東方有栖(アリス)伝   作:店頭価格

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74・海をみあげて/星をみおろし

 合戦上の遥か彼方に揃う、異形、異形、異形――

 そんな、様々な妖怪変化たちから一歩進み出た場所に、その女性は立っていた。

 黒と白を基調とした法衣に、普通の人間ではあり得ない紫と金を交えたグラデーションをした波打つ長髪。

 凶悪な化け物たちの中にあって、場違いにさえ思えるほどに美しく穏やかな雰囲気をまとう一人の僧侶――聖白蓮。

 人間から慕われ、妖怪からも慕われ、その結果人間から裏切り者の悪魔としての烙印を押し付けられた、悲しき聖女。

 その両隣に立つ入道使いと舟幽霊は、彼女の側近として妖怪寺の運営に協力していた者たち。

 そして、背後に控える怪物たちは聖を慕い縋る、妖怪としての格の低い奪われる側の者たちだ。

 この戦は、人間側の大義によって始まった。

 

 妖怪は滅ぶべし。

 妖怪に与する者も、等しくその身を滅ぼすべし。

 

 集った武者や武芸者たちの中には、家族を、友人を、上司を、部下を、妖怪によって殺された者も多い。

 坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。例え、目の前の妖怪たちにはなんの関係もない事柄であろうと、彼らが妖怪であるというだけで人間たちの抱える憎しみの感情は向いてしまう。

 聖と同じように、人間側の軍勢の一歩先に立ち戦場を眺める女性が居た。

 彼女の名は、寅丸星。敵対者となった聖に見初められ、毘沙門天の力をその身に宿した神仏の代理者。

 その隣に立つ、毘沙門天からの監視者であるナズーリンも堅い表情で戦場を見据えている。

 聖が本気になれば、この戦は人間側の敗北で終わるだろう。

 彼女はすでに、単身で一騎当千となるほどの魔境へと至った大魔法使い。どれだけ戦力を集めようと、蟻の群と人間では争いと呼べるものすら起こる事はない。

 彼女を慕う妖怪たちもまた、彼女が戦う決意をしたのならば死に物狂いで加勢するだろう。

 そしてそれは、人間と妖怪の決定的な決別であると共に、聖の掲げる理想が永遠に叶わなくなる無情な未来も同時に意味していた。

 だからこそ、星は人間の側に付いた。

 双方の犠牲を最小限に抑え、聖という一を犠牲にその他の九十九を争いから逃す道として。

 それは正しい選択であり、誰もがその英断を讃えるほどの決断だっただろう。

 星の手にある宝塔から、極大の光が上方へと放たれる。

 空高く舞い上がった光の柱は、分裂し、分散し、高速で地上へと降り注ぐ。

 何万人もの武者が射掛ける矢のように、戦場となる荒地を蹂躙する法力の雨。舞い上がった土煙が晴れた後、双方の間に出来上がった無数の巨大な窪地が姿を表す。

 妖怪側も、人間側も、その壮絶なる威力を目の当たりにし、二つの軍勢が同時に一歩後ずさった。

 それで良い。これより行われる不快極まりない結末に、無粋な邪魔者は全て不要だ。

 入道使いである一輪が両腕に雲をまとい、舟幽霊である村紗がその手に身の丈ほどもある巨大な錨を出現させる。

 彼女たちは、聖と星の決断を理解した上で人間たちと争う事を選択した。

 星にはそれが羨ましく、同時に疎ましくも感じられていた。彼女は、争いが嫌いだから。

 一輪は星には勝てない。だから星は、一輪を下す。

 村紗もまた、星には勝てない。だから星は、村紗を下す。

 そして、聖は星に抵抗しない。毘沙門天の代理に勝利出来る唯一の存在が、最初から勝負を放棄して人間たちの取り決めた沙汰を受け入れる。

 だから星は――己の意思がどうであろうと――人間の裏切り者となった聖を封印する。

 遂に、星の足が戦場への一歩を踏み出す。同時に、一輪と村紗がそれぞれの武器を掲げて走り出す。

 全てが、予定調和として行われるだろう。

 仲間の血で染まる槍を見ながら、この両手を同胞の血で汚しながら、最後に最愛の女性をこの手に掛けるのだ。

 槍が振るわれ、誰かの鮮血が舞う。

 宝塔より光が放たれ、誰かの悲鳴が木霊する。

 醜く、残酷で、絶望しかない現実に打ちのめされながら、それでも星は誰かに縋る事さえ許されない。

 縋るべき相手と決別した時点で、そんな都合の良い未来を望んではいけないから。

 あの日、あの時、聖を封印するべく彼女の心臓へと宝塔を突き刺した感覚は、未だ星の手の平に生々しく残り続けている。

 まるで、罪を忘れないようにとささやくように。

 まるで、妖怪としての歓喜を讃えるように。

 朝起きて、星は今日も手を洗う。

 誰にも告げた事のない胸の内を隠したまま、彼女は今日も手を洗う。

 人々に救いをもたらす毘沙門天の代理は、己の救われる未来を夢見ながら、その穢れに満ちた手を洗い続ける。

 

 

 

 

 

 

 決行は、明日の明朝。

 昨日の深夜の内に再生させた飛倉を聖輦船へと変化させ、その巨大過ぎる外観を見越し入道である雲山の身体で空高くへと隠蔽する。

 毘沙門天代理の言葉に全員が頷き、後はその時を待つだけだった彼女たちに予想外の事態が発生していた。

 

「一体誰だ!? 聖輦船を動かしているのは!?」

 

 廃屋の庭へと飛び出したナズーリンの悲鳴に近い叫びが、太陽の昇る前の幻想郷に響き渡る。

 雲山の肉体である雲海から抜け出した空飛ぶ帆船が、星の瞬く天空にその身を晒し堂々と飛び去って行く姿が映る。

 

「一輪!」

「村紗よ! あんのお馬鹿、一体何を考えているのよ! もう!」

 

 続いて飛び出して来た一輪が、ナズーリンの隣で同じように空を睨む。

 口では色々と言いつつも、聖を救出する為に課せられた自分の役割を理解していたはずの村紗が取った、突然の暴挙。

 身内であるという意識が雲山の静止を躊躇わせ、その結果彼女の暴走を許すという事態になってしまっていた。

 航行を開始してしまった聖輦船は、操縦者の意思に従って動く。止める方法は、その操縦者が望むか気絶や拘束等の手段で操作権を剥奪するしかない。

 

「事態は一刻を争います。ナズーリンは手筈通り、急ぎ残りの破片の回収を始めて下さい」

「解っているさ! お前たち、仕事の時間だ!」

 

 愛用の槍と宝塔を両手に、すでに臨戦態勢へと移行している星の指示にナズーリンが即座に動く。

 妖獣の影から、ざわりと滲むように出現した大量の小ネズミたちが四方八方へと一斉に散って行く。

 

「村紗の行いへの問いや責めは、全てが終わった後で行います。すでに事が始まってしまった以上、行動方針を変更している暇はありません。ナズーリンが全ての破片を回収し次第、魔界への渡航を開始します」

「幻想郷の住人たちと争う前に、まさか身内で争うはめになるとはね」

 

 戦意を増す星へと呼応するように、一輪もまた護法の金輪を両手に持ち霧のような薄い雲を全身から滲ませ始める。

 

「――穏やかじゃないわね。猫の手は要るかしら?」

 

 慌しく事態が動く中で、最後に廃屋から出て来た魔法使いの少女が箱の底に車輪の付いた大型トランクを右手で引きながら姿を現す。

 魔力の枯渇から数日が経過し、全てが銀だった彼女の髪色には幾分かの金色が戻り始めていた。

 結局、決行直前に全ての事情を明かすつもりだった星は、この人形遣いへ何一つ自分たちの状況を説明出来ていない。

 協力を申し出てくれている彼女が、幻想郷における強者の一人としてこの土地で一目置かれている事は、ナズーリンと村紗の情報収集で判明している。

 未だ出会って数日。彼女の全てを信用するには、心許ない時間しか経過していない。

 しかし、彼女の言う通り猫の手すら借りたい今の星たちには、選り好みをしている余裕さえ許されていなかった。

 

「我々にご助力をお願いします、アリス・マーガトロイドさん」

「ありがとう、信じてくれて。指示をくれれば、その通りに動くわ。私は、何をすれば良いの?」

「私たちの目的を達成する為には、あの空飛ぶ船――聖輦船が絶対に必要不可欠です。村紗が占領してしまったあの船を奪還します」

「解ったわ」

 

 地上での役目を果たす為に駆け出していくナズーリンに合わせ、星が、一輪が、アリスが、暴走する聖輦船を止めるべく飛翔を開始する。

 

「私のせいかもしれないから、先に謝っておくわ。ごめんなさい」

「いいえ。それは違いますよ、アリスさん」

 

 確かに、村紗はずっと過去の同胞ではないアリスを敵視していた。暴走の一因がアリスにある可能性は、否定出来ない。

 しかし、星はアリスからの謝罪を受け取らない。

 責められるべきは、彼女ではないから。

 

「私たちは、多くの苦楽と共にして来ました。楽しい事も、苦しい事も、本当に沢山の事を皆で分かち合って来ました」

 

 どれだけの年月が経過しようと。否、それだけの年月が経過したからこそ、妄執にさえ届く星たちの願いはより強く鮮烈なものへと昇華されている。

 

「苦しくて、苦しくて、自分だけではどうしようもなくなった時、誰かに八つ当たりしてしまうのは仕方のない事です。悪いと言うのであれば、彼女が耐え続けていた苦しみを理解してやれず、その忍耐に甘えていたかつての同胞である我々が責を負うべきでしょう」

 

 だから貴女は悪くないのだと、仏を宿した僧侶は船を見据えながら断言する。

 

「残念ね。神妙にしていれば、仲間外れから外して貰えると思ったのに」

「申し訳ありません。今は、貴女への信用を計っている時間も惜しいのです」

「冗談よ」

「そろそろ船の上よ。二人とも、お喋りは続けても良いけれど油断だけはしないようにね」

 

 聖輦船からの攻撃もなく、三人は無事に船の甲板へと着地する。

 見渡す範囲では、目に見える異常は確認出来ない。

 だが、この状況で耳が痛いほどの沈黙を保つ事こそ、星たちの居る場所が異常である事を示している。

 

「行きましょう。村紗は、この船の何処かに潜んでいるはずです」

「待って」

 

 警戒を保ったまま進もうとする星を、唐突にアリスが引き止める。

 

「何か――」

「来るわ」

 

 アリスの言葉が呼び水となるように、甲板へと何処からともなく薄汚れた水が溢れ出す。

 肌に触れる湿った空気と、鼻を付く僅かな刺激。今、聖輦船を満たしているのは紛れもない海水だった。

 そして、()()()()()。水底から未練を抱え同胞を求める死者の無念が、無数の亡霊となって出現し始める。

 

「あーあー。ったくあの跳ねっ返りうじうじ娘が、聖が居なくて寂しいからって昔の悪霊時代に戻る気かっての!」

「一輪、貴女も若干口調が戻っていますよ」

「おっと。ん゛、ん゛――コホンッ。それでは、まずは粛々とこの子たちの制圧から始めましょう」

 

 星からの指摘にわざとらしく一度咳き込み、真横から迫る亡霊の一体を裏拳の一撃で跡形もなく消し飛ばした一輪が、にっこりと笑って前進を開始した。

 笑顔とは本来、獣が牙を剥く動作から派生した表情だという説があるらしい。

 彼女の身体から溢れる灼熱に勝る怒気を感じてか、周囲を囲う亡霊たちがざっと怯えるように後退する。

 

「あらあら、あの娘に呼び出されただけあって根性なしばかりね」

「今の貴女に挑み掛かれる猛者は、早々居そうにないと思いますよ」

「だったら、さっさと道を開けて貰いましょうか!」

 

 星の更なる指摘を聞き流し、獰猛に笑う入道使いが雲をまとわせた右手を全力で振り抜く。巨大な腕の形をした雲の塊りが、複数の亡霊たちを殴り飛ばして船の外へと直進していく。

 

「さぁ、()るってんなら本気で来なさい! とことん()ってやろうじゃないの!」

「なんだか、微妙に嬉しそうね」

「喧嘩するほど仲が良い、という奴ですよ。今までは、そんな事をする余裕すらありませんでしたから。どうやら彼女の方も、随分と鬱憤が溜まっていたのでしょう」

「腕白なのね」

「えぇ、元気が一番です」

 

 嬉々として逃げ惑う亡霊たちを両腕で引き千切る入道使いを眺める、毘沙門天の代理と人形遣い。

 

「「烈閃槍(エルメキア・ランス)」!」

「はぁっ!」

 

 二人もまた、各々の方法で亡霊たちを撃退し始める。

 戦闘が苛烈さを増す中、やがて星の光が薄くなり空が白染み始める。

 夜明けの時が近い。

 彼女たちの足場に溢れる水が、更に勢いを増していく。船からこぼれた海水が、小さな滝のように飛沫を上げて流れていく。

 しかし、汚れた水は地上へは落ちない。まるで、聖輦船のある場所が海原であるかのように船底の近くに留まり水かさを上げていく。

 

『沈メ……シずメヨォ……あノ人以外、皆ミンナ水面ノ底ニィ……ッ』

 

 増える、増える。

 願望が、欲望が、溢れこぼれて満ちていく。

 幻想郷の空に、少女の涙が「海」となって広がっていく。

 慟哭に咽び泣くような軋む音を立て、聖輦船が青空の中で海を泳ぐ。

 

『オォ、オォぉぉぉォオおぉォォォッ!』

 

 悲しみを湛え、苦しみを湛え、感情と言う名の水で溢れ返った潮の巨人が、雄叫びと共に起き上がる。

 

『カエセヨオォォッ! ヒジリヲォ、カァエェセエェェェェェェッ!』

 

 船の甲板を足場に人間の上半身だけの姿を取る巨大な水の塊りが、海水の涙を流しながらその歪な豪腕を振り上げた。

 

 

 

 

 

 

 水のないところでこのレベルの水遁を――なんて、言ってる場合じゃないか。

 シューティングゲームが始まると思ったら、ホラーゲームが始まったでござるの巻。

 写真機は何処だ。

 

 文やはたての写真機ならば、あれと同じような事が出来るかもしれない。

 微妙にどうでも良い事を考えながら、次々と湧き出す亡霊たちに攻撃を仕掛けていく。

 

「「烈閃槍(エルメキア・ランス)」!」

「はぁっ!」

 

 私の手の平から走る光の槍が亡霊の頭部を撃ち抜き、星の振るう槍が別の一体の胴を絶つ。

 状況は優勢だ。私を含めた三人にとって亡霊たちは非常に弱く、バーサークモードに突入した一輪の大暴れに情けなくあたふたと逃げ惑っているほどだ。

 

『沈メ……シずメヨォ……あノ人以外、皆ミンナ水面ノ底ニィ……ッ』

 

 このまま村紗を炙り出そうと亡霊たちに苛烈な攻撃を繰り出していると、船全体から響くように罅割れた少女の声が聞こえ始める。

 まるで、何処かで軍艦と戦っている深海の鬼や姫を彷彿とさせる、正気を失ったざらつくように濁った声だ。

 

『オォ、オォぉぉぉォオおぉォォォッ!』

 

 足下に流れていた水が、船の後方へと集っていく。

 体積を増加し続ける海水が巨人の上半身を構築し、雄叫びを上げてその圧倒的なまでの存在感を主張する。

 

『カエセヨオォォッ! ヒジリヲォ、カァエェセエェェェェェェッ!』

 

 なるほど。ホラーゲームかと思ったら、実は巨人狩りゲーだったのね。

 ワンダとアグロはまだか。

 

 霧の湖で戦った巨大海蛇妖怪と同じく、大きいという事はそれだけで脅威だ。

 振り上げられた鞭のようにしなる右腕に押し潰されないよう、三人が共に全力で後退する。

 

『ガアァァァァァァッ!』

「ふ、船が……っ」

「こんのど阿呆っ」

 

 聖を助けに行く為の船だというのに、お構いなしに水で出来た握り拳が打ち据えられた。

 甲板の一部が大きく凹み、船体が激しく揺らぐ。

 

「村紗! もう止めなさい! 貴女の行為は、貴女の願いを遠ざけるものです!」

「いい加減にしなさいよ、超絶お馬鹿! お尻百叩きでも済まされないわよ!」

『ジャァマァヲオォォォ、スゥルゥナアァァァァァァッ!』

 

 説得を試みる二人の言葉も、暴走する村紗には届かない。

 癇癪を起こした泣きじゃくる幼子のように、巨人は両手を振り回して暴れ続ける。

 このままでは、聖輦船の墜落は時間の問題だ。

 というか、星の言う通り村紗の行動は完全に自分の首を絞めている。

 聖輦船なくして、聖は助けられない。彼女は、それが理解出来ない娘ではないはずだ。

 正気を失うにしても、方向性が明らかに異常だ。まるで、誰かに操られているような作為的なものすら感じてしまう。

 だとしても、今の村紗を力尽くでも止めない限り聖輦船は破壊され続ける事に変わりはない。

 

 何か、何か手はないかっ。

 ――あ、居た!

 

 何故、彼女が地上に居るのかは解らないが、あの娘ならばこの状況もなんとか出来るかもしれない。

 一縷の望みに縋り、私は右腕に巻かれた黒色のリストバンドに魔力を流す。

 

「来なさい――お燐!」

 

 過去に交わした契約に従い、船の近くで溢れた亡霊たちと戦っていた地底の火車猫を私の眼前へと呼び寄せる。

 

「おっととと。随分久々に呼ばれたと思ったら、面白そうな事になってるじゃないか」

 

 開いたスキマから飛び出したお燐は、船から生えた水の巨人を見上げ口角を吊り上げている。

 お燐は自己申告である「死体持ち去る程度の能力」とは別に、地底の怨霊たちを操り管理するという特殊な役割をさとりから担っている。

 水死の霊である舟幽霊の村紗に通用するかは不明だが、試してみる価値は十分にある。

 

「この船とあの舟幽霊を切り離したいの。お願い出来るかしら」

「勿論。お安いご用さ」

「船から彼女を離した後は、無理に戦わなくても良いわ。ある程度時間を稼いでくれたら、そのまま逃げてちょうだい」

「ふーん。逃げても良いって事は、別に叩きのめしちまっても良いんだよね?」

 

 なるべく危ない目には遭って欲しくないという私の願いは、聞き入れて貰えないらしい。

 火事と喧嘩は幻想郷の華だが、どうして彼女たちがこれほど無駄に好戦的なのか理解に苦しむ時がある。

 

「この騒動が終わったら、友達になる予定の娘よ。なるべく、成仏だけはさせないでくれると嬉しいわ」

「にゃはっ、お姉さんの悪い癖が出ちゃってるね。でも良いよ、悪霊の遊び相手なんて泣いたお空をあやすより簡単さ!」

 

 跳躍の前段階として身体を大きく沈めたお燐が、両足に全力を込めて巨人の腹へと向けて一直線に跳び上がる。

 

「ニ゛ィヤ゛ア゛ァァァァァァッ!」

『……ッ』

 

 巨人が何か動作を起こすよりも早く、妖猫が腹の底から咆哮を上げた。

 魂を震わすようなお燐の威嚇は、止まらなかった巨人の動きを強制的に停止してのける。

 

「そこだねっ! 出て来な!」

「――ガ、アァッ!?」

 

 お燐の身体が巨人を貫通した直後、海水で構成された胴体が一気に崩壊していく。

 見れば、ずぶ濡れになった火車の少女の突き出す両手に、何処にも姿を見せていなかった舟幽霊の少女が見事に捕らえられている。

 

「何処の誰だか知らないが、お姉さんを困らせるんならあたいの敵さ。さぁ、存分に遊ぼうか!」

「グ、ギ、邪魔ダアァァァ!」

 

 炎と水。お燐に投げ落とされて距離を離した二人は、相反する弾幕を繰り出しながら霧の湖の方角へと墜落していく。

 

「星、今よ! 船の制御を取り戻して!」

「はい! ありがとうございます、アリスさん! ――聖輦船よ、我が意に応えよ!」

 

 星の掲げる宝塔が輝き、仏の威光が船を囲い始めていたものを含め全ての海水と亡霊たちを引き剥がしていく。

 

「アリス、さっきの妖怪は誰なの?」

「知り合いよ。少しやんちゃだけれど良い子だから、村紗はあの娘に任せておけば大丈夫」

 

 相性は悪くないだろうが、暴走状態にある村紗をお燐に任せる事にはかなり不安がある。しかし、嘘も方便と一輪からの質問へ自信満々に言い切っておく。

 前哨戦ですらない仲間同士の争いですでに疲労困憊だが、ここからこそが本番のようなものだ。

 気を引き締めて船の周囲を見渡し、聖輦船へと近づこうとする者たちを確認していく。

 霊夢、魔理沙、早苗は当然として、小傘やぬえとおぼしき少女も見て取れる。

 そして、船と一番近い距離にまで迫っているのは、何処からどう見ても原作の異変では出番のなかった双角の大怪物。

 

 マジか。一面のボスがいきなり前の異変のラスボスとか、笑えないんだけど。

 東方神霊廟かな?

 

 吸血鬼の女王が見ている運命とやらは、主人公たちと対峙する前にこちらの心が圧し折れる展開をお望みらしい。

 かつて、妖怪の山を純粋な力のみで支配していた頂点の一人。伊吹萃香。

 あの幼女の拳が聖輦船に直撃すれば、それだけで全てが終わる。

 開始早々いきなりだが、どうやらここが私の命の懸けどころのようだ。

 全快とはほど遠い体内の魔力を練り上げながら、私はかつての異変で戦う事なく終わった四天王の一角を迎撃するべく詠唱を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 

 先行し、意気揚々と空飛ぶ船へ向かっていた白黒の魔法使いの背後から、突然大量の弾幕が迫る。

 

「おっと。お宝探しの前に、同業者からの妨害か? 気がはやり過ぎだぜ」

「待ちなさい! まーちーなーさーいー!」

「なんだ、小傘かよ」

 

 小傘の奇襲を危なげなく回避し、速度を緩めて唐傘おばけと対峙する魔理沙。

 魔理沙を追い越した小傘は、船と魔法使いの間に立背後を守るように大きく両手を広げる。

 

「待ってられん。船が私を呼んでいるんだ」

「えっと……そう、あの船はとっても危ないの! 近づくと襲われちゃうわ!」

「危ないのなんて百も承知だよ。そんな脅しで私の好奇心を押さえられると思ったら、大間違いだぜ」

「あの船は、あの船だけはダメ……ダメなのよ……っ」

「なんだお前? あの船からの回し者か?」

 

 新しく現れた妖怪と、新しく現れた空飛ぶ船。今の所接点は見えて来ないが、無関係と判断するには小傘の反応は明らかにおかしい。

 

「船? 関係ないよ。あれ? わちき、関係ないの?」

「知るか」

「でも、貴女みたいな人間はあの船に近づけちゃダメだって事は解るの。だから、えと、おどろけー!」

「何がしたいんだよ、一体……」

 

 妖怪へと変じた事で、道具としての頃の記憶が混濁しているのだろうか。

 小傘は自分でも何を言っているのか解っていない様子で、最後には番傘を突き出して強引に誤魔化している。

 

「そんなやっつけで驚くかよ。無関係なら邪魔をしないでくれ、私は忙しいんだ」

「じゃあ、こうしたら驚いてくれるかな?」

 

 雨符 『雨夜の怪談』――

 

「なっ!?」

「そぉらっ、おどろけー!」

 

 小傘が取り出したのは、四枚のスペルカード。その内一つが粒子に溶けると同士に、晴れ模様だった空が一転して灰色の雲を浮かべていく。

 そして、雲から落ちる雨粒がまとまり幾つもの弾幕となって魔理沙へと降り注ぎ始めた。

 

「へぇっ、新参者にしちゃあ筋が良いじゃないか。良いぜ、肩慣らしにいっちょ先輩様が揉んでやるよ!」

 

 八卦炉は、未だポケットに入れたまま。

 お気に入りの帽子のつばを片手で下げ、ニヒルに笑う普通の魔法使いが高速で弾幕の豪雨の中へと躍り込んでいく。

 

「あら、私にも邪魔が来るのね」

 

 魔理沙と小傘の弾幕ごっこと眺めながら、お燐を追うように船を目指していた霊夢にも、別の者がその進行を邪魔をする。

 

「お前、博麗の巫女だろ」

 

 三叉槍を構えた、背面から三対六つの羽のような謎の器官を生やす、黒髪の少女の姿を取る妖怪。

 普段から鋭そうな目付きを更に尖らせ、まるで射殺さんばかりの殺気を込めて霊夢を睨む。

 

「そうよ、私はこの楽園の素敵な巫女よ。神社にお賽銭を入れてくれるなら、貴女も歓迎するわ」

「うるさい。お前を聖輦船には近づけさせないっ」

「あの船、聖輦船っていうのね。妖怪ってお宝を溜め込むのが趣味な輩も居るし、これで少しは期待出来るかしら。どうでも良いけど」

「もう、二度とあんな思いは沢山よ! 絶対に、あの人をまた封印なんてさせない! 今度こそ、私は聖の役に立つんだ!」

 

 会話をしているようで、謎の妖怪は霊夢を見ていない。

 何かからの恐怖に怯えるように叫び、広げた右手に五枚のスペルカードを出現させる。

 

「夜の恐怖を忘れた人間よ! 正体不明の飛行物体(だんまく)に怯えて死ね!」

 

 妖雲 『平安のダーククラウド』――

 

 少女の全身から漆黒の霧が吹き上がり、妖怪の姿を隠す。次いで、霧の中から現れた大量の光線が四方へと高速で射出される。

 霊夢が迫る光の帯を回避し霧の晴れた場所を見た時、スペルカードを展開したはずの少女の姿はなくなっていた。

 逃げたわけではない。この青空の中で姿を隠し、敵の喉元へ食らい付くべく機会を伺っているのだ。

 

「どうやら、かくれんぼがお望みのようね。私の勘は当たるわよ」

『やってみろよ、あの人を裏切った卑怯者どもの末裔が! お前らなんて恐いもんか!』

 

 居場所を悟らせない為か、反響する少女の音が風に乗って博麗の巫女の耳を打つ。

 

「誰の事を言ってるのか知らないけど、そんな赤の他人の昔話を私に持ち出されても良い迷惑よ」

 

 霊夢の言葉への返答のように、再び彼女の周囲に黒の霧が溢れ光線が勢い良く噴出する。

 回避を繰り返す巫女の少女の袖口から、その両手へと霊符と退魔の針が握り込まれる。

 姿を見せない正体不明の妖怪に対しても、霊夢は何時も通り優しくも厳しくもない態度で妖怪退治を開始する。

 

「ぬぅ、困りました。折角一日掛けてこんなにお土産を用意したのに、ぬえさんがあの船に行かないと私は目的の八割を見失ってしまうのですが……」

「よっ、ほっ、愚痴ってないでアンタも弾幕を撃っておくれよ緑の巫女さん。コイツら、邪魔臭くってしょうがない」

 

 背中に荷物の入った風呂敷を背負う早苗の近くで、お燐が船から出て来た亡霊たちへ炎塊を投げ付けて追い払う。

 別々の出発点から目的地を目指していた二人は、溢れ返る敵の妨害に合い船へと辿り着く事が出来ないでいた。

 唯一、亡霊たちが近づかない萃香だけが飛行する船へと距離を縮め続けている。

 

「うーん、うーん。霊夢さんに協力して、ぬえさんをボコにしてから船に連れて行くべきか。ぬえさんに協力して、霊夢さんをボコしてから船に向かうべきか……」

「だからさぁ――お、これはっ」

「え?」

 

 次の行動方針について選択肢に悩む早苗だったが、亡霊たちを牽制していたお燐が呆れた声を出した直後いきなりその姿を消失させた。

 

「あ、あれ? お燐さん? ――て、おわぁっ!?」

 

 火車という防波堤を失った事で、風祝(かぜはふり)に向かって沢山の亡霊たちが一斉に襲い掛かる。

 驚きながらも回避と同時に弾幕を全方位へと展開し、亡者たちを引き離す早苗。

 

「困っている人を見捨てるなんて、やっぱりお燐さんは妖怪ですね。良し、霊夢さんたちやぬえさんよりも先に船に行って、ぬえさんのお友だちにこちらの事情を説明しておきましょう」

 

 良い事を思いついたと、早苗は独り言を呟きながら両手を軽くパンと合わせる。

 

「神奈子様、諏訪子様。東風谷早苗、これより全力で参ります!」

 

 神徳 『五穀豊穣ライスシャワー』――

 

 少女の気合と同時に開いた両手の間からスペルカードが現れ、厄を払う米を模した怒涛の弾幕が抵抗する間もなく亡霊たちを一斉に駆逐していく。

 三人の人間が、異なる目的によって等しく空飛ぶ船を目指す。

 妖怪が騒動を起こし、人間が解決する。

 例え、妖怪側に騒動を起こす気が微塵もなかったとしても、すでに事は始まっている。

 博麗の巫女を含めた人間たちがこの「異変」を解決するのは、最早定めとなってしまった。

 彼女たちの気風を表すように、それぞれの弾幕が幾つかの雲が浮かぶ青空の中に弾けた。

 多くの願いと想いを受け止め、船は雲の浮かぶ空を泳ぎ続ける。

 聖輦船の時空を超える旅は、未だ出航を開始したばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 能力かその妖気の強大さによって、亡霊たちからの妨害もなく誰よりも早く聖輦船に近づいて来る萃香へ、私の呪文が炸裂する。

 

「「覇王氷河烈(ダイナスト・ブレス)」!」

「が……っ」

 

 魔王の腹心が一人、覇王の力を借りて発動する精神と肉体を同時に凍結させる対魔族用の攻撃呪文。

 しかも、凍結させた氷塊と共に対象を粉々に砕くおまけ付きというかなりえげつない呪文だったりする。

 しかし、中に封じ込められていた鬼の膂力に敗北したのか、追加効果を発揮する前に魔力の氷が粉々に打ち砕かれてしまう。

 

「いきなり何しやがる! このへなちょこ魔法使い!」

「こっちの台詞よ、萃香。今は、貴女に構っている暇はないの。遊びたければ、他の相手を探しなさい」

「お断りだよ!」

 

 ですよねー。

 

 萃香が遊び相手と決めているのは、恐らくこの聖輦船を動かしている者。即ち、毘沙門天の代理者である寅丸星だ。

 これほど強力な仏具を操る者ならば、きっと強いに違いない。

 強いならば、酒の肴に遊んでやろう。

 彼女がここに居る理由は、そんなところだろう。

 これで、彼女が最強妖怪の一角でなければ少しは可愛げがあるのだが、生憎現実はそう甘くない。

 ここで星が抜けてしまえば、彼女たちの目的は頓挫してしまう。

 さりとて、一度火の点いてしまったあの幼女の熱を対話だけで冷ます事もまた、不可能に近い。

 私に出来る事と言えば、彼女の関心が船や星からこちらに移るよう全力で呪文を叩き込む事ぐらいだ。

 

「「竜破斬(ドラグ・スレイブ)」!」

「――っ」

 

 船と並行する位置まで高度を上げた萃香へ向けて、次の呪文を解き放つ。

 赤色の光波が走り、相手の声すら飲み込んだ大きな爆発が空へと弾ける。

 竜殺しとして編み出された、人間の放てる最高位の呪文。この威力であれば流石に無傷では済むまい。

 

「か、カカッ。おいおい、何時にも増して粋がってるじゃないか。そんなにわたしと遊んで――」

「「竜破斬(ドラグ・スレイブ)」!」

 

 なんか言ってるけど、とりあえずぶっ放す!

 

 再び紅蓮の爆裂が起こり、萃香の身体が煙の中へと消える。

 

「ぐっ、ごぶっ……ごほっ、ごほっ!」

 

 都合三発の高位呪文を放った後、突然の嘔吐感に襲われた私は船の縁に手を掛け盛大に咳き込んだ。

 口元を押さえた左手を濡らすのは、見慣れてしまった赤い液体。

 魔力の回復に比べ肉体の回復が間に合っておらず、高位の呪文を行使する負担に悲鳴を上げているのだ。

 魔力の枯渇とは、重度の栄養失調や脱水症状に近い。ただ足りない要素を補充するだけで、すぐに身体の調子が元に戻るわけではない。

 本来であれば、最低でも二週間ほどは荒事等に関わらず養生する必要があったのだが、星たちの為に無理を押した結果がこのざまだ。

 魔法が使えなくなった場合を想定し、護身道具入りの大型トランク持って来てはいるがこれも何処まで役に立つか解らない。

 

「はぁっ…はぁっ……はぁ……っ」

「アリスさん!? 無理をしては――っ」

「今無理をしないで、何時しろと言うの。彼女は、幻想郷の中で最強と語られる妖怪の一人なのよ?」

 

 心配そうに私の身体を支えてくれる星を見やり、私は淡々と事実を語る。

 あの小鬼をこの船から引き離す役目は、私が一番適任だ。弾幕ごっこで勝負を挑めば、流石に殺される事もないだろう。

 口元の血を拭い、全身の苦痛を無視して呪文の詠唱を再開させる。

 

「止めなさい。つまり、あの妖怪を止める役が必要だというだけでしょう」

 

 そんな中、両手を胸の前で組んでばきばきと鳴らしながら一輪が進み出た。

 

「一輪、頼めますか?」

「露払いは、私の役目だと言ったはずよ」

「待って、貴女は彼女には勝てないわ。無理よ」

 

 一輪の実力をこの目で見たわけではないが、私の中ではどうしても鬼の頂点よりも劣っていると感じてしまう。

 中途半端に刺激してしまった現状、知り合いでもない初対面の相手と戦った場合萃香が手加減を誤る可能性は十分にある。

 

「だから自分が戦うっていうの? 馬鹿言っていないで、さっさと回復の魔法でも唱えていなさい」

「星……っ」

「大丈夫ですよ。彼女の実力は本物です」

 

 本物とか偽物とか、どうでも良いからっ。

 鬼を相手に正面から挑むとか、普通にあり得ないからっ。

 

 静止を願う私の言葉は、信頼を込めて頷く星に届いてくれない。

 萃香の強さを知り、一輪の強さを知らない私。一輪の強さを知り、萃香の強さを知らない星。

 不幸なすれ違いは、そのまま鬼と入道使いの衝突を開始させてしまう。

 

「があぁぁぁぁぁぁっ!」

「行くわよ、雲山!」

 

 苛立ちの声を上げ、煙の中から全速力で聖輦船へと飛翔する萃香に対し、両手に雲を這わせた一輪が飛び込み右の拳を振り上げる。

 三発も私の呪文を食らっていながら、萃香の勢いはまるで衰えた様子がない。

 身体の小さな萃香の繰り出す細い腕と、背の高い一輪の繰り出す雲の巨椀。

 二人を知らない者が見れば、一輪の勝ちは疑いようもない。だが、原作の知識として二人を知る私にはその逆の結果しか思い浮かばない。

 そして、二人の拳が重なり――勝負を制したのは、なんと入道使いの拳だった。

 

「ぐっ、が……っ!」

「はあぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 べきっ、ぼきっ、と不快な音を響かせ、鬼の腕が無残にへし折れる。裂帛の気合と共に振り下ろされる入道の拳に押され、萃香はそのまま下方へと叩き落された。

 落ちる萃香を追うように、一輪もまた地上へと降りて行く。

 

「な……っ」

 

 目の前に現れたあり得ない結果に、私は両目を見開いて驚愕する。

 素の状態でも鋼鉄に勝る肉体と山を持ち上げる膂力を誇る鬼に対し、張りぼてとも言える雲の拳が勝った現実に理解が追いつかない。

 鬼の中でも一際強い萃香が、あんなに簡単に押し負けるとは考え辛い。恐らくだが、衝突の瞬間に一輪が何かを仕掛けた可能性は高いだろう。

 だが、今の私にはその「何か」を推察する事が出来ない。

 

「さぁ、もう大丈夫です。後は、役目を果たしたナズーリンが帰って来るのを待ちましょう」

「え、えぇ……」

 

 私を座らせながら優しく語り掛けてくれる星へ、呆然しながら曖昧に頷く事しか出来なかった。

 彼女の言う通り、周囲で戦闘が始まった今誰よりも早く残りの破片を回収したナズーリンがこの船に帰還すれば、彼女たちの目的は開始される。

 聖輦船を託された私たちに出来るのは、最高の結末を願い続ける事だけだ。

 雲の間を飛ぶ、尊い船の長旅にまつわる物語。

 一日の始まりが、そのまま異変の始まりへと変じていく。

 長い長い今日という一日は、きっと誰かの大切な思い出になるだろう。

 泣いて、笑って、喧嘩して。そんな、素敵で残酷な一日がゆっくりと時を刻んでいく。

 敵と味方が入り混じり、騒がしさばかりが高まる空の上。太陽は、未だ東の空に姿を見せたばかりの刻限だった。

 


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