実に下らない話だが、神はダイスを振るらしい〜外伝集〜   作:ピクト人

15 / 29
祝え! チートを携え、作品の枠を超え中国拳法最強説を知ろし召す新たなる海王! まさに誕生の瞬間である!(大嘘)


転生野郎Aチーム続編~カオル「型月において中国拳法は最強。つまり私も最強」 エミヤ「せやろか?」~

「風が強いね」

 

「でも少し……この風……泣いています」

 

「え?」

 

「なんでもない」

 

 広大なゼビル島の中でも一際背の高い木の枝の上に並んで座る少年少女が二人。

 一人はツンツンと逆立った黒髪の少年、ゴン。もう一人は腰まで届く長い黒髪の少女、カオル。髪が黒いということ以外に共通点のない二人が、何故戦うこともなく仲良く並んで座っているのか。

 

 

 大気のベクトルを掌握することでレーダー要らずの一方通行(アクセラレータ)や縦横無尽に空を翔ける幻馬に跨るアストルフォの二人と異なり、カオルに便利な索敵能力はない。探すとなれば自分の足に頼る他ないが、この広い島でたった八人──原作主人公組を除けば僅か四人──を探し当てるのは骨が折れるどころの話ではなかった。

 せめて別れる前に一方通行(アクセラレータ)から大まかな位置情報だけでも貰っておけば良かったと思うも後の祭り。仕方なく原始的な方法を取らざるを得なくなったカオルは、目に付いた一等背の高い木の上へと駆け上がり──

 

『あ』『あ』

 

 ──一足飛びで樹上まで跳躍したカオルは、そこで先客のゴンとばったり出くわしたのだった。

 

 

 これが約五分前の出来事。あまりに唐突だったことと互いに敵意がなかったこともあり、微妙に気まずい空気を醸しながらも戦闘に発展せず現在に至る。

 

(どうしたもんかしら。まさかゴンを攻撃するわけにもいかないし……というかそもそもそういう空気じゃないし……)

 

(仕掛けようにも隙がなくてどうしようもない……それにアストルフォの友達と戦うのもなぁ……)

 

 原作主人公という良くも悪くもアンタッチャブルな存在を前に当初の狂熱が醒めたカオルと、共にトリックタワーを攻略したアストルフォの友人を相手に対処を決めかねるゴン。遠慮と警戒が入り混じる妙な緊張感の中、二人は当初の予定通り樹上から眼下を見下ろし索敵を続ける。

 

「……ん?」

 

 それを見付けたのはカオルが先だった。英霊ならではの超常の視力は、そのとき木々の合間から覗く特徴的な赤髪を捕捉した。

 

「…………」

 

「どうかした?」

 

 今の時点で残っている面子の中に赤い髪の人物など一人しかいない。隣から向けられる視線に気が付いたのか、ゴンは訝しげにやおら気を乱した少女を見る。

 

 カオルは考える。両者の因縁は果たして必要不可欠な要素なのか。ゴン=フリークスという物語の特異点が辿るべき道筋において、“彼”はなくてはならぬ存在なのか。

 天空闘技場で、ヨークシンで、グリードアイランドで、NGLで、“彼”の不在が何か致命的な不都合を引き起こすか否か。

 

 結論──いるに越したことはないが、いなくとも別に問題はない。

 

「悪いわね、ゴン。アナタの因縁より、個人的な怨恨を優先させてもらうわ」

 

「え?」

 

 彼女の中で何かが切り替わるのをゴンは肌で感じ取った。カオルの肉体に戦意という名の炎が宿り、身も凍るような重圧が顔を覗かせる。

 何事、と目を見張った次の瞬間、カオルの細くしなやかな足が質量を無視して増大し流動した。白銀に輝く鋼が瞬時に一部の隙もなく彼女の脚部を覆う。

 

 少女の秘密を包み隠していた虚飾が剥がれる。健康的な肌色を帯びた少女の足は、武骨で鋭利な異形の脚へ。変化したのではなく元に戻ったのだと、そんなことがゴンに分かる道理もなく。

 

 ──刹那、少年の傍らで烈火が弾けた。

 

 人ならざる身体駆動は爆発的な加速を生み、少女の身体を標的へ向けて押し出した。足場となった大樹はその剛脚に耐えきれず発破を受けたように爆散する。

 大樹の上半分が崩壊し、樹上にいたゴンは必然として空中へと投げ出された。突然足場を失ったゴンは呆然とロケットのようにカッ飛んでいった少女の後ろ姿を見送る。

 

「スッゲェ……」

 

 それを見て「凄い」で済ませるあたりゴンは大物だろう。危なげなく地面に着地した彼は、大地を揺るがす大きな力の鳴動と大気を震わせる魔獣の咆哮が肌を叩くのを感じた。

 この島で何かが起きようとしている。言い知れぬ興奮に心を沸き立たせたゴンは、手掛かりを求めてカオルが去っていった方向へと足を向けた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 クラピカとレオリオは絶体絶命の窮地に陥っていた。

 二人の眼前には燃えるような赤髪の道化師が不気味な笑みを浮かべて立っている。一次試験において幾人もの受験生を虐殺した冷酷な殺人者。多くの猛者が集うハンター試験でも頭一つ抜けた実力を持つ狂人が毒蛇の眼差しで二人を見据えていた。

 

「こんな所で会うなんて、奇遇だね♥」

 

「クソッ、一番会いたくない奴に出会っちまった……」

 

 レオリオが唾を吐きそうな表情で悪態をつく。クラピカもこの遭遇には臍を噛む思いだった。二人にとってヌメーレ湿原での惨敗は記憶に新しい。

 鋼の肉体、飛燕の身のこなし。これら身体能力を飾る言葉がヒソカを前には比喩表現でなくなってしまうだろう。豹のようにしなやかで強靭な五体に漲る力は想像を絶する。無造作に打ち払った拳の一撃でレオリオは容易く昏倒させられたのだから。

 

「こうも広い島で自分以外のたった十一人を探すのは大変でね♣ 君たちと会えたのは幸運だった♦」

 

「我々にとっては不幸としか言いようがないがな……」

 

「ふふ、君たちとは一度腰を落ち着けて話がしたかったところだけど……あのコワーイ魔獣が現れるまでに確実に一枚はプレートを確保しておきたい♠ キミたちのどっちでもいい、ボクにプレートをくれないかな♥」

 

「ケッ、そんなこったろうと思ったぜ!」

 

 ヒソカ程の実力があればあの魔獣から逃げるのも不可能ではないだろうに、などという指摘は意味がない。何故なら口ではプレートが欲しいなどと言いつつ、そもそもヒソカはプレートなど眼中にないのだ。彼の目的は単純明快、戦うことだけだ。

 

「初めて会った時からそそられていたんだ……特にレオリオ、キミの並外れたガッツには敬意を表するよ♣」

 

 ヒソカですら二の足を踏み、実際に食して地獄を見た二次試験の惨劇。あの赤い地獄に真っ先に飛び込んだのがレオリオだった。口内を蹂躙し臓腑を燃え上がらせるあの苦痛を耐え抜いた意志力には感服する他ない。返す返すもあのとき一撃で昏倒させてしまったのは失敗だった。レオリオならば意識ある限り不屈の闘志で立ち上がってきたことだろう。

 「命を懸けるなど馬鹿の行い、来年また挑戦すればいい」などと賢しらに語る軟弱者どもとは立っている土台が違う。何度打ちのめされても諦めぬ精神力は勿論、秘めた才能も中々のものだ。才はまだ開花していないが、それは今後に期待だろう。ゴンに勝るとも劣らぬ可能性を持つ男を前に、ヒソカは堪らず舌なめずりする。

 

 レオリオ、そしてクラピカ。念を知らぬ今の時点であっても並ならぬ実力を秘める金の卵たち。彼らが念を覚えたら……さて、どうなってしまうことやら。

 

(いっそこの場で精孔を開いちゃおうかな……♦)

 

 ヒソカの中で好奇心に彩られた悪意が鎌首を擡げる。悪意はオーラの発露として体外へ噴出し、途方もない邪気となってクラピカとレオリオへと襲い掛かった。

 二人は息を呑み、悪寒に総毛立ちながら反射的に構えを取った。片や二刀の木剣を構え、片や腰を落とし拳を構える。否応なく戦いの場へと引きずり出された二人を前に、ヒソカは期待に胸躍らせながら一歩を踏み出した。

 

 彼我の距離は約十メートル。常人にとっては長く遠い距離でも、ヒソカにとっては一足の間合いに過ぎない。それを理解しているからこそ、クラピカとレオリオの二人は一歩一歩近付いてくる道化師を前に迂闊に動けない。僅かにでも動けば、それが致命的な隙になってしまうような気がしてならなかった。

 

 九メートル、八メートル、七メートル……徐々に、だが確実に狭まっていく間合い。もはやヒソカは目と鼻の先だ。

 もう我慢できない。迫り来る圧迫感に耐えかねレオリオが吶喊する。その無謀な突撃を制止するような余裕などクラピカにはなく、裂帛の気合と共に拳を振り上げるレオリオを見送るしかない。

 道化師の笑みが深まる。残り五メートル。向かってくるレオリオを迎え撃つべくヒソカもまたゆっくりと拳を振り被り──

 

 

「破棘滅尽旋・天*1!!」

 

 

 作品間違えてますよ、という突っ込み必至の技名を叫びながら少女が降ってきた。空から美少女が落ちてくるなど如何にもラブコメが始まりそうなシチュエーションだが、残念ながら降ってきたのは全方位に破壊を振り撒く微少女である。着弾の衝撃でレオリオは吹っ飛び、あわや直撃を食らいそうになったヒソカは咄嗟に後方へ飛び退った。

 

「ごきげんよう。いつかの雪辱を晴らしに来たわ」

 

「ほうッ♠」

 

 喜色に溢れた感嘆の吐息が口をついて出る。現れた少女はヒソカが待ち望んだ極上の獲物だった。

 とても戦いを生業としているようには見えないほど線の細い体形とは裏腹に、身の丈に迫る長大な銀の具足が少女のシルエットを歪なものにしている。魚鱗の意匠に彩られた鋼は随所に鋭利な刃が具わり、濃密な殺意に濡れ光っていた。これほど特徴的な外見の人物を見紛うはずもない。

 

「会いたかったよカオル♥ まさかキミの方から来てくれるとは思わなかった♣」

 

 ヒソカの顔に凄絶な笑みが宿る。この上なく楽しそうで、殺気に塗れた戦士の形相だった。その面に表れた鬼気は先程までの比ではない。

 カオル=フジワラ。クラピカとレオリオを未熟な蕾とするなら、彼女こそまさに大輪の花。今まさに戦士としての時宜にある少女はヒソカをして苦戦を予感させる。

 

「イイ……実に素晴らしいよ♦ まさに理想的な展開──」

 

 陶酔するヒソカが更に口上を続けようとした瞬間、カオルはそれを聞き届けることなく駆け出した。滾る戦意が爆発し、それに逆らうことなく躍り掛かる。

 まるで躾けのなっていない狂犬だ。島に上陸した時点で戦いは始まっているも同然なのだから、口上の途中を狙って割り込もうがそれは問題ない。だが、敵方からの反撃をまるで考慮しない我武者羅な突進は如何なものか。見るからにただ前進することしか頭にない。これならば破れかぶれで殴り掛かってきたレオリオの方が幾分上等だったろう。

 

 先の予感は錯覚だったのか。ヒソカは僅かな失望を滲ませつつ、迫る敵影へと機械的に拳を合わせた。狙いはクロスカウンター。弾丸のような速度を物ともせず動きを捕捉し、整った顔面へと拳を叩き込まんとする。

 

「……!」

 

 その時だった。ニヤリ、と少女の表情が悪辣に歪む。

 ヒソカの背に戦慄が走る。溢れる戦意の内に巧妙に隠されていた“意”が表出し、それが決して無謀な突撃でなかったのだと知らしめた。

 だがもう遅い。既にヒソカの拳は放たれており、今更軌道を変えることなどできよう筈もない。

 

 ヒソカは無防備な突進にカウンターするつもりだった。だが現実は異なる。ヒソカは悟った。己はまんまと無防備な攻撃を誘発させられたのだ──

 

 頭から突っ込んだ少女の顔面に鉄拳が突き刺さる。だがそれらしい手応えは微塵も感じられず、まるで羽毛を叩いたような感触が返ってくるのみ。

 まともに攻撃が入るとは思っていなかったが、さりとてこの不可解な感触はあまりに予想外。理解の及ばぬ現象に呆然とするヒソカの顔面へと、風車のように回転したカオルの蹴撃が叩き込まれた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 『消力(シャオリー)*2』という技術がある。

 それは護身術の要諦である脱力を「己の体重をも消し去る」程のレベルで常時行い続けることで、敵のあらゆる攻撃を受け流し無力化する防御術。その極意は究極のリラックス状態となり、肉体を軸に周囲の力の流れをコントロールすることにある。

 

 危険が身に迫る際の肉体の硬直、それは動物である限り必然の生体反応である。しかしその本能こそが事態を悪化させる。

 堅牢な樹木が突風に倒れ、柔らかな草木が風に影響されないように。

 不意の転倒で大人が骨折し、高所から落下した赤子が無傷でいられるように。

 

 ──硬直こそが被害を大きくする。然るに脱力こそが、消力(シャオリー)こそが最高の防御術。

 

 この絶技を実現するには並の技量では足りない。戦闘という命のやり取りの最中(さなか)に、全ての筋力を総動員させるべき緊急事態に──“脱力”する。その難しさは語るに及ばず。

 

 まず技術的な問題が挙げられよう。筋肉、骨格、腱……肉体のあらゆる箇所、その奥深くに居座る無意識の強張り。その全てを徹頭徹尾抜き去ることが消力(シャオリー)には必要不可欠とされるが、果たしてそんなことが可能なのか。人間には寝ている時でさえ無意識の力みが存在しているというのに。

 そして何よりも問題なのが要求される胆力。己に向けられる暴力を前に平静を保てる人間がどれだけいることか。たとえ平静であったとしても、消力(シャオリー)実現を前提とするなら「身構える」ことすら許されない。僅かにでも身構えたが最後、そこには既に「力み」が存在している。砂埃が目に入っただけ、髪の毛一本抜けただけでも反射的に強張るのが動物の本能だというのに、殺傷を目的に振るわれる暴力を前に一切の力みを捨て去るなど、果たしてどれだけの胆力が求められるのか。

 

 漫画(フィクション)の世界だからこそ存在が許される非現実的な奥義。こんなものを会得しようなど、全く馬鹿の行いとしか言いようがないだろう。かめはめ波の練習をする子供のようなものだ。

 

 だが、それが「彼ら」の場合となると事情が違ってくる。

 

 アーカード(吸血鬼)エミヤ(アラヤの守護者)アストルフォ(英霊)一方通行(超能力者)カオル(アルターエゴ)。いずれも本来ならば非現実(フィクション)存在(キャラクター)だ。非現実(フィクション)存在(キャラクター)漫画(フィクション)の必殺技を習得する。現実(ノンフィクション)の人間が同じことを試みるよりかは幾分現実味があると言えないだろうか。

 

 

『漫画の中でしかできない無茶苦茶な修行とか、マジ憧れね?』

 

『わかりみが深い』

 

 

 ──最たる要因は、彼らが素面(しらふ)で馬鹿を行える馬鹿の集まりであったことだろうが。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「過去多くの競技者・武術家が試みてきた難行、“脱力”……洋の東西を問わず、武術・護身術の要諦は古来よりこの脱力にあるという♠」

 

 滝のように止め処なく流れる鼻血。折れ曲がった鼻骨を強引に元の位置へと正し、意識的にアドレナリンを分泌させることで止血を試みる。

 顔面を血に染めたヒソカはこの上なく嬉しそうに破顔していた。踵の刃で切り裂かれていれば既に終わっていたろうに、それをせず態々平らな鋼で鼻先を叩くというあからさまな手加減。その屈辱よりも、絶技の素晴らしさを目の当たりにした幸福が勝る。

 

「ボクは武術家ではないが、格闘家の端くれではある……だからこそ分かる♥ 今キミが実行した絶技は()()()()()♣」

 

 赤子の手を扱うかのように、手にある卵を潰さぬように──

 斯様に抽象される脱力の開眼に、古今の術者は腐心を余儀なくされてきた。脱力、言うは易く行うは難し。緊急事に脱力することの難しさは、戦いに身を置く者ならば嫌というほど痛感していることだ。

 

 ヒソカの打拳は大岩をも打ち砕く。そんな馬鹿力が人体に叩き込まれればどうなるかなど、火を見るよりも明らかだ。

 そんな一級の戦士の打撃を目の当たりにしてさえあの脱力ぶり。カオルは顔面に拳を受けても瞬き一つせず、迫る拳の威力に逆らうことなく身体を靡かせたのだ。極限の脱力により羽毛と化した五体を前に、必殺の拳撃は意味なく通り過ぎるばかり。

 

 後ろからその一瞬を目撃したクラピカとレオリオには何が起きたかなど理解できなかっただろう。これまでとは比較にならぬ威力を孕んだヒソカの本気の打撃が突き刺さったかと思えば、カオルの身体は突風に攫われた木の葉のような動きで回転。その回転の勢いのまま加速し、ヒソカの鼻先へと蹴りを叩き込んだのだ。

 

「武の頂とまで言われるネテロ会長ですら同じことが出来るかどうか♦ 是非教えてほしいものだ……キミは誰に師事したんだい? たった四年でキミを達人へと変えたのは、一体どんな魔術師なんだ?」

 

「師の名は郭海皇(かくかいおう)*3。会おうとしても無駄よ。(別作品の人物的な意味で)この世にはいないから」

 

「既に故人か……それは残念……実に残念だ……♠」

 

 本気で残念そうにするヒソカ。どうやら会いに行く気満々だったらしい。

 

「それ程の絶技、才溢れる武術家を千人並べたとて完全に習得できる者は限られるだろう♥ そんな中で現れたキミという逸材……キミを弟子にしたカクカイオウとやらは幸運だったに違いない♣」

 

「あー……うん、そうね。そうだったらいいわね」

 

 本気の賞賛を込めてそう讃えられたカオルは罰が悪そうに目線を逸らす。今更「実は空想上の人物だったんです」とは言えない空気だ。

 それにドヤ顔で消力(シャオリー)を披露したカオルだが、彼女が武に費やした時間は郭海皇やネテロなどと比べれば遥かに少ない。そんなカオルが、何故四千年の歴史を持つ深淵なる中国武術にあってなお高級技とすら呼ばれる秘奥義を習得できたのか。当然ながらそこには()()が存在している。

 

 消力(シャオリー)に要求される究極の脱力。その際の筋線維は液体のレベルを超え、気体の域にまで弛緩する。そこまで弛緩させて初めて体重をも消し去るレベルの脱力が可能となるのだ。

 無論のこと困難を極める行いだ。過去多くの武術家が究極の脱力を求めるも、液体のレベルにすら到達できず生涯を終えるのが実情である。

 

 だがカオルは違う。メルトリリスたる彼女の身体は完全流体。既にして液体の域……否、液体そのもの。あらゆる悦と楽を呑み込む水の器として生を受けたカオルは、肉の器に縛られる人間の武術家とはそもそものスタートラインが異なる。

 肉を水に、水を気体に。肉から水へと弛緩させるのに血を吐く思いをしている世の武術家を余所に、カオルだけは初めから水の領域に身を置いている。然るに、彼女は水から気体へと至ることのみに専心するだけでいい。

 

 これをズルと言わずして何と言おう。本来要求される努力量の半分以下で究極に至れるなど、世の武術家が聞けば憤死する程の出鱈目だ。

 加えて戦闘能力に特化して設計されたメルトリリスは、こと戦いという分野においては並ならぬ才覚を発揮する。バレエという芸術を戦闘に組み込み、独自のスタイルを確立させた手腕からしてそれは明らかだろう。

 

 尤も、長らく出鱈目の権化とでも言うべき型破りな仲間たちとつるんできたカオルに、今更それを恥と思うような常識的な感性はなかった。彼女の主観からすれば、これはある物を有効活用した結果に過ぎない。翼持つ鳥が空を舞うように、鰭持つ魚が水を往くように、二足歩行の人が手を扱うように。水の身体を持つカオルが行き着いた“必然”が偶さか消力(シャオリー)だったというだけのこと。厚顔無恥だ何だと言われようが、賞金首を片端から殺して回るよりはよほど健全だろうと憚りなく宣うのが今のカオルの在り方だった。

 

 ──正直、こういうカッコイイ中国拳法とかマジ憧れてました。

 

 それに、この程度の出鱈目を実行する天才なんてこの世界にはありふれている。ほぼ独力で念を修めた目の前のヒソカ=モロウ、不世出の天才であるジン=フリークス、言わずもがなの武神アイザック=ネテロ。元一般人の転生者がそんな奴らが当たり前のように闊歩する世界で我を貫くなら、この程度のズルは許容しなければやってられない。端から清く正しく生きようなんて思ってないし、とカオルは自己弁護を完了させた。

 

「さあどうするのかしらヒソカ=モロウ。もうアナタの攻撃は私には通じないわよ?」

 

「もう勝ったつもりかい? さっきは不覚を取ったけど、そう何度も同じ手は食らわないよ♦」

 

 ヒソカの攻撃手段が拳打による物理攻撃に限られる以上、カオルの消力(シャオリー)を前には無力。どんなに技巧を凝らした拳を打とうと、その全てを受け流されて終わるだけだろう。

 だが天才ヒソカは一度の攻防で既に消力(シャオリー)の弱点を見抜いていた。消力(シャオリー)の極意が脱力にあることは確かだが、それだけが全てではない。完全な脱力に至る寸前の体捌きにこそ付け入る隙があるとヒソカは睨んだ。

 

 体重を消し去る程の脱力によって人体を羽毛と化す奥義消力(シャオリー)。だが人体と羽毛の間には質量の差という埋め難い違いが厳然と存在している。その差異はただ脱力しただけで解決できるものではない。

 中国武術の集大成と評された郭海皇は弟子・烈海王(れつかいおう)*4に語った。「気で見極め、眼で見極め、太刀筋に逆らわず五体で靡け」と。本当にただ脱力するだけで事が済むのならば「気で見極める」ことも「眼で見極める」ことも必要ない筈だ。

 然るに消力(シャオリー)完成には二つの工程が要求されると推察できよう。まず敵の攻撃を見極め、その力の向きに逆らわず身体を靡かせる“体捌き”。後方への跳躍、(たい)の傾き、身体の回転、様々な技法で受ける衝撃を最小限に落とし込む*5

 しかる後に“脱力”。極限の弛緩により五体を羽毛化させ、体捌きによって最小限に留めた衝撃をいよいよゼロにまで貶めるのだ。以上の二工程を以て真なる羽毛化、真なる消力(シャオリー)は完成を見る。

 

 ヒソカは消力(シャオリー)の原理を直感で見抜いた。常人にとっては理解の外にある絶技を一目で見抜く図抜けた観察眼。なるほど自らを最強と宣うのも頷ける、異常な程のセンスの持ち主と言う他ない。

 宙を舞う羽毛には為す術がない。だが羽毛と化す前段階、体捌きを以て攻撃を受け流そうとしている時ならば付け入る隙もあろう。

 

 ──〝伸縮自在の愛(バンジーガム)〟。ガムの粘着性とゴムの伸縮性を併せ持つオーラ変化能力。この〝発〟を最大限に駆使し、脱力される前に体捌きを崩すしかない。

 

 地面を砕く程の力強い踏み込みで肉迫したヒソカは、余裕綽々の態度で佇むカオルへと蹴りを繰り出す。無防備な胸部へと本気の蹴りが叩き込まれるも、案の定何の手応えもなくカオルの身体は舞うように宙を閃いた。

 そして返す刃で蹴りの返礼がやって来る。今度は手加減するつもりはないのか、向けられるのは悍ましいほど鋭利な踵の刃だ。首を狙って振り抜かれた魔剣ジゼルの斬撃をヒソカは紙一重で回避する。カオルの反撃を織り込み済みで放った蹴りだからこそ咄嗟の回避が叶ったと言えよう。ヒソカとて初見ではないからこそ対処できたようなものだ。

 

(回避と攻撃が完全に一体となっている……普通なら技後硬直を狙われてはひとたまりもない♠ だけど、ボクに対して同じ技が二度も通用するとは思わないでほしいな♥)

 

 足は風、手は風、五体(これ)全て旋風(かぜ)。回避に伴い中空を漂う羽毛は旋風の加速を得て刃と化す。生半可な実力の者ならば受け身もままならぬ攻防一体の妙技を、ヒソカは二度目にして見切る。

 そして今の一瞬の交錯でヒソカはカオルの身体に〝伸縮自在の愛(バンジーガム)〟を付着させることに成功した。敵を欺く手管に長けるヒソカはオーラを見えにくくする〝隠〟を得意とする。〝絶〟の行を発展させたこの技法により、〝伸縮自在の愛(バンジーガム)〟はその存在を薄れさせ視認が困難となる。

 

 カオルの反撃を避けたヒソカは、即座に次の攻撃へと打って出る。今度は下段から顎先目掛けてのアッパーカット。避け損ねれば脳震盪は必至の攻撃だが──

 

(脱力による完全回避を可能とするカオルにとっては微風(そよかぜ)も同然♣)

 

 だからこそカオルは防御しない。纏うオーラは最低限で、〝纏〟かそれに満たぬ程度の薄いオーラの膜で体表を覆うのみだ。

 その分、カオルの攻撃の要となる脚部には多くのオーラが割り振られている。〝凝〟……否、これはもう〝硬〟の域。これほど大胆な攻防力の割り振りが行えるのも、カオルが消力(シャオリー)に多大な信を置いているが故だろう。

 

(今はそれが裏目に出る♦)

 

 ヒソカのアッパーを無力化するべく動作を見極め、カオルは拳の向かう先に逆らわず仰け反るように身体を動かす。

 拳が顎先に触れる。来ると分かっている攻撃に対する動揺はなく、よって強張りもない。後は完全な脱力状態へと移行し、力の流れに合わせて身体を靡かせるだけ──

 

 その刹那。時間にするならコンマ一秒にも満たない脱力に至る寸前のタイミングを見極め、ヒソカはカオルの身体に付着させた〝伸縮自在の愛(バンジーガム)〟を引き寄せた。

 

「ッ!」

 

 カオルの身体が不自然に傾ぐ。自分の意思に依らぬ動作を強制され、羽毛へと至ろうとしていた身体にあってはならぬ強張りが生じた。

 引き延ばされていく自意識の中、カオルは自分の内に油断と慢心が生まれていたことに気が付いた。苦労の末に身に付けた達人技に浮かれていたか、ヒソカと対峙するならば警戒して然るべき〝伸縮自在の愛(バンジーガム)〟への注意を怠っていたのだ。本物の理合を身に付けた真正の達人ならばあり得ぬ失態である。

 

 アッパーカットはブラフ、体勢を崩したカオルへと本命の左ストレートが炸裂する。消力(シャオリー)が使えたのならば何てことのない単純(シンプル)な拳打が、〝纏〟以下の守りしかない柔らかな身体へと突き刺さった。

 

 ぐにゃり。

 

「あれ?」

 

 まともに刺さった筈の拳に返ってきたのは、またしても不可解な感触だった。羽毛を叩いたような軽さはないが、氷嚢(ひょうのう)を殴りつけたような奇妙な柔らかさを感じる。手応えはあるのでダメージは与えられたのだろうが、とても人体を殴ったとは思えぬ感触にヒソカは困惑した。

 

「~~~~ッ」

 

 一方、殴り飛ばされたカオルは大地に仰向けに転がった。しかしその身にダメージはなく、その表情は羞恥により僅かに朱に染まっている。

 先に述べたように、カオルはメルトリリスとしてこの世に生を受けた時点で水の肉体を獲得している。その身は消力(シャオリー)を使うまでもなく液体の柔軟さを具えており、その特異性が今回カオルを救ったと言えるだろう。完全流体の水の器は打撃を無効化する程ではないが、限りなく威力を低減させる。それがなければまともなオーラ防御もないままにヒソカの拳を食らい、大ダメージを負っていたことは明白だった。

 

 だが、そのことを知らないヒソカは目論見が外れたことに歯噛みする。消力(シャオリー)攻略ならず、二度同じような手は通用しないだろう。また別の手段を模索し、脱力による完全回避を突き崩す必要があった。

 

「いッ……命拾いしたわねヒソカ。アナタ、今死ぬところだったわよ……

 

「なんだって……?」

 

 慢心故に窮地に陥り、そして偶然に助けられた。仲間に見られれば大爆笑されること必至の醜態を誤魔化すべく、カオルは一芝居打つことにした。名付けて「毅然とした態度を続行することで窮地に陥ってなどいない体を装い、しかも更なる隠し玉があるように見せる作戦」である。

 それでも羞恥を隠し切れず、若干台詞が尻窄みになったのはご愛敬。幸い混乱によりそれどころではないヒソカには感づかれなかったようだが。

 

 それに、隠し玉があるのは嘘ではない。

 メルトリリスの固有能力『メルトウイルス』が〝伸縮自在の愛(バンジーガム)〟を侵食する。発動したオールドレインがカオルの体表に付着していたオーラを根こそぎ吸収し、更にはヒソカの顕在オーラにまでウイルスの侵食が波及した。

 

「ッ!?」

 

 異変を察知したヒソカは慌てて〝伸縮自在の愛(バンジーガム)〟を解除する。だが次の瞬間、仰向けに転がっていた筈のカオルはヒソカの眼前にまで肉薄していた。

 

「この言葉……信じるも良し、信じないも良し。とはいえ──」

 

 手を伸ばせば届く距離にまで詰め寄ったカオルが嫣然と笑う。全力の演技力が功を奏したか、そこに不自然さは見られない。瞠目するヒソカの目の前でこれ見よがしに拳を持ち上げ、ゆるゆると前に突き出した。

 

「──所詮は強化系でもない女の子のパンチ力。たかが知れてるでしょうけど」

 

「────ッ!!」

 

 虫でも止まりそうな程ゆっくりと突き出された正拳突き。脚にも腰にも力は入っておらず、腕にもまるでオーラが乗っていない。〝練〟よりはマシといった程度であり、戦闘時にある念能力者の常態と言われる〝堅〟にすら満たない拳でヒソカ相手にダメージを見込める筈もなく──

 

 しかし、血相を変えたヒソカは慌てたように飛び退った。

 

「……?」

 

「な、何だ? 何でアイツ今のパンチを避けたんだ?」

 

 後ろから固唾を呑んで見守る二人の目からしても、ヒソカの行動の意図は読めなかった。見るからに蹴り技を主体とするカオルが態々繰り出した拳打。一体どんな隠し玉が飛び出すのかと思えば、出てきたのは子供でももう少しまともに殴れるだろうと思えるような鈍いパンチである。直前まで消力(シャオリー)という絶技を披露していただけに、その落差は余計に際立って見えた。

 

「あら? あらあらあら……避けちゃうんだ。こーんな弱々しいパンチなのに」

 

「…………」

 

 ヒソカとて何か確信があって避けたわけではなかった。何か企んでいることは明白とはいえ、その拳には威力も、速度も、オーラもまるで足りていない。何かしらの〝発〟を発動させる意図なのかと疑うも、それにしては込められたオーラが少な過ぎるし、〝隠〟で誤魔化している様子もなかった。

 だが一目で消力(シャオリー)の原理を見抜いた観察眼と、天性の戦闘勘が警鐘を鳴らしたのだ。「この拳を受けてはならない」と。

 

「奇術師と呼ばれ恐れられ、自らを最強とまで称して憚らない戦士とは思えない臆病さ……さて、一体全体何を恐れているのかしら……?」

 

 大きく退いたヒソカを追い、不気味なまでに余裕な表情を保つカオルが歩み寄る。

 “何か”を隠していることは明白。だがその“何か”が分からない。大樹に背を預けて身構えるヒソカは、正体不明の“何か”を警戒し冷や汗を流す。

 

(彼女は何を企んでいる? 得意の〝流〟で打撃の瞬間にオーラを一点に集中させる? いや、そんな素振りはなかった……♠)

 

「何をそんなに恐れる──」

 

 再び欠伸が出るような速度の拳が突き出される。何度見ても怪しむべき要素は見当たらない、力のない拳だ。カオルの態度はあからさまなまでに何かを隠していると告げているのに、ヒソカにはそれが何なのか見当もつかない。ただ本能に任せて身を躱し──

 

「避けるな」

 

 身を躱したヒソカの後ろ。直前まで彼が背を預けていた大樹にカオルの拳が接触し──瞬間、樹高二十メートルにも達する巨木が爆散した。

 

「!?」

 

「え? は!?」

 

 まるで破城槌が炸裂したかのようだった。耳を聾する爆音が大地を揺らし、見上げるような大樹はその根元を粉砕され折れ曲がる。メキメキと軋みを上げてその巨体を横たわらせる大樹から打ち込んだ拳を離し、振り返ったカオルはニッコリと可憐に微笑んだ。

 

「避けるなッつったろうが。え?」

 

「無茶言うなよ♥」

 

 殆どオーラを込めていないのにこの威力。ダラダラと冷や汗を流すヒソカは、ここに至ってようやくカオルが実行したことの正体を悟った。この破壊力もあの究極の脱力が齎したものなのだと。

 

 消力(シャオリー)とはつまるところ弛緩(リラックス)。そして武術・格闘技に限らず近代スポーツで瞬発力を要求される際、必ず指摘されるのがこのリラックスである。

 投球(ピッチング)打撃(バッティング)投擲(スローイング)打突(ヒッティング)──いずれにおいても強調されるのは瞬発力(インパクト)、その瞬間までの弛緩(リラックス)であるとされる。

 

 弛緩と緊張の振り幅こそが打力の要。然るに己の体重をも消し去る程の消力(シャオリー)、その究極のリラックスから繰り出される打拳の威力が低い筈もなく。

 

「守りの消力(シャオリー)転じて攻めの消力(シャオリー)。あらゆる衝撃を無にする防御も、あらゆる障害を破壊する攻撃も自由自在。即ち脱力こそが、消力(シャオリー)こそが究極の闘法……」

 

「なるほど、それはシャオリーと言うのか♣ うん、多分もう忘れないよ……♦」

 

 さっき痛い目にあったばかりなのに、またもや自分に酔ったように語り出すカオル。

 だがその戦闘力は本物だ。物理的且つ直接的な攻撃手段しか持たないヒソカとの相性は最悪と言う他ない。どんな攻撃も守りの消力(シャオリー)で無力化され、力みによる予備動作もなく攻めの消力(シャオリー)による超破壊力の攻撃が飛んでくる。

 

(しかも彼女はまだ攻めのシャオリーの本気を見せていない……あの威力の攻撃を見るからに頑丈そうで鋭い具足で撃ち放ったら……♠)

 

 巨木をも粉砕する威力が刃に乗り、二本の脚から放たれる。しかも場合によっては守りの消力(シャオリー)からの反撃でポンポン飛んでくる。悪夢的としか表現できぬ地獄が形成されるだろう。

 

(あれ、これ詰んだ?)

 

 ジリジリと距離を詰めてくるカオルと、ジリジリと後退るヒソカ。切羽詰まった表情を浮かべるヒソカと、嗜虐的な笑みでにじり寄るカオル。まさに対照的と言える様子の両者の間にある緊張感は際限ない高まりを見せ、張り詰めた空気は今か今かと解放の時を待ち受ける。

 

(やっべwww ヒソカの奴ビビッてやんのwww やっべ超楽しいwww 俺TUEEE最高www)

 

 ……とはいえ、カオルの内心などこんなものである。こんな下種な思考の転生者に使われては、消力(シャオリー)も郭海皇も浮かばれまい。

 

 

 アーカードの魔獣が解き放たれるまで、残り約十時間。渾沌を極める最終試験がどのような結末を迎えるのか、それは誰にも分からない。

 

*1
『MONSTER HUNTER:WORLD』より、滅尽龍ネルギガンテの必殺技。随分厨二臭い技名ですね(^^)

*2
漫画『バキ』に登場した中国武術の高級技にして奥義。現実の中国武術に同じものがあるかは不明

*3
漫画『バキ』より、消力(シャオリー)を使いこなす146歳の老武術家。中国拳法そのものとさえ評される達人の中の達人

*4
私は一向に構わんッ

*5
この一工程目が間に合わなかったから郭海皇は範馬勇次郎の拳打で鼻血を流したのだろうか。所詮は妄想に過ぎないが




本編とは異なる方向性で強化されたカオル。しかしこの世界の彼女は殆どドレイン行為に及んでいないため、肉体強度やオーラ総量は本編のカオルと比較し大幅に劣ります。
つまりもし仮に本編のカオルと外伝のカオルが激突した場合、まさに範馬勇次郎VS郭海皇のような戦いになります。

本編「闘争とは力の解放だ。力みなくして解放のカタルシスはありえねぇ」


何かやっちまった感がありますが、まあルール無用が外伝を書く際に設けた自分ルール。このまま突っ切らせて頂きましょう。自重は投げ捨てるものと偉大なる某二次創作作者も申しております故。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。