この素敵な異世界に英雄を!   作:みずいろ

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前回に続き、その2を投稿します。


女神エリスの導き~その2~

「異世界転生で、お願いします!!」

 

 

天国、生まれ変わりがあるのに、俺はエリス様が仕方なく出した三つ目の選択肢、異世界転生をすぐに選んだ。

 

 

「えぇと…私も迷っている貴方を見て、異世界転生を持ち出しましたが、本当にそれでよろしいのですか?」

 

 

エリス様は心配するように言った。それに俺は、

 

 

「もちろん」

 

と、答えた。

 

 

「その…今まで異世界転生の話を他の方にした所、皆さん、詳しい話を聞きたいと仰っていたり、時には迷う方もおられましたので、サトウカズマさんのように即答する人は初めてです。」

 

「そうなんですか? 意外にゲームやってる奴やゲーム好きって人なら、異世界って聞いたら分かるし、むしろゲーム好きならぜひ行きたいって即答すると思いますけどね。」

 

「えぇ。私も下界の事は熟知しておりますので、貴方の先ほどの説明も分かりますが、なぜいきなり異世界?…と、感じはしないんですか?」

 

 

確かにいきなり異世界って話が出たら、誰だって疑問の一つは持つものだな。だが、俺は……

 

 

「いや、実は死んでここに来る前にある人に会って、異世界=別世界として存在を示唆されるような言葉を聞いたので…」

 

俺は何を思ったか、兄貴の事は伏せてエリス様に伝えた。

 

 

「そういう事でしたか。カズヤさんから教わったという事であれば、納得しました」

 

「えっ?」

 

 

なぜ、兄貴の名が?…俺はそう思った。

 

 

「実はここだけの話、貴方が来る前に私はカズヤさんを導きまして、その時導かれし場所に行く前に死んだ弟さんにひと目会いたいと申されましたので、特別に対面する時間を与えたのです」

 

「へっ?」

 

「でも、まさか対面の時に異世界の事を貴方に教えていたのは、驚きでしたよ。本来、異世界の事は死者同士口に出してはいけない事なんですが、まぁいずれサトウカズマさんにも分かる事ですし、それにカズヤさんの事はカズヤさんの今までの活躍に免じて大目に見る事にしましょう。」

 

「え、なに、訳が分からん…?」

 

 

エリス様の言葉が飲み込めない、俺。とりあえず、エリス様が兄貴を知っていた理由は分かったが、最後の、今までの活躍(・・・・・・)というのが分からん、いやむしろ、気になるな…。

 

 

「まぁ、カズヤさんの弟さんでしたら、大丈夫ですね。分かりました……カズマさん、貴方の異世界転生を了承します」

 

「…………」

 

 

なんだろう、一層変だ…。俺が異世界転生を了承される事が、まるで兄貴のお墨付きみたいで、更に気になる!

 

 

 

「まず、異世界についての簡単のご説明します。今からカズマさんが転生なさる世界は、元々平和な国でしたが、ある日魔王率いる魔王軍によってその平和が脅かされ、魔王軍の無慈悲な略奪と殺戮に皆さん怯えて暮らさなければならない、という大変な悲しい思いをしていました。」

 

「成る程。ファンタジーでは良くある話なんですね!」

 

「ですが、ある一人の勇敢な冒険者が立ち上がり、その方は優秀な知力があっても、僅かな欠点を苦労と苦難で補った末に大きな力を身に付け、遂に魔王を討伐し、結果魔王軍は壊滅しました。皆さん、大いに喜び、その冒険者は異世界の英雄として瞬く間に称えられました。」

 

「へぇー。という事は、今は平和な世界ってことなんですね?」

 

「いいえ…」

 

「えっ?」

 

 

エリス様の話を聞いて、魔王討伐された事で今は平和な世界かと思った俺だが、エリス様は突然平和な世界である事を否定した…。

 

 

「実は魔王軍の残党が、密かに活動していた事が分かりまして、そのせいでつい最近、魔王が復活し、世界は再び魔王軍の無慈悲な略奪と殺戮の日々に戻ってしまいました。」

 

「ええええぇぇぇーーーーー!!?」

 

「ですから、再び異世界の平和を取り戻す為、話を聞いた死者たちのほとんどは異世界転生を選びました。まぁ、中には天国と日本への転生を選んだ方もいらっしゃいますが。」

 

「そ、そんな事が…。でも、その魔王を討伐した英雄がいるじゃないか!!その人はどうなったんですか?!」

 

「実は………亡くなってしまいまして」

 

「えっ、死んだ?」

 

「はい…。魔王が復活したと同時期に、重い病気に掛かってしまい、命を落としました」

 

 

 

病気……魔王が復活した時に病気になって死ぬってタイミング悪過ぎだろ、そいつ!?

 

 

「ですから、新たに魔王を討伐なさる方を、必要となさっているのです」

 

 

「まさに訳アリってことなんですね…。でも、俺が行くとしても、死んだらどうなるんですか?」

 

「またこの場所に戻り、天界規定に基づきまして、二度と異世界に戻る事は出来ません」

 

「デスヨネー」

 

「ですが、ご安心下さい。すぐに死なない為にも、転生者には一つだけ異世界に好きな物を持っていける権利が与えられます」

 

「権利…?」

 

 

エリス様の言葉に耳を傾けた。好きな物を持っていける権利………なんだ、もし無人島に一つだけ持っていけるのなら何を持っていくか、というありきたりな例えと同じヤツなのか…?

 

 

「はい。強力な武器や魔法などの才能です」

 

 

「うおおおおおおぉぉぉぉーーーーーーーー!!!!」

 

「えっ!?」

 

 

エリス様の言葉を聞いた俺は大興奮だ!なぜなら、持って夢にまで見てた強力な武器や魔法を実際に扱えるからだ……俺はずっと夢のような事に憧れを持っていた。

叶わぬことだとずっと思っていたのに、ここに来て遂に実現する、ゲーム好きならむしろ興奮することだろう。

 

「で、エリス様。どんな武器を、どんな才能がっ!!!」

 

「か、カズマさん……顔が近いです…」

 

エリス様にそう言われ、俺は顔を近付けていた事に気が付くと…

 

「あ、すみません」

 

と、謝った。

 

 

「いえ。で、異世界に持っていけるモノというのは、この中から選んで頂きます」

 

 

エリス様が渡してくれたのは、分厚い本だ。

 

 

「流石に厚過ぎて、目を通すのに時間が掛かりそう…。」

 

「そう言うと思いまして、事前にカズマさんに見合ったモノを決めてあるのですが、それでもよろしいですか?」

 

「お、流石はエリス様!心遣い、ありがとうございます!」

 

「そういった御心遣いも女神としての義務です」

 

 

エリス様は微笑みながらそう言った。なんて素晴らしい女神なんだ!!

そういやあ、俺も神についてはそこまで詳しくないが、確か神にはそれに見合う宗派があると聞いたことがある。よし、決めた……もし、エリス様の宗派があるなら、俺は絶対入信して、エリス様を崇めよう。

 

 

「で、俺に見合うモノとは一体?」

 

超能力(・・・)です。」

 

「超能力!?もしかして、エスパー的な何かが使えるって事ですか!!」

 

「どういった能力かは異世界で使った時のお楽しみ…という事にしておきましょう」

 

「えぇーっ……」

 

 

じれったいと思ったが、どんな能力か楽しみだ、という事も考えたらそれも良しかと自分の中で納得した。

 

 

と、同時に俺はある一つの疑問をエリス様に問いかけた。

 

 

「そういえば、エリス様は俺の前に人……いや、兄貴を導いたと言ってましたが、どこに導いたんですか? もしや異世界に?」

 

今度は、兄貴の事は隠さず、しっかりと発言して…。

 

 

「すみません。規定に引っ掛かってしまいますので、詳しい事は語れませんが、敢えて良い所に、とお伝えいたしましょう。それと異世界ではない事も一応お伝えしますね」

 

 

そんなエリス様の返答に俺は、

 

 

「良い所ですか…。」

 

と答えた。

 

 

 

 

「では、サトウカズマさん。貴方をこれから異世界へ送ります。魔王討伐のための勇者候補の一人として魔王を倒した暁には、どんな願いも一つ叶えて差し上げましょう」

 

 

「おっ、どんな願いも!?いいねぇ!!何にしようかな…?」

 

 

俺はまだまだ先の事なのに、どんな願いにするかを考えていた。

 

 

 

「あ、それとカズマさん…私から一つだけよろしいですか?」

 

「えっ、なんですか??」

 

「実はここだけのお話にして頂きたいのですが、異世界には今、私の先輩がいまして…」

 

「へっ、先輩?」

 

 

俺はいきなり拍子抜けの返答をした。そんで…

 

 

「あの、先輩というのは、一体?」

 

と返した。まぁ、いきなりの話だから、疑問を持って聞くのは当然だった。

 

 

「名前はアクアと言います。少し前に訳あって女神の資格を剥奪され、今は人間として異世界で暮らしています。」

 

「アクア、水か?それと、訳ありで女神の資格を剥奪って、何があったんだよ?」

 

「詳しい事は、本人からお聞き下さい。それと、私が今居るこの場も本来はアクア先輩の座る席でして、導くのは元々アクア先輩の役目です」

 

「マジか!?」

 

 

 

エリス様が急に語った、アクアという女神の存在…。女神の資格ってヤツを剥奪されてるって事はロクでもない奴……か

 

 

 

「それで、エリス様は俺にその、アクアをどうしろと言う訳ですか?」

 

「ただ、気になっていたので、異世界に着いた後で様子を確認して貰えませんでしょうか? 特徴は青色の長い髪に、見た目は美しい方なので、すぐに分かると思いますが。」

 

「その……なぜ、俺に?」

 

「カズヤさんの弟と見込んでのお願いなんです。」

 

 

兄貴の弟と、見込んで??その言葉に少し前のエリス様の会話を思い出していた。なぜ、兄貴がお墨付きやそこまで信頼されてるような存在になっているか……ほんとに気になる!!

 

 

「どうかしましたか?」

 

「あ、いや、ちょっと緊張しまして…」

 

 

と、自分の考えを伝えるのも面倒だから、つい誤魔化した。

 

 

「心配はいりませんよ。貴方のお兄さんも、同じ体験をしているはずですから」

 

「へっ?」

 

「実は貴方のお兄さん、サトウカズヤさんも同じく異世界転生を選び、異世界に転生しています。ただ、異世界で死んでしまい、先ほど良い所に導かれた、という訳ですが…。」

 

「そういう事か!!だから兄貴は俺に異世界の話を……」

 

「お話は以上です。カズヤさんの事を詳しく知りたいのであれば、異世界で知って下さいね(きっと、驚くとは思いますが…。)」

 

「は、はい…。」

 

 

 

「さあ、勇者よ!願わくば、あまたの勇者候補達の中から、貴方が魔王を打ち倒す事を祈っています。………さあ、旅立ちなさい!」

 

「おっと!」

 

 

俺の足元に魔法陣が現れ、直後……

 

 

「うおおおぉぉぉーーーー!!」

 

俺は魔法陣の中、いや異世界への入口に落ちて行った…。

 

 

 

 

 

「カズヤさん。貴方の弟さん、サトウカズマさんも異世界転生を果たしました。」

 

「貴方の時と同じように、きっと異世界を…………。」

 

 




カズマが異世界に行った所で終わりました。


正直、アクアでも良かったのですが、オリジナルという事でカズマを導く女神はエリスにしました。

本編と違う話は、どういう風に進むか…。

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