Jingle All The Way To Triumph 作:TAC/108
前回のあらすじ
クリスマスを目前に迎えた人理継続保障機関カルデアに、奇妙な一枚の書状が届く。『サンタクロースなどいない』という挑戦的な文言から、異常の気配を察知した藤丸立香、ナポレオン、ジャンヌ・リリィの三人は、一八四四年のライプツィヒ郊外に向かうのであった。
「手紙の主は、この空間を造って何をしようとしているんでしょうかね?」
「さてな。ま、とりあえず中に入ろうじゃねえか」
ジャンヌ・リリィへの返答を保留し、先行してナポレオンが入っていく。その勇壮たる足取りは流石に王者の風格と言うべきか。
立香もジャンヌ・リリィと一緒に入った。
独りでに石造りの扉が閉まる。立香の視界は完全に闇に閉ざされた。サーヴァントであれば夜目も効くが、普通の人間である立香はそうもいかない。
「閉じ込められた?」
「そうだろうな……さて、三人の王ってのはどんなヤツなのやら……うおッ!?」
「きゃっ!?」
突如視界が明ける。いきなりの明転に三人は目を瞬かせた。そしてこの石塔の第一層の全貌に、三人はその目を見開くことになった。
室内は円形のドーム状であり、その内装はいかにもクリスマスといった風に、赤と緑の色彩で煌びやかに飾られている。中心には巨大なクリスマスツリーがあり、その頂点には、毛皮の塊のような羊めいた動物の上に跨る、露出度の高い衣装を着た少女を象った金色のアクセサリーが飾られている。
「あれは……アルテラサンタ!?」
「私の後輩ですね!」
「いやしかし、本人の姿が見えんぞ。どうなってる?」
「私はここだ。ここにいるぞ!」
三人の誰でもない声が空から響く。
次の瞬間、虹色の光と共に、第一の王が降り立った。
羊のようなナニカに跨った、赤い衣装の少女。巨大クリスマスツリーの頂点に座するアクセサリーと、色以外は瓜二つの外見。
彼女の名は、
通称アルテラサンタ。かつてフン族の王アッティラとして地上に在った彼女は、二〇一七年のクリスマスにてサンタクロースへと変貌を遂げた。とある古き神性の力を借りた彼女は、立香と共に冥界に赴き、その年の暮れに発生した異常を阻止したのである。
そのアルテラサンタが、この異常における第一の関門に現れたのだ。
驚きながらも立香はアルテラサンタに事情を問う。
「どうしてここに?」
「ここの主に依頼された。残り二人も似たような経緯でここにいる。ちなみにここを出ることは出来ない。そういう仕掛けになっている。残念だが私は今年のサンタクロースの役割は果たせそうにない」
「そんな……!」
リリィが悲しげにアルテラサンタを見つめる。リリィにとってアルテラサンタはサンタクロースとしての後輩だ。カルデアの三代目サンタクロースにあたるアルテラサンタは、リリィにとっても大切な仲間である。
「事情は粗方把握した。ひとまずは、ここを通してもらえないか? オレ達に争い合う理由は無い。この異常が大事になる前に、阻止しなけりゃならんのだが……」
ナポレオンが尋ねる。ナポレオンの正面には巨大なクリスマスツリーがあるが、その裏にある扉に彼は気づいていた。恐らくあの扉から次の層へ行けるのであろうとナポレオンは睨む。
アルテラサンタは渋い顔をして首を横に振る。
「すまないが、それは出来ない。この塔の主人との契約でそうなっている。そしてそれは他二人も同様だ……と思う」
「じゃあどうすれば……」
立香が呟いた瞬間、景色が一変する。
そこには巨大なクリスマスツリーも、部屋を飾る多種多様のアクセサリーも無い。新たに現れたのは、満点の星が光る夜空と、雪に覆われた白い大地だった。
「これは……固有結界!? いや、この塔の効果か……」
「私を倒して行け。恐らくそうすればこの塔の上に行けるはずだ」
アルテラサンタは七色の杖を構える。相対するはカルデア一行。
「
「貫き、砕いて、押し通る……だよね?」
「ほどほどにお願いしますよ!?」
ジャンヌ・リリィとナポレオンは立香の前に立ち、それぞれの得物を構えた。
つづく