実に下らない話だが、神はダイスを振るらしい〜外伝集〜   作:ピクト人

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_人人人人人人人人人人_
> 本編から逃げるな <
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逃がしてくだしあ


転生野郎Aチーム続編~そうだ、ハンター試験行こう~

「ロリ巨乳っていいよね」

 

 

「あ?」

 

「は?」

 

 台所に立つエミヤが唐突にそんなことを呟く。テレビゲームに興じていたアストルフォとカオルの二人はコントローラーを持つ手を止め、チンピラじみたドスの利いた声を上げ剣呑な視線を向けた。

 一方通行(アクセラレータ)はそっと読んでいた漫画を閉じ寝たふりに入った。

 

 

 説明しよう!

 ロリ巨乳とは、主に胸の発育の良い幼い女の子、あるいは童顔・低身長を併せ持つ巨乳女性を指す言葉である!

 

 

「現実にロリ巨乳の女の子なんていない、そんなのは分かってるんだ。ロリ巨乳はファンタジー。だがファンタジーだからこそ憧れが募る。

 だって考えてもみろよ。ロリで、巨乳なんだぜ? 一粒で二度美味しい。実に夢があるじゃあないか」

 

 何言ってんだコイツ。唐突に性癖を語り始めたエミヤに対して一方通行(アクセラレータ)はそう思ったが、しかし寝たふりをしているので何も言えなかった。

 

「分かってないなぁエミヤは。幼児体形こそがロリの魅力なのに、そこに巨乳を付けるのなんて愚の骨頂だよ。余分以外の何物でもない。

 ロリはロリ、巨乳は巨乳。ちゃんと棲み分けされているからこそ美しいんじゃないか。それを一緒くたにするなんて冒涜だよ、冒涜!」

 

 アストルフォはアストルフォで救いようがなかった。一方通行(アクセラレータ)(おもむろ)に性癖バトルを始めた同年代の友人に一言物申したかったが、しかし寝たふりをしているので何も言えなかった。

 

「巨乳なんてただの脂肪の塊じゃない。無駄よ無駄、無駄の極みだわ。ロリはお人形みたいに小さくて可愛いからこそ至高なのよ!」

 

 そして極限の造形美を追求した身体(貧乳もといスレンダー)であるカオルは巨乳そのものを嫌悪していた。普段は男衆の猥談を諫める立場の彼女が嬉々(?)として猥談に乗っかる姿に一方通行(アクセラレータ)は涙を禁じ得なかった。

 

「ただいまー、お酒買ってきたからご飯にしよう。未成年組にはジュースとか色々買ってきたから、好きなのを選びなさい」

 

「おっ、待ってました! もうすぐ準備できるんで、旦那は適当にグラス並べて待っててくれよ」

 

「ペプシ! ボクはペプシがいい! 買ってきてくれた!?」

 

「私は焼酎」

 

「ドクペ……」

 

 アーカードがレジ袋を提げて帰宅したタイミングでしょうもない猥談はあっさりと終わりを告げる。アストルフォとカオルは各々の要求を述べ、寝たふりをしていた一方通行(アクセラレータ)も起き上がっていそいそと席に着いた。

 

「はいはい、アストルフォ君と一方通行(アクセラレータ)君はいつものヤツね。ちゃんと買ってきたから。

 あと何度も言ってるけど、私の目が黒い内は未成年にお酒は飲ませないからね。カオル君はジュースで我慢すること」

 

「チッ」

 

 行儀悪く舌打ちをし、アーカードが食器棚から取り出した二つのグラスに忌々しげな視線を送るカオル。そして対照的にご機嫌なアストルフォは飛び跳ねるようにして着席した。

 

「はいよお待ちどう! エミヤ印のキムチチゲだよぉ」

 

 台所から出てきたエミヤがテーブルに大きな鍋を置く。蓋を取れば、湯気と共にキムチ特有の刺激的な芳香が部屋に広がった。

 

 斯くも冬の鍋、特に複数人で囲んでつつく鍋は最高である。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『乾杯!』

 

 なみなみと飲み物を湛えた五つのグラスが音を立ててぶつかり合う。食卓を囲んだ五人は勢いよくグラスを呷った。

 

「ッか~! やっぱ鍋を囲んで飲むビールは最高だな!」

 

「うむうむ。中身はいつもと代わり映えのしない缶ビールだが、中々どうして。やはり鍋料理とは日本人にとって特別なものなのだなぁ。今回はお隣の国の鍋だが」

 

 口元に泡をつけたエミヤとアーカードが満足そうにビールを呷る。鍋料理に合う酒は色々あれど、彼らは「取り敢えずビール」派であった。

 

「いいなー、私もお酒飲みたい。キムチ鍋には焼酎でしょ常識的に考えて……」

 

 美味そうにアルコールを嚥下する男二人に未練がましい視線を送るカオル。一方彼女は烏龍茶をチビチビと舐めている。

 

「えー、お酒なんて大して美味しくないじゃん。やっぱ時代はペプシでしょー!」

 

「ドクペ……」

 

「ええいこれだからお子様舌どもは……! 鍋に炭酸ジュースとかあり得ないんですけど!」

 

 満足そうに炭酸飲料を飲むアストルフォと一方通行(アクセラレータ)。カオルにとって鍋とジュースは論外の組み合わせであるらしいが、しかし鍋の楽しみ方は十人十色である。

 鍋とコーラ、鍋とドクターペッパー、大いに結構ではあるまいか。

 

 お子様三人組を余所に一杯目のビールを干したエミヤが立ち上がり、菜箸を持って仰々しく構えを取った。

 

「動くな! これより具材の取り分けを行う! 総員、その場で待機ッ!」

 

「うわ始まった」

 

 全ての具材に程よく火が通ったタイミングを見計らって立ち上がったエミヤは牽制するように鋭い視線を全員に送る。今の彼は他の四人の如何なる動作も見逃さない。僅かにでも箸を動かせば立ちどころに捕捉し、必殺の菜箸を閃かせ取り押さえに掛かるだろう。

 今の彼は"錬鉄の英雄"エミヤではない。"鍋奉行"……否、"鍋将軍"エミヤである。

 

 ちなみに鍋奉行とは、具材を入れる順序や位置、食べ頃などを非常に細かく指定して仕切る人物を揶揄する呼称である。少々迷惑な存在である、という意味も含んでいるためあまり好ましくない呼び名であった。

 無論、エミヤとて好んで鍋奉行をやっているわけではない。彼が仕切らなければ誰も彼もが肉しか持って行かないから仕方なくやっているのだ。

 

「よーしよしよしそのまま動くな。待ってろ、今取り分けてやるからよぉ」

 

「ママー野菜少なめで」

 

「ママー野菜なしで」

 

「ママじゃないオカンと呼べ……じゃねーよ何ナチュラルに野菜抜こうとしてんだ。罰として旦那とアストルフォは後回し!」

 

『えー』

 

 エミヤは実にキビキビとした動作で具材を取り分けていく。その堂に入った姿はつい先程までロリ巨乳について熱く語っていた者と同一人物とは思えない。『英霊エミヤ』の性質がそうさせるのだろうか。

 鍋将軍モードに入ったエミヤにはアーカードも逆らえない。彼らは無力な待ち奉行・待ち娘となって震えて待つしかないのである。

 

 とは言えその鍋捌きの腕は流石の一言。エミヤは鍋の中の具材を過剰に熱が入る前に素早くそれぞれの器に取り分けた。無論、一寸の狂いもなく均等である。

 

 

「うーん、美味しー♪」

 

「酒……鍋なのにお酒飲めないとか拷問でしょ……」

 

「……カオル、毎回同じこと言ってるよね……」

 

 アストルフォは「辛い辛い」と言いつつ笑顔で食べ進めていく。その横では未だにカオルがぶちぶちと怨嗟を吐いており、一方通行(アクセラレータ)は若干呆れたようにその醜態を眺めている。

 ちなみに一方通行(アクセラレータ)は猫舌であり、必死に箸で摘んだ具材に息を吹き掛けていた。

 

「いやーエミヤ君の作ってくれるご飯はいつも美味しいなぁ。助かってるよホント」

 

「まあこの身体の影響か料理は好きだし、気にしなさんな。って言うか、オレが作らないと皆揃いも揃って碌なもの食べねーじゃん。三食インスタントとかマジあり得ねー」

 

「いやぁ、ははは」

 

 追加の具材を投入しながらジト目を向けるエミヤから逃げるように目を逸らすアーカード。彼は会社勤め時代、殆ど外食かインスタントで食事を済ませていた前科を持っているのだ。牛丼、ラーメン、ハンバーガーが食生活の大半を占めていたと言えばその杜撰さが分かるだろう。

 ちなみにアストルフォは人の目がないと三食お菓子で済ませるし、一方通行(アクセラレータ)はカップラーメン、カップうどん、カップ焼きそばをローテーションさせる。カオルに至っては──四人と出会う前の話だが──酔いや中毒とは無縁の体質になったのを良い事に酒とツマミ類ばかり食べていた。とんだ偏食共である。

 

「ちょっとちょっと、お小言は勘弁だよ! 今日の鍋パーティーの趣旨を忘れたの?」

 

「小言が嫌ならアストルフォはもうちょっと間食を控えましょうねー。ゴミ箱に捨ててあった大量のスナック菓子の袋、全部お前のだろ。食べてるとこ見られなきゃバレないとでも思ったかこのピンク頭! ゴミ出ししてるのが誰なのか忘れたか!」

 

「ギクッ! や、やだなぁ全部は言いすぎだよ! 半分ぐらいはカオルが食べたヤツだし!」

 

「ちょっと私を巻き込まないで頂戴。私が食べたのは暴君○バネロぐらいよ」

 

 ぎゃあぎゃあと喧しく言い合うエミヤとアストルフォだが、しかし家事の一切を取り仕切っているエミヤに敵う道理もなし。アストルフォには一週間の菓子類禁止令が言い渡されたのだった。

 

「しかしまあ、確かに趣旨を忘れるのはよろしくない。何せ今日は──明後日に迫ったハンター試験のために英気を養う鍋パーティーだからな」

 

 そう、今日は西暦1999年1月5日……即ち、第287期ハンター試験が行われる前々日であった。

 第287期といえばもはや語るまでもない。ゴンたち原作主人公組も参加したハンター試験である。カオル、アストルフォ、一方通行(アクセラレータ)の三人は既にエントリーを済ませており、試験本番を待つばかりとなっていた。

 

「取得しておけば何かと便利だからね、頑張りたまえよ。君たちは各々が特殊能力を持ち念能力も使えるが、しかし油断は禁物。何が起こるか分からないのがハンター試験なのだからね」

 

「でも、今回に限っては何が起こるかは原作を知る私たちには分かり切ってるわけでしょう? 三人もいるのだし、そう心配することもないと思うけれど」

 

「甘い! 善哉(ぜんざい)に蜂蜜とシロップを掛けたぐらい甘いよカオルちゃん!」

 

 激励するアーカードに対し楽観論を語るカオル。しかしそんなカオルにエミヤは「甘い」と言って箸を突き付ける。

 指し箸は行儀が悪いので止めましょう。

 

「確かにハンター試験は念能力者にとってはそう難しいものじゃない。あくまで一般人を対象に想定されている試験だから当たり前っちゃ当たり前だが、少なくとも体力や戦闘力を問われる場面で後れを取ることはないだろう。だが、そんなことは試験官のプロハンターも理解してることだ」

 

「……つまり?」

 

「必然、オレたち(念能力者)に対する採点も厳しくなるってこった。わざと強い相手と戦うことになるよう誘導されたり、些細なミスでも減点されるようになる」

 

「実際、私とエミヤ君が参加したハンター試験もそう簡単なものでもなかったからね」

 

 力説するエミヤと過去を思い起こすようにうんうんと頷くアーカード。しかしそんな彼らを見るカオルとアストルフォ、一方通行(アクセラレータ)の視線はやや懐疑的だ。特に五人の中でもぶっちぎりの最高戦力であるアーカードが難儀するような事態など中々想像できるものではない。

 

「まあ、確かに苦労したという程の難関でもなかったのは確かだがね。だが全てを腕力で解決できると思っていると足元を掬われるよ」

 

「中にはやたら頭を使うようなのもあったなぁ。ほら、原作でも出てきたトリックタワーなんてそんな感じだったじゃん? あれと似たようなコンセプトの試験があったんだが、アレは面倒臭かったよホント」

 

「……あ、そっかトリックタワー!」

 

 ポンと手を打ったアストルフォが声を上げる。

 

「トリックタワーの中身はボクたちも知らないじゃん! ゴンたちのルートしか作中では描写されてないし!」

 

「そう言えば、そうね」

 

「……盲点だった……」

 

 カオルと一方通行(アクセラレータ)の顔にも理解の色が浮かぶ。三次試験として立ちはだかる試練、囚人の塔こと"トリックタワー"は内部に様々なギミックを抱えた迷宮である。試験においてはそのギミックを解きつつ最上層から最下層まで下る必要があるのだが、肝心要の内部の様子がゴンたちが通ったルートしか判明していないのである。

 ヒソカのルートは特殊なので無視するものとする。

 

「ゴンたちについて行く……のは無理ね。あのルートは五人までしか入れない。私たち三人が参加しようとすると二人(あぶ)れるわ」

 

「あ、ならそもそも内部を通っていかなきゃいいじゃん! ボクのヒポグリフなら人面鳥なんて気にせず、三人を乗せて下までひとっ飛びだよ!」

 

「いやーそれはどうなん? 確かにルールはあくまで『下まで行くこと』だけど、果たして認められるかねぇ」

 

 アストルフォの提案に難色を示すエミヤ。確かにルール上は問題ないように思えるが、そもそものルールが試験官によって独自に定められたもの。試験官の胸先三寸でルールの是非は決まってしまうのだ。

 確かに魔獣からの妨害を跳ね除けて外壁を伝い下に降りるのも一つの実力の示し方だろう。しかし試験官が真に見たいのはそんな力業ではなく、頭を使い、力を示し、または他者と協力し様々なギミックを乗り越える「対応力」である。故に試験官の判断次第では失格、あるいは減点されてしまう恐れがあった。

 

「それに、非念能力者もいる中で堂々と能力を使うのも如何なものか。念能力は秘匿が基本であるわけだし、それができない者はプロハンターとして相応しくない……なんて言われかねないのではないかな」

 

「でもヒポグリフは念能力じゃないし」

 

「我々以外にそんなことは分からないさ。この世界では特殊能力=念能力だからね。特にヒポグリフは誰の目にも映ってしまうから、尚更一般人の前で使うにはそぐわないだろうな」

 

「うー……」

 

 『英霊アストルフォ』の宝具の一つ、幻馬ヒポグリフのハンター試験における出禁が決まった瞬間であった。どこからともなく寂しげな嘶きが聞こえたような気がしたが、五人は揃って聞こえなかったことにした。

 

「まあ力業のゴリ押しは最終手段としておきましょうか。いざとなればゴンたちみたいに壁を壊して進むぐらい簡単だし。……ね、一方通行(アクセラレータ)?」

 

「……え、僕?」

 

「そうよ。ヒポグリフを除けば私たち三人の中で一番対物破壊が得意なのはアナタでしょう? その時が来たらよろしくね♪」

 

「……うん、まあそれはいいけど……じゃあ、その代わり四次試験は手伝ってね」

 

「アナタは相変わらず対人戦が苦手ね……」

 

「……対人戦が苦手なんじゃなくて、戦闘行為全般が苦手……」

 

 ベクトル操作によってあらゆる衝撃を跳ね返せる一方通行(アクセラレータ)はこの世界ではほぼ無敵に近い。ネテロの"百式観音"すら彼の前では無力だろう。これで極度の人見知りとビビり癖さえなければアーカードをも凌ぐ最強戦力になっていただろうに、つくづく惜しいものである。

 

「んもー一方通行(アクセラレータ)は相変わらずだなぁ! 大丈夫だいじょーぶ! ボクら三人がいればハンター試験なんて朝ご飯前さ! 気楽に行こう!」

 

「ちょ、詰まる……!」

 

 バッシンバッシンと笑いながら一方通行(アクセラレータ)の背中を叩くアストルフォ。一方通行(アクセラレータ)はその衝撃で(むせ)ているが、本来ならデフォルトで設定されているベクトル反射の膜がそんな些細な衝撃すらも跳ね返す筈である。しかし反射が働かず背を叩くアストルフォの手を素通りさせているということは、それだけ一方通行(アクセラレータ)がアストルフォを信頼しているということなのだろう。

 

「まあ、色々言ったが私は君たちが難なく試験を突破できると信じているよ。帰ったら今度はお祝いパーティーだね。……偶には奮発してどこか良いお店にでも食べに行こうか?」

 

「じゃあ焼き肉がいい!」

 

「焼き肉か……なら叙○苑だな」

 

「えっ……あるの? 叙々○」

 

「……あるんだよ、○々苑」

 

「うっそぉ」

 

 エミヤが携帯の画面に映した某高級焼き肉店のHPを見て愕然とするカオル。

 何ということでしょう。どうやら叙々苑も異世界転生を果たしていたようです。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 ──西暦1999年1月6日、クカンユ王国ザバン市にて。

 

 

「人もいっぱいで賑やかだし、外国人観光客もいたりしてなんだかまるでテーマパークに来たみたい! テンション上がるな~!」

 

「ちょっと、あまりキョロキョロしないでよ。お上りさんみたいで恥ずかしいじゃない」

 

「……自分をアストルフォだと思い込んでいる一般人……」

 

 第287期ハンター試験を受けるべくザバン市へとやってきたカオルたち一行。彼らは市場を冷かしながら市内を歩いていた。余裕を持って試験開始の前日に到着した彼らは、そのアドバンテージを活かすために物資の買い出しに来ていたのである。

 

「ボクはアストルフォだ……誰が何を言おうとアストルフォなんだ……!」

 

「はいはい分かった分かった。分かったからそろそろ真面目に買い物するわよ。水とか保存食とか、用意したい物は色々あるんだから」

 

 ハンター試験は数日に掛けて行われる。その間に必要な物資は当然ながら自分たちで用意しなければならないのだ。

 原作においてゴンたちはほぼ手ぶらで参加していたが、それは彼らに相応のサバイバルの知識があったからこそだろう。しかしそんなものを持ち合わせていないカオルたち三人は予め準備をしておく必要があった。

 

「移動の飛行船以外は全部現地調達でしょうね……水と食料は当然として、ヌメーレ湿原は湿気が凄そうだからタオルは持って行きたいし、ゼビル島では簡易テントなんかがあると便利そう。欲を言えばお風呂にも入りたいけど……流石にそれは我慢するしかないか。風呂釜は嵩張るし……」

 

「せんせー! お菓子は何J(ジェニー)までですか!」

 

「アナタは菓子類禁止令を食らってる最中でしょうが。基本霊体のサーヴァントと違って実体がある身なんだから、あんまり間食が過ぎると太るわよ?」

 

「でもボク全然太らないよ? そういう体質なのかな?」

 

「……余分な栄養は全部魔力に変換される説……?」

 

「全世界の女性を敵に回す発言ね。……500J以内までなら許可するわ」

 

「カオル大好きー!」

 

 満面の笑顔でカオルに抱き着くアストルフォ。しかしカオルは真顔でそれを引き剥がすと、肩に掛けていたボストンバッグから数本の瓶を覗かせる。

 

「その代わり私がお酒買ったことは内緒ね」

 

「うわ」

 

「うわ」

 

「ちょっと真面目に引かないでよ。いいじゃない別に、アルコールなんてこの身体には効かないんだから! それもこれも目の前で美味しそうにお酒を飲むあの男二人がいけないのよ!」

 

「うん、まあ確かに前世も含めればボクたちもとっくに二十歳越えてるだろうけど……ねえ?」

 

「……その外見で飲酒はどうかと思う……というかそもそもよく買えたね。クカンユの飲酒可能年齢っていくつだっけ……?」

 

「さあ? 魔術で暗示掛けて買ったから気にしなかったわ」

 

「うわぁ」

 

「うわぁ」

 

「……さあ、買い物を続けるわよ! 早いとこ準備を終わらせて今晩の宿を確保しなきゃいけないんだから!」

 

 気を取り直すように買い出しに戻るカオル。しかし後からついてくる二人の視線は生温かかった。

 

 その後、三人はハンター試験に必要と思われる物を購入していき明日に備える。そしてその日は偶々目に入った良さげな店で適当に夕飯を済ませ──

 

 就寝……! 格安ビジネスホテル……!

 

「狭い……ベッドが固い……カオルぅ~もうちょっとマシな宿はなかったの~?」

 

「贅沢言わない! しょうがないでしょまともなホテルは全部埋まってたんだから!」

 

「……買い物の前に宿を取っておくべきだったね……」

 

 思わぬ所で計画性のなさが露見し、三人は一泊1000Jの安宿で一夜を明かす羽目になる。流星街出身のカオルはともかく、一般家庭出身のアストルフォと一方通行(アクセラレータ)にはやや辛い夜となるのだった。

 

 

 ハンター試験本番まであと数時間……果たして三人ものイレギュラーを抱えた原作の舞台がどうなるのか、それは神にすら分からない──

 




※没になったネタ~ラッコ鍋パロ~

「おっと、またボタンが」ムッワァァァ…パァンパァン

 発される妖気に反発し弾け飛ぶボタン。シャツの隙間から覗く白い肌。

 ──この吸血鬼(アーカード)……スケベ過ぎる!!

「……頭がクラクラする……」

「大丈夫か一方通行(アクセラレータ)ッ」

「横になれッ、いますぐにッ」

 外からの衝撃には極めて頑強だが、肉体的には脆弱な一方通行(アクセラレータ)が不調を訴える。

「胸元を開けて楽にした方がいい」

「下も脱がせなさい。いえ……全部よ、全部脱がせましょう!」

 特に理由もなく全裸に剥かれる一方通行(アクセラレータ)……!

「アストルフォおまえ……ちょっと見ない間に急に……いい男の娘(おとこ)になったんじゃねぇか?」

「よせやぁい、照れるじゃないかぁ」

(カワイイ)

(カワイイ)

 (一応)本物の女性であるカオルを差し置いて妙な色気を発するアストルフォ。その男の娘(ぢから)は天井知らずに上昇していく……!

 ──何なんだ……? この感情!! 抑えきれない!

 ──こんな気持ち初めて……どうやって発散させればいいの……!!

 グツグツと煮えるキムチ鍋の臭気が五人の思考を曇らせる……!

「ダメだ。私は……もう我慢できん……!」

 何故か室内なのに着ていた赤い外套を脱ぎ去り、息を荒げて立ち上がったアーカードは居並ぶ面々を見渡し──宣言した。


「スマブラやるぞ」


 ──なるほどそうか!!


 転生者五人、密室、キムチ鍋。何も起きないはずがなく──
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