経験値上昇中   作:前世

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おいしい

 

最後にカッコつけたくなるのが俺の性格。もう皆には慣れてもらうしかない。

 

確かに元いた世界では何もかもが底辺で落ちぶれていたと俺自身でさえ思う。

 

 

 

――だが今は違う

 

 

 

内田と歩いているときに見てしまったのだ、『カーブミラー』を。

 

汚れていた上に一瞬しか映っていた自分と目を合わせられなかったのでハッキリは分からなかったけど多分あれはイケメンだ。いや、絶対だ。間違いない。

 

この世界でのイケメンの線引きがどれ程のものなのかは想像もできないが少なくともブサイクではないだろう。

 

そうでもなきゃJSにイケメンスマイルなんてできるわけが無かろう。そして彼女は微笑んだ。これはもうイケメンで確定。俺はイケメン。異論は認めん。

 

中身コレの時点で終わってるけどな。

 

 

 

「夏奈ちゃん!スイカの差し入れだよぉ」

 

 

 

もう無駄な思考を働かせるのはやめよう。不意に話しかけられた時素が出てしまう。藤岡も心の中ではこんな感じだったりして...やめよう。何か気分が悪くなってきた。

 

 

 

「うおー!でかしたぞ内田!」

 

 

 

何か二人で盛り上がってるんですけど。ちなみに夏奈の顔はドアが開いた一瞬しか見れてない。さっきも言ったが顔はマシでも中身は何も変わっちゃいない。『もし目が合ったら第一声は何て言えばいいんだ』とか『初対面なのにジロジロ見たら気持ち悪がられないか』とか。挙げればキリがないマイナス思考の塊であった。

 

だが今はそんなことで悩んでいる場合ではないだろう。とりあえずどうしようか。

 

 

 

――そうだ、挨拶をしよう

 

 

 

こんな俺でも最低限の常識は分かっているらしい。だが声が出ない。もうつくづく俺である。

 

 

 

「...ん?」

 

 

 

『お前誰だ?』

 

 

 

さすがに傷ついた。夏奈ってこんな子だったっけ?初対面の相手に『お前誰だ』って...あぁ、これが夏奈だ。

 

作中でも夏奈のさりげない一言で心をズタボロに引き裂かれたキャラが数人いたっけな。。。

 

表裏がないと言えばいい風に捉えられるだろうがドストレートすぎて言われた側は戦闘不能である。

 

早く返答をしなくては...ごくりと唾を飲み込んだ。多分二人に聞こえてたと思う。

 

 

 

「はじめまして。そこの公園で重そうにスイカを持ってる内田を見かけたんでここまで運んであげました」

 

 

 

ん...?

 

『お前誰だ?』って聞かれたんだよな?何か俺の発言意味不明じゃね。何だよ『運んであげました』って。完全にやらかした。子宮からやり直したい。

 

 

 

「あれ?私の名前何で知ってるの?」

 

 

 

終わった。もう終わった。冗談抜きで。いつもクソくだらんこと考えてるからこういうところでぼろが出る。いつかやらかすと思ったけどこのタイミングでか。まあ夏奈を一目見れただけで俺は満足だよ。ありがとうみなみけ。そしてさようなら。

 

 

 

「?...まぁいいや。ここじゃ暑いからとりあえず中入ってくれ」

 

 

 

九死に一生。さっきの夏奈の性格についての議論を取り消しにしたい。女神だコイツは。面倒ごとが嫌いなのか言葉の通り単に暑かったのかは定かではないが本当に助かった。...おそらく両方だろうな。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

 

俺は今居間にいる。ふっw

 

いつもに増してくだらん。とりあえず部屋を怪しまれない程度に吟味させてもらおう。

 

まず目に入ったのが『カレンダー』

 

普通の人間なら『テレビ』とか『四角いテーブル』とかアンパイな正解を出すんだろうけど俺は転生した身だ。この世界の情報をまだ何も知らないといっても過言ではない。そんな俺が何故カレンダーに注目したかというとそれは『暑さ』に関係ある。

 

転生してからそれどころじゃなかったから口には出さなかったけど、今の今まで死ぬほど暑い。体感38度近くはあるだろう。そこで俺は夏だと確信した。というかそんな中バカほど重いスイカを抱えてここまで歩いてきたのだ。そりゃあ何か報いがあっても良いってもんじゃないかと思う。

 

そして何より皆さんにお伝えしたいのが『匂い』

 

三姉妹の生活臭が染みついている。匂いだけで『みなみけ』を堪能できる。自慢じゃないけど俺は匂いで人を当てることができる。給食当番のエプロンの匂いを嗅いで誰が洗濯したか勝手に予想したりもしていた。そんな変質者と疑われてもおかしくない俺が言うのだから間違いない。

 

というか俺がこの部屋にいることに違和感しかない。当たり前だけどさ。なんかあれだよ。『俺がフィギュアになっておもちゃの家に置かれてる』みたいな。この気持ちを理解してくれる人は多分いないだろうな。

 

ちょっと語りすぎたようだ。目の前にいる千秋が怪訝そうな顔でこちらを凝視している。まずい。

 

とりあえず今の状況を簡単に説明させてもらうと、

 

 

 

夏奈に上がれと言われ居間へ→千秋まさかの勉強中→邪魔しちゃ悪いと思いテーブルから少し離れた位置に座る→何か怪しまれてる

 

 

 

説明が雑で申し訳ないが今はそれどころじゃない。何かめっちゃ見てくる。小動物みたいでクッソかわええ。俺専用の抱き枕にしてやろうか。

 

 

 

「何でそんなところに座ったんだ?」

 

 

 

あっこれ4期の千秋だ。声で判断できるくらいにはハマっていたんでな。1期の千秋は割と声が高めで今聞くと違和感しかないが4期の千秋は皆さんが思っている通りの千秋の声である。あの何とも言えない眠そうな喋り方。それでいて棘のある発言をするのでたまったもんじゃない。新たなる性癖に目覚めてしまった人もいるのではないか。

 

あーこんなこと語ってるからどんどん顔が険しくなってるよ。見透かされてんのかな。千秋のことだから普通にあり得そう。寒気がした。

 

 

 

「いやー勉強の邪魔になったら悪いと思って...」

 

 

 

まあこれが無難だろう。てか実際そうだし。真剣に勉学に取り組んでいる人間の前に堂々と座ることなんて中々できるもんじゃない。しかも相手は千秋。尚更だ。

 

 

 

「あー気にしなくていいよ。千秋は夏休みに勉強するようなおかしな子だから」

 

 

「おい。勉強もせず毎日だらだらと過ごしてるおかしなバカ野郎にだけは言われたくないよ」

 

 

 

俺は感極まって泣いてしまうかと思った。あの『バカ野郎』を生で聞けた...それと同時に思ったことが一つある。

 

 

 

――何か怖い

 

 

 

実際に聞くと言葉一つ一つに強みがあり、しっかり意志を持っているということがハッキリわかる。だから余計だ。一瞬『これ喧嘩にならないの...?』と思ってしまったほどである。その上、俺には兄弟がいない。そう感じてしまった一番の原因はそれだと思うが。すべてが『まだ体験したことのない世界』なのでそう思っても仕方がないのかもしれない。

 

 

 

「『夏休み』はだらだら過ごす為の期間なんだよ...大体勉強なんかしたら夏『休み』じゃなくて夏『勉強』になるだろ!そういうことで残り短い休みもだらだら寝て過ごしますよーーーだ!」

 

 

 

『――宿題は終わったのか?』

 

 

 

「あっ内田が持ってきたスイカ食べようぜーーー!」

 

 

 

完全にみなみけの世界だ。まさに4Dだよ。というかこれ無理やり抱き着いたりできるんじゃ...やめよう。いや可能性の話なんだ。あくまでね。ってもうお前らからの好感度は目に見えてわかるから取り繕う必要なんてないか。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

...とまあ、スイカを食べることになった訳ですけど、

 

 

 

「おいこれはどういうことだ説明しろ」

 

 

 

千秋さんご立腹。それもそのはず配分がめちゃくちゃなのだ。

 

 

 

◇夏奈 10分の5(半分)

 

◇千秋 10分の0,1

 

◇内田 10分の1

 

◇俺  10分の1

 

 

 

クワガタに半分持っていかれた。スイカを持ってきた内田でさえこの量である。いや、量は十分なんだよ。元がクソデカかったし。というか半分も食えんのかよ。ツッコミが追い付かねえ...

 

 

 

「大体春香姉さまの分は残してあるのかよ」

 

 

 

「あーそれなら切り分けておいたぞ」

 

 

 

ちゃっかりしてやがる。つーか自分より春香を優先する千秋さんほんと姉思いですなぁ...。夏奈に対してはこのザマだけど。まぁ、ほぼ原因は夏奈にあるんだけど。。。

 

 

 

 

 

『――いっただっきまーす!』

 

 

 

 

 

シャリシャリと素晴らしい咀嚼音を鳴らしながらスイカを頬張る夏奈。元いた世界では『ASMR』なんつって動画投稿サイトにアップしてる奴もいたっけな。というか食べ方バケモンだろ。

 

半分なので完全におわん型なのだ。顔を突っ込んで食べてる姿は気品もクソもあったもんじゃない。ただ食欲はそそられる。美少女3人に囲まれているという神状況にもかかわらず何度も食べたことのあるスイカに惹かれてしまうのだ。夏奈(コイツ)ただもんじゃねぇ...

 

 

 

「あっ夏奈ちゃんずるい!私が一番最初に食べたかったのにぃー!」

 

 

 

「というか私の分は本当にこれだけなのかよ!」

 

 

 

スイカで争ってる女の子かわえーなぁ...一応言っておくが俺はロリコンではない。

 

何かいきなりお邪魔してスイカまでご馳走になるなんて思ってもなかったからちょっと申し訳ない気持ちになった。確かにあの暑い中運ぶのは一苦労だったけど内田に癒されててそれどころじゃなかったし俺はもう満足ですよ。

 

そんなことを語りつつ3人が食べたのを確認すると俺もスイカにかぶりついた。

 

 

 

――うめぇっ!!!

 

 

 

あぶねえ、声が出そうになった。いやしかしめっちゃ旨い。味は元いた世界と同じだけど俺の味覚が覚醒した感じ。何言ってるか分かんないだろ?安心しろ自分で言ってても分からん。

 

でも明らかに前よりも美味しく感じる。まぁ転生した『おまけ』みたいなもんだろ。顔もイケメンだったし良いことずくめだなぁ!誰だか知らんけどサンキュー!

 

喉が渇いていたこともあって一瞬で食べ終わってしまった。何故か一番量の多い夏奈が2人よりも先に食べ終わっている。もうさすがとしか言えんな。

 

 

 

「――ところでお前の名前まだ聞いてなかったよな?教えてくれよ」

 

 

 

あんまり興味ないけど一応聞いておくか程度のもんなんだろう。顔に出ている。そりゃあ見ず知らずの陰キャに対して興味もわかなくて当然である。しかも夏奈のことだし『イケメン』とか『性格いい』とか一般的に好意を向ける基準になる部分なんてどうでもよさげだ。藤岡の苦労が目に見えて分かる。

 

 

 

――いやそれどころじゃねえ

 

 

 

...ここで本名を言うべきか否か。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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