実に下らない話だが、神はダイスを振るらしい〜外伝集〜 作:ピクト人
因みに無事死亡した新作は「驚異の神秘99のコズミック狩人(体力持久最低値)が他世界にお邪魔する」というものでした。二度と日の目を見ることはないでしょう。
誰か書いてもいいのよ。
あと、今回は掲示板要素があります。そういうのが苦手な方はご注意下さい。
なお、作者は実際の掲示板など碌に見たことがないため再現度はお察しです。参考にしたのは掲示板形式の小説ですので、ご了承下さい。
「クッソ、あいつら好き放題に暴飲暴食しやがって……」
エミヤは赤貧に喘いでいた。先日の○々苑における豪遊が祟り彼の所持金は底を突いている。具体的には2754
実力と実績のある者ならば平然と数十数百億と稼ぐのがプロハンターの世界である。エミヤもそんな上位ハンターの一人だが、彼は基本的にチームで活動するハンターだ。ヘルシング探偵事務所の一員として働く以上、利益はメンバー五人で平等に分配される*1。よって必然的に一人あたりの収入は個人で活動するハンターより少なくなるのだ。実力に反しエミヤの所得は──あくまでプロとしてはだが──少なかった。
「こんなことになるなら調子に乗って“
幸い基本的な生活費は事務所の金から出るので食うに困ることはないだろうが、それ以外の趣味に使う金は財布の中の数千ぽっちから捻出するしかない。そしてエミヤの趣味はと言えば──
「これじゃ今月発売のエロゲー買えねぇなぁ……給料日まではまだ日があるしなぁ……」
いや、まあ健全な男子ならば仮想上であれ可愛い女の子と戯れたいという願望があるのは普通のことだ。金があるのならそういう趣味に私財を費やすのも悪いことではない。身内はと言えばアストルフォは男の娘だしカオルはクソダサ私服バイオレンス娘だしで、とてもではないが異性としては見れない(そもそも一方は同性だが)。そういう欲求を他で発散しようとするのはむしろ当然のことだった。
「こんな貧乏になったのなんていつ以来だ……? 少なくともハンターになってからは一、二回程度しか経験していないのは確かだ」
一度贅沢を覚えてしまうと生活水準を下げるのは中々難しいものだ。喉が渇いたからジュース飲もう……小腹が空いたからケーキ買うか……今晩は奮発してお高いワインでも……等々、振り返ってみると日頃からそれなりに贅沢をしていることに気付かされる。しかし今のエミヤの懐事情でそんな金遣いをしては直ぐに資金が尽きてしまうだろう。
「まあ買えないものは仕方ない。今月発売のアレやコレは諦めるとして……しかし流石に懐が寒すぎる。何かいい小遣い稼ぎはないものかねぇ」
金稼ぎとして真っ先に思い浮かぶのはやはり天空闘技場だ。エミヤも元はと言えば天空闘技場の闘士だし、今でも他の転生者がいないかと時折り足を運ぶので馴染み深い場所ではある。
だが、原作通りならば今のこの時期はヒソカが天空闘技場に入り浸っているので行きづらい。とはいえヒソカはハンター試験でカオルにボコボコにされた挙句
他にパッと思いつく割の良い仕事といえば、後はもう協専の依頼ぐらいか。しかし協専といえば
最終手段としては程々のランクの刀剣宝具を投影して売りに出すことか。しかし魔術世界ならばいざ知らず、この世界において真名解放できない魔剣などただの骨董品と変わりないだろう。しかも投影品の性質上、一定以上の負荷が掛かり耐久値が限界を迎えると霧散して消えてしまう。仮にも骨董品として売却されたものを粗雑に扱う者はいないだろうが、万が一にも消滅してエミヤの手の内がバレる遠因となっては面白くない*2。
「何か金になる物はないかなーっと……お?」
私室のデスクをゴソゴソと漁っていたエミヤは、引き出しの中から写真の束を探し当てる。輪ゴムで雑に纏めてあるそれは、先日のハンター試験で撮影されたカオルのコスプレ写真を現像したものだった。
「……ほほう?」
身近すぎて(あと性格に難がありすぎて)オカズにもなりはしない少女の写真だが、冷静になって考えてみればこれはメルトリリスのコスプレ写真だ。Fate/Extra CCC*3をプレイした型月ファンにとっては垂涎のお宝であろう。
まあこの世界で型月ファンもクソもないが、そうでなくともこれは現役プロハンターのコスプレ写真である。被写体がハンターであるというだけでも十分な付加価値と需要が見込めることだろう。
「………………」
エミヤの中で天秤が揺れる。この写真を売れば多少の小遣い稼ぎにはなるだろう。だがそれと引き換えにカオルの顔と恥ずかしい記録が世に解き放たれることにな
「よし売ろう」
即決。天秤が揺れていた時間は数秒にも満たなかった。
「あいつハンター試験をパスして気が抜けたのか日がな一日ゴロゴロして事務所から出ないし……まま、すぐにはバレへんやろ。取り敢えず来月まで持ち堪えられる分の小金が入れば僕は満足ですよっと……はいポチー」
エミヤは淀みない手つきでPCを起動し、ネットオークションにカオルの写真を掲載。良心の呵責など感じさせぬ軽やかな手付きで作業を完了させた。
「あとは値が付くのを待つだけだぜ」
転生者エミヤ。ヘルシングの二大問題児である彼はナチュラルにクズだった。
【ネットオークション】美少女プロハンターのコスプレ写真が競売に出される【本物?】
1:名無しのスレ主 ID:GwIKt8Lzi
http://auction.com……
やべぇよやべぇよ……加速度的に値段が跳ね上がっていってる……
5:名無しのハンター ID:iXZtmuk8a
嘘乙
8:名無しのハンター ID:LfhCXmhtv
嘘だな学のない俺でもわかる
11:名無しのハンター ID:0CvCHecVr
プロハンターの素性はほとんどが謎に包まれている
ネテロ会長や公に活動している一部の有名人を除きプロの名前はおろか顔すらも世間にはあまり知られていない
なのに個人情報の塊である顔写真、しかもコスプレ写真がネトオクで出回るなんぞ……
12:名無しのハンター ID:P11eG+pit
どうせ釣りやろと思いつつリンク先行ってみたらめっちゃ美少女でワロタw これなら別にプロハンでなくても買うわw
胸はないけど
14:名無しのハンター ID:GbyDJqbtK
ホンマやめっちゃ美少女やんけ……胸はないけど
ていうか値段えっぐゥ……写真数枚の値やないで
まさか本当にプロハンなのか
15:名無しのスレ主 ID:GwIKt8Lzi
俺としても半信半疑だったんだが、この値上がりっぷりを見てると本物なんじゃないかと思いつつある
お前らこの子のこと知らない? 本当にプロハンなら競りに参加するのも吝かではない後々プレミアつくかもだし
なお予算十万もない模様
19:名無しのハンター ID:VkUxTUiK1
現時点で既に十万越えそうなんですがw
22:名無しのハンター(ヨークシン在住) ID:SEOlNNUdZ
>>15
俺この子のこと知ってる
26:名無しのスレ主 ID:GwIKt8Lzi
>>22
何だと!?
30:名無しのハンター ID:sp6ksoLi7
情報持ちだ! 囲め囲め!
31:名無しのハンター(ヨークシン在住) ID:SEOlNNUdZ
いやそんな必死にならんでも教えるけどw
というかヨークシンだとこの子わりと有名人だし
この子が、というよりはこの子のいる事務所がだけど
33:名無しのハンター ID:CyTVgKrVC
事務所ってなにこの子アイドルかなんか?
その割には全く見覚えないけど
35:名無しのハンター(ヨークシン在住) ID:SEOlNNUdZ
アイドル事務所じゃなくて探偵事務所
ヘルシング探偵事務所っていうんだけど、聞いたことない? そこで住み込みで働いてるみたい
ヨークシンの裏街にのさばってたマフィアをいくつも壊滅させてるヤベー奴ら
39:名無しのハンター ID:rNdm9b7Ey
>>35
えぇ……
43:名無しのハンター ID:ahAVVAsqB
マフィア複数壊滅させるとかなにやってんのw
44:名無しのハンター ID:YxCK7tG33
探偵とは
46:名無しのハンター(ヨークシン在住) ID:SEOlNNUdZ
>>43 気持ちはわかる
>>44 地元ではヘルシング傭兵事務所って呼ばれてる
48:名無しのハンター ID:Nkfp5aPEU
傭兵事務所www
49:名無しのハンター(ヨークシン在住) ID:SEOlNNUdZ
実際そんな感じだから困る
ただ、ヘルシングのおかげでヨークシンの薄暗い部分の治安が昔より改善してきてるのは確か
悪いマフィアが一般人に危害を加えるようなことは最近では全くない
53:名無しのハンター ID:YUzJ/n1sf
マフィアに良いも悪いもあるん?
この前ワゴンが黒塗りの高級車に追突した場面を目撃したんだが、案の定高級車から出てきたブチ切れマフィアに連行されてったで
55:名無しのハンター ID:JsgpgUY3G
マフィアとかヤクザとかは必要悪、奴らがいるからこそ裏社会の秩序が保たれているとも言える
昔ながらのマフィアにはカタギには手を出さないって主義のもいるし、そういうのは良いマフィアと言えなくも……ない?
56:名無しのハンター ID:mBPKMxPP8
>>53
そら事故起こした方が悪いわw
58:名無しのスレ主 ID:GwIKt8Lzi
でも今はそんな事はどうでもいいんだ、重要な事じゃない
結局この子は本物のプロハンなの? マフィア壊滅させたぐらいなら本物っぽいけど
60:名無しのハンター(ヨークシン在住) ID:SEOlNNUdZ
>>58
ぶっちゃけわからん
確かにヘルシングのトップはプロハンだけど、その子は別にプロハンじゃなかったはず
だけどついこの間ハンター試験があったばかりだから、もしかしたらそれでプロハンデビューした可能性はある
63:名無しのハンター ID:toiwxQ14O
ああ287回目の……
66:名無しのハンター ID:sPtb4U/J9
ゼビなんとか島が沈没したあの……
68:名無しのハンター ID:h+e8NWzYI
いやな事件だったね……
70:名無しのプロハン ID:w4VO3VMkb
>>1
おいおい、なんでアイツの写真が売りに出されてんだよ!?
72:名無しのハンター ID:JW27dKlSs
>>70
あ! たまにスレに出没する自称プロハンの人だ!
73:名無しのハンター ID:cPx/fgDe4
>>70
自称プロハンニキオッスオッス!
76:名無しのプロハン ID:w4VO3VMkb
>>72 >>73
自称じゃねーよ本当にプロハンだわ!
77:名無しのハンター ID:aX5m9TOmJ
そうだぞ自称プロハンニキは自称医者志望のすごい奴なんだぞ
80:名無しのハンター ID:kysYYMGJz
自称プロハンニキ、ハンターなのか医者なのかはっきりして
82:名無しのプロハン ID:w4VO3VMkb
プロハンの医者見習いじゃ!
83:名無しのハンター ID:N+R37NKAR
医者志望がこんな場末のスレにいていいんか?
ちゃんと勉強してる?
84:名無しのプロハン ID:w4VO3VMkb
>>83
勉強の息抜きに見にきてるんだよ
85:名無しのスレ主 ID:GwIKt8Lzi
え、自称プロハンニキこの写真の子のこと知ってんの?
86:名無しのハンター ID:nl8IuDMGW
自称プロハンニキは自称じゃなかった……?
88:名無しのプロハン ID:w4VO3VMkb
>>85 同じハンター試験を合格した同期だからな
>>86 だから自称じゃねーって言ってんだろ
91:名無しのハンター ID:aMxXkVjYx
同期!
95:名無しのハンター ID:vyNdBTBRg
これは写真の子本物のプロハン説が有力になってきましたよスレ主さん!
98:名無しのスレ主 ID:GwIKt8Lzi
うおおおおお競り落とすしかねえええええ!!
102:名無しのハンター ID:pQnMCGZrr
なおスレ主の予算は十万な模様
104:名無しのハンター ID:1YZ15JwCs
現在の写真の価格、十三万也
105:名無しのスレ主 ID:GwIKt8Lzi
106:名無しのハンター ID:DRqvOHNi9
スレ主が死んだ!
107:名無しのハンター ID:ywDf0A61K
この人でなし!
110:名無しのハンター ID:qDBmOpIqC
で、実際のところこの新人ちゃんは将来有望なハンターなん?
運良くプロになれただけの勘違い野郎ならプレミアもクソもないぞ
113:名無しのハンター ID:H79qzZPXJ
>>110
運でプロにはなれないぞ(5敗)
115:名無しのハンター ID:qpcioWkiM
>>110
もしやハンター試験の過酷さをご存知でない?(4敗)
119:名無しのハンター ID:pQOcvs/mv
ハンター試験不合格ニキたち強く生きて
120:名無しのプロハン ID:w4VO3VMkb
いや、確かに運の要素は無視できない
オレはハンター試験で知り合った友人たちに大いに助けられた
アイツらがいなきゃ生きて帰れたかも怪しい
アイツらと出会えたことはオレにとって最高の幸運だった
123:名無しのハンター ID:BdIkcjSxi
自称プロハンニキめっちゃ友達思いの良い奴やん……
126:名無しのハンター ID:BObLOP55K
なるほど、運だけではプロにはなれないが運もまた実力の一つ
自称プロハンニキはなるべくしてプロハンになったんだな
128:名無しのプロハン ID:w4VO3VMkb
>>123 よせよ、照れるじゃねぇか
>>126 そう思うんなら自称ってつけるのやめれ
130:名無しのハンター ID:qDBmOpIqC
で、実力は? ハンターなんて力あってなんぼの修羅の世界やろ
133:名無しのプロハン ID:w4VO3VMkb
めっちゃ強い、少なくともオレでは手も足も出ない
具体的には他の受験生を一方的に虐殺した男の本気の拳を無傷で凌いだし、パンチ一発で20メートルはある大木をへし折った
134:名無しのハンター ID:YebT/6CE+
ファッ!?
136:名無しのハンター ID:we7CYGuCK
ファーwww
140:名無しのハンター ID:Jq7jZXxus
マジかよこんなほっそい腕で生木へし折ったの?www
143:名無しのハンター ID:ACxU7qRTf
化け物やんけ!
145:名無しのハンター(ヨークシン在住) ID:SEOlNNUdZ
やはり傭兵事務所は伊達じゃないな!(白目)
146:名無しのハンター ID:qDBmOpIqC
これは将来有望ですねぇ!
買わなきゃ(使命感)
149:名無しのハンター ID:YdRstCY35
なおそろそろ十五万届きそうな模様
まあ可愛いからね、仕方ないね
胸はないけど
150:名無しのハンター ID:gjdJ3pGu9
胸 は な い け ど
154:名無しのハンター ID:6BS/UZTcU
>>150
やめたれw
158:名無しのハンター ID:ZNNBqxaY7
モデル体型やん
162:名無しのハンター ID:mHJxPmXWp
流石に値段の上昇も緩やかになってきたな、たかが写真に十万以上も値がつく時点で色々おかしいけど
というかサイトに掲載されてるの写真集の一部だけで他の写真がどんなのか不明なのに、よくまあそんなに金出せるよな
なに? お前ら実は金持ちだったりするの?
164:名無しのハンター ID:gwV9iYouu
ただのサラリーマンだけど独り身だし趣味らしい趣味もないんで金はそれなりにある
165:名無しのハンター ID:0TIxTL6Hh
これでもアマチュアハンターなのでな
プロはあきらめた
168:名無しのハンター ID:mHJxPmXWp
>>164 >>165
裏山
ワイ薄給社畜戦士、十万なんて食費切り詰めんと出てこんわ
169:名無しのスレ主 ID:GwIKt8Lzi
右に同じく
めっちゃタイプの子なのになぁ〜高すぎて買えないの辛すぎる
172:名無しのハンター ID:6RPq86tQG
>>162
確かに他の写真がどんなのかわからんのは不安だけど、仮にも大手のネトオクサイトだし
少なくとも他のが全部ガチムチの写真ってことはないやろ
174:名無しのハンター ID:cBB57s1Bo
ガチムチの写真集は嫌すぎるw
177:名無しのハンター ID:XH1bOsvWm
美少女で釣っといてそれは鬼畜ってレベルじゃねぇぞw
179:名無しのハンター ID:4Zl6tY0eY
決して露出の多い衣装ではないが、怒ってるような恥じらってるような表情が好みどストライクすぎる
率直に言って踏まれたい
182:名無しのハンター ID:P8l0leHuD
>>179
わかる
184:名無しのハンター ID:ilWN4hf7v
ウッ(野太い声)
185:名無しのハンター ID:Zfw1Gzu0U
フゥ…(賢者の吐息)
186:名無しのハンター ID:XnZhj7bFb
>>184>>185
通報しました
188:名無しのハンター ID:ilWN4hf7v
やめて
189:名無しのハンター ID:Zfw1Gzu0U
たすけて
190:名無しのハンター ID:YCYizFqdO
仲いいなお前らw
194:名無しのハンター ID:pgkJQrmTd
これでもうちょい肉づき良ければ言うことなかった
197:名無しのハンター ID:H0/M2gi5r
肋骨浮いてそう
200:名無しのハンター ID:4fbu9tEEZ
でもこんな細いのに大木を殴り倒すんだよね
これで更に肉がついたら……
201:名無しのハンター ID:5Fn4rr3fu
しまいにゃビル倒壊させそう
204:名無しのハンター ID:MhIN0G2xD
化け物ってレベルじゃねぇぞ……
205:名無しのハンター ID:R5TyvsGD8
そのままの君でいて
207:名無しのケモナー ID:qljIAwyjS
少なくとも現時点で熟練の狩人を素手で再起不能にするゾ
ソースはオレ
「スゴいねカオル! 早くも掲示板で話題になってるよ!」
「どいて
「それ以上いけない……」
「
後日、エミヤはブチ切れたカオルの手によって元の人相が分からなくなるほど顔面が腫れ上がるまで叩きのめされていた。瞳孔をかっ開いたカオルを必死に止める
確かにカオルは芋ジャージ姿で連日ダラダラしており外界との接触を断っていたが、運良く勉強の合間に掲示板を眺めていたレオリオからのタレコミによって一連の騒動に気付くことができた。それがなければ発覚はもっと遅れていたことだろう。
まあレオリオから連絡が来た時点で既に落札されていたのでどのみち手遅れだったのだが。
「馬鹿だ馬鹿だとは思っていたけど、まさか馬鹿を通り越したクズだったとはね。アナタに恥という概念はないのかしら? ねぇ。人間は恥を知る生き物よ。恥を知らないアナタは、つまり人間以下の畜生という解釈で良いのかしら?」
「
「何を言っているのか分からないわ。人間の言葉で喋って下さらないかしら。
……ああ、畜生に人の言葉は難解過ぎたのね? そんな不出来な猿は屠殺してしまうのが妥当だと思うのだけど、どう思う
「ステイ、カオルステイ」
エミヤにとってもこれは想定外のことだった。衣装はそれなりのものを用意したが、被写体であるカオルはノーメイク、しかも使用したカメラも決して高性能なものではない。にも拘らず掲載されて間もなく掲示板で話題になり、しかも最終的には十六万もの高値で落札されたのだ。エミヤとしては五千もすれば御の字と思っていたので、ここまで値が吊り上がるなど全く慮外のことだった。
身近すぎたこと、そして普段のガサツで私服がダサい姿に慣れ切ってしまったエミヤにとって、カオルは所詮カオルであり異性として見る対象ではなかった*4。
しかしその
そこにプロハンターという付加価値がプラスされるのだから、十万は行き過ぎにしても一万を超えるのはそう不思議なことでもない。なにせこの世界においてハンターとは世界規模で至上とされる職業、万人から無条件の尊敬を向けられるに足る存在なのだ。これはある意味で当然の帰結と言えるものだった。
命懸けの戦いに身を投じることも珍しくなく、時に刺客から命を狙われることもあるハンターにとって個人情報は出来る限り秘しておくものだ*5。取り分け個人の念能力は秘中の秘、絶対に漏洩してはならぬ最重要機密。ハンターにとって個人情報とは厳に秘匿しておくべきものというのが基本的な共通認識である。故に驚くほどハンターの顔というものは市井に知られていないというのが実情だった。
そんな中で流星の如く現れた自ら(?)顔を売ろうとするハンター。それも目を見張るような美少女とくれば話題になるのは最早必然。レオリオのタレコミがなくともカオルの耳に入るのは時間の問題であり、それを想定できなかったのがエミヤの失敗であった。
「カオル君、カオル君」
「あ゛ぁ゛?」
後ろから肩を叩かれ、土下座するエミヤの後頭部を執拗に踏み
「協会から君宛てに電話だよ」
「え゛」
まさかの電話先に絶句するカオル。おっかなびっくり受話器を受け取った彼女は蚊の鳴くような声で「はい、お電話代わりました……」と呟いた。
『どーーーもこんにちは! ハンター協会広報部(に副会長の権力で勝手にお邪魔している)パリストン=ヒルでっす!!』
「え」
『いやー流石は期待の新人カオル=フジワラハンター! プロ入りから僅か数週間程で早くも話題になるとは、このパリストンの目を以てしても見抜けませんでしたよ!
ところでそんな話題沸騰中のカオルさんに相談があるのですが……気になりますか? 気になりますよね! 相談とは他でもありません、ここ広報部が大手動画サイト「ToiTube」に開設した公式チャンネルについてなのですが、これがどうも上手くいってなくてですね! まあハンターの皆さんは誰も彼もが秘密主義なので当然なのですが!
しかし、そこに現れたるは顔出しを恐れぬ美少女ハンターカオル! 貴女にはその宣伝能力を活かし是非とも協会の公式チャンネルから様々な情報を発信して頂きたいのです!』
「あの」
『協会は世界規模で多大な影響力を保持していますが、それはハンターという強大な個を数多く傘下に抱えているからこそ! 協会の要であり存在意義でもあるハンターは一人でも多いに越したことはありません!
「ハンターには憧れるけど、自分がハンターになれるわけないし……」
「ハンターって具体的に何やってるか分かんないし、ちょっと二の足踏んじゃうよね……」
なんて考えて挑戦すらしない隠れた才能の持ち主が世の中にはきっといることでしょう! そんな未来のハンターを少しでも多く掬い上げるために、カオルさんにはハンターが如何に素晴らしいものであるかを宣伝して頂きたいのです!』
「ちょ」
『無論、宣伝だけでは面白くないでしょう。ToiTubeで主流の“ゲーム実況”や“やってみた系”の動画なんかもバンバンやって頂いて構いません! 狙うは新規……未来ある若年層の獲得です! 生放送で雑談配信をしてもいいでしょう! 少しでもハンターを身近に感じてもらうために……挑戦のハードルを下げるために……!
カオルさんッ!
貴女にはッ!
“ToiTuber”になって頂きたいのですッッ!』
「いやあの」
『おお、引き受けて頂けますか! これはありがたい!
公式チャンネルで配信して頂く以上、勿論協会から給金も支払われますよ! 給金……賃金……お賃金……お賃金って、なんかそこはかとなくイヤらしい響きですね! おっと、私としたことがセクハラ紛いな発言を……今のは聞かなかったことにして下さい!
それでは本日はこれで失礼しますよ! 詳細については後日またお話しましょう! それでは!』
「待っ……」
ガチャン。ツー、ツー……。
言葉を差し挟む余裕もない程のマシンガントーク。熟練のセールスマンも舌を巻くような弁舌を展開したパリストンは、カオルが何か言う前に一方的に話をまとめ電話を切ってしまった。
「いやぁ、カオル君もついにY○uTuber……いやToiTuberデビューか。前世では私は見る専だったから感慨深いものがあるよ」
「やったねカオル! 動画配信者だよ配信者! いいなーボクもやりたいなー!
そうだ、どうせなら二人でやらない!? 今夜はボクとキミでダブルToiTuberだぜ……みたいなー! テンション上がるぅー!」
「配信環境作りは任せて……僕そういうの得意だから……」
「
(他人事故に)概ね歓迎ムードの四人。期待の籠った眼差しを受けたカオルは、無言で受話器を床に叩き付けた。
パリストン「挑戦のハードルを下げる」
それは徒にハンター試験の死傷者を増やすだけなのでは? ボブは訝しんだ。
言うまでもなく無理矢理この展開に持ってくるためのご都合主義です。悲しいけどこれ、ギャグ時空なのよね。