ミスティア!」

 

 虫の銃弾が直撃し、血を吐くミスティアの苦悶とリグルの悲鳴の後、暗転。

 真っ白な画面の中で、延々と吹雪が吹き荒れる映像。

 全てが凍結した世界の中で、白い息を吐き出しながら二刀を構える妖夢。

 対するのは、西洋風の騎士の出で立ちをした美丈夫。

 

「造物主様、第一の僕――カピタン・グラツィアーノ見参!」

「貴様ぁ! あの人形たちを使い、幽々子様を何処へやった! 返答次第では、ただでは済まさんぞ!」

「ふふんっ。余裕がないな、魂魄妖夢。今は、貴様自身の心配をするべきだと思うがね」

「黙れ!」

 

 高速で振り抜かれる、長短の二閃。

 しかし、グラツィアーノはまるで慌てた様子もなく自身の直剣で長剣を受け流し、返す刃で短刀の射程外から相手の右肩を刺し貫く。

 

「ぐがっ!」

「くははっ! 弱い、弱いな魂魄妖夢!」

 

 グラツィアーノからの嘲笑に顔を歪めながら、血に染まる肩を庇うように再度構える妖夢。

 

「まぁ、もっとも貴様の祖父である魂魄妖忌にすら勝利した私に、貴様が勝てる道理もないか」

「……っ。嘘を、吐くなあぁぁっ!」

 

 激昂する妖夢の刃がグラツィアーノの剣とぶつかり、飛び散った火花の光が画面をおおいフェードアウト。

 博麗神社に場面が移り、境内に大量の人形の部品が散らばっている情景が上空からの視点で写される。

 

「ったく、なんなんだよ一体。八卦炉は反抗期になるし、人形は襲ってくるし、滅茶苦茶だぜ」

「元凶は、あっちで飛んでる逆さま人形ね。さっさと潰して終わらせるわよ」

「応っ!」

 

 お祓い棒を片手に浮遊する霊夢と、箒にまたがり空へと飛翔する魔理沙。

 二人が巨大人形へと飛び去って行き――幕。

 

 

 

 

 

 

 場面転換

 何も映らない真っ暗な場所で、アリスが一人で佇んでいる。

 その瞳には、何時も以上に生気がない。

 

「あ、あぁ、あぁぁ……っ」

 

 喉を震わせ、アリスの瞳から幾つも涙がこぼれていく。

 周囲が明るくなり、破壊されたありとあらゆる人形たちが映し出される。

 そして、アリスの眼下に映像が移る途中で暗転。

 画面には、次の文字が次々と表示されていく。

 

『七つと千の夜を超え、真夜中のサーカスが貴女に結末を届けるだろう』

『恐れてはいけない』

『目を逸らせば、幸福の小箱は貴女の手の平から滑り落ちてしまうのだから』

 

 最後の文字が消えてから数秒後、更に次の文字が表示され――終幕。

 

『今、貴女の目の前に絶望があります。目を逸らしますか? はい/いいえ』

 




なお、CM通りになるかは作者も不明(白目)

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