実に下らない話だが、神はダイスを振るらしい〜外伝集〜 作:ピクト人
「ツインミニアド、セーフモード解除───エーテル宇宙の剣技をお見せしましょう」
極彩色の光芒を放ち、霊子となって霧散する聖槍甲冑アーヴァロン。不可視となってなお煌めく甲冑は輝く粒子として周囲に展開され、無形の光となって彼女の全身を守護している。
時間遡行すら可能とし、実にマイナス一秒という不条理な速度で乗着される聖槍甲冑は、解除する時も一瞬だ。傍から見れば、まるで須臾の煌めきとしか映らなかったことだろう。
そして瞬きの刹那に全身を覆う機械甲冑の内より現れたのは、うら若き一人の女性だった。最低限の装甲と布地のみに覆われた均整の取れた肢体。そして夜天に瞬く星々の煌めきを映す金の御髪を靡かせるその姿、是正しく女神の如し。
しかして、彼女の本質はその美に非ず───宇宙が敷く秩序に寇する混沌を、一片の慈悲なく殲滅せしめるその武にこそある。
「蒼輝銀河───即ちコスモス」
その象徴───手にする聖槍がその真価を発揮する。ツインの名の如く二対一体の聖槍の穂先が眩い光の粒子を纏い、宇宙的光輝で夜の帳を切り裂いた。
「エーテル宇宙───然るに秩序」
これぞ銀河の秩序を守護せし砦、その深奥にて悠久の眠りについていた宇宙最古のアーティファクト───聖槍ロンゴミニアドである。
その理は、宇宙の最先端にして最果てである"境界"からの光。そして"無"を食い破る力にして宇宙を拡げる真理そのもの。外宇宙の上位存在、領域外の生命すら退け得る『宇宙の天秤』である。
その光輝が体現せしは曇りなき秩序。そして彼女は聖槍を構え、討つべき敵手へと差し向ける。穂先に宿りし必滅の意思、それは物理的な圧力すら伴って相対する敵へと襲い掛かった。
「これが私の本気……ツインミニアド・ディザスターです。さあ、お覚悟を」
「……フン、面白い」
彼女が定める敵とは、それ即ち"人類の脅威"に相当する
ネフェルピトーは彼女の額から放たれる無数の光弾によって蜂の巣と化した。シャウアプフは彼女の全身から放たれる追尾性の光線によって分身諸共残らず消滅した。モントゥトゥユピーは彼女の胴体から放たれる「X」型の光線によって灰燼に帰した。
王に絶対の忠義を捧げた護衛軍は、彼女の手によって一人残らず死に絶えた。今の彼にあるのは、戦力としては期待できぬ雑兵が数匹とこの玉座───そして、王として生まれた我が身のみである。
まるで裸の王様だ。しかしそれで十分である、とメルエムは笑った。一般兵も護衛軍も、彼からすれば等しく弱者に過ぎない。端からそんなものに過度の期待は抱いていない。唯一信頼に値するのは、絶対者として生まれついたこの肉体のみ。それだけで十分なのだ。何故ならば───
「───何故なら、余は王であるからだ」
王。キメラアントの王。絶対不変、天壌無窮たる唯一王であるからして。
「認めよう。貴様は我が前に立つに値する、力ある者であると。故にその不遜を許す。……女、貴様の名を聞こう」
「謎のヒロインXXです」
「謎のヒロインXX……なんとも珍奇な、しかし趣き深い名である。確と覚えたぞ、我が宿敵、我が宿業。謎のヒロインXXよ」
玉座より降り立ったメルエムは、真っ直ぐに敵を見据え構えを取った。対する彼女もまた、より一層光輝を強めて聖槍を握り締める。自身を絶対者と定義するメルエムが、自ら玉座を降り、剰え構えるということの意味……それを図り違える彼女ではない。より一層の覚悟を決めた彼女は、決意と共に聖槍の出力を上昇させた。
「アルトリウム展開、最大出力!行くぞ、ツインミニアド……!」
「母より賜りし我が名はメルエム───さあ、絶望を知るがいい」
両者は示し合わせたように宮殿を飛び出し、雷火に洗われた荒野へと躍り出る。そこにあるのは、人間とキメラアント、二種の死骸が折り重なった死山血河の戦場である。
積み上がる人間の骸は、メルエムとその配下による虐殺の跡。散乱するキメラアントの骸は、彼女による粛清の跡。まさに互いの立ち位置、互いの在り様を体現した決戦の地に相応しき舞台であると言えるだろう。両者は多くの屍を越え、今、宿敵の命に手を掛けんと刃を晒す。
「行くぞ───」
「いざ尋常に───」
『───勝負ッ!!』
駆ける。ただ駆ける。戦術だの戦略だの、眼前の大敵を前にそんなものは思考するだけ無駄であるし、元よりそんな余裕などありはしない。故に彼らが取り得る手段は、敵へ向かっての渾身の突撃、ただそれのみ。
己が誇る肉体を。その手に掲げし聖槍を。ただ自らが信ずるものを以て、愚直なまでにぶつかり合う。これはそういう戦いである。
「ハハハハハッ!!我が前にひれ伏せ、謎のヒロインXXよ────ッ!!」
「キメラアント死すべし!ダブル・エックス・ダイナミィィィィック!!」
戦え、メルエム!王の誇りと、キメラアントの未来のために!
戦え、謎のヒロインXX!人類の平和と、夏のボーナスのために!
そして両雄の激突は衝撃波となって周囲数キロにまで及び、近くまで来ていたネテロを紙屑のように吹き飛ばした。更にその衝撃によって彼の体内に埋め込まれた「貧者の薔薇」が起爆。ネテロの後を追っていたモラウとノヴ諸共爆発したのであった。
結論:酒飲んで小説書いたら駄目なんやなって。